世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
ご訪問ありがとうございます。

【日欧はこれ以上のロシア強大化を抑えるためにも日銀にテーパリングを要求すべき?】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ⑪

2022-02-27 00:23:14 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 ロシアは、ウクライナ東部のロシア系住民エリアの実効支配を強化できればよいのだから、クリミア半島のときと同様、当該エリアへの限定的な軍事作戦はあっても、ウクライナ「本国」(ウクライナ系が多数を占めるエリア)への同侵攻はないだろう―――本稿6回目に書いたわたしのそんな予想は見事に外れ、現在、ロシア軍は、上記のロシア系エリアを通り越して同国領内に深く攻め入り、一部は首都キエフ近辺に迫っているもようです・・・

 が、となると、欧米諸国はいっそう厳しい対抗措置に出るわけで、それによってロシアは、同回で書いたように「ドル・・・に加えてユーロへのアクセス等も断たれ、自国通貨ルーブルが大きく売られて深刻な経済金融危機に陥りかね」ません(って、それは避けたいだろうからロシアは自重するだろうと推測したのですが)。そのあたり、同国のウラジミール・プーチン大統領らが敢えてコトに及んだのは、判断を間違えたためなのか、はたまた、それでも欧米は(とくにEUとりわけドイツはロシアのエネルギーに依存するしかないために)決定的な制裁(報じられているようにSWIFT[国際取引の決済スキーム]からロシアを除外する等)は打てないだろう、と読んだからなのか、現時点では判然としません。いずれにせよ、これでウクライナ情勢のこの先の展開がいっそう不透明になったのはたしかでしょう・・・って、多少のタイミングの違いはあっても、本稿7回目で書いたとおりになっていくのではないか、と思うものですが・・・

 で、本稿も長くなったので、いったんクロージングに向かいます。前回書いたように、ウクライナ情勢のキーファクターであるエネルギー原油天然ガス)の国際的な価値(価格)を実体以上に高くしているのは日本・・・の日銀(の金融政策「異次元緩和」)といえます。これが同情勢を口実とした(欧米投資家とくにアメリカ人投資家の)エネルギー投機を煽り立てるために本来の価格決定要素(需給等)とはほとんど無関係に同価格が跳ね上がるのはもちろん、これによってエネルギー供給者であるロシアの収益を膨張させることで同国をますます増長させる方向に作用しているのは前述のとおりです。

 ということは・・・その逆を演出することも日銀にはできるわけです。もっと正確には、それ、すなわち金融引き締め(≒金利差投機の元本である低金利マネーの拠出を停止すること)によってエネルギーインフレを鎮圧できるのは日銀しかいない(既述した事情からFRBにもECBにもできない)ということです。

 であれば、本稿の文脈でいうと、ロシアのこれ以上の強大化を食い止めるために日本・・・の日銀は行動するべきでしょう。その望ましい具体的なアクションは上記そして本ブログでシツコク述べているのでここでは省きますが、これが実際に行われれば、エネルギー価格は一気に下がるから、日本・・・のみならず欧州(などのエネルギー消費国)は息を吹き返すいっぽう、これで大きなダメージを受けるロシア(同供給国)は交渉のテーブルにつかざるを得ないでしょう。その結果、ウクライナにおける諸問題の解決策を関係各国間で話し合おうという機運も生まれるというものです。

 そう、日本と欧州(EU)はこのあたりにおいて協同できるはずです、お互いにエネルギー消費国だしロシアの脅威を減らしたいという点で利害が一致するのですからこちらの記事に、(だ~れも要請しない日本人に代わって)EUには日銀にモノ申してほしい―――テーパリングを開始せよと要請してほしい―――と書いたのにはそうした意味も含めています。

 しかし・・・

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ロシアを増長させるのは日本・・・の日銀!?】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ⑩

2022-02-25 20:46:53 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 ロシア軍、ウクライナ領内に侵攻・・・!

