世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【クアッド連携、人権制裁、航行の自由作戦も効果ないのに米がする理由】アメリカの対中強硬路線は額面通りには受け取れない③

2021-03-29 00:02:26 | 世界共通
前回からの続き)

 米中関係は、とくにアメリカジョー・バイデン政権の中国に対する姿勢が厳しいことから、今後はさらに悪化していくように思えます。が、前述のように、実はこの両国、貿易面はもちろん、とくに「ドル」(米国債)に象徴される通貨金融面において切っても切れない間柄にあるわけです。したがって、かりに、どちらか一国が相手に対して何らかの制裁的な措置を講じるとしても、肝心のココ(他外貨や金価格に対するドルの価値や米金利等)がダメージを受けてしまえば(ドル・米国債価格が下落し、米金利が急騰してしまえば)自分も大きく傷つきかねないので、結果として大したことはできない、となるはずです。

 で、そのあたりを感じさせる直近の例が、22日、中国が新疆ウイグル自治区内の少数民族ウイグル族の人権を侵害しているとしてアメリカとEU、英国、そしてカナダが共同で発動した制裁です。これだけを見ると、米欧諸国は「人権」で中国を強くけん制してきたな、とも思えます・・・が、その中身は、同自治区公安幹部2名の在米資産の凍結等という、中国に猛省を促す・・・ことなんて絶対にできそうもないくらい軽~い(?)もの。思うに、アメリカ(と欧州等同盟国)は、上記のとおり「ドル」に影響が及ぶことのないようなアクションを慎重に選んだため、結果として、こうした弱気な(?)制裁になった、という次第なのでしょう(?)。

 このほか、本稿一回目でご紹介の、中国包囲網を連想させる(?)日米豪印(クアッド:Quad)4か国の連携強化や、以前から米軍等が南シナ海で行っている「航行の自由作戦」なども、上記制裁と同様に実効性はない、つまり中国を本気で封じ込めようとする狙いもパワーもあるものではないといえるでしょう。ここで万一、中国に手を出したりしたら、たとえば(意図的・偶発的の違いによらず)米軍等が中国軍に砲撃等をしてしまったりしたら、その瞬間に「戦場」と化してしまうためです・・・って南シナ海とか台湾海峡が、ではなくNY金融市場が・・・

 ちなみに、上記の様々なアクションを含めた米中対立に関する内外のメディア報道を概観する限り、上記の点―――「ドル」でしっかりと結びついている両国が決定的な対立関係に陥ることは考えにくい等―――に言及したものはまずありません(とくに、本邦大手メディア報道においては皆無といっていいでしょう)。これを伝えてしまったら、米中両国は深い相互依存の関係にあることが誰にも分ってしまい、米中が対立しているという構図そのものが雲散霧消してしまいますからね・・・

 といったことから、米中対立・・・というか、いまのアメリカが中国を危険視するようになっていることの同国の本当の目的は、中国のこれ以上の増長を抑えること・・・とかではなく、そんな中国を抑えるために自分すなわちアメリカの力が引き続き必要だ、ということを日本やEUといった同盟国に分からせることで、その前提として米中の対立の図式をこうして(あたかも、あるかのように)見せている、と考えています。そしてこの点でのキーワードもまた、「ドル」・・・

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【ドルで不可分の関係にある米中両国】アメリカの対中強硬路線は額面通りには受け取れない②

2021-03-27 15:19:12 | 世界共通
前回からの続き)

 現在、アメリカジョー・バイデン現政権の中国に対する外交姿勢が強硬になっているわけですが、これ額面通り、つまりアメリカが中国を本当に追い詰めようとしているわけではないと解釈しておいたほうがよろしいかと思っています。前回書いたとおり、アメリカと中国はいまや互いに不可欠のパートナーになっていることから、米中両国にとって相手がコケることは自分にも大ダメージが及ぶことになるからです。この点でのキーワードは、やはり「ドル」でしょう。

 アメリカは、世界最大の貿易赤字国であることからも分かるように、外国産の輸入品にどっぷり依存するしかありませんが、これを得て国民生活を保っていくためには、対米輸出国がドルを受け取ってくれることが絶対の条件になります。いっぽうの中国は世界最大の貿易黒字国で、その第一の輸出国はアメリカであり、対価としてドルをがっぽり稼いで喜んでいる(?)わけです。これだけでも米中が極端に厳しい対立関係に陥ることはないだろうことは容易に想像ができるというものです。

