馬医者修行日記

サラブレッド生産地の大動物獣医師の日々

Canadaからの実習生

2006-04-29 | How to 馬医者修行

Kate_2 去年の夏、カナダから学生が臨床実習にやって来た。

カナダも英語圏で、獣医学は日本より進んでいる。それで、本当にうちでの実習でいいのか事前にメールでやり取りしたのだが、日本でfood animalのExternshipを修了したいと言う。

他に日本の実習生も来ていたのだが、馬の臨床に関する知識の差は歴然だった。

彼女はテキサスの開業医の診療所でも実習したことがあり、馬臨床の実践的な知識も豊富だった。

開腹手術をしていて、引きずり出した腸管の部位がどこかわかるか質問する。実習生どころか新人獣医師にも答えられないのに、彼女は「私に聞いてるの?左腹側結腸でしょ」

これじゃあ、日本の獣医学、獣医学教育、獣医臨床レベルが情けないじゃないか!

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 私の英語論文をチェックしてもらった。英語文法だけではなく、内容についても間違いや弱い部分を指摘された。

 日本の獣医科学生に日本語論文を見せても、堂々と「ここがおかしいのではないか」「もっとこう書くべきではないか」と指摘できる学生はいないだろう。

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 彼女はヴェジタリアンだった。卵や牛乳、魚は食べる。宗教上の理由や、家族的な背景かと聞くと、違うと言う。ある日、動物を食べなくても生きていけるのではないかと考えた。それでやってみて、大丈夫なまま今日に至っている。とのことだった。

 BSEの騒動の中での日本の対応を知って、Food animalの実習は日本でやってみたいと考えたのだそうだ。

 大規模で、個体管理より群管理で、ある面ブロイラーのように飼育されるあちらの肉牛生産とは違った日本の和牛生産を彼女はどういう風に感じたのだろうか。

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 昨年シアトルでのAAEPに彼女もやってきた。卒業後どうするのか訊ねたら、なんとバンクーバ郊外でいきなり開業するという。

 馬の歯科を中心にやっていきたいという。

 何考えてんだ。馬の歯医者はごつい男でさえ握力がもっと必要だと思う仕事だ。

しかし、彼女にはしっかりした将来展望があるようだった。大都市郊外には結構馬がいる。しかし、その地区には開業医が少ない。開業しながら大学で博士号を取り、動物行動学の勉強を続けたい。

 日本の獣医科卒業生諸君。君達はしっかりした将来展望を持っているか?

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