世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【EU、英に関税ゼロを認めても離脱の連鎖はない、と読んだか】欧州もまた分断と混とんに向かう⑦

2020-12-29 01:10:18 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述のように、Brexit」(英国のEU離脱)にともなう英国EUとの新通商協定の合意において英国は、移民・難民の受け入れに関するEU基準を排除したうえで事実上の「関税ゼロ」(自由貿易協定:FTA)維持等を勝ち取りました。そして英国は、これにより、「連合王国」解体の危機(スコットランド等の分離独立)から脱したものと思われます(?)。他方、EUは、自身の大切な理念である「ヒトの移動の自由」を拒否してEUを離脱した国に対して「モノの移動の自由」(FTA)を提供することにしたわけです。これ「いいとこ取り」を認める決定であり、となると・・・英国に続いてEUを離れようとする国が続出してしまうかも・・・

 ・・・っても、現実的には離脱の連鎖は起こりにくいだろう、という読みがEUにはあったのでしょう。実際、ユーロ圏に限っても、真にEUから独立できる実力がある国々は、こちらの記事等で指摘した「フランス以上」の国々つまり独蘭仏などの国々に限定されるし、本気の離脱は英国以上にたいへんなはず。というのも、それには通貨ユーロから独自通貨への転換をともなうからです。これによる金融システム等の大混乱を想像すれば、EU内の強国はそのストレスをあえてかけてまでユーロ圏外に出ていくという選択はできないでしょう(「フランス未満(以下)」の国々はなおさらです)。と考えれば、EUとしては大きなダメージはない―――英国に上記のように譲歩しても、現時点の体制が大きく揺らぐことはないし、貿易等についても、従前のとおり、メイド・イン・EUに大きく依存する英国に対して引き続き優位を保つ―――から、ここは英国に情けをかけてあげるか、関税復活が原因となって国家分裂に至ってしまったらかわいそうだし(?)、となったのではないか・・・?

 ということで、英国は一見、対EU交渉で勝利を得た・・・ように思えても、だからといって、上述から、EUに対して、より強い国になるわけではなさそう。せいぜいこれまでと同様でしょうし、むしろ対EUで、そしてその他の多くの国々に対して、今後も貿易&経常赤字をいっそう積み重ね続けて弱体化していく方向でしょう。その結果として、ポンドのさらなる価値下落つまりインフレの悪化は避けようがないように思えます。

 他方のEUは、まあ貿易では英国に対して大幅な出超であり、EU全体としても経常収支はプラス(2019年は1688億ユーロの黒字)を保っているので、通貨ユーロは、本来なら、ポンドはもちろん、米ドル等に対しても強めに推移していきそう・・・に思えます。しかし、上述したユーロ圏特有の事情―――通貨金融統合・財政不統合とか欧州中央銀行の金融政策におけるキャピタル・キーのしばり―――から、せっかくの経常黒字にもかかわらず、ユーロもポンド等と同じく過剰に増発され続けるしかありません(?)。

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【Brexit後の新通商協定合意、英の完勝、EU完敗のトホホ】欧州もまた分断と混とんに向かう⑥

2020-12-27 00:49:44 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述のように、いまのユーロ圏は、ギリシャイタリアみたいな重債務国はもちろん、ドイツのような支払い能力の高い国に至るまで、コロナ禍対策を含む大半の財政資金は、欧州中央銀行ECB)が(非伝統的な金融政策である量的緩和で国債等を買い支えることで)マネーを増発して作る、というスタイルにすっかりハマってしまいましたいったんこうなってしまった以上、かの国々は、増税で、とか、債券発行で市中から、といった伝統的な?財政・金融運営に回帰することは2度とない(?)のだろうな、なんて気がします。となれば、当然ですが、通貨ユーロの過剰流動性つまりインフレを制御することはできないでしょう。そして・・・

