世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
ご訪問ありがとうございます。

【権力は国民に金ではなく自国通貨を使わせるために金所有を禁ずる】香港投資家が教える金の強みと扱いの難しさ④

2019-09-29 00:04:38 | 金(ゴールド)

前回からの続き)

 前回、国家権力がゴールド)を国民に強制拠出させてでも集めようとするのは、インフレの危機が高まっているとき、と書きました。このあたり、個人や企業などがインフレヘッジに金を持とうとするのと違いはありませんね。

 ですが・・・たしかに中国のような、自国の通貨価値の裏付けに米ドルや米国債などを用いている国々(って大半の新興国)はそのとおりだとしても、では、そのドルの発行国であるアメリカ・・・とかEUや英国や日本のように、おもに自国の国債に裏付けさせて通貨を発行している国々の場合はどうでしょうか・・・

 ・・・って、これも同じくインフレが契機となります。つまりその通貨発行国が通貨管理に失敗した―――インフレを制御できなくなってしまった(あるいは、できなくなってしまう可能性が高まった)―――結果、その通貨建ての国債の価値が暴落するから、当該通貨の価値を維持するためには、その減った分の価値を金で埋め合わせる必要が生じる、といった具合でしょう。そして実際、アメリカもEUも(ついでに英国も)そうなりつつあるわけです。その具体的なさまの一端が、こちらの記事に書いた、各国の中央銀行が競うように緩和的な金融政策(QE)を打ち出すという「緩和競争」に表れているといえるでしょう。

 なお同記事でも述べたようにこの競争、緩和した方が「負け」であることをしっかり認識することが重要です。なぜならQEとは「インフレを起こしますよ」、もう少し具体的には「実質利回りをマイナス(=名目金利-予想インフレ率<0)に誘導しますよ」ということで「インフレファイター」であるべき中央銀行がその使命を放棄すること(≒敗北)にほかならないからです・・・っても、いまの金融界では「非伝統的」といった表現で微妙にこのへんを匂わせているものの(?)「それが何か?」といった乗り?でこれが平然と行われるところが「異次元」なわけですが・・・

 しかし・・・この手のことを延々と続けて無事であるはずがない・・・って当たり前ですがこのQE、実質的には中銀による国債の直接引き受けであり、通貨増発に歯止めが効かなくたってしまうから、結局はコントロール不能のインフレを招きかねません本当にそうなってしまったら人々は、当該国の通貨なんぞ、インフレで使い物にならないため、かわりに・・・金を復活させる、つまり金貨とか金地金を価値の保存手段とか媒介物として使うようになるでしょう。となると逆に通貨発行体としての中央銀行や政府の権限及び信頼は失われてしまう・・・

 ・・・って、それがマズイから、インフレ制御に失敗した(あるいは、しつつある)国家権力は、自分たちが金を独占的に保有し、国民には所有を禁止して、かわりに自分たちの通貨を無理矢理使わせようとするわけです。この場合、上記のように、かき集めた金を中銀の資産に充当することに使って、インフレで失われた自国通貨の価値を回復させようとするだろう、と考えています。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【国家権力が金を欲しがる理由は…】香港投資家が教える金の強みと扱いの難しさ③

2019-09-27 00:01:14 | 金(ゴールド)

前回からの続き)

 歴史を振り返れば分かるとおり、権力は人々からゴールド)を奪い取ろうとしがちです。それは独裁国家に限った話ではありません。典型的な例が自由と正義の国(?)アメリカです。前述したように、私有財産権がしっかり守られていると一般的には思われるであろう(?)かの国においてですら、1933年には米政府が国民に金を強制供出させるとともに、その私有を以降40年以上にわたって禁止し続けたわけです・・・って、それほど重大なことを法律ではなく大統領令ひとつでサクッと・・・

 であれば、いま香港の人々が自身の金をシンガポールなどの外国に移送しようとする気持ちは理解できるというものです。香港に政治的なプレッシャーをかけているのが、国をあげて金をかき集めている中国ですから、もし香港に乗り込んできたら、ついこの間(?)アメリカがやったように、市民に対して金の強制買い取りをしないとも限りません。少なくとも金の海外への持ち出しを禁止あるいは厳しく制限するといったことはヤルでしょう(?)。そうなってしまったら香港市民は金と一緒に外国へ高飛び!ができなくなってしまいます。その前に「虎の子」の金を外国に先に逃がして・・・と考えるのは、道理にかなっているというものです・・・

