(前回からの続き)
前述のように、日銀の現行金融政策「異次元緩和」(長短金利操作付き量的質的金融課緩和)の所期の「本当に本当の目的」は、保守的に見て遅くとも2年前の夏以降はアメリカの真性インフレ没入が確実視されることから、ほぼ達成された、というべきでしょう。であれば、それが日本に及ぼすダメージを食らう理由はないわけで、さっさと出口・・・戦略へと移行するべきでしょう。でないと・・・って、その開始が遅れれば遅れるほど以下のような損害が増えてしまいますよ・・・
で、金融用語的な出口戦略は前回書いたとおりです。ちなみに・・・その際にしばしば指摘される、日銀の(保有国債の価額低下等にともなう)バランスシート劣化については、以前のこちらの記事に書いた、いわば机上会計的な対応ができる(日銀に永久国債を持たせる等の対応ができる)ため、それほど大きな問題にはならないだろうと考えています。むしろ、この瞬間の経常収支の悪化トレンドのほうがずっと危険といえるでしょう。というのもそれは「日本国」連結B/Sの毀損(本邦純資産の減少)を意味するからです。でそれはどうして生じているか・・・って、いうまでもなく円建て輸入額の膨張をもたらした超~過度の円安のせいであり、それは上記政策が引き起こしているのだから、その意味でもココに長居は無用というもの・・・って、かの国が水面下(実質マイナス金利状態)に没したからには・・・
そしてもうひとつ、重大な出口戦略が、この10年間(2013年~今年4月まで?の異次元緩和期間)つまり極端な円安外貨高局面で「高値掴み」してしまったリスク資産とりわけ外国債券をいかに損失少なく売り逃げるか、ということ。以前から書いていることですが、ここは何といっても「政府」・・・系金融機関である、ゆうちょ銀行や農林中金、そして公的年金基金(GPIF)に集中していると推測されるところです。なので、その政府が「出口」に向かおうというのなら、これらも一緒に向かわせなければなりません・・・が、これも以前からの懸念のとおり正直、相当なダメージ(売却損&含み損の大量発生)はもはや避けられないでしょう。どこも、外債等の保有額が多すぎて機敏に動けない・・・うちに買ったときよりも円高外貨安が進んで、結果として巨額の為替差損を食らう可能性が高い、といったこと・・・
そのあたり、ゆうちょ銀を例にあげて、そのコワ~い様子を眺めてみましょう。決算資料によると同行の昨年12月末時点の総資産額226.7兆円。そのうち「外国証券等」は77.9兆円となっています。これに対して純資産額は9.1兆円しかありません(というべきでしょう、自己資本比率4%程度という薄さなので?)。で同時点の為替レートは1ドル約131円でした。ということは・・・単純計算では同115円程度の(本来なら、それでも「超」がつくくらいの円安ドル高水準といえる)レートで自己資本が失われて債務超過に陥りかねない―――貯金の払い戻し等に支障が生じかねない―――ことに・・・