 ・・・などと綴っていたら、24日、とうとう?Brexit」(英国のEU離脱)後の新たな自由貿易協定FTA)等について英国EUとが合意しました。メディア等の評価はともかく、本ブログの結論からすると・・・今回サブタイトルのとおり、これ、英国の完勝、EUの完敗、と言い切ってもいいでしょう。実質的なFTA(関税ゼロ)が継続されることになったためです・・・

 上記協定の最大の懸案は、英水域の漁業権・・・なんぞではなく、両者間の関税をどうするか、でした。具体的には、Brexit後も従前と同じように両者間の貿易において関税ゼロを維持したい英国と、その果実をむざむざ渡したくないEUとのせめぎ合い、との構図がありました。そもそも国民投票で英国民の過半数がBrexitを選択した最大の理由は、(移民・難民を含む)ヒトの移動に関するEU基準は(自分たちのテリトリーに他国民がたくさん入ってくることで仕事が奪われたりしかねないから)イヤだったため。他方、EUにすれば、英国に「いいとこ取り」は許さない、すなわち、モノとヒトの移動の自由は加盟国統合の理念そのものである以上、英国がBrexitでヒトの受け入れのほうを拒否するのなら、じゃあフリートレードを享受させるわけにはいかないよ、との立場だったはず。だからこそ、関税復活を前提として、通関施設をどこに置こうか(北アイルランドとアイルランドとの間に国境を意識させる施設は作れないからアイルランド島と英国本土との間に置こうか、等)といった議論が続けられてきたわけです。

 ところが、今回の合意によると、細かなところ(両者以外の原産国品が多い製品には関税が課される可能性など)は別にして、上記のとおり、以前のものとほぼ同様のFTAが締結されるもよう。となれば、英国は、EU基準の移民・難民の受け入れは免れ、いっぽうで対EU貿易とくに輸出面で関税ゼロの利益を引き続き得られる(というより、英EU間のFTA維持で、英国の輸出セクターに多大な貢献をしている日本企業英国脱出を食い止められる)という、まさに「いいとこ取り」が実現できたかたちになりました。さらに、BrexitしたことでEUへの拠出金負担等もなくなり、英水域でのEU各国の漁獲割り当て等をリードできる権限も得たし、などと、英国にとっては「いいことづくめ」の印象です(?)。

 そしてその極めつけが・・・「連合王国」(ユニオンジャック?)解体の危機が遠のいたことでしょう。FTAが継続されるのならば、北アイルランドが陸続きのアイルランドとの一体化を目指す必要性は薄らぐし、近々2度目の分離独立の住民投票が行われる予定のスコットランドでも、まあいいか、と、かなりの住民が現状維持(連合王国残留)を選択するものと考えられますからね・・・(?)

 以上のことから、(Brexit国民投票が行われた)2016年から先日に至る4年以上もの長きにわたった英国とEUとの交渉劇は、英国の完全勝利に終わった、と考えるものです。この結果を勝ち取ったボリス・ジョンソン英首相、お見事です(?)。いっぽう、英国にオイシイところを全部持っていかれたEU、トホホすぎます・・・(?)

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【欧州中銀の量的緩和でESM形がい化、インフレは不可避か】欧州もまた分断と混とんに向かう⑤

2020-12-25 00:59:58 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 欧州中央銀行(ECB)の量的緩和策「パンデミック緊急購入プログラム」で総額1.85兆ユーロ、そして「欧州復興基金」で総額7500兆ユーロ・・・。前述のように、この巨額マネーの大半は、欧州諸国民の血税で賄われる・・・のではなく、債券の振り出しでマーケットから調達される・・・のでもなく、ECBによってあらたに増発されるユーロ、ということになるしかないでしょう(?)。これらは、何ら価値の裏付けのないペーパーマネーに等しいわけで、これが市中に吐き出される分だけユーロの価値の劣化、すなわちインフレが進んでしまうのは避けがたいように思えますが・・・

