世界雑感☆新しい世界は日本から始まる☆

世界の激動を感じつつ、日本経済への応援メッセージを徒然に綴るページです。
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【米、乗用車に25%の高率関税賦課を検討】輸入車関税賦課:米トランプ大統領の本心「雇用創出」①

2018-05-29 00:03:08 | アメリカ

 鉄鋼・アルミ製品に留まることはなく、やがては「本命」にも来るだろう、と予想してはいましたが、これほど早く、とは・・・

 ドナルド・トランプ大統領23日、自国の安全保障の観点から、アメリカに輸入される自動車および自動車部品に追加関税を課すことの検討に入ると発表しました。米WSJによれば、乗用車に対する現行2.5%の関税を最大25%にする案などが浮上しているもようです。

 米自動車調査センターのデータによると、昨年のアメリカにおける乗用車販売台数(約1730万台)のうち輸入車が占める割合は5台に2台以上の44%にもなっています。それほど膨大な数ならば、もしこの措置が強行されたら当然、わが国のような自動車の対米輸出国・・・ばかりかアメリカ国民の多くもたいへんなダメージを被ることになるでしょう。

 前者としては、アメリカ向け輸出車の同国内の販価が25%も上がって売れなくなり、その結果、なかには米市場から撤退を余儀なくされるメーカーなどが出てくるかもしれません。後者の米国民だって本当なら輸入車を買いたいのに高くて買えず、結局は安い・・・けれど品質等が劣る(?)自国産で我慢するしかなくなります(?)。もちろん輸入車販売業も苦境に陥るでしょう。そんな感じでともに―――アメリカも日本等も―――アンハッピーになるおそれが高いにもかかわらず、どうしてトランプ大統領は無茶をしようとしているのか・・・

 そのあたりについて一部には、難航している北米自由貿易協定の再交渉に当たって米政府はカナダやメキシコから譲歩を引き出したいからだ、といった見方があるみたいです。上記の輸入車割合「44%」のうち両国からの輸入はともに約11%を占めているため、これに高い関税をかけるぞ!というのはかなりの圧力になるはずです。もちろんアメリカは、日本やドイツといった対米貿易黒字国に対する貿易不均衡の是正要求でも今後、同様の厳しい姿勢を示してくるでしょう。

 ・・・ですが、ここで米政権がこれらの交渉とか政策で真に得ようとしているのは、自国に有利な交易条件等だけではないと思われます。一番の狙いは・・・何といっても「Job(雇用)」。これこそトランプ大統領の有権者(とくに支持母体の白人中間層)に対する最大の政治的約束であり、必達のミッションです。つまりトランプ氏は、関税引き上げによって輸入車の流入を削減し、その分だけアメリカ国内での生産台数の増加を促して雇用数や賃金水準を高めようとしている、ということです。したがってトランプ氏らの本心は次のようになるはずです(?)―――「わがステイツは、自分たちの車は自分たちで作ることにしたから、車の輸入なんてもうしない、カナダからもメキシコからも、そして、日本からも・・・」

(続く)

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【日本にとっては米も新興国と同じ危うい借金バブルに頼る国…】国内の「新興国」に悩まされそうなアメリカ④

2018-05-27 00:00:22 | アメリカ

前回からの続き)

 アメリカの金利上昇にともない、投資マネーに逃げられる立場の新興国が資金繰りの悪化で危機に瀕しているわけですが、これと似たような現象がほかならぬアメリカ国内・・・の多くの一般家庭で今後、顕著になっていくでしょう(?)。これによってアメリカでは、返済資金を確保しようと株や不動産等が投げ売られて大規模な資産デフレが起こるとともに、家計破産が多発し、貸し倒れや不良債権が急増して金融システムが機能不全に陥り・・・といった負の連鎖が・・・

 ・・・ということでアメリカは新興国の苦境をけっして「対岸の火事」視できないはずです。むしろ「まもなく自分にも火が・・・」と最高度に警戒して、いまから足元の消火(バブルのソフトランディング)に動かないと・・・って、こちらを含めて何度も書いているように、個人的にはすでに手遅れだと超~悲観していますが・・・

 さて現在、「ドル>他通貨」(実質金利差)によってドルの強さが際立っていて気が付きにくいけれど、じつはドル・・・のアメリカ国家もまた、新興国や自国民と同じく、他人のおカネを借り入れて国を回しているわけです。では誰がアメリカに資金を貸し付けているのかといえば、産油国や中国(って、同国はいっぽうで自身の通貨の価値をドルに裏付けて確保しているから、せいぜいアメリカ[ドル]と同位に留まるしかない?)、そしてドルに依拠することなく自身の経済力で通貨の信認を確保している世界一の債権国・日本・・・。つまり、わが国こそがグローバルな投資マネーの「総元締め」―――新興国を支えるマネーを投資するアメリカにおカネを融資している国―――です。

 したがって、もし日本の金利が上がったら、起こることは・・・アメリカと新興国(と今後の米家計)との間でいま起きていることと同じ、つまり激しい円高ドル安であり、ひょっとしたらデフォルトです、アメリカの・・・(?)。そう日本(円)は、新興国(トルコリラ、アルゼンチンペソなど)の生殺与奪を握るアメリカ様(ドル)のさらに上位に君臨し、かの国の命運を握らされている(通貨)です、畏れ多いことに・・・って、何度もご紹介「円>ドル>ユーロ>新興国通貨」を別なかたちで表現しておりますが・・・

 こちらの記事に書いたように、「ステージⅣ」の末期バブルの治療にようやく入った感じのいまのアメリカの(長期)金利が跳ね上がらないように実効力を行使しているのは、同国の中銀FRB・・・ではなく、上記「」を通貨に持つ日本・・・の日銀です。そう考えてくると、トルコやアルゼンチンといった新興国の人々・・・ばかりか米国民の今後がどうなってしまうのか、は日銀次第のように思えます。つまり、もし日銀が現行政策を打ち切ったら(緩和策縮小に入ったら)各位はたちまち逝くでしょう、もし続けたらバブルは「がん細胞」のようにさらに転移拡大して、結局はもっと派手に逝くでしょう、ということ・・・って、あれ?どのみち昇天は不可避か・・・。であれば少しでも穏やかに、すなわちいまのうちに・・・が「王者」としてのせめてもの「情け」なのではないでしょうか・・・

(「国内の『新興国』に悩まされそうなアメリカ」おわり)

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【米家計債務、過去最高額を更新のなか、延滞率も上昇中…】国内の「新興国」に悩まされそうなアメリカ③

2018-05-25 00:04:23 | アメリカ

前回からの続き)

 米FRB等が発表したデータによると、2017年第4四半期(1012月)のアメリカの家計債務は年率5.2%増と2007年以降では最高率で拡大し、同時点での合計残高は13.1兆ドルとなり、4四半期連続で過去最高額を更新しています。クレカローンが前期から3.2%増えて2007年以降で2番目の大きさ、自動車ローンは過去最大額を記録、住宅ローン5四半期連続で増加しており、2008年の最高値を抜くのも時間の問題(?)と思われます。

 いっぽう、ローン返済の滞りも目に付くようになってきました。クレカローンの90日以上返済が滞ったローンの比率は7.55%と2016年以来の高水準になっています。自動車ローンのほうも同様で、格付け会社フィッチレーティングス等によると米サブプライム層(支払い能力が低い層)向けローンの60日を超える延滞率は5.8%とすでに2008年金融危機時(約5%)を上回るレベルにまで高まっているとのこと・・・

 こうした状況は、全家計債務の約68%(2017年第4四半期時点)を占める住宅ローンにも及んでいることが推察されます。同ローンのうち30年固定金利は2012年には3%台半ばくらいでしたが、以降はじりじりと上昇し、直近(5/11)では4.77%になっています。これ、借入額が大きく数十年にわたって返済が続くローンですから、こうして1%少しでも金利が上がるのは家計にとっては大ダメージのはず。よってここでも資金繰りが苦しい中低所得層からローン延滞とか、最悪ローン破綻が続出する事態が今後予想されるわけです、金利がこのまま上がり続けるのならば・・・

 ・・・といったように低金利をいいことに弁済能力をはるかに超える巨額の(ドル建て)債務を抱えてしまったという点では先述の新興国と上記の米家計はよく似ているといえるでしょう。そして両者とも「バブル」を当て込んでいるところもそっくりです。前者は原油や鉄鉱石や小麦といった一次産品価格が、後者は株やジャンク債や不動産などの資産価格が、いつまでも値上がりを続けるだろう、といった何とも都合の良い見通しに基づいて借り入れを膨らませた、というわけです・・・

