(前回からの続き)
日銀「異次元緩和」の隠された目的は米FRB「出口戦略」(QE終了後の金融政策)のアシストだと思っています。
FRBはまもなく量的緩和策(QE)を終えます。で、まず誰もが心配するのは「資産バブル」の今後です。(QEが終了する予定の)この10月以降、FRB発のマネー供給が途絶えることになるアメリカの株式・不動産市場は大きな調整局面を迎えるのではないかと予想されます。いずれの価格とも長らく続けられてきたQEによって相当にバブリーな水準に押し上げられているから、ちょっとしたことで急落&暴落するおそれは十分にあります。
もうひとつQE終了で懸念されるのが金利上昇。これまでFRBはQEを通じて米国債や不動産担保証券を買い支えて低金利状態を維持してきました。それが止まれば当然、金利は上がっていきます。これにより住宅・自動車マーケットにダメージが及ぶのは必至です。ローンの利払い負担が増すため、これらの販売が落ち込むほか、企業や家計においてはローン延滞や破綻、金融機関においては不良債権の増加等がもたらされ、アメリカの実体経済と金融システムは不安定化していくでしょう。
そんなことが想定されるポストQE期のアメリカでは、そのまま何もしなければ「資産デフレ」(株や不動産の価格が下がり続ける現象)の発生は不可避となりそうです。これこそFRBとアメリカが恐れる最悪の事態です。しかも、こちらの記事に書いたとおり、わが国と違って、アメリカには日本流デフレ克服策の実行はほぼ不可能。となれば、デフレを回避する唯一の道は資産バブル路線の続行しかありませんが・・・。
でも、「これ以上やると危ないからQEは止める!」と大見得を切った手前、FRBにとってその選択は建前上、NGです。もしQEをただちに再開したら、それこそFRBの手腕に対する疑念がマーケットで一気に高まり、ドル不安とかハイパーインフレすら招きかねないから・・・。
ということで、アメリカにはFRBに替わって緩和マネーを市場に供給してくれる一大スポンサーが絶対に必要だった・・・それが、われらが「日銀」だったというわけです。FRBがドルの散布を終えても、日銀が異次元緩和を続けていれば、欧米の投資家は「円キャリートレード」、つまり低利の円を調達してアメリカ市場に投資することが可能となります。それによってアメリカの株や不動産が買い支えられるうえ、日米金利差の拡がりに着目したマネーが米債券市場に流入するから、過度の金利上昇も抑制されることに・・・。
かくしてアメリカは低金利環境下での資産バブルを引き続き謳歌する―――日銀のおかげで、といった具合です。低利マネーでバブルを享受―――ということは、これってアメリカにとっては実質的にはQE4ですね。もっともその演出家はFRBではなく日銀になりますが・・・。
円安の悪影響を指摘する声がこれだけ高まっているにもかかわらず、日銀が異次元緩和=円安誘導・超低金利誘導にこだわるのは以上のような思惑があるからだ、と考えています。日銀に言わせると「異次元緩和が日本に与えるダメージなんてこの際どうでもいい(!?)。とにかくアメリカ第一! 『バブル輸出』でQE後のアメリカ様を支えよ!」といったところでしょうか。もちろん、これと引き換えに犠牲になるのは日本経済とわたしたちの日常生活なわけですが・・・。