 以前の記事でもご紹介のとおり、欧州には欧州安定メカニズム(ESM)という、財政・金融セイフティーネットがあります。これ、同危機に陥った国に対して構造改革等の実行を条件にユーロ圏共通の基金からおカネを融資する仕組み。よって本来なら、先述したイタリアやスペインのような重債務国はこちらを頼るべき・・・だったのでしょう・・・

 そして、これまたユーロ圏でしばしば浮上する共通債構想。これ、一見、ユーロ圏の借金を加盟国全体で負担し合おう!みたいな、欧州の団結ぶりを象徴する(?)スキームではあります・・・が、実質的にはこれ、ドイツ等のイタリア等への財政移転であるわけで、やはりおカネを出す立場の国々は正直、やりたくないし、百歩譲って仲間を助けるとしても、その代わりに財政再建等にちゃんと取り組んでもらわないと、自国納税者に説明がつかない、といったことになります。

 ESMも共通債も、上記のようなルールとか実行の難しさなどがあるわけですが、なぜそうなのかといえば・・・インフレが恐ろしいからにほかなりません。20世紀のナチスドイツの台頭そして全欧州を巻き込んだ大戦と荒廃は、そもそもドイツのハイパーインフレから始まったといってもいいくらいなのですから。よって、そんな破滅を絶対に繰り返さないためにも、元凶となるインフレはけっして起こしてはならない、ということで、ESMの条件とか共通債の是非をめぐる議論の背景には、このインフレを抑止しなければ、という強い思いがあったはず・・・

 ・・・ですが、いまの欧州ではESMはすっかり形がい化し、共通債の議論等も盛り上がっていない印象です。それはそうでしょう、ESMに頼らずともマネーは楽にゲットできるし、共通債の負担もECBが肩代わりするのですから。これらの結果欧州では、コロナ禍だから、という大義名分?で、金融・財政の規律、すなわちインフレへの懸念とか、これを防ごうというインフレファイト的な意志が失われていくしかないように思えます。そのあたりはイタリア等の対外債務国はもちろん、ドイツのような債権国も同様でしょう。ドイツ等にすれば、そんな現状を苦々しく思いつつも、他方で、ECBが共通債≒欧州復興債を直接引き受けしておカネを増発してくれれば、イタリア等への支援に自分たちの血税がつぎ込まれることはなくなるので、まあいいか、なんて思っているのかもしれません・・・(?)

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【欧州中銀の量的緩和&欧州復興基金の最大の受益者はイタリア】欧州もまた分断と混とんに向かう④

2020-12-23 00:00:26 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述したように、欧州中央銀行(ECB)による、コロナ禍を受けて拡大された量的緩和策(パンデミック緊急購入プログラム[債券等を買い支えるもの])は、キャピタル・キー(ECBに対するユーロ圏各国の出資比率)に引っ張られ、イタリアスペインといった重債務国の債券はもちろん、ドイツ等の本来ならば自力で財政資金を調達できる国々の国債等も過剰に購入することになるため、どの債券も不自然に高値となり、金利は異様に下がってしまうわけです。その結果、ユーロ圏では、アフターコロナの金融正常化局面での金利上昇にどの国も耐えられず、これに対してECBは「財政ファイナンス」(国債の直接引き受け)による通貨増発で応じる以外になく・・・ユーロ圏は激しいインフレに見舞われることになるでしょう・・・(?)

 さらに欧州がスゴいのは、この種の枠組みがまだほかにもあること。そのひとつが、今月11日の欧州首脳会議で決定された総額7500億ユーロの「欧州復興基金」です(その内訳は、グラント[贈与]が3900億ユーロ、ローンが3600億ユーロとなっている)。これ、コロナ禍の拡大で経済にダメージを被った国々を支援することを目的とするファンドで、通貨ユーロ圏のみならず東欧諸国などの非ユーロ圏をも対象とするもの。7月に大枠で合意されていましたが、このおカネの使途や「法の支配」(権力の乱用等がないかどうか)などについての条件等をめぐって、これらを厳しめにしたい北部欧州諸国と、ユルくしてほしい東欧等諸国とがもめていましたが、先般、後者側が譲ってまとまったもの。ということで、これ、来年からの運用開始に晴れてめどがつきました・・・