 上記のモノの面以上に、米中のドルを介した通貨金融面での結びつきは強固・・・というより切れたら両国ともにオシマイ、なくらいでしょう。これまた何度も綴っていますが、中国は上記で得たドルで買った米国債を後生大事に(?)積み上げています(2020年12月時点で香港との合計は約1.3兆ドルと、同1.25兆ドルの日本を上回る)。しかも中国は、このドル・米国債を中国人民銀行(中銀)の資産に計上し、自身の通貨である人民元の価値を裏付けさせている・・・くらいにこれらを貴重なものとして扱ってくれているわけです。他方、アメリカはもとより巨額の財政赤字を抱えているところ、こうした中国の巨額ファイナンスは大歓迎だし、今後も引き続きお願いしたいところでしょう。

 このあたりに関連すると思いますが(?)、中国外務省の華報道局長は26日の記者会見で、アメリカを追い越すことが中国の目的ではない、などと語っています。これ、本心からの発言と思っています。なぜなら中国がアメリカを追い越す―――この場合は、中国が世界一の経済大国となり、人民元が自然と(?)ドルに代わる基軸通貨になる―――ことは、こちらの記事に書いた同国の通貨金融システム(人民元がドルに紐づく「疑似ドル」に過ぎず、だからといってその価値を裏付けるドル以外の何かを見出すことができていないこと)をふまえれば、まずありえないからで、そのへんは上記発言のとおりで共産党とか中銀のトップ層もよく分かっていることと考えられます。

 このように、米中両国は、とりわけドル(米国債)によって強く結びついているし、したがってこの関係を断ち切ることはほぼ不可能といえるでしょう。よって米バイデン政権が主導する(?)「対中包囲網」は、実態としては「ざる」に近い、つまり中国を本気でけん制するほどの実効性のあるものにはなり得ないでしょう。

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【米バイデン政権、「対中包囲網」を構築中だが…】アメリカの対中強硬路線は額面通りには受け取れない①

2021-03-25 22:32:48 | 世界共通
 真の意図がどのあたりにあるのかははっきりしませんが、少なくとも、額面通りではないでしょう・・・

 ご存じのように、アメリカジョー・バイデン政権による中国に対するスタンスがどんどん強硬なものになってきている印象です。18日にアラスカで行われた米中外交トップ会談で、ブリンケン米国務長官は、アメリカはルールに基づく国際秩序を重視した外交を進めるとしつつ、中国の新疆ウイグル自治区、香港、台湾等に対する姿勢はこれを脅かすものだ、などと同国を厳しく批判しました。これに対し、中国の外交トップである楊潔篪共産党政治局員と王毅外相は、中国には中国の民主主義があり、中国は自国の内政にアメリカが介入することには断固として反対し、毅然とした行動を取る、などと激しく反論しました。このような非難の応酬は、大国間のトップ級会談としては異例といえるものだったとのことです。

 これに関連し、米バイデン政権は、トランプ前政権時代においてギクシャクした(?)日本や韓国そしてEUといった同盟国との関係を再構築しているように見えます。このあたり、わが国が関係するところでは、俗に「クワッド」(Quad)と呼ばれる日米豪印4か国の戦略対話(Quadrilateral Security Dialogue)を通じた連携強化が図られることになってきました。さらに23日、ブリンケン米国務長官はベルギーのNATO(北大西洋条約機構)本部で講演し、「私がここにいる理由はNATOに対するアメリカの関与を再確認するためだ」と述べています。そして、こうして進める同盟再構築の最大の対抗相手が・・・上記ルールの脅威となっている中国ということなのでしょう。

 ということで内外のメディアは、こうしたアメリカおよび同盟国の動きを「対中包囲網」などと表現するようになっています。そして、米中関係を緊迫化させているのは、明らかにアメリカ(のバイデン政権)のほうでしょう、上記のアクションを見る限り。ですが、このアメリカの対中強硬路線と包囲網、どこまで本気なのか、は、注意深く見極めたほうがよろしいかと思います。というのも、本ブログでは何度も書いているように、好き嫌いはともかく、米中両国はもはや相手なくして自分が成り立たないくらいの深い相互依存関係にあるといえるからです。それは日米、そして日中の比ではないくらいのはず。したがって、両者対立の結果としては、どちらかがコケてしまう・・・ことはなく、両者共倒れの可能性がもっとも高く、それは同時にアメリカでも中国でもない〇〇国が世界をリードする時代が訪れることをも意味します(?)。であればアメリカは、自国の覇権を維持するためにも、本心から中国を・・・ということではけっしてない、と読むべきでしょう。

