(前回からの続き)
前述した金(ゴールド)価格ですが、引き続き1トロイオンス当たり1600ドル台を激しく上下しており、市場が依然として金に意識を向けている様子が窺えます。なお円建て価格は前述以降、為替がやや円高になったために1グラム6000円の高みからは少し遠のいた印象です。以前こちらの記事に書いた理由から、金価格(ドル建て)が上がっているとはいっても史上最高値(1923ドル)から15%前後も低い現時点で円建て価格のほうが人跡未踏の6000円台に乗るようではイケナイ!という思いがするわけですが、このままだと近日中に6000へのリトライ局面が現れるかも・・・(?)
さて、金価格が上がることの本質的な理由はインフレリスクの高まり、すなわちペーパーマネー(ぶっちゃけドル)の、過剰な増刷に起因する信認低下懸念に見出せます。以前から何度も書いているように、これ金融システム危機によって生じ得ること(米欧各行のデカすぎる債務超過額の穴を埋めるのは財政資金では不可能なためにインフレ承知で中銀が派手に紙幣を散布[≒財政ファイナンス]する以外にない)。ということはいま、市場がその危機が現実になるリスクを検知し始めているからこそ金価格がじりじりと上昇していると解釈するべきなのでしょう(?)。では、新型コロナウイルス禍の何に関連して市場がそう感じるようになっているのか?ですが・・・最大のところは、石油の需要減少と価格低下だと考えています。
そのあたり、同ウイルス発生源の中国について、今月3日のブルームバーグは、同国エネルギー業界複数の関係者の話として、ウイルス感染拡大の影響で中国の石油需要は消費全体の20%に相当する日量約300万バレルも減少したと伝えました。これほどの落ち込みはリーマンショック以降で原油市場が見舞われた最大スケールとのことです。2016年にアメリカを抜いて以来、世界最大の原油輸入国となっている中国は日量1400万バレルを消費しており、これは何と!日独仏伊西英韓7か国の合計に匹敵するそうな・・・(って、スゴい比較の仕方・・・)
まあ上記数字の信ぴょう性は必ずしも高いとはいえないのでしょうが、今般のウイルス禍で中国の原油需要が激減しているのは間違いのないところでしょう。今後、事態が好転せず、それどころかいっそう悪いほうに向かったりしたら、中国はもちろん、わが国を含む全世界の原油需要のいっそうの低下は避けられない感じです・・・
いっぽう、そのダメージを目いっぱい被るのは当然ながら産油国、とりわけOPECの盟主サウジアラビアでしょう。こちらの記事でご紹介のとおり、現在「OPECプラス」(石油輸出国機構[OPEC]および非加盟産油国のグループ)は日量170万バレルの原油減産を実施中ですが、サウジはこのスキームの自国割り当て以外に40万バレルの自主的な減産を追加で行っています(OPECプラスの合計では210万バレルになる)。サウジとしては、こうして自ら身を切ってでも―――原油販売の量&収益を減らしてでも―――原油価格を押し上げたい!と切望しているのでしょう。が・・・その願いもむなしく、中国一国の需要減だけでも、各産油国が苦労して積み上げた減産総量210万バレルを軽~く上回りそう。これに加え、日本など中国以外の石油輸入国の消費量も今後は減少必至です・・・
そこでサウジとしては、もう一段の原油減産を図り、その価格低下に歯止めをかけたいところでしょう。しかし、ただでさえ収入が減っている他の産油国がどこまでこれに追従できるか不透明です。ちなみにロシア・・・は、サウジと並んで減産への耐性がまだありそう(?)ですが、同国のエネルギー相は6日、地元メディアに対して追加減産に慎重な姿勢を示したとのこと(って、まあそうでしょう、やはりロシアには、こちらの記事に書いた事情等もあるみたいですからね)。というようにサウジとロシアという2大産油国の足並みは揃わず、結果として原油の大規模な追加減産は見送られ、いっぽうでウイルス禍の拡大で需要は低迷し、その価格はじりじりと下がり続ける、といった展開になっていきそうです(?)。