 ・・・が、その金の移送先の国々は大丈夫か、つまり自分の金をしっかりと守ってくれるのか?については・・・まあシンガポールやスイスなどは中国などよりはず~っと安全で信頼ができるでしょうが、絶対とは言い切れません。理由は上記のとおりで、この2か国にだって国家権力が存在するからです。ということは、先述したアメリカのような理不尽なことをしないとも限らない・・・

 ではどうして権力は金を欲しがるのでしょうか。このあたり、こちらの記事などに書いた、中国が金をかき集めている理由を考えると見えてくるものがあるといえます。つまり中国は、自国の通貨「人民元」・・・の価値の裏付けとしておもに米ドル資産を用いてきたわけですが、いまこれを金に置き換えていこうとしている最中です。なぜそんなことを中国はするのか、といえば、ドルそして米国債の価値がこの先、大きく下がる可能性が高まっている、すなわちインフレ(通貨価値の下落)リスクが目前に迫っている気配を感じているため・・・

 そう、人々が金を持とうとするのは、インフレの危機が高まっているときです。これ誰にとっても同じです、個人でも法人でも、そして権力にとっても・・・

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【国家権力は国民から金を奪おうとするもの?】香港投資家が教える金の強みと扱いの難しさ②

2019-09-25 00:03:38 | 金(ゴールド)

前回からの続き)

 前述のように、対中関係が悪化しつつある香港・・・の投資家が自身のゴールド)をシンガポールなどの他国に移す動きが活発になっているのは、彼ら彼女らの次のような意図によるものと考えています。つまり、今後予想される中国の(軍事!?)介入によって激減必至の(不動産、株式、債券等の)香港内の資産価値を金に移すことでその保全を図るとともに、これを同国の手の届かない外国に逃がすことで、自分たちの資産等が没収等されるリスクを回避する、ということ。それに金であれば、いわば万国共通通貨として、世界のどこでも、適切なレートで、その地の通貨に両替できるわけです。これが香港ドルならそうはいきません。万一、中国と香港市民との間に武力衝突などが生じてしまったら、香港ドルはや米ドルなどに対して暴落は避けられませんからね・・・

 といったような優れた特性が金にはあるわけで、ゆえに本ブログでは金の所有を個人にも国家にも推奨する次第です・・・が、だからこそ金には危うさ、すなわち金を欲する者に、権力(というか暴力?)を行使してでも持つ者からこれを奪いたい!との妖しい欲望を駆り立てるという面があるといえます・・・

 このあたり、香港投資家の上記アクションは、中国の圧力が高まるなか、このリスクを感じるからこそ、だということでしょう(?)。こちらの記事等に書いた理由などから、中国はいま、スゴイ勢いで金準備を増強していて、それだけ金を欲しがっているのは誰の目にも明らかです(?)。そんな中国・・・の当局が香港当局にとって代わったら、香港市民の金は危険にさらされる・・・って、少なくとも香港外への持ち出しとかは非常に難しくなってしまいそうです(?)。

 まあ中国(軍?)が本当に香港に踏み込むのか、その場合に市民の金所有に規制等をかけるのか、などについては不透明ではありますが、その手の権力による、金所有の禁止や各種制限は、過去にいろいろと行われています。代表的かつ有名な(って悪名高い?)のがアメリカ・・・のフランクリン・ルーズベルト大統領が1933年4月に発した大統領令6102号でしょう。これ、米国民に対して金を1トロイオンス20.67ドルで政府に強制拠出することを命ずるとともに、個人や企業等による金の保有を禁止するというものです・・・(って、これが解除される1974年12月31日まで40年以上も!)

 当時のアメリカが経済恐慌という非常事態下にあり、かつ同国は金本位制を採用していたため、ニューディール政策と呼ばれる財政出動を実行するには金を政府に集めるしかなかった?・・・にしても、これ米政府による私有財産権の重大な侵害である面は否定できないでしょう。実際、金価格は2019年の現時点で1オンス約1500ドル、これに対して当時の20.67ドルを年3%複利で今日まで運用し続けたとした場合の金額は260ドル余りにしかなりませんから、米国民の財産は大いに「侵害」され、いっぽうの米政府はそれだけトクをした、ということになるわけで・・・

 アメリカのような国ですら(ではなく「国だから」?)、公権力が金の個人所有を禁止し、国民は(意外にも?)超~素直にこれに従うわけです。であれば中国や香港はもちろん・・・日本だって・・・?