 ・・・が、問題は、この巨額のマネーをいったいどうやって確保するのか、ということ。欧州では、どこもコロナ禍の渦中にあって財政がひっ迫し、この基金に出資できるゆとりのあるところは一か国もないはず。もちろん増税等も難しいでしょう。なので、今回は共通債を発行して市中から資金を集めることにするそうです(って、債務をはじめて共通化する[≒ドイツ等に重債務国の債務を担わせる?]という点で欧州としては画期的なスキームにはなりました)。でも、じゃあこれを引き受けるのは・・・って、まあ欧州各国の金融機関とか、こちらの記事に書いた事情等がある中国とかは買うでしょう、いくらかは。しかし、それら以外の大口の投資家はます現れることはないでしょう。となると、同基金が実際に金融市場から調達できるマネーの総額は7500億ユーロに遠く及ばない感じです。でもそれではマネーが欲しい国々にまったく行き渡りません。さてどうするか・・・

 ・・・って、これまた同じこと、つまりここでもまたECBが上記共通債を購入してユーロを吐き出すことになる・・・のではないかと予想しています。そうやって足りないおカネはECBが新規に刷ってあげるしかないでしょう、量的緩和策でやっているのと同様に・・・

 ちなみに、欧州復興基金の最大の受益者は・・・ここでもイタリアになっています。現時点でグラント約820億ユーロ、ローン約1270億ユーロと、基金全体の3割近くが同国につぎ込まれることになります。そのかわりにイタリアは国民に痛みを強いる年金カットとかの構造改革を推し進める・・・って、その可能性は極めて低いでしょう。なぜなら、繰り返しになりますが、ECBが伊国債も上記共通債もどんどん購入しておカネをいくらでも出してくれるためです。であればイタリア・・・をはじめとする被支援国はそんな苦労をしようなんて思うはずはない・・・どころか、モラルハザードに陥っていく―――財政をいっそう放漫化させていってしまう―――ばかりでしょう・・・

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【ドイツ長期金利、世界最低の理由と異様さ】欧州もまた分断と混とんに向かう③

2020-12-21 00:02:54 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述した事情から、欧州中央銀行(ECB)は、現行の「パンデミック緊急購入プログラム」(PEPP)という名の(って、コロナ禍が収束した後も名前を変えて)量的緩和策を拡大し続けるしかないわけですが、そのせいでEU諸国の国債利回りがどんどん下がってきています。ちなみに先週末(18日)時点の10年物国債利回り(長期金利)は、独-0.576%、蘭-0.497%、仏-0.335%、西0.042%、伊0.531%、ギリシャ0.649%となっています(なお、以前から本ブログで指摘している「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(国債価格の高い順=国債利回りの小さい順)の序列は引き続き保たれている)。

 で、上記の金利ですが・・・同日のアメリカの長期金利が0.945%ですから、何と!?あの(?)ギリシャ国債の利回りのほうがアメリカのそれよりも低いという、誰がどう見ても異常な状況となっています。これ、上記PEPPのもとでECBによるギリシャ債券の大量購入・・・が予想されるため、多くの投資家が、独仏などよりも相対的に価格上昇幅が大きいと見込まれる同国債に買い向かったことの反映でしょう。同じことはスペインやイタリアの債券にもいえるはず・・・

 このように、以前から重い対外債務に苦しみ、かつコロナ禍のダメージも大きく、本来の市場メカニズムのもとなら国債金利が急騰し、そのために増税やら年金カットやら行政改革等を断行しなければならないはずの南欧諸国が・・・難なく財政資金をゲットできているわけです、アメリカ以上にユル~い(?)事実上の「財政ファイナンス」(ECBによる国債の直接引き受け)で。となれば、かの国々がもはやこの「麻薬」(ECBの超低金利な量的緩和マネー)を断つことは絶対に無理でしょう(?)。

