ふと気がつけば、明日から霜月 11月…。間もなく当地でも街は紅葉の彩りで染まります。工房においては、個展でうけたまわった注文作品の制作、ならびに陶芸教室の日々が過ぎていきます。秋も深まり、工房の奥まで差し込むようになった陽ざしを背中に浴びながらの陶芸の心地よさはこの季節なればこそ。
この10月半ば以降、陶芸教室の中で、そして街で友人知人と会った時に「どうもありがとうございました!」と言われ、思わず「えっ、なんでしたっけ?」とワタシがドギマギすることが何度もありました。皆さんから、「個展のお礼ハガキ、ですよ」と微笑まれ、「いえいえ、こちらのお礼の気持ちをお伝えしただけです」と、少々照れながらアタマをポリポリ…。
毎年欠かさず、個展にお越しいただいた方々にお礼状をお出ししていますが、不思議なことに今年はそのお礼状に対してとても多くの「お礼」のお言葉をかけられました。お言葉だけでなく、
自作の版画を刷ったポストカード 直接、「配達」してくれたポストカード
というカタチでのお礼もいただきました。作品への評価とともに、いろいろな場面、方法で皆さまとつながり合えることに対し、あらためて感謝の意を強くいたします。重ねがさね、ありがとうございます。
工房内の棚には陶芸教室会員の皆さんの作品が「所狭し」、そして「整然と」並んでいます。手びねりで成形したばかりのまだやわらかな器から完成品までさまざま作品群の中で、会員さんたちが「アレはどのように仕上がるのだろう?」と、ひそかに注目されていた作品が焼き上がりました。その作品はウチの陶芸教室にかよって来てくれるチビッ子陶芸家さんの手になるものなのですが、これがこれが、見事な出来栄えとなりました。
以下、微力ながらワタシも手伝わせていただいた 渾身の作 制作の一端を…。
チビッ子陶芸家さんは「蓋付きのラーメンどんぶりを作ろう♪」と言いながら、手慣れた手つきで手びねり成形、削り加工をチャチャっとこなしました。その後、どんぶりの側面にあの特有の「赤いラーメン紋様」を悪戦苦闘しながら描き込みます。白いうわぐすりを掛けて焼けば出来上がりなのですが、このままでは「赤いラーメン紋様」も白いうわぐすり越しで「ピンクのラーメン紋様」になってしまいます。チビッ子陶芸家さんは「ピンクかぁ、まあ、いいか…」と言っていましたが、「ここはひとつ、お手伝いいたしましょう!」ということで、「深紅の紋様大作戦」の始まりです。
大作戦 1)チビッ子が描いた細く赤い紋様にうわぐすりがかからないようにマスキングしてうわぐすりを掛けた後、マスキングを剥がします。
大作戦 2)マスキングを剥がした赤い紋様に無色透明のうわぐすりを掛ける。この工程により、紋様がくっきりと赤く焼き上がる。
大作戦 1) 大作戦 2)
秋の日の午後、計4時間ほどの細かい細工とうわぐすり掛けを終え、焼き上がった作品は…。
麺とスープを全て平らげた時、どんぶりの底には「完食」の文字が浮かび上がります。そして、高台裏には「誕生日」と「記念」の文字も。楕円の紋様は、なんとチビッ子の「母印」!。この発想が「素晴らしい!」。
ちなみに、「完食」「誕生日」「記念」そして「母印」は、白いうわぐすりのベールに包まれてピンク色に仕上がります。
そして、こちらがチビッ子陶芸家さんが約2か月かけて制作した ラーメンどんぶり の全容。
観る者をして [えっ、これが小学生の作品!?」と驚愕の極致に誘い、同時にウチの陶芸教室にとっても「エポック・メイキング」な記念すべき作品と言っても過言ではないでしょう。
それにつけても、この作品制作にあたってはワタシも大いに頑張ってしましました。ウチの同居人さんは「自分の作品作りもそのくらい頑張れればいいのにね…」と言われてしまいましたが、その言葉はどことなく「いい仕事、したよ」とも聞こえたようにも。
秋萌えの紋様の赤 とりどり映える 紅葉に競う