 これ一見、非常に無謀・・・に思えますが、ロシアプーチン大統領らには、ウクライナのゼレンスキー政権、EUそしてアメリカは、それぞれの事情やら国益やらがバラバラ過ぎるために絶対に結束できまい、との冷静な読みがあったのでしょう。実際にそのとおりです、上述したように・・・

 まあ、ウクライナ・・・の上記政権と同国のウクライナ系住民にはお気の毒ですが、これで同国東部のロシア系住民が実効支配するエリアのロシアへの合流はほぼ決定しましたね(?)。対ロ制裁?効き目のあるものなんでどこにも出せませんよ。だって、裏ではみんなつながっている―――ロシアはエネルギーを持っているし、EUはそれをユーロで買うチャネルを失いたくないし、アメリカはこれ以上ロシアとEUがドルから離れるのを(ユーロ建ての取引を増やすのを)食い止めなくてはならない―――わけですからね。そんな欧米が本気で味方になるわけがないのに、この助けを得られると完全に勘違いして単独でロシアに突っ張り、逆に猛反撃を食らったウクライナは、クリミア半島に続いて東部も実質的にロシア系に奪われ、国家分裂のトホホへ・・・

 さて、トホホといえば、わたしたちも同じです。いや、下記のように、ウクライナ情勢における関係国(って、以下のことから、この国はもしかしたら最重要の関係国)のなかでもっともトホホといっていいでしょう。なぜか?って、本ブログで何度も書いてきたことですが、本稿の文脈に沿ってあらためて表現すれば・・・日本は政策意図的にエネルギーを持つ者をますます強くさせている、ということ。自身の「アキレス腱」(海外に依存しなければならない国家的弱点)が「エネルギー」なのにもかかわらず、そのエネルギーの価格をわざわざ自分から上がるように促して国家を危うくさせ、国民を窮乏化させ、それを「経済安保」だの「好循環」だのと胸を張る、といったことです。

 そんなふうに、ただでさえトホホなところに、このたびのウクライナ情勢の緊迫化でエネルギー価格が跳ね上がる中、誰も目の前のトホホさの真因に気が付けないというトホホさも加わって異次元のトホホ状態にあるのが、この国の偽らざる実情です。そんなトホホの極みにわたしたちを陥れたのが・・・いわずと知れた日銀の現行金融政策「異次元緩和」(長短金利操作付き量的質的金融緩和)。これが国内外のエネルギーインフレの最大の元凶となっている理由等はこちらの記事等を含めて何度も書いたとおりです。というわけで、目の前の石油やガスの価格は、ウクライナ…ではなく、それをネタに(欧米人とくにアメリカ人の)投資家のマネーが少しでも利ざやを得ようとエネルギー市場に大量に流入したために上がっています。そんな彼ら彼女らの金利差投資の元手となる超低金利マネーを融通し続けているのが日本・・・の日銀、というからくりです。

 で、今回冒頭のことに関連して述べると、この日銀政策、上記のようにインフレを喚起してモノすなわちエネルギーの価値を実体以上に高めるために、その供給国であるロシアをいっそう強大に、そしてさらに増長させる方向に作用するわけです。同国は「エネルギー(石油・天然ガス)だけの国」ですからね。こうして日銀にパワーを吹き込まれたロシアは、ウクライナ情勢においてはもちろん、北方領土問題においても超~強気に出てくるでしょう、わが国にとって最悪なことに・・・(って、日銀のせいで、って意味で)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【当てにならない欧米を頼ったウクライナ現政権の対ロ強硬姿勢が悲劇を招いた…】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ⑨

2022-02-23 13:41:35 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前回、ウクライナ情勢について、関係各国の実情等を踏まえた今後の展開についての個人的な見通しを綴りました。これによれば天然ガス価格(LNG価格)が下落して、わが国も恩恵を得られるはず・・・だったのですが・・・

 ご存じのとおり、ロシアのプーチン大統領が、ウクライナ東部のロシア系住民が実効支配しているエリアの独立を承認したことで、同情勢は新たな局面を迎えています。これに強く反発するEUアメリカ等がロシアに具体的にどう対峙していくのか、が現在の焦点かと思います。まあそのへんはさておき、これ、冷静に考えれば、当のウクライナ・・・の現ゼレンスキー政権の対ロシア政策の失敗がもたらした悲劇といえるでしょう。

 そのあたり、まず内政面の失敗として指摘できるのは、自国内のロシア系の反発を煽るようなことをやってしまったこと。先述した「先住民法」などはロシア系にとっては自分たちを露骨に敵視していると思われても仕方がないもの。であれば、彼ら彼女らが現政権に危機感を募らせてロシア「本国」に救いを求めるのも無理はありません。それらの結果がこのたびの上記「承認」という次第でしょう。そして、前述したように、ウクライナは貧しい国で、今後の発展も多くは望めません。となると、同国内のロシア系は、自分たちの生活水準を向上させるためにも、何かとアブないウクライナに留まるより、この際、エネルギーという巨大な外貨獲得源を有するロシアに合流したほうが経済面のメリットも見込める、と打算的に考えるでしょうしね・・・

