世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【円借款事業の債務不履行リスクは日本国民に…】外国には日本インフラの対価を支払える経済力がない③

2021-01-29 01:48:29 | 日本
前回からの続き)

 前述したように、本邦企業にとって、外国のインフラ事業は、円換算した債権額の回収が困難化するリスクが高いため、よほどの優良プロジェクト(って、極めて少ないと思われる)か、円借款でファイナンスされる事業、つまり少なくともこれに参加する企業は支払いを受けられなくなる危険が少ない案件等に限定されるべきかと思われます。

 このあたり後者(円借款事業)で個人的に思い出されるのが、ジャカルタ地下鉄です。ネット情報によればこのプロジェクト、正式にはインドネシアの首都ジャカルタの大量高速鉄道(MRT)のことで、同市の慢性的な交通渋滞を緩和することなどを目的とするもの。これ、設計、工事、車両、運行システムなどなど、ほぼすべてを日本企業が手掛けるという、オールジャパン体制のもとで整備されています。その第1期分は2019年4月から開業しており、評判等は上々のもよう(?)。現在は第2期工事が進んでいて、2024年に完成見込みとのことです。

 で、このプロジェクトの必要資金のほとんどは円借款になっているわけです。わが国からインドネシアには上記第1期分として総額1250億円あまり、第2期分として700億円ほど、合計約2000億円が供与されました。これらのおカネは、インドネシア当局を通じ、MRT事業に参画する本邦企業に還流するから、まあこれら各社はいいとして(?)、問題は円貨を貸した日本政府(つまりわたしたち納税者)のほうです。はたしてインドネシアは、MRTにつぎ込まれたわたしたちの血税2000億円を返すことができるのか。ちなみに同国の通貨ルピアのレートですが、たとえば、いまから4年前の1月には1ルピア0.0085円だったのが今月は同0.0074円と、円高ルピア安が進んでいます。ということは、インドネシアにすれば、円借款の円建て債務の返済負担感は、それだけ増していることになります・・・

 上記は、インドネシアばかりか、ほぼすべての円借款受け入れ国にとっても同様でしょう。つまり、これら諸国すなわち新興国の通貨は、中長期的に見れば、に対してほぼ確実に減価していくだろうから、各国はその円債務の返済に相当苦しむことになりそうだということです。たしかに円借款の貸付金利は、政府のローンということで、民間金融機関のそれよりも低いし、その他の条件もユルくはなっています。けれど、かの国々からみた(自国通貨ベースからみた)実質の返済負担は、上記のように、まず例外なく、時間の経過に比例して大きくなっていくため、それらのなかから支払いに窮してしまう国とかプロジェクトが出てくるのは避けがたいように思えます。そうなったときに損をするのは、当然、日本国民ということで・・・

 というように、わが国の海外インフラ事業は、民間が自己責任で行うものも、円借款のような公的枠組で行うものも、いずれもなかなか難しそうです・・・

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【新興国が長期間、円債務の返済を続けるのは困難】外国には日本インフラの対価を支払える経済力がない②

2021-01-27 21:22:34 | 日本
前回からの続き)

 前回、日本の新幹線輸出モデルである台湾新幹線の後継車両をめぐる交渉において、日本企業側の提示価格が高すぎるとしてこれを打ち切った事業体の台湾高速鉄路(高鉄)が(もっと安い価格で請け負ってくれる)第三国企業からの調達も模索している件をご紹介しましたが、これ、あらためて日本の「インフラ輸出」の難しさを浮き彫りにした例といえるでしょう。その本質を端的にいえば、ジャパンブランドのインフラは、日本以外の国々にとっては価格が高すぎるケースがどうしても多くなる・・・って、それは「円>外貨」(実質金利の大きさ)という意味でも、ということかと思います。

 上記の台湾のような外国にとって価格が高いことの理由ですが、まずは当然ながら、それだけ日本インフラのクオリティーが高いためでしょう。上記の新幹線(鉄道)をはじめ、大規模な道路、港湾、発電所などのインフラ事業は、本邦企業の得意とする分野であり、その品質はどれも世界トップクラス。したがって、新興国はもちろん、先進国に至るまで、これが欲しいという国は世界中にあるはずです・・・が、高品質ということは、(とくに安全対策などは)それだけ費用がかかっているわけで、これを民間企業が営利事業として行うのならば、当然、これらコスト分も支払ってもらう必要が出てきます。そのあたり、相手国から見て高く感じられるのはもっともかもしれません。日本インフラの安全管理や環境対策などはこれまたハイレベルでしょうから。

 そして、上記以上に「高い」と感じられるであろうことは、相手国にとっては、日本製インフラの円換算相当額を、自国通貨で長期にわたって支払っていくことの大変さのことに思えます。インフラ事業とは、巨大な初期投資額を、その後の長い年月にわたる事業で得る収益で回収していく事業ですが、その間、多くの場合、相手国通貨は日本円に対して減価していくため、支払うべき円換算額は同じでも、自国通貨換算額はそれだけ多くなる、といったこと。たとえば、こちらの記事等に書いたように、円は1970年の1ドル360円から現在は約103円とドルに対して高くなっていますが、もし1970年当時、日本に対していままでの約50年間、毎年1億円相当額を返済していくようなプロジェクトがあったとすれば、1970年に相手国が払うべき1億円に相当するドル額は約28万ドル(=1億円/360円)ですが、現時点は約97万ドル(=1億円/103円)と3倍以上に膨らむわけです(って、まあこれはあくまで机上の極端例ですが・・・)。

 もちろん上記の場合、インフラを売った日本側は、円換算債権額の回収にてこずることが多くなりそうです。なので、本邦企業としては、相手国事業体の支払い能力を考えると、どうしても巨大プロジェクトには慎重にならざるを得なくなるでしょう。その結果、採算が合う事業は、上記の台湾のように、その通貨が円に対して比較的、値を保てる国のものか、円借款によるプロジェクトのような、相手側の債務不履行リスクを日本政府(って、ようするに、わたしたち納税者)がカブるものなどに限定されてしまいそうです(?)。

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【台湾新幹線の後継車両「日本製は高すぎ」で交渉決裂】外国には日本インフラの対価を支払える経済力がない①

2021-01-25 00:55:51 | 日本
 なかなかに悩ましいところですが、これもまた本質的には「円>外貨」(実質利回り)ということなのでしょう・・・

 わが国の新幹線輸出の唯一の成功モデルとされる台湾新幹線(台湾高速鉄路:高鉄)の今後が微妙な雲行きとなってきました。先日、高鉄が日本企業連合との後継車両購入に関する交渉を打ち切り、第三国からの購入も含めた新たな調達先を模索することにしたとのことです・・・

 報道によると、高鉄は2年前に新規の車両購入を決定、世界の鉄道メーカーに入札を求めたものの、これに応じたのは日立・東芝を中心とする日本企業連合だけでした。ところが、その際の入札価格と高鉄の希望価格との間に大きな差があり、再入札を経てもその差が埋まらなかったために上記の決定に至ったとのこと。具体的には、いまの台湾新幹線の車両(700T)は日本の東海道山陽新幹線において昨年退役したモデル(700系)をベースにしているところ、後継モデルは日本の最新のN700Sを台湾仕様にするにもかかわらずその価格はN700Sよりもはるかに高く、高鉄としては到底納得がいくものではない、ということのようです。他方で日本の700系が引退したことで700Tのパーツも製造が停止され、高鉄は現行の700Tから新規車両に転換をしていかざるを得ず、かといって日本提示の価格は高すぎるので、他国製も含めて検討しなくてはならなくなりました。けれど、台湾新幹線は、俗に上下分離方式と呼ばれるように、車両と運行システムは日本方式、軌道・トンネル・橋梁は欧州方式に分かれています。なので、日本勢の代わりに、たとえば欧州のメーカーが上記を請け負うとしても、慣れない日本式の運行システムに合わせた車両を作らなければならず、相当にたいへんそうです・・・

 というように、この後継車両問題、何とも難しい局面にあるわけです。台湾側の、どうして日本の提示額はこれほど高いのか、という気持ちも、素人ながら分かります。他方、本邦企業連合の提示価格にもちゃんとした根拠(これくらいの値段で作らせてもらえないと安全が保証できない、等)があるのでしょう。この先、これがどのような展開になるのか不透明ですが、個人的には、良好な日台関係のもと、双方が歩み寄り、何とかうまい着地点を見出してほしいと願うところです・・・

 さてこの台湾新幹線、これ本邦国策とされる「インフラ輸出」の代表例であるわけですが、上記のように、その難しさがここでも浮かび上がった、ということかと思います。その難しさの本質的なところのひとつは、多くの場合、輸出先の外国(とくに新興国)に本邦インフラの価値に見合う対価を支払う経済力が伴っていない、ということかと・・・

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【根拠レスに急騰のテスラ株、チキン・レース銘柄?】テスラ株---緩和バブルのあだ花?⑥

2021-01-23 00:15:51 | 世界共通
前回からの続き)

 ここまで、株価が異常に高騰している米電気自動車(EV)メーカーのテスラを見てきて思うのは、企業は、おもに株主および顧客(消費者)のステークホルダー2者の利益がバランスされているとき、経済・社会に貢献できている、ということです。この点、世界の自動車マーケットにおけるその一番手は、やはり日本のトヨタ自動車でしょう。前述のとおり、昨年の米「コンシューマー・リポート」の消費者評価で、トヨタ(同系列のレクサス)は26ブランド中2位(3位)と、トップクラスの評価を得ています。そして時価総額もテスラに次ぐ2位で、3位の独フォルクスワーゲンを大きく引き離しています(22日時点で約2.3倍)。そしてプリウスに代表されるトヨタの進取の気性と技術力はいまさらいうまでもないでしょう(そのトヨタを抑えて上記評価で1位に輝いたマツダ[これまた上位の常連]も立派だと思います)。

 他方、アメリカのGAFA(M)(米IT大手)は、たしかに株主の利益は莫大なものがあるわけです。たとえばアップルの2020年9月期利益は570億ドルあまりと、トヨタのそれ(2020年3月期、200億ドル弱[1ドル107円換算])の3倍ほどにもなります。けれどそれは、上述のとおり事実上の市場独占がもたらしたもの。つまり、そのユーザーが安価な利用料などとして本来は得るべき利益の多くが株主に行ってしまっていることを意味します。これを放置したままでは、スマホに代表されるIT市場はアップルを含むGAFAM(の株主)による市場支配がますます進み、ユーザーは価格ばかり高くて質の悪いサービスで我慢をさせられるおそれが高まります。そのあたり、こちらの記事に書いたように、アメリカをはじめとする各国当局には、独禁法・反トラスト法の厳格適用等を通じてIT市場での競争を促進して、消費者利益の増大に努めてほしいものです(っても、アメリカに限ると難しいかもしれませんね、こちらの記事で論じたように、同国には市場を競争的にすると米企業は第2第3の「トヨタ」[日本企業]にシェアを奪われてしまうというトラウマがあるでしょうから・・・?)。

 で、テスラですが・・・上記にはまったく当てはまりません。つまり、利益独占が難しいEVマーケットにあって、顧客の評価は最低クラス、そして株主利益もここまではほとんどゼロ(ずっと損失計上)なわけで、その点からすれば本当なら株も製品(EV車)も買えたものではないでしょう。しかし実際は上記のとおり、株だけは根拠レスにスゴいことになっているわけで、これはもう表題「緩和バブルのあだ花」として、上がったから買う・買ったから上がる、のいわば「チキン・レース」銘柄と理解するべきかと。なので、ちょっとしたきっかけで誰かが降りたら・・・

 ・・・って、このチキン・レースの敗者にだけはなってもらいたくないものです、車を見る目が世界一のはずの、この国の投資家には。ですが・・・?

(「テスラ株---緩和バブルのあだ花?」おわり)

金融・投資(全般) ブログランキ
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【テスラ、販売台数トップ20では唯一のUSAブランド】テスラ株---緩和バブルのあだ花?⑤

2021-01-21 00:59:49 | 世界共通
前回からの続き)

 以上、論じてきたことからすれば、米株式市場において時価総額ベースで全米4位にまで上昇したテスラ株は、その前後のGAFA(M)(Google、Amazon、FacebookApple、Microsoftの米IT企業群)の株とはまったく違い、その地位にあるだけの根拠(≒市場独占)を何ら見出せないくらいの、すさまじいまでのバブルなプライスになっているというべきなのでしょう(?)。そのあたり、金融緩和がもたらした現状の株バブルの中でもその空虚さは際立っているわけで、テスラ株は、本稿タイトルのとおり、緩和バブルのあだ花のように思えるところです・・・

 が一方、以下の意味で、テスラを独占的シェアの企業と捉えることもできるかもしれません。上記でご紹介の「EV-sales」等によると、昨年1~11月までのEV販売台数ランキングではテスラが1位となったわけですが、同上位20メーカーの国別内訳では中国7社(BYDなど、ただし多くは米企業などとのJV)、独5社(VWなど)、日2社(日産トヨタ)などとなっているなか、アメリカ勢は・・・テスラ1社だけ。ご存じのように米自動車市場は世界最大であり、ここをホームとするEVはテスラのみであることを考えると、テスラは(他国市場はともかく、少なくとも)この米EV市場では圧倒的な市場シェアを握って独占的な利益を享受できそうです(?)。そんな期待?があるからこその上記株価、と解釈すれば、まあ納得がいくというもの・・・

 ・・・って、そんなはずはないでしょう。なぜなら、本稿3回目で書いたように、テスラ車の米ユーザー評価は最低ランク(26ブランド中25位)だからです。であれば消費者の多くはテスラ車を敬遠し、トップ3(日本ブランドのマツダ、トヨタ、レクサス)などの、もっと信頼性の高い車を選ぶでしょう。それでも―――信頼性が非常に低くても―――テスラ車を、という人は、USAブランドの(ほとんど)唯一のEVだから、といった理由で買うのでしょう(?)が、そういった奇特な好事家?のニーズだけでテスラが時価総額4位の自動車メーカーにふさわしいほどの販売台数・売上・利益をあげられるとはとても思えません・・・

 それに今後は、世界中の自動車メーカーがこの米市場で稼ぐべく、次々に新EV車種を投入してくるものと思われます。上記の中国勢の数の多さからも分かるように、じつはEV車はエンジン車と比べても新規参入のハードルがそれほど高くはないわけです。そんなこともあって、同業他社や車種が競い合うなか、わずかの間に、予想外のブランドが販売数トップに浮上、他方で〇〇社の販売台数が急減、なんてことがこのマーケットでは頻繁に起こってくるでしょう(って、消費者にとっては選択肢が増えるのでメリットが大きいですが)。このような環境で、はたしてテスラは勝ち続けていけるのか---「独占」を築けるのか---って、やはり厳しいでしょうね・・・

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【GAFAM株と違ってテスラ株はインフレヘッジにはならない?】テスラ株---緩和バブルのあだ花?④

2021-01-19 00:03:44 | アメリカ
前回からの続き)

 前回、米電気自動車(EV)メーカーのテスラの今後は、EV市場の競争がますます激しくなっていくであろうこと、肝心の製品評価がテスラのホームに当たる米市場においてでさえ芳しくない・・・どころか最低レベル(昨年の「コンシューマー・レポート」評価では26ブランド中25位)にあることから、非常に厳しいだろう、という予想を綴りました。これをふまえると、時価総額換算でトヨタ(自動車会社ではテスラに次ぐ世界2位)の3倍以上、全米で4位の規模にまで上昇してしまったテスラの株価は、どう贔屓目にみてもバブリーとしかいいようがないでしょう・・・

 ところで、本ブログでは何度も指摘しているように、現在、世界中、とりわけ米株式市場では、FRB(って、本当は日銀)の超緩和的な金融政策(量的緩和策:QE)によって巨大な株バブルが生まれています。それは、市場参加者の大半が、この超低金利なQEマネーを元手に、株をはじめとするリスク投資で利ザヤを稼ごうと目論んだ結果であるわけですが、他方で次のような見方もできることでしょう。つまり、多くの投資家が株にマネー価値を移すことでインフレリスクをヘッジしようとしている、ということです。

 これまた何度も論じているとおり、QEには通貨の刷り過ぎによってインフレを惹起するというキョーレツな作用がありますインフレになれば、通貨の価値は時間の経過とともに下落するいっぽうだから、一刻も早く、インフレ率以上の利回りが得られる資産にその価値を移さないとなりません。ここで国債等は・・・多くがマイナス金利(名目金利-予想インフレ率<0)なのでNG、などとなって、必然的にマネーの多くは株に向かって流れます・・・が、当然ながら株価は上がったり下がったりしますから、ここではどの株を選択するか、が重要になってくるわけです、つまり、インフレな世の中になっても巨額の株主利益をもたらしてくれそうな企業の株、だからこそ下落リスクの小さな株は・・・

 ・・・って、その代表格が、上記のGAFA(M)(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoft)の株式になります。上述のようにこれらは独占(寡占)(圧倒的な市場シェア)を形成しているため、インフレな世の中になってもその利益構造は揺るがないだろうから株価が大きく沈むこともあるまい、ということで、インフレ懸念が高まる中、これら米IT大手の株はいわば、紙幣の洪水に浮かぶ箱船、と期待され、その価格が高騰している、と解釈できるでしょう(?)。

 これに対してテスラ株は・・・そうした箱船的な機能(インフレヘッジ機能)を持っているとは考えられません。その理由は上記のとおり、テスラは独占に依拠できないためです。ゆえに、テスラ株はバブルといえる、それはアップル株やアマゾン株などと比べてもはるかに、ということだと考えています。

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【テスラ、株「市場評価」は全米4位も、車「市場評価」はブービー】テスラ株---緩和バブルのあだ花?③

2021-01-17 00:02:17 | アメリカ
前回からの続き)

 前述したように、米電気自動車(EV)メーカーのテスラの株式の時価総額は、いまや全米4位の巨大スケールに膨張しているわけですが、同ランキングでともにトップグループに属するGAFA(M)とテスラとでは、次の点が大きく異なっています。すなわち前者が事実上の独占(あるいは寡占)を築いているのに対して、テスラはそうではない―――激しい市場競争下にある企業―――ということです・・・

 あらためて上記ランキング(先週末時点)を確認すると、1位アップル、2位マイクロソフト、3位アマゾン、4位テスラ、5位アリババグループ、6位台湾セミコンダクタ、7位フェイスブック、8位・9位アルファベット(グーグルの親会社。なお8位は議決権付株価の合計、9位は同なしの合計)・・・などとなっています。上記、そしてこちらの記事に書いたとおり、これらのうちGAFAM(Google、Amazon、Facebook、Apple、Microsoftの米IT企業群)は、それぞれの事業分野で実質的に独占(寡占)といえる高い市場占有率を有し、巨額の利益を享受しています。5位の中国IT大手アリババも、同国のネット通販や電子商取引等で大きなシェアを占めています。6位の台湾セミコンダクタの半導体ファウンドリ市場における世界シェアは50%を優に上回っているそうです。といったことからすると、これら各社の株式の時価総額が高いことの、おそらく最大の理由は、この「独占」(市場占有率の高さ)にあると考えるべきでしょう。

 上記ランキングで、これに唯一当てはまらないのがテスラになります。前回書いたように、現在のEVマーケットにおいて、いまでこそテスラは販売台数で世界一です(昨年1~11月の合計)。しかしそのシェアは14%程度と、GAFAMなどとは比べようもないくらいに小さいうえ、他企業、とくに最近は中国や欧州のメーカーが次々と参入するなど、EVマーケットは競争がますます激しくなってきています。となれば、どのメーカーにとっても、この厳しい市場で、各社に競り勝って、販売台数や売上や利益を増やしていくのは相当に大変そうです。当然、テスラの販売台数トップの座も安泰であるはずはありません。したがってテスラとしては、いまの地位を死守するためにも、より多くのユーザーに選んでもらえるような、低価格で高品質なEV車作りにいっそう努める必要があるわけです・・・

 が、そのテスラ車の現状の消費者評価は芳しいものではない・・・どころか、ぶっちゃけワーストクラスです。昨年11月、米メディア「コンシューマー・リポート」が発表した自動車保有者約33万人を対象とした信頼度調査によれば、テスラは、全26ブランド中、25位とブービー・・・(ちなみに最下位はフォードの「リンカーン」、トップ3は順に「マツダ」「トヨタ」「レクサス」の日本勢!)。そして車種別では、「信頼できる」と推奨されたのがテスラは4車種中、1つ(モデル3)だけで、あとの3種はどれも低評価だったとのことです・・・(って、こちらの記事に書いた頃から品質が向上している様子が窺えないところがテスラ車のいちばんマズい点だと思いますね)

 以上、EVマーケットがそもそも非常に厳しい競争環境にあること、そして肝心の製品の「市場評価」が著しく低いことから、EVメーカーとしてのテスラの今後は絶対に楽観視できない、といったところかと思います。この点に照らすと、同社株式のほうの「市場評価」が、いかに危険なくらいにバブリーか、ということがよく分かるというものです・・・(?)

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【テスラ、EVでは販売台数こそ世界一だが…】テスラ株---緩和バブルのあだ花?②

2021-01-15 00:15:04 | アメリカ
前回からの続き)

 前回、米株式市場では現在、電気自動車(EV)メーカーのテスラの株価が爆騰し、その時価総額が約7700億ドルと全米4位の規模にまで膨張しているとお伝えしました。この数値、テスラ以外の全世界の自動車メーカーでは一番のトヨタ(約2200億ドル)の3倍を軽く上回るほどのスゴいスケール。といったマーケットの評価をみれば、テスラがもはやトヨタをもしのぐ巨大企業になったのだな、と思われそうです・・・

 ・・・が、その実態はまったく異なります、トヨタとの比較に意味があるのか?というくらいに。トヨタの今年度(2021年3月期)の決算予想によると、同社の2020年度の全世界販売台数は942万台とのこと。コロナ禍の影響で4~6月の台数は前年同期比で半減したものの、その後は持ち直し、10~12月は前年並み、1~3月は5%ほど増える見込みだそうで、当初の販売計画である910万台を上回るペースになっています。他方のテスラですが・・・昨年7~9月の販売台数が四半期ベースとしては過去最高になりました!・・・っても、13.9万台ほどです。2020年の納車目標は50万台と、トヨタの1/20程度に過ぎないうえ、その達成も微妙みたいです・・・

 営業成績も同様です。トヨタの今年度の売り上げ予想は(さすがに前期からは13%ほど減るようですが)26兆円ほど、1ドル104円換算で約2500億ドルとなっています。これに対してテスラの売上は上記四半期でこれまた過去最高の88億ドルになったとのことです・・・が、これをふまえて1年間の売上を想像しても、トヨタ・・・はもちろん他の自動車メーカーにも遠く及びません。なお、テスラは5四半期連続で黒字を記録した・・・とのことですが、遅くとも2015年から2019年までの各期においてテスラの営業利益・当期利益はずっとマイナスであり、そのせいもあってか同社は昨年、3度も増資するなど、引き続き資金繰り不安がぬぐえない印象です・・・

 「テスラは成長が見込めるEVの企業だから、ガソリン車主体の従来メーカーとは比べられないよ」―――たしかにそうかもしれません。実際、EVの販売台数でみるとテスラは世界一ではあります。ネット情報(EV-sales等)によれば、昨年11月時点でのメーカー別EV販売台数(2020/1~11月合計)ランキングでテスラは堂々1位(約40.8万台、シェア16%)となっています。以下は2位がVW(約16.7万台、同7%)、3位は中国のBYD(約15.2万台、同6%)、4位はBMW(約13.7万台)などとなっています(ちなみに日産は15位、トヨタは17位などと、EVに限ると日本勢は後れを取ってしまっているようです)・・・

 といったあたりからすれば、テスラの上記の投資家評価には、うなずける面があるのかも・・・って、そんなわけはありませんね、やはり。それは先述した、現在のテスラと同じく全米時価総額ランキングでトップグループを形成するGAFA(M)との違いを考えれば明らかでしょう。つまりこれら米IT大手が事実上の「独占」(あるいは「寡占」)を築いているのに対して、テスラは競争市場下にある企業なわけで・・・

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【テスラ、時価総額で全米4位の企業に…】テスラ株---緩和バブルのあだ花?①

2021-01-13 00:03:50 | アメリカ
 いろいろな意味で、いまの金融環境を象徴していますね、これ・・・

 ご存じのように、この瞬間の米株式市場では、テスラモーターズ(テスラ)の株価がスゴいことになっています。11日の株価は終値で811.19ドルですが、この1年間の安値である昨年3月中旬、すなわちコロナ禍が急拡大したときの水準(70ドル台前半)からの10か月でじつに11倍以上!に大膨張しています。直近では、日経新聞が報じたように、11連騰、つまり昨年12月22日の安値から今月8日までの11取引日の終値が前日のそれを上回って推移し、この間の上昇率だけでも37.4%(12/22:640.34ドル→1/8:880.02ドル[上場来高値])に達しています・・・

 本ブログでこれまで何度も論じ、また後述する事情のために、現在、世界中のほぼすべての株式市場がヒートアップしているわけですが、その中でもテスラ株の騰勢ぶりは群を抜いているといっていいでしょう。このあたりは他の株と比べてみるとよく分かります。たとえば、アップルは11日の終値が128.98ドル、マイクロソフトは同217.49ドルでしたが、昨年3月の安値からの上昇倍率はそれぞれ約2.3倍、約1.6倍に過ぎませんからね・・・って書きましたが、昨春から1年もたたないでこれほど株価が上がれば、それだけでもこれら株主はウハウハでしょう。テスラ株はこれらをはるかに上回るパフォーマンスをみせているのだから、どんだけぶっ飛んでいるんだ~ってことになります・・・

 この株価急騰を受け、テスラの時価総額もまた膨れ上がっています。そのスケールは・・・約7689億ドル(1ドル104円で約80兆円!)と全米中、第4位~! ちなみに同ランキングのトップ3はアップル(1位:2.17兆ドル)、マイクロソフト(2位:1.64兆ドル)、アマゾンドットコム(3位:1.56兆ドル)ですから、米市場でテスラは、以前のこちらの記事に書いた、いわゆるGAFA(M)(グーグル[アルファベット]、アップル、フェイスブック、アマゾン、[マイクロソフト]の米メガIT企業群)に匹敵する価値のある(?)企業と評価されているということなのでしょう(?)。

 こう見てくると、テスラってそもそも何をしている会社だっけ?ってなりそうなくらいです(?)。あらためていうと、テスラは・・・電気自動車を(おもに)作っている企業になります。その時価総額が上記のとおり全米4位であり、それより上の3社は全部IT・・・ということでテスラは、世界の自動車会社の同総額ランキングで堂々トップとなっています。なお同2位は・・・わが国のトヨタ自動車で、その時価総額は2144億ドル(米市場では32位、日本市場ではいうまでもなく1位)と、いまやテスラの1/3にもなりません・・・。よって、これらからすると、テスラはトヨタをもしのぐ大メーカーに成長したのだな、と思えてきそうです、が・・・(以上、各株価はすべて今月11日の終値)

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【政治家の立法権確保のために内閣法制局の廃止が必要】この国に「政治家」なんていない④

2021-01-11 00:45:47 | 日本
前回からの続き)

 ということで、小説家の村上春樹氏が、他国の政治家と比べて日本の政治家が最悪だった―――自分のメッセージを発しておらず、首相ですら紙に書いていることを読んでいるだけ、等―――と嘆いたことの背景には、前述のように、国家権力のほぼすべてを政府が掌握しており、政治家(すなわち国民)の本来の権限である立法権ですらも官僚機構が政府提出法案というかたちで行使するなか、政治家は何もさせてもらえていない現状があります。その結果、センセイ方にできることは、官僚が書いた原稿を読み上げることくらい・・・になっているわけです・・・(って、これを上手にプレゼンできたら、法案を作ったことがなくても名政治家?)

 上記の何がいけないか、といえば、当然ですが政府独裁になって―――政策や法案等について、異なった意見が反映されなくなったり、チェックが甘くなったりして、政府好み、つまり官僚機構を構成する人たちの利益にかなうものばかりになって―――国家が一方向に暴走しかねないこと。これは前述した、かつての大政翼賛会そして太平洋戦争に至る背景にあったことですが、現在でもその例をいくつも見出すことができます。その典型が、消費増税こちらの記事を含めて何度も書いているのでここでは簡単に記すと・・・自分が高級(高給?)官僚であれば、財政健全化の検討に当たっては、高所得者・資産家にとって納税負担が大きな(累進性のある)所得税とか相続税の増税は避け、その逆の(逆進性のある)消費税の増税のほうを進めたいところ、上記のように政治家は自分のいいなり―――自分が紙に書いたことを読んでいるだけ―――(だし、メディアも同様?)ですので、その実現に困難はない、といった感じ(?)。よって、いまでこそコロナ禍で鳴りを潜めてはいますが(?)、アフターコロナでは、これまで以上に消費増税の必要性が強く訴えられる―――これが書かれた紙を政治家(国民)が読み上げる機会が増える―――ことでしょう・・・(?)

 こうした一方的な意思決定を排し、わが国をより民主的な―――多様な意見が政策や法律等に反映される―――国家にするためには、真の国民主権の確立すなわち国民(政治家)による立法権の確保が必要です。そのためには、上記、政治家ではない人たち(官僚)の実質的な立法権をはく奪する、具体的には、こちらの記事に書いたように、政府による法案の作成・国会提出を停止することが有効だと考えています。その第一歩として「内閣法制局」は廃止が望ましいでしょう。前述したことから、これがなくなれば政府法案の作成が事実上できなくなるためです。べつにそれで構わないはずです、すべての法案を国会議員が作り、他法律等との整合チェック等は議院法制局がすればいいのですから・・・

 といったことも含め、コロナ禍のいま、日本の政治はどうあるべきか、が問われているように思います。政策も法令も迅速かつ柔軟に決定・変更・運用していかなくてはいかないところ、その意味では上記構造を改革できるチャンスなのかもしれません。このあたり、政治家各位には、自身の役割に目覚め、リーダーシップを発揮してほしいと願うものです、が・・・

(「この国に『政治家』なんていない」おわり)

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