 なお、PEPPは、ドイツなどの(上記不等式で「フランス」以上の)国々にも中長期的には悪影響を及ぼすと考えています。上記のようにドイツの長期金利はマイナス0.576%ですが、これ現時点の世界最低値です。日本(プラス0.009%)はもちろんスイス(マイナス0.526%)よりもさらに低い水準です。これもまたPEPPのせいでしょう。つまり、ECBはイタリアやスペイン等の国債等をどんどん買い入れるわけですが、前述したキャピタル・キー(ECBに対するEU各国の出資比率)を維持しなければならない関係から、同出資比率がいちばん大きなドイツ(26.4%)や2番目のフランス(20.4%)等のそれらも、本来ならばその必要がないにもかかわらず同時並行的に購入せざるを得ず、その結果、独仏等の金利もまた実力以上に下がりすぎてしまうことになるわけです。これが上記のように今後、長期間にわたって行われたら、フランス等はもちろん、EU最強の(支払い能力を有する)ドイツでさえ・・・緩和マネーの「麻薬」効果にハマってしまい(異様なほどの低コストで財政資金が調達できてしまう金融環境になじんでしまい)、アフターコロナの金融正常化すべき局面での「禁断症状」(金利上昇)に対する耐性を失っていってしまうでしょう・・・(?)

 そんなこんなで、EU各国の国債利回りは現在、この10年間で最低レベルにあるわけです。そのあたり、まあ日本アメリカも似たような状況ではあるものの、上記ギリシャの長期金利が象徴するように、その不自然さは日米を上回るほどといってもいいでしょう。ということは、これを無理やり演出しているECBの量的緩和策の行き着く先は・・・すでに指摘しているとおり、やはり制御不能のインフレ以外に考えにくいところです・・・(?)

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【欧州中銀の量的緩和策の拡大はイタリア救済のため】欧州もまた分断と混とんに向かう②

2020-12-19 00:03:08 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前述したように、欧州中央銀行ECB)の現行(3月開始)の「パンデミック緊急購入プログラム」(Pandemic Emergency Purchase Program:PEPP)という名の量的緩和策(金利を引き下げるために国債等を買い支える金融政策)は、イタリアやスペインといった南欧諸国すなわちEU加盟国のうちの重債務国のための「財政ファイナンス」(ECBによるこれら国債の直接引き受け)的な色合いの濃い政策です。かの国々の公的債務状況の厳しさは、ずっと前から―――遅くともギリシャ債務危機(2010年頃~)あたりから―――すでに構造的であり、だからこそECBは昨年秋にはこの手の緩和策を再開し、そしてその拡大を模索していたところ、今春のコロナ禍拡大という、誰もが仕方ないなと思える(?)きっかけをとらえ、パンデミックですからね、という大義名分でその規模を一気に膨らませた、という次第なのでしょう(?)。

 で、これ3月の開始から今月までのたった9か月で、7500億→1.35兆→1.85兆ユーロと、その購入枠がどんどん拡大されているわけですが、これもまたEUとECBに特有の事情のせいだといえるでしょう。つまり、ECBが買い入れできるEU加盟国のA国の国債等の金額は、A国のECBに対する出資割合(キャピタル・キー)に制限される、ということ。となると、たとえ他国債に現状以上の購入の必要がなくても、A国債に買い支えのニーズが出てくると、ECBは上記の全体上限を引き上げざるを得なくなることに・・・

 このA国に該当するのが・・・イタリアになっているようです。やや古いですが、今年8月時点のECBのデータによると、6~7月にECBは伊国債等を360億ユーロ購入しましたが、これは当時のPEPP額の19.6%となり、イタリアのECB出資比率である17%を上回ってしまっています。これでは他のEU加盟国からECBは「イタリアだけを優遇する気か」などと非難されてしまう、かといって、もう上限に達したからと同購入をストップすると同国は金利急騰で破綻必至。そこで・・・イタリア債券の購入可能額を同国のキャピタル・キーの枠内におさめることができるよう、PEPP全体を増額しよう!となったのでしょう、おそらく。それが6月そして今月と立て続けに上記増額が行われたことの裏事情と思われます(?)。