 次に、ウクライナ現政府の外政面での失態は、EUやアメリカが自分と一緒になってロシアと(軍事面も含めて)戦ってくれる、と超~勘違いをしていること。前述した事情等から、両者にはウクライナの側に立ってロシアと本気で戦う気はま~ったくありません。それどころかEUはウクライナを同じEUの仲間にしようとすらしないでしょう。同国は欧州行きパイプライン内のロシア産ガスをこっそり抜き取ったり、ユーロ建て債務の不履行をしたりと、EUの不利益となることをさんざんやらかしてきましたから。アメリカ?上記のとおりこのたびの騒動で地政学プレミアがついたシェールLNGをEU(とくにドイツ)に高値で買わせたいだけです(?)。そんなミエミエな?欧米の本心すら読めず、この助けをマジで当てにして自国内のロシア系を怒らせ、結局はロシアに上記介入の口実を与えてしまった現政権はKY過ぎるとしかいいようがないでしょう。ゼレンスキー大統領らはロシアとの国交断絶を検討するなど同国との対決姿勢を強めているようですが、誰もついてこないなか、いまさら力んだところで後の祭り。もはやクリミア半島に続いて自国東部の失地回復も不可能になりましたね・・・(?)

 とまあ、プーチン大統領のキョーレツな一手でウクライナ情勢は流動的になっています。これを受け、EUやアメリカなどは対ロ経済制裁を発動するみたいですが、各国の上記本音を踏まえれば、どれも上記承認を覆すほどのインパクトにはならないことは明らかです。そのあたりアメリカなんぞは、ドイツのショルツ首相の「ノルド・ストリーム2」(独ロ間をバルト海底経由で直接結ぶ新ガスパイプライン)の承認手続きを停止するとの発表を大歓迎するでしょう・・・って、これがロシアにダメージを与えるという意味で、ではなく、ドイツのガス消費における自国産シェールLNGのシェアを高められそうだという意味で、です。

 以上のように、この期に及んでも、せいぜい口先だけで、どこも本気でウクライナのためを思って動くことはなく、かの国では上記承認(ロシア系エリアの独立)の既成事実化が進むことでしょう(?)。やがて「ほとぼり」がさめた頃、前回書いた予測(「ノルド…」の運開等)が淡々と現実になっていくのではないでしょうか・・・(?)

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ウクライナは人口比2割のロシア系にも配慮するべき】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ⑧

2022-02-21 00:00:19 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 前回、ドイツ(EU)とロシアは「ノルド・ストリーム2」(独ロ両国をバルト海底経由で直接結ぶ新ガスライン)の運開で合意・・・となるのが現実的な将来予測と書きました。これ、そもそもこのプロジェクトが始まった時点で分かっていたことだし、その前提でロシアとウクライナは天然ガス供給契約(年間供給量をそれまでの半分以下に減量)を2019年に締結しているのだから、いまさら反対されても・・・といったところでしょう。

 したがって、ウクライナの現ゼレンスキー政権は、上記運開を受け入れつつ、これまた現実的な事態収拾に動くべき。つまり・・・たとえば、このたびの騒動の発端のひとつである「先住民法」(昨年制定、ウクライナの先住3民族からロシア系民族を除外)の修正等を進めるべきでしょう。同国のロシア系割合は5人に1人(全人口比で約2割)となっていますし、ロシア語は同国において広く使われています。であれば、同法制定で喚起された彼ら彼女らの反発が国を揺るがすほどのインパクトになるのは無理もないでしょう。こう冷静に考えれば、国家分裂の危機を回避するためにも、同国政権には上記現実を見据えた対応―――撤廃を含めた同法の修正等―――が求められるように思います。

 加えてウクライナは、ロシアのエネルギーに引き続き依存するほうが合理的、という事実に素直に従うべき。それは、自国のエネルギーコストを抑えるという点に加え、ロシアから欧州に至るガスパイプラインのガス輸送料を得られるという点でもいえること。これに対して現政権は、ロシア以外の国々からの輸入エネルギーに頼ろうとしているようですが、たとえば・・・遠く大西洋のかなたで産出されたガスをドイツとかポーランドの施設を経由してパイプラインで自国に・・・って長大なプロセスのコストがオンされた米シェールLNGの価格が、既設パイプラインで気体のまま運ばれてくるロシア産ガスのそれよりも高くなるのは明白ですが、そんな割高なガスを買い増したら、ただでさえ赤字の経常収支はますます悪化し、ソブリン格付けや支払い能力も低下等して、結局、ウクライナは目標としているEU加盟から遠のいてしまう、といった、かえって残念な結果を招きかねません。そのとき、ウクライナはロシアの圧迫からEUを守ってきた(のだから仲間に入れて!)、みたいな前世紀的なアピールをいくらしたところで、EUは同国を受け入れようとはしませんよ、ただでさえユーロの信認の維持に四苦八苦しているのだから・・・

 で、そのLNGの供給国アメリカですが、ここまでは順調にその売り上げを伸ばし、日経等によれば昨年12月にはカタール・豪州を抜いて月次ベースで世界一のLNG輸出量を計上するまでになりました。が、上記予測が現実となれば、地政学的な価値が失われた高値の米LNGは一転、欧州市場で苦戦を強いられるでしょう(って、だからこそ米バイデン政権はロシアの脅威[地政学的価値]を強調しているのでしょうが)。となるとアメリカは、欧州以外のLNG消費国である日中韓にその売り込みを図ることになりそうですが、ここでカタール・豪州産と競争することで、結果として国際的なLNGの需給が緩んで、同価格も下がって日本にはメリットが、となることを期待したいものです。

 そう、ウクライナ情勢が上記のように動くこと---それによってLNG価格が安くなること---が、わが国にとってもっとも望ましい展開といえるでしょう。

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【現実的予測:新ガスパイプライン運開で独ロ合意、米LNG収益は予想下振れ】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ⑦

2022-02-19 15:18:01 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 先述したように、アメリカが欧州やウクライナに軍事介入することはなく(って、正確には「できず」)、またロシアもアメリカ(とドル)を利するだけだから、これまたウクライナに大規模な軍事介入をすることはないでしょう。したがって同国情勢がリアルな戦争に移行してしまうことはまず考えられません

 なお、後者について付け加えると、ロシアにはウクライナを併合等することのメリットはないといえます。なぜなら、以前のこちらの記事等、そして本稿の3回目で書いたように、ウクライナは慢性的な経常赤字国で、たとえロシアが同国を苦労して占領したところで得るもの―――ユーロやドルをもたらしてくれる石油やガスその他付加価値の高い産物・産業など―――はないし、今後も成長の見込みがないため(って、それはEUにとっても同じだから、EUの本心は、同国[現政権]が切望するEU加盟にはリラクタント、そして共通通貨ユーロ圏入りは絶対に拒否、でしょう・・・)。それなら、わざわざロシア「本国」がウクライナ人を養うために同赤字を引き受けて、本国の人々の生活水準を悪化させるような同国併合等を選択する・・・ワケがない、ってこと。そうした意味でもロシアがウクライナに侵攻する合理的な理由は見出せません。せいぜい同国東部のロシア人勢力が実効支配しているエリアに経済的支援をする程度でしょう。にもかかわらず「ロシアはキエフ(ウクライナの首都:上記エリアから西に遠く離れたウクライナ中央部)を数日以内に占拠し、その際5万人の犠牲者が出る可能性がある」(ワシントンポスト等)といった幽霊みたいなコワ~い?情報がアメリカだけ(?)からしきりに発せられるのは・・・上記の事情があるからなのでしょう(?)。

 ということで、ウクライナ情勢の今後の焦点は、戦争回避に向けた外交的努力・・・などではなく、先述した天然ガスをめぐる駆け引きの行方になるわけです・・・が、だからこそ影響大なのが、本稿5回目でふれた、現下のエネルギーインフレです。これ、ユーロ圏もアメリカ(ドル圏)も抑制不可能であることは先記および過去記事で述べたとおりです。そうした中、ガスの消費者の欧州(ユーロ圏とくにドイツ)としては、これまで以上に少しでも安いものを、となるから当然、価格面でアドバンテージのあるロシア産を「ノルド・ストリーム2」(独ロ間をバルト海底経由で直接結ぶガスパイプライン、完成済み)をスタートさせていっそう多く購入(ロシアはいっそう多くガスを欧州[ドイツ]に販売することに成功)するようになる、いうのが現実的な将来予測に思えます。

 そのいっぽう、アメリカ・・・のシェールLNGは、ジョー・バイデン政権のウクライナ危機の演出?―――NATO盟主のアメリカ産のガスという地政学的な優位性の訴求?―――の甲斐もむなしく、安値のロシア産にかなわないため、期待したほどは欧州に売れず、所期の収益目標が大幅な未達になる・・・のではないかと推測します。それとともに、このたびのことで対米警戒感をさらに募らせたロシアと欧州が国際貿易におけるユーロ建て(非ドル建て)の割合を高めることで(?)、米ドルのシェアがまた下がることになりそうです・・・(?)


コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ウクライナ情勢が軍事衝突に発展することが考えにくい理由】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ⑥

2022-02-17 00:02:24 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 これまで綴ったように、ウクライナ情勢とは、同国がロシアの軍事的な圧迫を受けている(?)という前提に立った、米ロ両国の欧州(のユーロ圏・・・のなかでも支払い能力が高い[債務不履行に陥るリスクの小さい]ドイツ)に対する自国産天然ガスの売り込み合戦(とドルのエネルギー決済通貨としての地位挽回)、といったあたりが本当のところでしょう。前述のとおり、もはやインフレの抑圧が不可能ななか、ガス消費国はもちろんですが、その売り手の両国も、少しでも高く、かつたくさんのガスを買わせようと必死なはず。そのあたりについて、アメリカとロシアの、それぞれ先述の事情を踏まえた戦略について考えてみます。

 で、アメリカですが、前記のようにシェールLNGを大量に輸出したいわけです・・・って欧州に、それもドル建てで。この点、捕足すると、同国のガス田はメキシコ湾に近いところ(大西洋側)にあるので、そのガスの売り先は欧州しかないでしょう。もうひとつの天然ガス(LNG)の一大消費エリアである日中韓3か国(西太平洋側)に対しては輸送コスト等の面で中東・豪州産LNGにかなわないでしょうから。なので、アメリカとしては、何としても欧州に、となりますが、それにしたって米LNGはパイプライン経由のロシア産ガスよりも割高。そこで、その高い分は・・・アメリカ(NATO)の欧州防衛代みたいなかたちにします・・・ってロシアの脅威を示しながら。その具体事例こそがウクライナであり、10万人ものロシア軍が国境に集結した、とか同国内のアメリカ人に退避勧告した、みたいな情報を伝えて。そんなウクライナを見て、欧州がエネルギーのロシアへの依存度を高めることのリスクを警戒して・・・そのヘッジとしての米LNGを(価格の高さには目をつぶって)少しでも多く購入してくれたら、アメリカとしては一定の成果を得たことになるでしょう。もちろん「ノルド・ストリーム2」(独ロ間をバルト海底経由で直接結ぶ新ガスパイプライン)が断念されれば、なおけっこう、なのでしょうが・・・

 そのあたりはアメリカ・・・のジョー・バイデン政権の対応にも窺えます。つまり、いろいろ危機っぽいことは言うけれど、たとえば米軍の派遣先が渦中のウクライナ・・・ではなくドイツとかポーランドといったロシア・ウクライナから遠~く離れた国々であること等からも分かるように、アメリカは実際にロシアとコトを構える気はま~ったくないわけです。まあそうでしょう、このへんも上記のための演出の一環でしょうからね(?)。

 これに対するロシアですが、先述のとおり欧州に対する天然ガスの販売ではアメリカよりも有利な立場にいます。したがって、ここはさらにアドバンテージを拡大するべく「ノルド・ストリーム2」の早期の運開をドイツに働きかけることが必要でしょう。そして絶対に避けたいのは、アメリカが上記のように戦略的に煽り立てている?ウクライナ軍事攻撃を本当にしてしまうこと。そうなればアメリカを利する―――米シェールLNGに欧州シェアを大きく食われてしまう―――のはもちろん、ドル・・・に加えてユーロへのアクセス等も断たれ、自国通貨ルーブルが大きく売られて深刻な経済金融危機に陥りかねません。そうしたことはロシア・・・のウラジミール・プーチン大統領らは分かり切っているはずです。したがって同国は、これまたいろいろ突っ張りながらも、ウクライナに軍事侵攻等をする気はないでしょう。

 かくして、ウクライナ情勢がリアルな危機つまり軍事衝突等にエスカレートしてしまうことはまずない、と考えられます・・・が・・・

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【エネルギーインフレ、歓迎なようでけっこうシンドイ?米ロ】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ⑤

2022-02-15 21:51:28 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 雑駁ですが、ここまで、ウクライナ情勢の背後にあるものについて、当事者である同国、ロシア欧州、そしてアメリカの順に見てきました。これだけでも、本稿冒頭に書いたとおり、「米欧 vs. ロシア」などという前世紀の地政学的な図式・・・ではけっしてなく、現在の金融経済的な図式すなわち天然ガスエネルギー)をめぐる駆け引きの観点でなければ、その実像は見えてこないことが分かりますね。

 さて、金融経済といえば、ここで絶対にハズせない要素があります。もちろん、インフレ、もっと正確にいえば実質マイナス金利、ようするにおカネの価値がモノの価値に対してどんどん下がっていく状態ですこれ、アメリカ(ドル圏)そして欧州・・・のユーロ圏という世界の2大経済圏がいままさに直面し、しかもこれを鎮圧することがほぼ不可能となっている事情と理由等は、先日、前者後者のそれぞれについて綴ったとおりです。ではこれとウクライナ情勢・・・のキーファクターである天然ガスがどう関係するのでしょうか・・・

 ・・・って当然ですが、ガス(や石油)の消費者である欧州やウクライナにとって、これらエネルギー価格の上昇は各国の経済そして市民生活を大きく圧迫するネガティブ要因そのものです。他方、ガス輸出国であるロシアとアメリカはインフレで稼ぎが増えてラッキー・・・なようにみえますが、自分たちもインフレに追いつかれないようにエネルギーの販売額と量を増やしていかないと、というプレッシャーに常時さらされることになります・・・

 直近の消費者物価指数で推測すると、アメリカドイツも実質利回りはマイナス5%前後という史上空前の低さ。ということは、米ロにとっては、今年の輸出額と来年のそれも同じ額(ドル建て・ユーロ建て)だと、その実質の価値が5%ほども減ってしまうので、これをしのいでいくには来年は5%ほど高い値段で売るか、同じ値段で5%ほど多い量を売って、ようやく今年並みの実質収益、ということになります。これを永遠に?続けるって、けっこうシンドイこと(というか、まず無理でしょう)。高くすれば相手(欧州需要国)は米ロ以外の、もっと安く売ってくれる他国に調達先を変えたりするでしょうし、かといって同じ金額あるいはちょっと安く売ったところで、どこかの爆買い国とは違って相対的に成熟している欧州諸国がインフレによる減価を埋め合わせるほどエネルギーをよけいに買ってくれるとは思えませんからね・・・

 となってくると、米ロとしては、何か別の「こっちのガスは甘~いぞ」的な理屈で、パイ全体(欧州のエネルギー需要)がそれほど増えそうにない中、それぞれが相手の―――アメリカはロシアの、そしてロシアはアメリカの―――欧州における天然ガスのシェアを奪いたくなるでしょう(?)。で、それが・・・「ウクライナ情勢」なのではないか、と・・・

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【米の本心:ノルド・ストリーム2断念で自国LNG輸出増!】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ④

2022-02-13 00:04:49 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 というわけで、ウクライナとしては、自国のエネルギー安定確保のためにも、そして貴重な外貨獲得のためにも、引き続きロシア天然ガスに依存したいところ、そのガスルートから自身がいっそう外されるかたちとなる「ノルド・ストリーム2」(ロシアとドイツをバルト海底経由で直接つなぐ新パイプライン)の稼働開始は何としても阻止したいでしょう。そのあたりの懸念は、前記した同国とロシアの新ガス契約(2019年末締結)において供給量がそれまでの年間900億立方メートルから同400に減らされたことからも現実になっています。であればウクライナは戦略上、自分をスルーするラインの拡充を食い止めることで自国経由の既設ラインの流量回復・増加を図る必要に迫られます。けれど同国にだってEUドイツ)とロシアが直接つながろうとする理由やその合理性は十分に分かっているはずです、自分が元凶なのですから。よってこのままではウクライナは両者に見放されてしまいかねない、ではどうするか?・・・って、やはりコレでしょう、つまり・・・アメリカにすがる、です。

 そのアメリカ。このたびのウクライナ情勢にどう関与するか、ですが・・・北大西洋条約機構(NATO)の盟主として軍事的支援を含めてウクライナを圧迫するロシアを強くけん制する・・・といったあたりが本邦メディア的な見方でしょう。しかし、アメリカの本心はおそらく違ったところにあります。そのへんもまた、天然ガス(エネルギー)で推測するべきでしょう・・・