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【香港の投資家、金資産を続々と海外に移送へ】香港投資家が教える金の強みと扱いの難しさ①

2019-09-23 22:14:16 | 金(ゴールド)

 ゴールド)の強みと扱いの難しさを同時に感じさせるトピックではありますね・・・

 日経新聞に掲載されているフィナンシャルタイムズの先日の記事によれば、香港の個人投資家が、保有する金資産をシンガポールやスイスといった外国に移し始めているとのことです。香港で金の現物を販売する企業の社長は、現に数百万ドル相当の金が香港から流出している一方、香港での金の保有を希望する新規顧客が見当たらない状態であると指摘したうえ、「現時点において、新たに金を購入した投資家で、香港に金を置いておきたいという人はまずいない。いま、金を買ったら、保管場所は香港以外にするだろう」などと語っています。また、とあるスイスの貴金属販売・保管サービス企業も、顧客に対して香港以外の場所に金の保管場所を移すよう勧めているとのことです。

 では、なぜ香港からこうして金が海外に流れているのか、といえば・・・香港で高まる政治的危機のなか、中国が香港に対して(軍事介入を含む)何らかの強権発動に踏み切るのではないかとの懸念が浮上しているため。本当にそうなってしまったら、中国の当局は香港市民の各種資産、とりわけ金塊を接収等しかねません(?)。であれば、その前にできるだけ早く「虎の子」を海外へ逃がそう!とするのは、香港在住の投資家のアクションとしては、まあ当然だろうな、と思うものです。

 このあたり、金の強みの一端を感じさせる出来事かと思います。つまり金が万国共通の価値保存手段であるということ。かりに上記の悪夢が現実となれば・・・香港にある各種資産―――不動産、株式、通貨「香港ドル」など―――の価値は暴落し、これらを抱えた投資家は大損することになります。けれどこれらを金として持っておけば、香港ドルの急降下などとは無関係に、自身の資産価値を保全できます。そして金であれば、移送先を含む世界のどこでも、その価値にふさわしい額の当該国通貨等への交換に応じてもらえます。これが香港ドルならばそうはいきませんね、上述のような混乱に陥ってしまったら、香港ドルは他の外貨に対して大きく値下がりしてしまうから・・・

 以上をふまえると、香港の投資家の多くが中国当局の手の届かないところに金を逃がそうとしているのは、近い将来・・・というか香港が現行体制を失って中国化(共産化?)するよりも前に、彼ら彼女ら自身も金移送国に脱出するための事前準備なのかもしれない、などとといった想像もできそうです(?)。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ユーロ・ドルの価値劣化で円&日本のアドバンテージが際立つが…】欧州、超長期債を乱発!のあげく…⑥

2019-09-21 14:05:07 | ヨーロッパ

前回からの続き) 

 本ブログ及び本稿でも述べているEU(欧州連合)加盟国の序列(国債価格≒支払い能力の高い順)を示す不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」で最上位にあるドイツだけが、相当の出血(≒自国金融機関ベイルアウトに伴う巨額財政負担等)は免れないものの、おそらくEUからの離脱Gexit)をすることができると思われます。しかし・・・このGexit、実際にはほぼ不可能でしょう(?)。前述したように、ドイツがGexit、あるいは上記不等式の「フランス以上」に当たる国を連れ立って現行通貨「ユーロ」圏を離れて新通貨を立ち上げるなどをしたら・・・他のEU&欧州諸国の人々は「EU統合の夢を破壊した!」などとドイツを猛烈に非難し、かつ同国に対する反感や敵対意識を高めていくでしょう。そうなれば欧州の平和や安定や繁栄は大きな危険にさらされるわけです。そこまでのリスクを承知のうえで、いまのドイツのリーダー層があえてGexitに踏み切るようには、とても思えない・・・(?)

 ということで、結局はドイツもまた、先述した仏西伊らの超長期債の乱発(?)に象徴されるようなインフレ策に(否が応でも)付き合っていくしかないのでしょう(?)。まあ独連銀あたりは引き続きECB(欧州中央銀行)のQE(量的緩和策)には反対し続けるのでしょうが、いかんせん多勢に無勢でドイツの主張が通るわけもありません(?)。こうしてEU圏は、ドイツ・オランダなど、バブルの不快感を抱えた国々と、(フランス?)・スペイン・イタリア、そしてギリシャのように資産デフレや金利上昇に怯える国々が、(金融政策の)舵の効かない船「ECB丸」に「呉越同舟」状態となって、インフレに向けて流されていくしかなさそうです・・・(?)