 こちらの記事に書いたように、すべてのバブルのうち「逆オイルショック」に象徴される原材料バブルは2014年半ば以降、一足早く崩壊過程に入ったと思われます。他方で金融資産&不動産バブルのほうは現在まで膨張中(?)。このあたりが同じ巨大債務者でも先に新興国が苦しくなってきたことの大きな理由でしょう。かたや米家計は表向き、大丈夫そう(?)にみえても、上記バブルもまたバーストが不可避のため(?)、やがては相対的に「フラジャイル」(資金繰りが脆弱)なサブプライムな人々から順次、追い詰められていくのではないか。それはあたかも新興国の中でもとくに弱い(経常赤字国でこれといった外貨獲得源が乏しい)トルコアルゼンチンのような国々が真っ先に危機に陥ったように・・・

(続く)

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【巨額ローンを抱える家計は米国内の「新興国」のよう】国内の「新興国」に悩まされそうなアメリカ②

2018-05-23 00:03:32 | アメリカ

前回からの続き)

 前回、アメリカの(長期)金利の上昇を受けてトルコやアルゼンチンといった新興国の通貨が対ドルで大きく下落している様子をご紹介しました。これら諸国は米ドル建ての借入額を膨らませており、自国通貨が下がるとそれだけこれらの返済負担が増えることになります。したがってこれ以上の通貨安は何としても阻止したいはずで、各国は利上げとかドル売り自国通貨買い為替介入といった通貨防衛策を今後も繰り出すのでしょうが、はたしてうまくいくのか・・・

 ・・・といった感じで、最近のビジネスニュースでは新興国のこうした苦境を伝えるもの、およびドルの他通貨に対する強さを強調するものが目につくように思えます。では今後もこのトレンドが続くのか―――アメリカの長期金利がじわじわと上がり、ドルが他通貨に対して上昇し、いっぽうの新興国通貨が下がり続けて一部がドル建て債務の不履行に追い込まれる、みたいな展開になっていくのか―――ですが、コトはそう単純ではないでしょう(?)。その理由は、新興国の悲劇は不可避として(?)、ほかならぬアメリカ・・・の国民もまた、ローン金利の上昇で危機に陥りそうだと予想されるためです。

 以前から何度も書いているように、米FRB(と日銀?)が長年にわたって演出してきた低金利環境をいいことに(?)、アメリカの一般家庭の多くは借金消費生活を謳歌(?)してきました。それはそうでしょう。米長期金利でみると2014年初頭からこれまで4年以上の長きにわたって3%」を下回る低水準で推移してきたわけですから、住宅や車を購入するに当たってローンを組まない手はありません(?)。

 さらに、株式、各種債券(新興国国債とかジャンク債等)、不動産などなど、この間の各種資産の価額は同国のGDPとか賃金の伸びを大きく上回る勢いで上がってきました。ということは、これらの価格の上昇率が借金金利を上回り、いざとなればこれらを売却すれば容易に残債を返済できるだけのキャッシュが得られるわけで、人々は安心して(?)ますます借金に走った、といった具合です(?)。

 ・・・そんななかでの米長期金利の上昇、借金消費を支えた上記2つを反転させます。つまりローン金利を「低」から「高」へ、いっぽうの資産価格を「高」から「低」へ、ということです。こうしてアメリカ家計の資金繰りは一転、じわじわと厳しさを増していくことに・・・。これは新興国が米金利の上昇とともに債務返済に窮していく構図と基本的に同じです。そんな意味で、アメリカは国内に「新興国」・・・にも似た「フラジャイル」(支払い能力が脆弱)なローン層を大量に抱えているといえるでしょう(?)。

(続く)

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【新興国通貨、対ドルで安値記録を更新中!】国内の「新興国」に悩まされそうなアメリカ①

2018-05-21 00:02:46 | アメリカ

 対岸の火事、かと思いきや、実は足元からも火が・・・なんて展開に、この先なっていくような気が・・・

 新興国の通貨が対ドルで安値記録を続々更新中です。トルコリラは16日時点で1ドル約4.5リラと過去最安値付近になっています。同国のエルドアン大統領が来月の大統領選に勝利したら金融政策への関与を強める意向を明らかにしていることもリラの軟調に拍車をかけている模様です。南米のアルゼンチンは今月4日、政策金利を何と!年40%にすると発表しました。先月下旬から利上げをしてきたものの同国通貨ペソが下げ止まらないためにさらなる利上げに追い込まれたもの。合わせてIMFに対して300億ドルの信用枠設定を要請しています。これら緊急の策で同国はペソのこれ以上の下落を食い止められるのか・・・

 トルコとアルゼンチンに加え、ブラジル、インドネシア、メキシコ・・・などなど、程度の差こそあるものの、いずれの新興国の通貨も対ドルで大きく値を下げています。その最大の要因は、アメリカ・・・の金利の上昇です。こちらの記事等で書いているように、同国のFRBはすでに政策金利の引き上げを再開しており、今年も数回程度の利上げを予定しています(?)。これに加え、ドナルド・トランプ政権の大減税政策にともなう財政規律の悪化見通し、さらには日銀の金融政策が規模縮小に向かうのではないかといった観測などから、今年に入って長期金利の上げ足が速まっているのはご存知のとおりです。18日時点の値は3.06%と、マーケットはもう「3%」を天井と意識しなくなったみたいです・・・

 こんなふうにアメリカの金利が上がれば、新興国通貨が米ドルに対して弱くなるのはもっともです。投資家のマネーは、インフレ等のリスクが高い新興国通貨でなくてもドルで利回りを取れるようになるから。これを本ブログでたびたびご紹介している通貨の強さを表す不等式(実質利回りの大きい順)「ドル>新興国通貨」で表現すると、両者の「差」がここのところ拡大しているということになります。

 まあ上記のトルコ、アルゼンチンといった国々は苦しいところですね。たしかに以前(アジア通貨危機等の頃)に比べると多くの新興国が外準を厚くしていて、投機筋の通貨売りに対する耐性は強くなっているみたいです(?)。が、どこも自国の一次産品の価格値上がりを当て込んでドル建ての債務を膨らませている点では似通っていて、そのあたりどこまで大丈夫なのか心もとないように感じられます。今後これらのなかから、追加利上げしても通貨下落がおさまらず、巨額の外貨売り介入に追い込まれて「虎の子」を喪失してデフォルトへ・・・なんて破局に陥る国が出てくる恐れもゼロではないでしょう・・・

(続く)

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【このままでは次々に「外」に出て高値で掴んで、の悲劇が…】いまは外資買い厳禁の「巣ごもり」期間のはずでは⑤

2018-05-19 00:01:40 | 日本

前回からの続き)

 以上ここまで、最近の日本企業による海外大型投資案件について思うところを綴ってきました。いずれも株高外貨高(アベノミクス円安)という、本来ならば外国資産には手を出すのが非常に危険な環境下での逆行買い(?)であり、個人的には今後が心配でなりません。ただでさえこれらには投資額に見合う価値があるようには思えないうえ、いまは実質実効レート的に25%も円安、つまり同レートで妥当とされる水準と比べるとそのぶん余計な円貨を費やすことになって投資効率が極端に悪いはず。むしろいまは、トヨタ自動車が米テスラモーターズ株を売り抜けたように、手持ちの外貨建て資産を手放し、それで得たをキープして「巣ごもり」つまり次の投資機会がくるまでじっと待つべき時期だと考えますが・・・

 ・・・って、まあたしかに上記案件に限ればどれも厳しいビジネスになりそうな予感がするものの、わが国全体ではまだ大丈夫かな、とも思います。理由は、こちらの記事で書いたキャッシュリッチ」ぶりで分かるとおり、日本の企業等の多くが実際には上記「巣ごもり」に入っている様子が窺えるためです。ホント、この判断は適切ですね(?)。これが欧米等の優良企業(?)なら、自社株買いをしたり配当を増やしたりしてこのキャッシュを社外に流出させるところですが、本邦企業はそんなことをしないで、こうして勝ち残りをかけて次の設備投資等に備えているわけですからね・・・

 というわけで、この国では次の一手に向けた準備も原資も十分に整っています。あとはこれを妨げる「何か」を改めるだけ。逆に早くそうしないと、上記ケースのようなこと―――「巣ごもり」の長さに耐えかねた企業や投資家が「厳冬」のさなかに外に飛び出してしまうこと―――が次々に出てきて、結局わたしたちは第二、第三の「悲劇」を目の当たりにすることになってしまいますよ・・・

(「いまは外資買い厳禁の『巣ごもり』期間のはずでは」おわり)

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【富士フィルムのゼロックス買収、一部株主の反対「渡りに船」か】いまは外資買い厳禁の「巣ごもり」期間のはずでは④

2018-05-17 00:03:57 | 日本

前回からの続き)

 富士フィルムホールディングスが進めようとしている米印刷機器会社ゼロックスの買収の雲行きが怪しくなっています。一部の株主がこれに猛反発しているためです。

 今年の1月、富士フィルムはゼロックスの株式50%超を取得して傘下の富士ゼロックスと統合させることで合意したと発表していました。富士ゼロックスはもともと富士フィルムとゼロックスの出資比率が1:1だったものが、ゼロックスの業績が落ちてきたことをうけて富士がその持ち分の一部を買い取ったために現在の同比率は3:1になっています。今回は、いったん富士ゼロックスに富士フィルムからすべての自社株式を取得させ、これをゼロックスの完全子会社にしたところで、今度は富士フィルムが富士ゼロックスから得たおカネでゼロックスを子会社化しようというもの。こうして誕生する新しい「富士ゼロックス」はいままでゼロックスの商圏だったアメリカを含めた全世界への展開を目指すといった方向になるようです。

 これに対し、この買収に反対する少数株主(出資比率15%)が支配するゼロックスの取締役会がこのほど上記合意の破棄を発表しました。先導したのがゼロックスの大株主である投資家のアイカーン氏とディーソン氏ら。これにより同合意に賛同した役員数名が退任するとともに、あらたにアイカーン氏の会社のCEOがゼロックスの会長に就任する見込みだそうです。富士フィルム側は当然ながらこの決定に抗議、法的措置も辞さない構えのようですが・・・

 さてこの買収劇、今後の展開は不透明ですが、個人的には富士フィルムはこれを無理して進めなくてもいいのかな、と感じています。その理由は、米ゼロックスに大きな価値や今後のポテンシャルを見出せるようには思えないから。

 たしかにゼロックスは、現在のコピー機などにつながる機器類の先駆者として輝いていた時期がありました。しかし、その後は競争の激化やペーパーレスの進展などで苦戦を強いられている印象です。成長が期待できる分野もあまり持っていないように感じられますし・・・

 加えて、前述したようにいまは「株高ドル高(アベノミクス円安)」という本邦企業の外資M&Aにとってはスゴ~イ逆風が吹きつけているわけです。そんなビジネス環境をふまえると、上記の強行は避けるべきであり、むしろこれをペンディングさせる大義名分を与えてくれた、という意味では先方からの上記合意破棄の動きは「渡りに船」かもしれませんよ(?)。

 アイカーン氏らはいっぽうで、ゼロックス株1株当たり40ドルの現金買いならば受け入れを検討する、なんて言っています。要するに、そのあたりが本心なのでしょう。つまりアメリカの各位は、伝統ある米企業が日本企業に買収されることの嫌悪感(?)を煽って一部株主にその反対を唱えさせてハードルを上げ、富士フィルムにさらに高値で掴ませて儲けてやろう!という算段に違いない(?)ということです。なので、絶対に40ドルなんかで食いついてはなりませんからね。ゼロックスのいまの株価28.5ドル(15日終値)でも高過ぎるくらいなのだから・・・って、アベノミクスが終わって1ドル50円くらいになったら、それでもいいけれど・・・(?)

(続く)

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【日立の英原発事業、コスト上昇&ポンド高で超危険?】いまは外資買い厳禁の「巣ごもり」期間のはずでは③

2018-05-15 00:00:41 | 日本

前回からの続き)

 日立製作所英国で計画している原子力事業が重大な局面に差し掛かっています。これ、同国ウェールズ地方にあるアングルシー島に日立製の原子炉2基を擁する原子力発電所を新設しようというもので、近年中の着工、2020年代半ばの運転開始が計画されています。2012年に日立は本プロジェクトの実施会社であるホライズン・ニュークリア・パワーの所有権を890億円でドイツ企業から取得し、これまでにその準備等に2000億円をつぎこんできたとのこと。しかし、その間の英国における原発の規制強化等によって事業コストが200億ポンド(約3兆円)ほどに膨張し、一民間企業が背負うにはリスキー過ぎる案件になってきていました・・・

 この3兆円について当初、そのうち2兆円は日英両国の金融機関の融資で、残りの1兆円は日立と日英政府・企業の出資で賄う予定だったそうです。この融資には日本のメガバンクと国際協力銀行が応じ、これを日本貿易保険が債務保証するというスキームでした。他方、事業リスクの高まりから日立は英国に対し、政府支援が十分に得られないのなら事業から撤退する可能性を伝えていました。そんななかで今月3日、日立の会長と英国のメイ首相との会談が行われ、英国側は上記日英の銀行融資の全額を債務保証する案を提示した模様。これは何とか日立に踏み止まらせたいという同政府の強い熱意の表れとみることもできそうです、が・・・

 ・・・日立としては、じつに悩ましいところだろう、と推察します。東日本大震災にともなう原発事故による影響で、日本国内はもちろん世界各国でも原子力ビジネスは停滞気味です。そんな中で英国の本事業は、数少ない先進国の案件として、何とか実施にこぎつけたいものでしょう。逆にこれをいま作っていかないと、これまで培った原発設計・建設・運用のノウハウを高いレベルで維持し、発展させることがますます困難になり、日立は原発事業そのものから撤退せざるを得なくなってしまうかも・・・

 ですが、上記のとおりこれ、非常に危険なビジネスになっています。いくら英国政府が保証するっていっても、コストがさらに膨張するおそれがあるし、だからこそ日立は本事業の発電1メガワットを市場価格の1.5倍以上の80ポンド半ばで買い取るよう、英国に求めているわけです(同国は6070ポンドに抑えたいもよう)。こんな高額の電気代を英国民が唯々諾々と受け入れるとはとても思えませんが・・・

 このあたりに本稿の文脈に基づく指摘を加えると、英国・・・の通貨ポンドは、本プロジェクトのコスト回収に必要な数十年間(!)もの長いスパンで予想するならば・・・に対して大きく減価するのはほぼ必然です。以前こちらの記事アベノミクス」(円安誘導)前のポンドの値動き(対金価格)がはもちろんドルユーロなどを大きく下回って推移した様(って韓国ウォン並みのトホホぶり?)を紹介しましたが、これが本来のポンドの実力―――英国経済の実態のはずです。つまり・・・いまのポンド高(アベノミクス円安)局面で掴んだポンド建て資産の価値は数十年後、オソロシーほど下落しそうだということです・・・

 原子燃料とか放射線の厳格管理といった点に加えて、海外の原発事業がコワイのはこのあたりです。巨大コストを取り返し、利益を上げられるようになるまでに超長~い時間がかかること、そしてその間に得られる売り上げとしての外貨が円に対してどんどん値を下げてしまうこと、さらに事業スタート時点での相手通貨が対円で高過ぎること・・・

 以上をふまえ、日立には「合理的」な経営判断を期待しています。どうか同業他社の二の舞だけは避けてくれますように・・・

(続く)

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【したたかなトヨタ、テスラ出資・解消で巨額利益ゲット!】いまは外資買い厳禁の「巣ごもり」期間のはずでは②

2018-05-13 00:01:56 | 日本

前回からの続き)

 前回、武田薬品工業によるアイルランド製薬会社「シャイアー」の約460億ポンドもの巨大買収については、現状の株高&ポンド高(アベノミクス円安)のなかで(超?)「高値掴み」となるリスクが高いものとの個人的な見解を綴りました。こちらの記事等でも書いているように、わたしたち日本人にとっていまは「巣ごもり」が適当な投資環境。そんな「厳冬期」にこうしてド派手に「外」に出たらどうなるか・・・って、非常に心配されます。これが杞憂になることを切に願いたいですが・・・

 さて、このあたりに関連して、本件とは逆に、上手だったな~と感じさせるケースが、トヨタ自動車の米電気自動車(EV)メーカー「テスラモーターズ」との連携およびその解消です。

 トヨタは2010年にテスラと資本・業務連携してEVの共同開発を進めることにしました。その際にトヨタはテスラに5000万ドルを出資して同社株3.15%を取得しています。ですが、その後、両社の方向性が食い違ったために協業は進展せず、トヨタは14年にテスラ株の一部を売却、15年以降は実質的な協力関係がないままになり、16年末までには残っていた1%あまりの株式すべてを手放したとのこと。

 まあトヨタは当初こそ本気だった(?)ものと思いますが、結果としてこの解消にともなうテスラ株の市中売却で500億円を軽く超える利益を得たと推測されています。2010年当時は円高ドル安(1ドルがおおむね80円台)だったし、2016年は円安ドル高(12月時点で同約116円)だったうえにテスラ株はその頃は上昇局面にあって同年末には210ドル台(2010年頃の約10倍!)になっていましたから、これ単純に外国株投資とみなしても、ドル安株安時に買ってドル高株高時に売り抜けるという、理想的な展開だったといえるでしょう。

 考えてみると、トヨタほどの会社であれば、EV開発くらい自力でできるわけで、なにもテスラなどと協業する必要はありません(?)。よって同社の上記判断は経営的に適切であり、そのうえこれで多額の売却益をゲットできたのだからこの「連携」(?)、大成功だったといえそうです。このおカネを、たとえば次の事業投資―――自前のEV開発等―――に振り向けたりすることもできますし・・・って、トヨタはしたたかなことに、はじめからこのあたりを狙っていたのかも・・・(?)

 こちらの記事で、テスラが損失を垂れ流し続けているアブナイ状況にあることを超~不安視しましたが、現在、同社の資金繰りはさらに厳しさを増しているようです(17年度は16億ドル以上もの営業損失を計上!)。その様子を眺めるたび、トヨタはうまかったよ、とあらためて思うとともに、EVの心臓部に当たる車載電池をテスラに供給する本邦企業パナソニックには債権回収等を急ぐよう、望みたいものです。

(続く)

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【武田薬、外資の巨額買収で3.4兆円も負債増!】いまは外資買い厳禁の「巣ごもり」期間のはずでは①

2018-05-11 00:02:06 | 日本

 以前の記事で「外資の巨額買収はNGだ、とくにいまは」って警告しておいたのに・・・って、これが大きなお世話の杞憂に終わればいいのだけれど・・・

 武田薬品工業がアイルランドの製薬会社シャイアー(Shire)の買収に合意したと発表しました。買収総額は460億ポンド(現時点のレートで6.8兆円あまり)と、日本企業によるM&Aとしては圧倒的な史上最高額(汗)。あとは両社ともに株主の了解を待つばかり、とのことですが・・・

 ・・・あくまで個人的な感覚ですが・・・このM&A、武田にとって二重の意味で「高値掴み」のおそれが大きいものに思えます。

 1つ目は、本件が世界的な株高局面での大型買収になること。本ブログで何度も言及しているように、おそらくピークは過ぎたとみられるものの(?)、いまのマーケットが引き続き株バブルのなかにあるのは疑いのないところ。シャイアーの株価および時価総額も同様で、適正価格から上振れているものと思われます。同社株(米NASDAQ上場分)の今月7日終値時点でのPERは約34倍、PBRは約4倍と、いずれも常識的には手出し無用といえる水準(?)。まあ本買収交渉が表沙汰になった3月末以降だけで2割ほども上昇していますが、それを差し引いてもシャイアー株が現在、かなりの高値に達している印象を受けます。

 2つ目は、為替レートが相当な円安ポンド高になっていること。これまたしつこく指摘しているとおり、「アベノミクス」(≒円安誘導)にともなって、実質実効ベースで円が対ドルで2割以上も安い状況がここ何年も続いています。英ポンドも、アベノミクス開始直前(2012年秋~冬)の1ポンド120円台が、いまは同150円ほどと、同じく2割ほどポンド高、つまり本邦企業がポンド建て資産を買うのにアベノミクス後は2割も余計に円貨を支払わなくてはならなくなっています。

 本M&Aにあたって武田はシャイアーに対し、現金30.33ドルと新株発行を合わせて149.01ポンドでの買収を提案しています。当初案では前者がもっと少なかったそうですが、シャイアー側がキャッシュ支払い部分を増やせと要求したので、こうなったもよう。ということで武田はこのタイミングで、つまり1ポンド約150円というポンド高の局面で巨額の現ナマを用意しなくてはならなくなりました。これに関連して同社は本邦メガバンク等と総額308.5億ドルものつなぎ融資契約を締結したそうですが・・・こんな大借金、ホントに返済できるのか?

 以上の2点―――株高&ポンド高(アベノミクス円安)―――でメッチャかさ上げされた(?)買値をこなして武田がこのM&Aで利益を得るのは至難の業(?)なのではないでしょうか。むしろ3.4兆円もの負債の増加で資金繰りが悪化し・・・といったあたりが悲観視されているようで、武田の株価は2月初旬の直近高値から約3割も下落していますが・・・

(続く)

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