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【金のようにインフレに強く、匿名性あり、アナログ/デジタルOK…な通貨は?】既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰⑧

2021-03-23 00:02:59 | 世界共通
前回からの続き)

 トホホ通貨(失礼!)の英ポンドの視点から、仮想通貨(暗号通貨)の代表といえる「ビットコイン」の価格高騰、そしてこれをもたらした既存通貨側(含む「中央銀行デジタル通貨」)の問題点(とくにインフレを抑えられないところ)などに思うところを綴ってきたら、いつものように(?)「」(ゴールド)・・・に、希少性、匿名性、いつもでもどこでも誰とでもモノやサービスと交換可能、などなどの「通貨」が満たすべき要件があることに気づかされます。が、前述したこと等から、実際に金を通貨として市中に流通させることは、まず無理でしょう。となると、価値の保存(≒インフレヘッジ)という点では優れていても、金もまたビットコインなどと同様、それ自体が通貨となるには、いろいろ難しい感じです。

 では、ビットコインや金のようにインフレに強い(実質利回りが大きい)資産という面を持ちながら、重要な特性である匿名性を備え、デジタル(電子マネー等)でもアナログ(現金)でもOKで、ビットコインなどと違って、巨額の決済等はもちろん、100均の買い物のような安価な支払い等にも対応が可能な・・・通貨って・・・?

 わたしたち日本人は、その点、世界一幸せだと思います。本来なら・・・ね。

(「既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰」おわり)

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【インフレに強く、匿名性あり、どこでも取引ができるのは、金、だが】既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰⑦

2021-03-21 00:02:43 | 世界共通
前回からの続き)

 これまで綴ってきたように、主要中銀の量的緩和策のやりすぎで(?)、ポンド、ドルなどの主要通貨が市中に大量に吐き出され続け、その価値の劣化(≒インフレ)が進むなか、そのヘッジとなり得、かつ「匿名性」(誰が所有し、何を売買しているのか等が分からない)を備えた仮想通貨(暗号通貨)「ビットコイン」の価値そして用途の拡大等に向けた期待は、そのインターネット等との親和性も考慮すると、ますます高まっていくだろうと思うものです。そしてそれは、先述した国家権力(金融当局・中銀等)の「デジタル通貨」を介したデジタル専制体制(市民監視・操作・搾取等)に対抗する民主的な(?)ツールになるポテンシャルをも感じさせるわけで・・・

 ですが、ビットコインに限れば、前述した理由(1単位当たりの価格が高すぎ、ボラティリティが大きすぎ)から、現実的には「コイン」すなわちわたしたちが日常的に使う貨幣(紙幣・硬貨)にはなり難い感じです。そのあたりを改良した仮想通貨も今後、登場するのかもしれませんが、他方でこうして仮想通貨が乱立すると、商取引の現場や為替市場(?)等のあちこちでさまざまな混乱が起こり、結局は共倒れ、なんてことも考えられます。よって、ビットコインをはじめとする仮想通貨が、いくら上記のような優れた面があるとしても、既存の通貨を淘汰するほど浸透するとは思えません・・・が、だからといって既存の通貨の地位も安泰とはいえないでしょう、上記の問題(刷り過ぎによる価値劣化)はこれを「デジタル通貨」にしたからといって解消しませんから。

 となれば、今後、頼りになる―――インフレに強く、価値の保存ができ、匿名性があって、どこでも取引等ができる等の要件を満たす―――通貨あるいは通貨になり得るもの(?)は・・・月並みな結論ですが、やはりゴールドなのだろうと考えます。金は、ある意味で究極のアナログ、つまり、デジタル化が不可能な実物資産であるわけですが、だからこそ強い、すなわち不換紙幣の紙切れ化([ハイパー]インフレ)、そしてデジタル資産の危うさ(権力の支配ツールになりかねない、電力遮断とかサイバーアタック等で消滅、ネット内でしか価値を保てない、等)に対するヘッジとなるはずです。よって金価格は、いまはビットコインに買いが集まっている関係で(?)下がってはいるものの、上記状況等から、いずれ、また上昇軌道に乗っていくだろうと予想しています。

 けれど、金もまたビットコインと同様、「コイン」(通貨)として使うことは実際には難しいでしょう。わずかな量でも金額的に高すぎる等のためです。その価格は現在、たった1グラムで7千円近くもします。よって金を・・・たとえばコンビニの買い物みたいな少額の支払いでも使えるようにするためには、これをさらに小さく刻み込まなくてはなりませんが、金のインゴット1グラムの大きさ(14.0×9.0×0.5mm:田中貴金属が扱っているもの)を考えても、これ以上に小さく、かつ見た目も通貨と分かるように加工することは、金には延性があるとはいえ、コストや手間がかかり、ほとんど不可能だと考えられます・・・

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【中国「デジタル人民元」対抗を大義名分に日米欧でも通貨デジタル化検討か?】既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰⑥

2021-03-19 22:47:09 | 世界共通
前回からの続き)

 前回、中国が自国通貨の人民元の「デジタル通貨」化をリードできているのは、べつに同国のデジタル技術が突出しているためとかではなく、中国人民銀行等つまりは共産党権力層に、これを通じて国民生活を把握しコントロールしようという意図があるため、みたいなことを書きました。しかも、これに対する危機感とか抵抗感が、長年の独裁体制に慣れた(?)中国国民には希薄なことも、デジタル人民元がどの国の通貨よりもスムーズに浸透できる素地として指摘できそうです。個人的には、人民銀や政府当局にこんなことを認めていったらアブないよ、と中国の人々に言ってあげたいくらいですが、よけいなお世話でしょう・・・

 このあたりで気になるのは、中国ではなく、欧米、そして日本でも通貨のデジタル化に向けた動きが大きくなること。その際は、この、中国の通貨デジタル化に対抗するため、なんてことが大義名分になるような気がします。ですが、上記そして先述のような危険性―――国民一人ひとりのサイフの中身とか何を売買しているのか等が(ヘタをすると外国の?)政府・中銀に筒抜けになること等の危険性―――があるために、利便性の向上や脱税・マネロン・偽札作り等の未然防止などのプラス面を差し引いても、デジタル通貨を広く普及させることには個人的には賛成できません。それに、既存通貨(≒不換紙幣)の現在の最大の問題点である、無限に発行できてしまうこと(インフレ抑止ができないこと)は、これをアナログ(紙幣)からデジタルに変えても、解消されないわけだし、万一の大停電やサイバー攻撃等で、このデジタル通貨、一瞬で消滅等するかもしれないし・・・

 それらの点からみると、あらためて、ビットコイン(に代表される仮想通貨[暗号通貨])の優れた特性である「希少性」(発行上限枚数が決まっている)と「匿名性」(所有者とか取引内容等が他社からは分からない)の価値の高さが際立つというものです。ゆえに現在、その価格が高騰しているという面があるのでしょう。それは本稿1回目でご紹介の、ビットコイン人気に対する英金融当局の「いらだち」を感じさせるコメントにも表れています(?)。

 今後、「デジタル」なインフラがどんどん整備されていく中、このままだと---既存通貨がインフレ化(大量増刷に伴う価値劣化)を食い止められず、また中銀等に把握される形でデジタル化を進められると、これへの「アンチテーゼ」(「希少性」「匿名性」)としてのビットコイン(等の仮想通貨)への信頼(?)とニーズはさらに高まり、本当にこれらが既存通貨に代わって社会全体に流通するようになる・・・のでしょうか・・・

 ・・・っても、現実には難しいと思われます。たしかに、たとえばビットコインには上記のように通貨としてふさわしい特性を備えています・・・が、これ現在、1「枚」6万ドル近くもするし、上記のように、他通貨等と比べて価格変動率が大きすぎるので、これ、まだまだふつうのモノやサービスの売買には使えない感じです。となれば、名前こそ仮想「通貨」だけれど、実際には通貨としては機能せず、結局は投資用資産の地位にとどまるだけかも・・・(?)

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【中国がデジタル通貨で世界をリードする理由】既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰⑤

2021-03-17 18:14:33 | 世界共通
前回からの続き)

 前回述べたように、現在、主要国・主要中銀は自身の通貨のデジタル版である「中央銀行デジタル通貨」(以下「デジタル通貨」)の検討等を進めていますが、これ、同じデジタルでもビットコインに代表される仮想通貨(暗号通貨)とは違って、その価値を国家(中銀)が保証することになります。まあそれは当然でしょう。これアナログな紙幣ではないものの、中銀が発行する法定通貨であることには変わりはないわけですから。他方でこのデジタル通貨ですが、(おそらくは)中銀なり国家金融当局なりが、システムを介して、その所在等を常時把握することになるでしょう。そのあたり、同じデジタルでありながらも既存のアナログ通貨(紙幣、硬貨)と同様の特性である「匿名性」を備えているビットコイン等の仮想通貨とは決定的に異なっている点だと思います。

 と同時に、これこそ、デジタル通貨でいちばん憂慮するべきところだと感じています。すなわち、国家権力(あるいはそれに近い当局とか中銀)が、デジタル通貨を通じて、その所有者(一般国民)の資産状況や消費や投資の動向等を追尾できるようになるばかりか、場合によってはクリック一つでそれらを没収とか消滅させることすらできてしまいかねない、といったこと。よってこの(匿名性のない)デジタル通貨が普及すればするほど、わたしたちの日常生活はいつも国家に監視され、操作等をされるような・・・デジタル専制社会に陥ってしまうかも・・・

 そのへんの懸念を現実的に示唆する例が、中国デジタル人民元です。同国は昨年10月、深圳市においてこの実証実験をスタートさせました。報道によると、同時点での仕組みは、市中銀行が中国人民銀行(中銀)に預けている準備預金をデジタル人民元に置き換え、市中銀行が希望するユーザーにデジタル人民元を提供するというもので、利用者は専用口座を開設することで自身の口座からデジタル人民元を引き出せるとのことです。おそらく中国としては、これを契機に、デジタル通貨の分野で、同様にデジタル化が予想される(?)ドルや円などの他の主要通貨よりも先行したい、という思いがあるのでしょう(?)。

 ですが・・・やはりデジタル通貨には上述の問題があり、これが広がることが---脱税マネーロンダリングを防ぐというポジティブな面があるとしても---社会の健全な発展に必ずしも寄与するとは限らないと思われます。その点、中国がデジタル通貨で他国をリードしつつあるのは、かの国のデジタル技術がそれだけ進んでいる・・・というよりはむしろ、中国がご存じのような共産党一党独裁国家であり、その意味で、通貨のデジタル化を急ぎたい気持ちが他国よりも強いため、と考えるべきかと。上記のように、デジタル通貨は権力にとっては支配継続のための有効なツールになり得る、つまりアナログ通貨よりもデジタル通貨のほうが国民をはるかに監視・制御しやすく、その経路を簡単に追うことで反権力分子(?)の摘発等をいち早く進めることも可能でしょうからね。

 他方の中国国民も、長年の独裁政治にすっかり慣れ(?)、デジタル通貨の上記の危険性に対する警戒心が薄く、逆に、紙幣や硬貨を持たずに済んで便利だから、みたいな理由でこれに飛びつきやすい傾向があるのかもしれません、いま何をいくらでどこから買ったのかをすべて政府にチェックされているのを知ってか知らずか・・・(?)

 本邦メディアのなかには、中国のデジタル人民元について、人民元の国際化ひいては基軸通貨化に向けた狙いがある、みたいな見方をするところもあるようですが、本当の目的は上記のとおりだと考えています。なお、以前から書いているように、アナログ・デジタルの違いによらず、人民元ドル米国債あるいはユーロ等の外貨)に裏付けられる限り―――人民銀の資産の大半が米ドル建て資産である限り―――これがドルに代わる基軸通貨の地位になり上がることはあり得ません(?)ので、申し添えておきます。

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【既存通貨のデジタル通貨化は国家統制社会形成につながるおそれあり】既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰④

2021-03-15 00:15:25 | 世界共通
前回からの続き)

 前述のように、英国の金融規制当局(FCA:英金融行動監督機構)が、価格高騰中のビットコイン(等の仮想通貨[暗号通貨])について、これに投資するならすべてを失う覚悟を、と消費者に対して警告したのは、おもに以下の2つの理由からだと考えています。一つ目は、自身の通貨ポンドの劣化(≒インフレ)を食い止めることができない中、人々がこれに愛想をつかし(?)、「希少性」を維持する(インフレヘッジとなる)ビットコインをポンドに代わる通貨(?)としてますます利用していく(?)ことへの「いらだち」があるということ。そしてもう一つは、匿名性」のあるビットコイン等が広く流通するようになると、これを介した取引等を当局として把握できず、徴税等に支障が及ぶほか、究極的には国家の「通貨発行権」が有名無実化しかねないといった「警戒感」が高まっているということ。これらへの、ポンドなどの現行の通貨側の対抗策のひとつが、自身の通貨の「デジタル通貨」化だと思っています。

 Wikipediaによれば、デジタル通貨とは、デジタルな形で利用可能な通貨のこととされています。その意味ではビットコインもデジタル通貨ではありますが、国家の裏付けのない(法定通貨ではない)ものなので「仮想通貨」と呼ばれます。一方、国家(≒中央銀行)の裏付けのある既存通貨のデジタル版は「中央銀行デジタル通貨」となります。ここでは便宜上、後者をデジタル通貨として話を進めます。

 で、そのデジタル通貨ですが、世界的なインターネットのいっそうの広がりやデジタルデバイスの普及、キャッシュレス化の進展等といった経済・社会の変化を受け、日本を含む各国で、自国通貨のデジタル化の検討が開始されているところです。たしかに、これらの諸状況をふまえると、これによりフィットするようにポンドや円やドルなどの通貨もデジタル化してやれば、決済などがスムーズになるなど、いろいろと便利になりそうな気もします。

 けれど、かりにデジタル通貨を導入したところで、既存通貨の問題は解消されません。つまり、アナログ(紙幣)・デジタル(通貨のデジタル化)の区分によらず、主要銀行は今後も(量的緩和策で)通貨を市中に吐き出し続けるしかないため、既存通貨の価値劣化懸念(インフレ化懸念)は払しょくされない、といったことです。であれば、インフレヘッジの必要から、多くの投資家は自身の資産価値をデジタル通貨から仮想通貨(とか[ゴールド])のほうに今後も移そうとするでしょう・・・

 デジタル通貨にはもう一点、重大な特性があります。それはビットコイン等には備わっている「匿名性」が(おそらくは)付与されない、ということ。つまり、当該デジタル通貨について、誰が、どこで、いくら持っているか、とか、誰から何を買うために誰にいくら払ったのか、などといった所有者個人の情報や使途などがすべて、国家あるいは中央銀行に筒抜けになってしまう、ということです。となれば・・・脱税とかマネーロンダリングみたいな不法行為等が、し難くなっていいんじゃない?と思われるかもしれません。まあそういったポジティブな面はあるでしょう。しかし・・・他方でこれ、国家統制社会の形成につながる危険性が高いもの、という見方もできると思っています。

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【ビットコイン(暗号通貨)の匿名性もまた既存通貨の脅威となる?】既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰③

2021-03-13 00:15:59 | 世界共通
前回からの続き)

 前述したことから、ビットコインは、インフレヘッジになるから値上がりしている、という面があろうかと思います。このあたりは、これとは真逆に価値劣化を続けるばかりの(?)ポンドの価値を守るべき立場の(っても、イングランド銀行ともども守ることができない?)FCA(英金融行動監督機構)あたりからビットコインに対して「いらだち」交じりの(?)発言があったことからも窺えるところです(?)・・・

 ・・・などと綴っているあいだにもビットコインの価格上昇は止まりません。現時点(日本時間12日22:00)で55874ドルと、本稿を書き始めた8日からたった4日ほどで10%近くも上がりました。う~ん、いくらインフレヘッジってっても、さすがにこれスピード違反(?)でしょう。そのあたり、ビットコインは、上述した「希少性」などのため、他の通貨等と比べるとボラティリティが高すぎる(≒価格変動幅が大きすぎる)ことの反映かと思っています。一般的に通貨の価格変動率は、ドルを基準にすると、過去30日とか60日でみると0.5~1%程度、金(ゴールド)はそれより少し大きい程度、と言われます。これに照らすと、ビットコインのそれがいかに大きいかが分かるというもの。ということはこの先、その価格が一転して10%以上も(?)急落する局面が(短期的には?)現れるかもしれません(・・・が、おそらく中長期的には強含みでしょう、上記インフレヘッジの必要性は高まる一方だから)・・・

 他方で現在、ゴールド)価格のほうは急落中です。現時点(日本時間12日22:00)のスポット価格は1トロイオンス当たり1700ドルあまりと、年初の1900ドル台半ばから10%以上も値下がりしています。金といえばインフレに強い資産、そして上記のようにインフレの危機は高まるばかり、なのにどうして?ですが・・・ここは上記ビットコインの急騰と関連があるといえそうです。つまり、同じインフレヘッジになるのなら、いまは金よりもボラティリティがずっと大きなビットコインに投資したほうが利ザヤを稼げそうだと考えた投資家が、同投資用マネーをねん出しようと金を手放している、といったこと(?)。というわけでビットコインと金の価格はいまは逆相関になっている、と考えています。でも、まあ・・・目下の米長期金利のじり高傾向からすれば、どのみち市場(株、債券、不動産、レポ市場などなど)はこれに長くは耐え切れず、FRBが緩和を強化せざるを得ず(金利の低め誘導をするしかなく)、その結果、インフレモードは加速して、マネーはまたも金に買い向かう、となるように思いますが・・・(?)

 さて、このようなインフレ期待(?)の高まりがビットコインの価格を押し上げているところですが、インフレに強いということの他にビットコイン・・・という仮想通貨(暗号通貨)に人気が集まる理由として指摘できる重要な点があります。それは「匿名性、つまりビットコインを介したやり取りが第三者に捕捉等をされ難いという特性です。ここもまたFCAのような金融当局をいらだたせるところでしょう、自分たちの通貨(ポンド)ではない通貨・・・みたいなの(?)が決済等に勝手に(?)使われるばかりか、その動き等を追えないわけですから。これ、ある種の脅威そして反逆に思えるかもしれません、「通貨発行権」を握る(国家)「権力」にとっては・・・

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【英当局のビットコインへのいらだち、ポンドが見放されることへの恐怖心から?】既存通貨のトホホさ映すビットコイン高騰②

2021-03-11 00:01:21 | 世界共通
前回からの続き)

 前述した、英国の金融当局であるFDA(英金融行動監督機構)が今年1月、ビットコイン等の仮想通貨(暗号通貨)に関して、消費者がこの種の金融商品に投資するのならすべてを失う覚悟をするべき、などとネガティブに言及したことの背景には、同国の通貨ポンドの脆弱さがあると読んでいます。つまり・・・英国は世界第2位の経常赤字国、しかもポンドは基軸通貨ではないわけで、今後、ただでさえポンドの価値は下落トレンドにあり、これを防ぐ手立てもないところ、ビットコイン(等の暗号通貨)の人気ぶりには、これらにマネーがますます流入することでポンドが見放されかねないことへの警戒(恐怖?)感を惹起させる、といった感じでしょか・・・

 こちらの記事等に書いたように、数ある暗号通貨のなかでもビットコインが優れている点として指摘できるのが、この供給の上限が2100万枚に制限されていること。で、これマイニングプログラムの中から膨大な量の演算を経て発行されるのですが、今年始めの時点ですでに1850万枚発行されているとのこと。なので、もう発行できる枚数はそれほど残っていない、というところまで来ています(・・・っても、発行枚数は4年ごとに半分になっていくため、発行終了は2040年頃になる見込みとのこと)。これからすれば、ビットコインの希少性にともなう価値はじりじりと上昇していきそうに思えます・・・

 上記に照らしたとき、ポンドそしてドルはもちろんを含む世界中の既存の通貨の弱みが見えてしまいます。すなわちこれらはすべて不換通貨、ようするにゴールド)などの裏付けがなく、無制限に発行されてしまう通貨だということです。それに加え、前稿そして本ブログで書きまくっているように、遅くとも2008年のリーマン・ショック以降、主要国の中央銀行は景気対策等を名目に量的緩和策を延々と続け、ひたすらマネーを市中に吐き出し続けているわけです。そんなことができるのは上記のとおり、どれも不換紙幣だから、です。となれば、いずれは過剰流動性つまり「インフレ」が起こり、これら紙幣は文字通り「紙切れ」になりかねない、その前に価値保存ができる「通貨」に自身の資産価値を移転させよう・・・なんてことを投資家ならずとも考えるようになるでしょう(?)。では、その移転先の候補は・・・

 ビットコインはそんな候補通貨としての条件を、上記の希少性が保証されているという点で満たしているように思えます。インフレヘッジになり得る、ということです。そのあたりは現下の価格高騰ぶり、そして何よりも上記の英国当局の「いらだち」に見て取れると考えています。

 本日は10回目の3.11。東日本大震災で亡くなられた方々のご冥福、被災地のさらなる復興と発展、そして・・・震災のあった年(2011年の名目GDP6.16兆ドル)から10年間で20%ものマイナス成長(2020年同4.91兆ドル)に沈んだ本邦経済の真の浮上を心より祈念いたします。

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