 さて大西洋をはさんだアメリカでは、FRB(連邦準備制度理事会:米中銀)が18日のFOMC(連邦公開市場委員会)において、前回FOMCに続いて利下げを決定しました。FF金利(政策金利)を0.25%引き下げ、その誘導目標レンジを年2.00~2.25%から同1.75~2.00%にするとのことです。まあ・・・最近ではこちらの記事に書いたとおりで、当然の結果だし、ようするにアメリカもまたEUと同じく通貨散布策に頼る以外の選択肢がない、ってことですね。もうECBもFRBも「通貨の番人=インフレファイター」中央銀行としての機能を果たせなくなりつつあることがいよいよはっきりしてきましたよ・・・(?)

 で、日本です。ユーロそしてドルという世界の2大通貨がこの有様です。であれば本稿冒頭に綴ったように、少なくとも、わが国だけはインフレの害悪を避けられそうですね。ユーロドルもこうして価値保存機能を喪失するなか、マネーはおのずと日本国債に集まりますから。あとはそのアドバンテージに気が付くだけなんですけれどねえ・・・

(「欧州、超長期債を乱発!のあげく…」おわり)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【独、EU離脱は実際には困難でQEに付き合うしかない?】欧州、超長期債を乱発!のあげく…⑤

2019-09-19 00:00:37 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 ということで、独蘭仏などが反対する中ではありましたが、間もなく(10月末で)任期を終えるマリオ・ドラギ総裁の強い意向もあって(?)欧州中央銀行(ECB)はこの11月から、量的緩和策(QE)を再開することを決めました。まあ月に200億ユーロの資産購入で、しかも何をどれくらい買うのか、などもはっきりしていませんから、迫力不足の印象はあるものの、この局面ではQEの再発動こそが最重要だった・・・って、イタリアにとって・・・というわけで、実際にこれを叶えたわけだからドラギ氏は退任間際に母国に恩を売ることに成功したことになります(?)。なので同氏は将来は伊大統領になるのではないでしょうかね・・・(?)

 上記も含め、本稿でこれまで綴ってきたEU圏での超長期債の乱造乱発のさまを眺めれば、ECBがQEを上記程度に留め置くはずもなく、近い将来、そのスケールを一気に膨らませて通貨ユーロを大量散布するしかないだろう、ということは容易に想像がつくわけです。で、ここで気になるのは、やはりドイツの動向です・・・

 以前から書いているように、ドイツ・・・そして「インフレファイター」ドイツ連邦銀行は当然のようにインフレリスクの高いQEにネガティブだし、不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」(EU内で国債価格の高い序列)に照らしてもQEを欲する理由なんてありません。現にイェンス・ワイトマン連銀総裁は今次QE決定に際して「過剰だ」と語っているわけです。にもかかわらずQEの実行がこうして決定され、しかも今後はどんどんそれが拡大していく可能性が高いとあっては、ドイツも連銀も黙ってはいられないでしょう・・・

 ・・・が、予想は難しいものの、ドイツも結局は上記EU内のQE待望トレンドにはあらがえないだろう、といったあたりがメインシナリオなのかもしれません(?)。たしかにドイツ(&連銀)は今後もQEに反対をし続けるでしょう。こちらの記事に書いたように同国では危険な不動産バブルが生じていることなどのためです。でもだからといって本当に金融緩和策が終了してしまったら・・・今後はしこたまかかえたEU債務国の資産価額が暴落して自国の金融システムが危機に瀕し、これに対処するために巨額の財政負担を強いられます。そして得意先に当たるEU各国も経済恐慌に陥るから輸出も大いに落ち込むはずです。こうしたデメリットを差し引いてもなお、金融緩和策を行わないことにメリットを見出せるのか、非常に不透明な気もします。

 ちなみにドイツには究極の策である「Gexit」すなわちEU離脱して自国通貨「マルク」(?)を復活させるという選択肢もあり得ます(?)。上記不等式で最高位にいるからこそできる手です。しかし、これも上記と同じ理由から現実的にはたいへんな困難を伴うでしょう。もっとも単独での離脱は難しいから、フランスあたりを抱き込んで上記不等式で「フランス以上」と「フランス未満」を別な通貨に分ける、なんて考え方もできなくはない(?)でしょうが・・・Gexitともども、これらはEUを四分五裂させる結果になるために、やはり実際にはできそうもない・・・?

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ECB、独蘭仏の反対抑えてQE決定でドラギ氏、伊大統領内定?】欧州、超長期債を乱発!のあげく…④

2019-09-17 00:01:16 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 今後、EUでは、おそらく次期(今年11月~)クリスティーヌ・ラガルドECB(欧州中央銀行)総裁のもとで、いま超長期債(償還期限が10年を超える国債)を大量に発行しているフランス、スペイン、イタリアらのほか、これらに追従しそうなポルトガルキプロスといった国々を含む「平均」以下のすべての国々・・・がこれらを発行するようになるだろう、と悲観(?)するものです。それどころか、しまいには最下位のギリシャまでこれらに続いて100年債とかを起債するのではないか、超長期債に旺盛な需要がある!ってあたりを口実に。ちなみに上記「平均」とは、過去記事そして本稿でも書いたとおり、EU諸国の国債価格を高い順(長期金利の低い順)に並べた序列「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」のフランスあたりを指します。ようするにフランスあたりを境に、それよりも下位の国々は、上記の結果、当然のように(?)前記した危機に陥り、そして「われわれを救済しなければ金融恐慌は免れないよ」と開き直るわけです。で、これに対するECBは・・・目の前の超長期債の山になすすべがありません、それらの国債買い支えすなわちユーロ無限散布以外には・・・

 さて、ECBは12日の定例理事会で利下げと量的緩和(QE)再開を含む包括的な金融緩和策の実施を決めました。具体的にはマイナス金利政策を強化(中銀預入金利を現行のマイナス0.4%からマイナス0.5%に引き下げ)するほか、11月からは月200億ユーロの資産購入を再開するとのことです。

 で、これに関連してブルームバーグは、上記決定に関して各国中銀幹部に考え方の相違があったと報じています。それによれば、オーストリア中銀総裁は債券買い入れ再開は間違いかもしれないと述べたほか、オランダ中銀総裁は住宅市場に過度のリスクテイクが見られる現在の経済情勢に釣り合わないとの認識を示し、そしてイェンス・ワイトマン独連銀総裁はECBの対応は過剰だと語っています。このようにドイツ・オランダ(そしてこれに近い立場のオーストリア)がQEにネガティブと、上記不等式に照らせば当然の反応となりました。では、同不等式の「真ん中」あたりにいる(ギリシャらにとっての?)「仏」様は?

 ・・・って、そのフランス・・・のビルロワドガロー仏中銀総裁は・・・期待(?)に反して(unexpectedly)ドイツとともに今回のQE再開に反対した、とのことです。個人的には、フランスはぼちぼち西伊側に寄る、すなわちQEに賛意を示すだろう、と予想していたので、少々意外な印象を受けましたが、まあこのあたりは時間の問題にすぎませんね・・・(?)

 ということで、独蘭に加え、境目にいるフランスまで反対したにもかかわらずQEの実行が決まってしまいました。これには現ECBトップのマリオ・ドラギ氏の意向が強く働いたのだろう、と推測するものです。つまり同氏としては、自身の総裁任期切れまでの間に何としてもQEが再び発動されるようにしておきたかった・・・ってQE無しでは金利上昇で苦しい母国イタリアのために(?)―――といったあたりでは(?)。

 ・・・この功績でドラギ氏、将来の伊大統領は決まりですかね・・・(?)

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【ギリシャも100年債起債?で世紀末ならぬユーロ末へ?】欧州、超長期債を乱発!のあげく…③

2019-09-15 08:42:06 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 先述のとおり、自国経済の実態に照らして強い通貨であるユーロ建ての、それも償還が数十年も先の超長期債を振り出すことなど、EU(欧州連合)圏の「平均以下」(≒本ブログの定義でフランスよりも長期金利が高い)国であるスペインやイタリアといった国々にできるわけがない・・・のに実際にはできている、どころかそれらの超長期債が驚愕の高値で売れているわけです。その理由は当然ながら市場メカニズムとは違うところにある、つまり・・・どのみちECB(欧州中央銀行)がこれらを買い支えざるを得ないだろう、と投資家・・・も超長期債を発行する各国も高をくくっている(?)、ってことです。このあたり、超長期債を振り出せば振り出すほど(金利上昇リスクが高まるほど)ECBはそうするしかなくなる―――さもないと債務国は開き直って?デフォルトするからEUは金融恐慌に陥ってしまう―――わけで、失礼な表現ですが、ますます各国は図に乗りそうです・・・って、完全なモラルハザードですね、確信犯のECBを含めて(?)・・・

 もっとも、こちらの記事等に書いているように、ECBには「キャピタル・キー」の縛りがあって、EU加盟国の特定国の国債だけを購入するといったことはできないことに「は」なっています。けれど、上記のとおり危険な国債が乱発され過ぎているなか、このルールが今後も厳格に守られるか?は怪しいものだし、それに・・・イタリア人のマリオ・ドラギECB現総裁の後継者には、一時はドイツのイェンス・ワイトマン独連銀総裁(「タカ派」)となりそうな懸念?があったものの、結局はスペインやイタリアに(金利水準が?)近いフランス・・・人のクリスティーヌ・ラガルド氏(現IMF専務理事、超「ハト派」?)となったから、ECBが上記ルールの変更に踏み込むのも、そう先のことではなさそうです(?)。

 まあ実際にECBがキャピタル・キーのルールを変えなくても、以前から書いているように、おそらくECBにはESM欧州安定メカニズム:EU諸国の金融セイフティーネット)の債券とかを買う、という手が使えるでしょう(?)。これであればECBは、ESM債を買うのであって特定国の国債購入ではない、などと言い訳できるし、他方でESMはECBに刷ってもらった資金をその特定国に供与をすることができそうだ、と考えるためです。とはいえ、これ実質的な特定国支援にほかならず、さすがに子供だましにもならないから、もっとアタマのいい手段を考えているとは思いますが・・・(?)

 ともかく、そんなこんなでECBが近い将来、何らかのかたちで、いまスゴい勢いで発行されている超長期債を買い取ってユーロを大量散布する事態は避けられそうもありません(?)。ということは、ECBの足元を見透かしてアイルランド、ポルトガルキプロス、そして・・・ギリシャ(!?)といった仲間たち(?)も今後、相次いで100年債を起債する(発行を認められる)ような気が・・・って、まさに世紀末、というか「ユーロ」末ってことに?

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【仏西伊の超長期債発行は「50年後もEU圏に居座る」とのメッセージ】欧州、超長期債を乱発!のあげく…②

2019-09-13 00:00:41 | ヨーロッパ

前回からの続き)

 前述、主要中銀の金融緩和がもたらした異常な低金利環境をいいことに、いまや世界各国(の財政当局)が超長期債(償還まで10年を超える債券)を乱造乱発(?)しているわけです。それらのうち本稿で注目したいのは、欧州連合(EU)諸国・・・のなかでも支払い能力が相対的に低い国々がこれをさかんに振り出していること。具体的には、EU諸国の国債価格を高い(利回りの低い)順に並べた不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」において中間あたりに位置するフランス、そして同国「未満」のスペインやイタリアといった国々が償還期を数十年も未来に定めた国債を発行しているわけです、もちろん「ユーロ」建てで・・・

 こちらの記事を含めて以前から書いてきたように、EU圏各国の経済力に大きな差があるなかで、各国の財政は国ごとにばらばら、他方で通貨と金融政策が統合されているために、これにともなう「歪み」がいろいろと生じます。その最大のものが「金利といえるでしょう。これ上記不等式が物語るところです。すなわち、フランスをだいたいの境に、それより上位のドイツやオランダといった国々にとっては自国経済の実態に照らして「金利低過ぎ」(ユーロ安過ぎ)で、下位のスペインやイタリアなどの国々には「金利高過ぎ」(ユーロ高過ぎ)になる、といったことです。

 で、上記を踏まえると、本来ならば(フランスはともかく)西伊あたりがユーロ建ての超長期債を発行するのは不可能に近いはず。というのは、実力に比べて強すぎる通貨であるユーロ建ての超長期債務をスムーズに履行していけるはずはない、と投資家は考えるから、その債券価格は安くなり、調達金利が上がってしまうので、両国にとって財政資金を確保する手段としての超長期債の発行は割に合わなくなるからです。このあたり想像がしやすいように極端な「たとえ」を考えてみると・・・北朝鮮が(最強通貨の)円建て100年債を100億円分発行するようなもの。そんなボロ債、誰も買わないから同国政府は1円の資金も調達できない―――これに近いです(???)。

 でも実際には、この北朝鮮債・・・じゃなかった仏西伊の超長期債が、まさに飛ぶように売れています。これ、いかにオソロシ~ことか、簡単に想像ができるというもの。まずは各国にとって。もしこれら債券が何かをきっかけに一転、一斉に売りを浴びたら、同発行国の金利は急騰して財政破綻そしてデフォルトは必至です。そしてこれら国債を買った投資家、あっという間の暴落で巨額損失は免れない・・・ので、皆われ先に投げ売ろうとするため、さらに金利が上がって・・・となる。たいへん失礼ながら、これイタリアとかなら余裕で現実になりそうだけれど!?

 といったように、常識的な(市場原理に基づく)見方と欧州の現実があまりに違っています。いったいどうして?・・・って、まあ次のような具合でしょう。つまり、超長期債を大量に振り出すことで仏西伊といった面々は―――「この国債の償還期限が到来する50年先までユーロ圏に居座りますからね、だから万が一のときも面倒を見てくださいね」というメッセージを発しているわけです。で、これを受けるしかないだろう、と市場が見込んでいるということ・・・って、どこが? もちろんECB欧州中央銀行)・・・と、ひょっとしてドイツが(?)。

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

【仏、西、伊など、続々と超長期債を発行中!】欧州、超長期債を乱発!のあげく…①

2019-09-11 00:03:15 | ヨーロッパ

 まあ・・・日本が絶対に揺るがないってことだけは、たしかでしょうね、こんな状況ならば・・・

 前回の記事でもふれたように、いま世界は完全な「債券バブル」(市場原理では説明が付けられないくらいの高値で債券が買われる状態)にあります。この環境(財政資金の調達コストが異様に低い金融環境)を利して、先進国・新興国などの違いによらず、各国は次々と起債に踏み切っているところです。本来、国債がこのように市場にあふれるような事態になれば、それらの価格は下落して金利が上昇し、それだけ財政負担が増すために各国はその発行を手控え、かわりに増税等で資金を調達しようとするものです・・・が、いまは主要中銀が緩和的な金融政策を通じて異常な低金利を演出しているため(国債を高過ぎる価格で購入するため)に、みんな安易に国債発行に頼り、あげくに政府債務を持続不可能なスケールにまで積み上げることになるわけです。ホント麻薬だよ、緩和マネー・・・

 で、ここで取り上げてみたいのは、元本の償還までに10年を超える超長期債。常識的に考えれば、10年を超えるほどの遠い未来に、債券発行体がちゃんと償還に応じられるのか、応じられるとしてもインフレ率がリターンを大きく上回って損をするのではないか、といったリスクがあるから、その利回りは相対的に高くなる(価格は安くなる)ところですが、いまは上記の異様な(?)環境のもとですから、これらがまたけっこうな高値で売れているわけです・・・

 そんななか、欧州でも超長期債の起債が目立ってきています。2016年春にフランス、ベルギー、そしてスペインが50年債(50年!)を発行したのをきっかけに、以降は続々と超長期債が登場し、2017年にはオーストリアが(何と!)「100年債(1世紀債)」を、しかも売り出し時の利回り(な、何と?)2.1%という高値で売ることに成功しています。そして直近、今月5日もフランス(30年債)とスペイン(50年債)が超長期債の応札を実行したほか、ブルームバーグによれば間もなくイタリアが20年ないしは30年債を発行すると予想されるとのこと・・・

 いや~債券バブルも極まったね・・・と誰もが感じるところでしょう。自分たちよりも3~4世代も後の、数十~100年先に償還期限がようやく到来する国債がこれだけ大量に振り出されて、しかも驚くほど高値で取引されているわけですから・・・っても、仏西両国の上記国債の応札倍率は過去最低を記録したそうなので、遅ればせながら高過ぎ(利回り低すぎ)への警戒感がちょっぴり広がってきた、というべきなのでしょうか・・・?

 で、ここで超長期債でもEU(欧州連合)諸国債に言及したのは、そのなかの中低位国、すなわち国債価格を高い順に並べた(長期金利の低い順に並べた)不等式「独>蘭>仏>西>伊>・・・>ギリシャ」のなかで、真ん中あたりのフランスから下位に属する国々の超長期債の起債が目立つところが気になるためです・・・

(続く)

金融・投資(全般) ブログランキングへ

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする