(前回からの続き)
ロシアは、ウクライナ東部のロシア系住民エリアの実効支配を強化できればよいのだから、クリミア半島のときと同様、当該エリアへの限定的な軍事作戦はあっても、ウクライナ「本国」(ウクライナ系が多数を占めるエリア)への同侵攻はないだろう―――本稿6回目に書いたわたしのそんな予想は見事に外れ、現在、ロシア軍は、上記のロシア系エリアを通り越して同国領内に深く攻め入り、一部は首都キエフ近辺に迫っているもようです・・・
が、となると、欧米諸国はいっそう厳しい対抗措置に出るわけで、それによってロシアは、同回で書いたように「ドル・・・に加えてユーロへのアクセス等も断たれ、自国通貨ルーブルが大きく売られて深刻な経済金融危機に陥りかね」ません(って、それは避けたいだろうからロシアは自重するだろうと推測したのですが)。そのあたり、同国のウラジミール・プーチン大統領らが敢えてコトに及んだのは、判断を間違えたためなのか、はたまた、それでも欧米は(とくにEUとりわけドイツはロシアのエネルギーに依存するしかないために)決定的な制裁(報じられているようにSWIFT[国際取引の決済スキーム]からロシアを除外する等)は打てないだろう、と読んだからなのか、現時点では判然としません。いずれにせよ、これでウクライナ情勢のこの先の展開がいっそう不透明になったのはたしかでしょう・・・って、多少のタイミングの違いはあっても、本稿7回目で書いたとおりになっていくのではないか、と思うものですが・・・
で、本稿も長くなったので、いったんクロージングに向かいます。前回書いたように、ウクライナ情勢のキーファクターであるエネルギー(原油・天然ガス)の国際的な価値(価格)を実体以上に高くしているのは日本・・・の日銀(の金融政策「異次元緩和」)といえます。これが同情勢を口実とした(欧米投資家とくにアメリカ人投資家の)エネルギー投機を煽り立てるために本来の価格決定要素(需給等)とはほとんど無関係に同価格が跳ね上がるのはもちろん、これによってエネルギー供給者であるロシアの収益を膨張させることで同国をますます増長させる方向に作用しているのは前述のとおりです。
ということは・・・その逆を演出することも日銀にはできるわけです。もっと正確には、それ、すなわち金融引き締め(≒金利差投機の元本である低金利マネーの拠出を停止すること)によってエネルギーインフレを鎮圧できるのは日銀しかいない(既述した事情からFRBにもECBにもできない)ということです。
であれば、本稿の文脈でいうと、ロシアのこれ以上の強大化を食い止めるために日本・・・の日銀は行動するべきでしょう。その望ましい具体的なアクションは上記そして本ブログでシツコク述べているのでここでは省きますが、これが実際に行われれば、エネルギー価格は一気に下がるから、日本・・・のみならず欧州(などのエネルギー消費国)は息を吹き返すいっぽう、これで大きなダメージを受けるロシア(同供給国)は交渉のテーブルにつかざるを得ないでしょう。その結果、ウクライナにおける諸問題の解決策を関係各国間で話し合おうという機運も生まれるというものです。
そう、日本と欧州(EU)はこのあたりにおいて協同できるはずです、お互いにエネルギー消費国だしロシアの脅威を減らしたいという点で利害が一致するのですから。こちらの記事に、(だ~れも要請しない日本人に代わって)EUには日銀にモノ申してほしい―――テーパリングを開始せよと要請してほしい―――と書いたのにはそうした意味も含めています。
しかし・・・