 以前から論じているように、エネルギーを通じてロシアとEUとが連携を密にしていくことはアメリカにとっては歓迎するべき状況とはいえません。それは、NATOの仮想敵国ロシアのエネルギーにEU同盟国が深く依存していくことを憂慮するから・・・ではけっしてなく、それによって両者がアメリカ・・・の通貨ドルにさらに依存しなくなっていくことを憂慮するから、でしょう。ロシアは、対米戦略の観点等から、輸出貿易における米ドル建て決済の割合を徐々に減らしてきました。ブルームバーグ等によれば、同国の対EU輸出におけるその割合は2013年には9割近くだったのが2020年第4四半期には5割を下回りました。逆にユーロ建ての割合は4割近くにまで高まっています。そのあたり、ロシアの狙いは明らかなのはもちろん、EUも自身の通貨ユーロ建て決済が増えるのは好都合、ということで、アメリカとしては、両者がエネルギーを介して接近するのを阻止し、これ以上のドル離れを食い止めたいところです。

 もう一つ、アメリカには、シェール革命のおかげで生産量が急増した天然ガスをもっと輸出したいという意図があります。実際、同国エネルギー省エネルギー情報局は、2050年までの長期にわたって年間1436億立方メートルのLNG輸出量を維持するとの見通しを示しています。となれば、そのターゲットがガスの大口需要者である欧州・・・のEUとりわけドイツになるのは自然でしょう。ただし、液化・船舶輸送・気化のプロセスのあるLNGはパイプライン経由のガスよりも価格が高くなりがちです。そのうえ、ノルド・ストリーム2の輸送能力は、現時点のドイツのロシアからの購入量に匹敵する年550億立方メートルものスケール。となると、経済性で劣るアメリカのシェールLNGをドイツに、それもドル建てで、さらに買わせるのは難しそうです・・・って、マトモなやり方?では・・・

 そこで利用価値が出てくるのがウクライナ、ということになります。同国は先述のとおりノルド・ストリーム2の運開には絶対反対だからです。その点に限れば同じ、ということでアメリカは、ロシアそしてドイツに対して、上記のように自身の利益に反する同2を断念させるべく、ウクライナと手を結ぶことになります。もちろんウクライナ同様、上記の本心は言えないので・・・一緒になって、ロシアは同2で欧州のエネルギー供給を支配する気だ―――だから同2は断念されるべきだ!・・・などとロシアの脅威を前面に出して・・・

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【EU・ロシアがウクライナ迂回のガスラインを作るのは当然か】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ③

2022-02-11 00:35:24 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 で、本稿の主役であるウクライナですが・・・先述のように、ロシアEU(とくにドイツ)が天然ガスで文字どおり直接の結びつきを強めていくと、逆に同国は多額の収益を失いかねません。それは、ウクライナ等を経由せずにロシアとドイツ(EU)とをダイレクトにつなぐガスパイプライン「ノルド・ストリーム2」(完成済み)が稼働を開始すると、同国内を通ってロシア・EU間を結んでいる既設パイプラインのガス流量が減り、その分、ガス輸送収入も減ってしまいかねない、ということ。これ、ウクライナにとっては非常に痛いところでしょう・・・

 そのあたり同国は、実際にはロシアとしっかり連携しています。現に2019年12月、ロシアのガスプロム(天然ガスで世界一の企業)とウクライナの国営企業ナフトガスは、前者から後者へのガス供給で合意しました。契約期間は5年間ですが、その後10年間の延長も可能とのこと。これにより同国経由の欧州へのガス輸送ルートが維持されるとともに、ウクライナはその手数料として70億ドルあまりを受け取ることになりました。これ、同国にとっては、そのGDP規模(1.5千億ドル台、2020年)などに照らしても大きな外貨収入であることは明らかです。というように、何だかんだいっても、ウクライナもまた(EUと同様に)天然ガスから得られる利益(欧州行きガスの同国内の輸送料)を増やすべくロシアとのつながりを強くしていきたいところでしょう。そうした中、同国を迂回するノルド・ストリーム2の開通がいかにウクライナにとって脅威か、簡単に想像がつくというものです・・・(以上数字出典:NNA Europe HP, JETRO HP)

 他方、ロシア、そしてドイツ等はどうして既設のノルド・ストリームに追加する形で同2を建設したのか・・・ですが、その最大の理由はウクライナにあるといえます。というのも、ウクライナはこれまで、ロシアと欧州との天然ガスの取引にはマイナスとなるようなことをさんざんやらかしてきたため、です。同国は1990年台には天然ガスの無断抜き取りやロシアに対する料金不払いを繰り返してきたし、以降も度重なる政変に伴う混乱やら経済危機に直面し、そのたびにガスの安定供給を危険にさらしました。それは、ロシアはもちろん、ガスの需要者である欧州をも大いに不安な気持ちにさせています。であれば、両者が手を結ぶにあたって、トラブルメーカーな?ウクライナをスルーしようと考えるのは当然でしょう。さらにいうと、上述のようにロシアは、外貨を安定的に稼ぎたいことから、慢性経常赤字国のウクライナよりも支払い能力が高いEU(ドイツ)との商売を優先させたいはずです。そしてドイツなども、高額の輸送料がオンされているウクライナ経由のガスよりも、ロシアからダイレクトに送られる安価なガスのほうを買いたいところです。それらの思いの結果が現ノルド・ストリームであり、ウクライナ起因の上記リスクのいっそうのヘッジとしての同2になった、と考えています。