 で、上記のように見てみると、このPEPP、名前はともかく、スキームとしてはコロナ禍が終息した後も(現状の終了目途2022年3月を超えて)延々と続けられる可能性が高いことが想定できます。というのも、イタリア・・・はもちろんスペインなどの国々も、この間の超低金利マネーの乱用にどっぷりとハマっていく結果、「コロナ終わったので国債の買い取りはやめます」となったときの金利の上昇に耐えられず、いともあっさりとデフォルト(債務不履行)してしまうことが見え見えだからです。(かの国々らの債権者の多くはドイツやフランスだから)そうはさせられない、だから、やめられない・・・

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【ECBの債券購入プログラム、拡大の一途…】欧州もまた分断と混とんに向かう①

2020-12-17 01:25:02 | ヨーロッパ
 アメリカに続き、欧州もまた分断と混とんに向かうしかなさそうですね・・・

 欧州では規模の拡大がもはや止まらなくなってしまったようです・・・っても、ここでのいう規模の拡大とは、欧州中央銀行(ECB)の金融政策「パンデミック緊急購入プログラム」(Pandemic Emergency Purchase Program:PEPP)のこと。

 ご存じのように、今年の春、欧州では新型コロナウイルスの感染が一気に拡大し、なかでもその深刻度の大きかったイタリアをはじめとする国々ではロックダウンなどによって経済が大ダメージを被り、対策のための財政資金の調達難に陥りました。そこで3月から開始されたのがこのPEPP・・・という名のECBの金融緩和策。これ、すでに昨年11月から再開されていた債券購入プログラムに加えて導入されたもので、当初の規模は7500億ユーロ、そして終了目途は今年末までとされていました。それが今年の6月には6000億ユーロ上乗せ、期限も来年6月末までに延長され、さらに今月、そのスケールは5000億ユーロ増額、そして実施期間は9か月間延長されて2022年3月まで、となっています。ということで、PEPPはたった9か月で総額1.85兆ユーロというスゴい規模に膨れ上がってしまいました・・・

 さて、このECBの債券購入プログラム、その本質的な目的は、EU加盟国のうちの重債務国の国債をECBが(高値で)購入することで、これらの国々の資金調達コストを下げてあげようとすること。以前から何度も指摘しているように、金融(ECB)・通貨(ユーロ)は統合されているのに財政は不統合のEU圏では、各国の国債価格(利回り)はそれぞれの経済力を反映する結果として「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(国債価格の高い順[利回りの小さい順])の序列になっています。となると、ECBとしてはどうしても全体の平均あたり(つまりフランスあたり)を意識した金融政策を志向せざるを得ませんが、その場合、ドイツ等にしてみれば金利が低すぎてバブル気味、他方でフランス「未満」の国々にとっては金利が高すぎて財政運営が厳しくなる、となりがちです。う~ん、どうしたものか・・・って感じですが、いまのECBは、前者よりも後者つまりスペインイタリアなどを救うほうを選んでいるわけです。まあ・・・かの国々がデフォルト等をしたときのリスクの大きさを考えると、それもやむを得ないだろうな、とは思いますが・・・

 ということで始められたのが上記の債券購入プログラム・・・という、実質的にはECBによる上記不等式において序列が低い国々の・・・「財政ファイナンス」(国債の中銀による直接引き受け)といえるでしょう。これ、再開が昨年11月であったことからも分かるように、コロナ禍だから、ってことで開始されたわけではなく、上記のような構造的な原因に基づいているわけで、きっとコロナ禍が終息しても、定期的に行われるでしょう、EU圏の財政不統合が続く限り・・・

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【コロナ禍は経済的にはショック療法「日本よ、決断せよ」】わが国はインフラ改修を着実に進められる⑤

2020-12-15 00:50:00 | 日本
前回からの続き)

 足元の新型コロナウイルス感染拡大で、せっかくの観光支援事業「Go To トラベル」が来年11日まで停止されることになり、そして多くの飲食店が閉店時間の繰り上げなどを余儀なくされています。コロナ禍を封じ込めるためには、こうした措置はやむを得ない面はありますが、だからといってこのままでは多くの人々が失業や生活苦に陥ってしまいます・・・

 ・・・って、その対策としては、上記したとおり、すなわち1人百万円くらいの、少なくとも数か月くらいは「巣ごもり」(閉店中の自宅待機など)ができるくらいの大きなスケールの現金給付策、そして本稿で綴った(雇用対策にもなる)老朽インフラ改修事業あたりが、即効性の観点などからも最適であり、そして、前述のように、わが国にはこれらが無理なくできてしまうわけです。であれば・・・

 ・・・っても、これまでは踏み切れませんでした、財政赤字が拡大するから・・・というのは建前で、本当はこちら等に書いた理由のために。けれど、目の前で老舗の旅館やら銘店やらがどんどん倒産や廃業に追い込まれる中、もはや、ためらっている場合ではないでしょう・・・

 その点でコロナ禍は、経済面からみれば、いわばショック療法なのかもしれません―――「苦しいだろう、だから日本よ、いいかげん、決断せよ

(「わが国はインフラ改修を着実に進められる」おわり)

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【NGなおカネの使途はインフラ改修等ではなく外債等投資】わが国はインフラ改修を着実に進められる④

2020-12-13 01:20:01 | 日本
前回からの続き)

 ということで、コロナ禍のいまこそ、わが国は、本稿で綴ってきた「老朽インフラ」の再生事業、そして前稿の現金給付策のような、日銀当座預金口座に数百兆円も積み上がっているマネーを潤沢かつ広範に流通させるような政策を断固として推進するべきと考えるものです。この資金調達のための国債発行が大した問題になり得ないことは前稿、そして上記でも綴ってきたとおりです。

 なお、たとえばインフラ改修では、利用者のほとんど見込めない道路の改修に〇億円も使われてしまった!とか、給付金の一部がギャンブルとか宝くじの購入等に回っている!みたいな、所期の意図とは違った方向にマネーが流れてしまうケースも出てきてしまうでしょう。でも、これらだって、そう目くじらを立てるほどのことではありません。というのも、こうしたケースはごく少数であり、大半は適切に実行される―――インフラ再生事業は費用便益計算等に基づいて遂行され、国民に給付された現金の多くは、コロナ禍の期間の失業や減収にともなう収入減少を補って受給者の衣食住の一部を支えるかたちで使われる―――だろうからです。そして、上記のイマイチ工事や賭け事等に投入されたおカネでさえ・・・請負会社や公営ギャンブル企業等の収益となり、それがこれらの従業員の給与として支払われて・・・といったように、日本中を引き続き循環し、これまた本邦景気への刺激の一助となるわけで・・・

 これに対して問題は(上記国債発行などではなく)外国に出ていくおカネのほうです。いうまでもなくこれ、上記のように国内にとどまらずに消えていってしまうためです。そのうち実体経済面、つまり石油や小麦等の輸入代金として支払われるおカネは、まあ仕方がないでしょう、これらは外国から買ってくるしかないのですから(っても、その支払い以上に日本は貿易&経常黒字を稼いでいるので、これまた大した問題ではない)。それではなく、真に懸念されるのは金融経済面、なかでも米国債をはじめとする外債への投資だと考えられます。このあたり本ブログではシツコク述べているので詳細は他記事に譲りますが、現局面ではこれ「高値掴み」になる可能性が非常に高く、前稿7回目に書いたみたいに、市場原理(円>ドル等)が回復したとたんに円高外貨安が急速に進み、投資元本の円貨の半分とかが一瞬のうちに消滅するリスクに満ち満ちているからです・・・

 こうした金融面での対外投資の失敗による円貨の喪失こそ、わが国が食らう深刻なダメージつまり「日本国B/S」の自己資本の毀損になるわけです。その損害が明らかになるとき(って、残念ですが、国営金融機関の債務超過等のかたちで明らかになるときがくるでしょう?)、国民の多くはきっと、これで虚しく失われた兆円単位もの円貨が(同じ国債でも外国債ではなく日本国債投資に回って)国民への現金支給やインフラ改修に回ればどれほどよかったか、と悔やむことになるのではないでしょうか・・・(?)

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【財政出動:日本はOKで米英両国がNGな理由】わが国はインフラ改修を着実に進められる③

2020-12-11 00:53:32 | 日本
前回からの続き)

 先述のように、コロナ禍のいま、前稿で書いた現金給付策(っても一人100万円!?くらいのデカいやつ)とか本稿で述べている老朽インフラ改修のための公共事業は、とても効果的な政策と考えます。多くの人々が手許現金の減少にあえぐ中、これらはいずれも即効性が期待できる―――人々の間にマネーを早急に流通させることができる―――政策だからです。もちろん後者には、この国のインフラ再生と雇用創出を促進させるねらいもあります。そして前述した理由から、わが国は、上記の巨大な財政出動とこれに必要な財政資金の調達を、中銀の量的緩和策(国債の買い入れ≒通貨増発≒インフレ惹起)などに頼らずとも(市場原理のもとで)低金利のまま、他方で金融機関には一定のプラスリターン(国債投資のプラス利回り)をもたらしながら進めることが可能です。そのあたりの実体経済と金融とのバランスの良さは世界一といえるでしょう・・・

 いまさらいうまでもありませんが、上記の環境は「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」すなわち日本の実質金利がもっとも高いがゆえ、であるわけです。戦後、わが国は、長年にわたって貿易・経常収支の黒字を維持してきました。これは、石油代金の支払い等で外国に出ていくマネーよりも、自動車等の販売益や対外投資の配当等として外国から入ってくるマネーのほうが常に多いことを意味するわけで、その結果、国内にはマネーが貯まり続けます。であれば日本の円が強くなる(実質利回りが高くなる)のは当然だし、よってマネー(価値)は外国に流れずに日本(円)に留まります。上記政策は、このマネーを(原材料等の購入を除けば)原則として国内に循環させる政策だから、本邦国際収支にネガティブな影響はほぼ皆無。財政赤字が増える?・・・って、その程度で日本は揺らぎようがありません。こちらの記事に書いたように、財政は赤字でも「日本国グループ」の連結バランスシートは数百兆円もの分厚い自己資本を持っていますからね。

 これがアメリカ英国みたいな経常赤字国はそうはいきません。これらの国々では、輸入品等の支払いに充てるために外国に出ていくマネーよりも、自国品で外国に売れるものがない、あるいは売れないために、外国から入ってくるマネーのほうが常に少ない状態です。なので、そのままでは国内のマネーはなくなってしまうから、これを補うべく国債を発行して外国に行ってしまったおカネを借りて・・・とやる以外にありません。ということで、かの国々は慢性的なマネー不足状態にあり、いっぽうで国債ばかりが増えるから、どうしても金利が上がってしまうわけで・・・

 となると、米英両国のようなところは、日本ならば可能な上記インフラ再生政策のような巨額の財政出動は本来はでそうにありません。が・・・それでもやる、ってのが、たとえば、以前こちらの記事に書いた英労働党のインフラ整備構想・・・ってもこれ、事業体が振り出す債券をイングランド銀行(中銀)に直接?引き受けさせてマネーを刷らせて・・・みたいな「財政ファイナンス」ようするにインフレというキョーレツな副作用がともないそうな・・・

 ・・・ってあたりと比べても、日本の上記政策のほうがずっと健全に思えますけどね・・・

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