 これに対するウクライナですが・・・ロシアとEUの上記本音は分かっているわけです。けれど哀しいことに同国はロシアにすがるしか―――かの国由来の天然ガスに依存するしか―――ありません。ではどうするか?・・・って、やはりノルド・ストリーム2を断念させたい、ってことになるでしょう。もちろん、それによって、より多くの輸送料をゲットするべく自国通過パイプラインのガス流量を増やすため、なんて本当のことはいえないので、たとえば・・・同2でロシアはEUのエネルギー供給を支配しようとしている!みたいな主張で危機感を煽ってみる、とか。もっとも、ノルド・ストリーム、ウクライナ経由のどちらのパイプラインも、ロシアの天然ガスを運んでいる点で違いはないのだから、そうした訴えは説得力を欠きますが・・・

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【天然ガスの観点からはEUとロシアは連携強化が得策だが…】ウクライナ情勢を左右するのもインフレだ②

2022-02-09 00:01:10 | ヨーロッパ
前回からの続き)

 緊迫の度合いがますます高まる?ウクライナ情勢。前述のように、その行方を左右する決定的なファクターは・・・天然ガスとなります。そのあたり、ロシア産ガスの最大の買い手である欧州・・・の欧州連合(EU)諸国はどうでしょうか・・・

 で、そのEU、現在、4割以上もの天然ガスをロシアからの輸入に依存しています。なかでも、その盟主であるドイツの同依存度は55%と一段と高くなっています(出典:AFP報道等)。そのあたり、こちらの記事に書いた2014年7月の頃より数値が上がっているので、何だかんだいっても、欧州とくにEU(のドイツ)はエネルギー(天然ガス&石油)を通じてロシアとの結びつきをさらに強くしているのは明らかです。そこは、EUにエネルギーを売って外貨を得たいロシアと、比較的近くて価格も輸送コストも安いロシア産エネルギーを得たいEUとの利害が一致しているのが大きいのでしょう。

 で、そのへんの両者の連携を文字どおり太くしそうなのが・・・「ノルド・ストリーム2」となります。これ、ロシアとドイツとをバルト海底経由でダイレクトに(他国を経由せずに)結ぶ新パイプラインで、既設の「ノルド・ストリーム」とほぼ同じルートで作られ、昨年9月には完成しているものです(が、下述する事情から現時点で未稼働)。BBCなどによると、これが稼働を開始すれば、ロシアからドイツへのガスの輸送量は倍増するとのことですから、EUからすると、このプロジェクトでいっそう多くのガスを安価で得られるようになる・・・反面、ロシア一国に対するエネルギー依存度がさらに高まることになるけれど大丈夫か?といった懸念が浮上して(って、以下から、おそらくそれほど心配することはない?)・・・といった感じでしょう。

 こうしたわけで、ロシアとEU(とくにドイツ)は、現実的には、ビジネスライクでやっていくのがお互いのため、といえそうです。もっとも、EUサイドには、冷戦の記憶で、かの国への警戒感が多少はあるでしょう。が、上述のとおり、ロシアは外貨(ユーロ)を欲しています。そしてアメリカをけん制したいはずです。大きくはこの2点(とくに後者の点)から、同国がEUに対して軍事的アクションなどの極端な行動をとることはまずない、とみるべきでしょう・・・

 以上により、互恵の関係になれそうなEUとロシアは今後、ますます緊密になっていく・・・と予想される?なか、逆に危機感を募らせるのは、やはりウクライナということになるでしょう・・・って、天然ガスの観点で。そうなっていったら―――ロシアがドイツに上記2つのパイプラインで直接・・・って、ようするにウクライナを経由しないで天然ガスを輸送するようになったら―――ウクライナは、自国内を通過しているロシア・欧州間の既設パイプラインに基づく利益―――ガス経由地として得ていた利益―――の多くを失いかねない、ということです・・・

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする