DAISPO WORLD BOXING EXPRESS

今年もやってるやってる~

あの試合から30年(WBAライト級:1993年10月30日)

2023年10月31日 05時46分27秒 | ボクシングネタ、その他雑談

今から30年前の昨日にあたる1993年10月30日、南アフリカで行われた試合結果です。
WBAライト級戦:
挑戦者グッシー ナザロフ(協栄/キルギスタン)判定3対0(118-108、117-111、115-114)王者ディンガン トベラ(南ア)

*当時、私(Corleone)はこの試合が行われることは知っていました。しかし生中継が放送されるとは知らず、その日の午後にたまたまテレビをつけたら、「おお~っ、やってるではないか!」と慌てて観戦し始めました。しかもこの試合は大手のTBS局で、土曜日の日中に放送されました。今では考えられない事ですね。

この試合を振り返ってみると、いかにナザロフが好ボクサーだったかという事を、再認識させられます。世界初挑戦、しかも敵地のど真ん中にもかかわらず堂々のパフォーマンスを披露したナザロフ。そのサウスポー(左構え)スタイルからのテンポのいいボクシングは、30年経った2023年現在のボクサーたちも手本にすべきでしょう。

(現在のボクサーたちも手本にすべき名選手ナザロフ)/ Photo: BoxRec

ナザロフの挑戦を受けたトベラは、安定した評価の持ち主で、すでに30戦以上の実戦を行ってきました。米国や英国のリングでも試合を行い、マイナー団体ながらもWBO王座の獲得した経験もあります。その王座は既に返上し、ナザロフの挑戦を受ける4ヵ月前にWBA王座に鞍替えしています。

(南アフリカの生んだ名選手トベラ)/ Photo: African Ring

敵地での世界初挑戦にも関わらず、上々な滑り出しを見せたナザロフ。しかし4回終了間際、その回を有利に進めていたナザロフに落とし穴が待っていました。攻めに少々急いでしまったナザロフに、トベラの左ショート・フックが炸裂しダウンを喫してしまいました。しかし流石は後に名王者と言われるナザロフ。次の回にはダメージを見せず、キッチリとペースを奪回していきます。

ダウンを奪われたとはいえ、好調を維持し続けるナザロフ。テンポよく放つ右ジャブと左右のボディー攻撃で、じわりじわりと王者を追い詰めていきます。8回以降は毎回のようにトベラをぐらつかせたナザロフは10回、右、左(ボディー)、そして右のコンビネーションでついにダウンを奪い返しました。

トベラの右強打は最後まで怖いものがありましたが、明白なリードを保って試合終了のゴングを聞くことに。敵地のど真ん中で行われた一戦でしたが、危惧していた地元判定もなく、3対0の判定で世界のベルトを腰に巻くことに成功しています。

試合内容は4回のダウン以外はほぼナザロフのペース。しかし試合終了時には、ナザロフもその右目付近をトベラの左ジャブのため大きく腫らしていました。まさに激闘の証と言っていいでしょう。そして両者がフルラウンドに渡り力を出し続けた好試合でした。

(右目を腫らしながらも、敵地で堂々の勝利を収めたナザロフとジミン コーチ)/ Photo: ボクシング動画配信局

プロ18戦目にして悲願の世界タイトル獲得に成功したナザロフ。母国キルギスタン初の世界王者という称号も手にしました。敵地南アフリカでの王座奪取は、現在でも高く評価されています。しかし個人的には、もっともっと評価されるべき偉業だと思います。

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あの試合から30年(IBF/WBCジュニアフライ級:1993年10月30日)

2023年10月30日 05時35分19秒 | ボクシングネタ、その他雑談

今から30年前の1993年10月30日、米国アリゾナ州で行われた試合結果です。
IBF/WBCジュニアフライ級戦(現ライトフライ級):
王者マイケル カルバハル(米)TKO5回48秒 挑戦者ドミンゴ ソーサ(ドミニカ)

*この年の3月に、ウンベルト ゴンザレス(メキシコ)とボクシング史に残る名勝負を演じたカルバハル。その勝利により、当時の最強戦士の一人である事を証明すると同時にWBC王座を吸収。7月にはアジアの強豪金 光善(韓国)を退け、充実度が継続していることをアピールしました。

(カルバハルの試合には、トップランク社の秘蔵っ子オスカー デラホーヤがよく前座に登場しました)/ Photo: TopRank

カルバハルが統一王座の2度目の防衛戦に迎えたのは、3年後の1996年10月に来日し、川島 郭志(ヨネクラ)の保持していたWBCジュニアバンタム級(現スーパーフライ級)に挑戦することになるソーサ。1990年代半ばに世界の強豪たちと拳を交えた強豪です。

そんな好敵手を相手に、波に乗りまくっていたカルバハルは、地元のファンの前で素晴らしいパフォーマンスを見せました。

「小さな石の拳」のニックネームを持つカルバハルは、初回からその強打でソーサを圧倒。ワイルドな左右のパンチを上下に打ち分けると思えば、振りの小さなコンビネーションでソーサにパンチを当てまくります。そして相手の正面に立ちつつも、時折絶妙なステップワークで左右に移動し、違う角度からドミニカ人に強打を当てまくりました。この試合でカルバハルはただの強打者でなく、攻撃技術の卓越さも存分に見せつけています。

(この試合に限り、モヒカン頭で登場したカルバハル)/ Photo: Youtube

カルバハルの実父、マヌエルの死去による弔い合戦的な意味合いもあったこの試合。カルバハルはモヒカン頭で登場。不運にも、髪の毛を剃った部分をバッティングで深く負傷してしまいましたが、ドクターストップがかかる前に一気に試合を終わらせてしまいました。

パワーパンチの的中率が70パーセント台という驚異的な数字を出したカルバハル。「充実している」というのは、まさにこの試合でのカルバハルの事を言うのでしょうね。

(充実の一年を過ごしたカルバハル。リング誌の1993年の最高戦士に選ばれています)/ Photo: the Ring

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リナレス4連敗、引退ヘ(スーパーライト級)

2023年10月29日 05時40分29秒 | 世界ボクシング

今月21日、英国で行われた試合結果です。
WBAインターコンチネンタル・ライト級戦:
王者ジャック カテラル(英)判定3対0(117-111、116-112x2)挑戦者ホルヘ リナレス(帝拳/ベネズエラ)

*2020年2月に米国カリフォルニア州で行った試合以降、3連敗を喫してしまったリナレス。今回の一戦に再浮上、そして進退を賭けました。基本的な戦闘力が高いリナレス。過去3戦同様に、大きく崩れることはありませんでした。しかし中盤戦に入ると、出力が徐々に低下し相手にリードされてしまいます。今回も同じ試合傾向を見せてしまったリナレス。世界的に見て中堅選手であるカテラルに明白な判定負けを喫してしまいました。

ついに4連敗となったリナレス。試合後に現役からの引退を表明しています。2002年の師走に大阪のリングで初陣を果たしたリナレス。フェザー級からライト級の3階級で世界王座を獲得し、世界でも非常に高い評価を受けてきました。終身戦績は47勝(29KO)9敗(6KO負け)。長い間お疲れ様でした。

下記は今回の試合が行われた。2023年10月29日時点でのスーパーライト級王者たちとなります。

WBA:ローランド ロメロ(米/防衛回数0)
WBC:レジス プログレイス(米/1)
IBF:スブリエル マティアス(プエルトリコ/0)
WBO:テオフィモ ロペス(米/0)
OPBF(東洋太平洋):永田 大士(三迫/0)
WBOアジア太平洋:井上 浩樹(大橋/0)
日本:藤田 炎村(三迫/1)

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今週末の試合予定

2023年10月28日 05時44分33秒 | 世界ボクシング

2023年10月最終週末の主な試合予定です(2023年10月28日から11月3日まで)。

28日 土曜日
サウジアラビア
ヘビー級戦(10回戦):
WBCヘビー級王者タイソン フューリー(英)対 フランシス ガヌー(カメルーン/仏)

メキシコ
WBCスーパーフェザー級戦:
王者オシャキー フォースター(米)対 挑戦者エドゥアルド エルナンデス(メキシコ)

31日 火曜日
後楽園ホール
WBOアジア太平洋スーパーバンタム級戦:
王者TJ ドヘニー(豪)対 挑戦者ジャフェスリー ラミド(米)

日本スーパーバンタム級戦:
王者下町 俊貴(グリーンツダ)対 挑戦者石井 渡士也(RE:BOOT) 

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53歳のアルスラン、最終戦(?)に勝利(クルーザー級)

2023年10月27日 05時30分33秒 | 世界ボクシング

先週末21日、ドイツで行われた試合結果です。
クルーザー級戦(12回戦):
フィラト アルスラン(独)KO6回1分29秒 エディン プハロ(ボスニアヘルツェゴビナ)

*1997年1月にプロデビューし、これまでにこれといったブランクもなく戦い続けてきたアルスラン。1970年9月生まれの生粋のトルコ人は(ドイツ生まれのドイツ育ち)、もう53歳になっています。今回が自身最終戦と謡われた一戦で、半世紀以上生きた人間とは思われないパフォーマンスを見せました。

WBAクルーザー5位で35歳のプハロを迎えた4位にランキングする大ベテランは、2回終盤に左フックでダウンを奪うと、6回に立て続けに3度のダウンを追加しそのままフィニッシュ。白星を一つ付け加えると同時に、WBAのゴールド王座を獲得。有終の美を飾っています。

戦績を55勝(40KO)9敗(4KO負け)3引き分けとした元WBA王者。2008年の世界ボクシング・パーフェクトプレビュー(この年だけパーフェクトガイドという名称ではない)に、世界王者としてのその雄姿を確認する事が出来ます。もう一度アルスランが世界戦のリングに立つ姿を観てみたいと思っているのは、私(Corleone)だけではないでしょう。

下記は2023年10月27日時点での、クルーザー級王者たちとなります。再びアルスランの名を、下のリストで見てみたいものです。

WBA:アルセン グラムイリアン(アルメニア/仏/防衛回数3)
WBC:空位
IBF:ジェイ オペタイア(豪/1)
WBO:クリス ビラン スミス(英/0)
OPBF(東洋太平洋):空位
WBOアジア太平洋:カムシベク クンカバエフ(カザフスタン/0)

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注目の一戦は痛み分け(スーパーバンタム級ほか)

2023年10月26日 05時19分02秒 | 世界ボクシング

今月12日、有明アリーナで行われた試合結果です。
スーパーバンタム級戦(10回戦):
ジョンリエル カシメロ(比)負傷引き分け4回27秒 
小國 以載(角海老宝石)

*井上 尚弥(大橋)との対戦を熱望するカシメロが日本のリングに初登場。元IBFスーパーバンタム級王者小國と好ファイトを行いますが、4回早々にバッティングにより小國がおでこの左上を大きくカット。その傷による出血があまりにもひどく、残念ながら試合はストップ。両者痛み分けという結果になってしまいました。

ビックファイト出場にはアピール不足となってしまったカシメロ。試合を行うごとに、井上との対戦が遠のいているような感があります。昨年5月の栗原 慶太(一力)戦同様、4回負傷引き分けを経験してしまった小國。最後に勝利を収めたのは、2019年5月まで遡る事になります。

カシメロ、小國が主戦場とするスーパーバンタム級の、2023年10月26日時点での王者たちを確認しておきましょう。

WBA(スーパー):マーロン タパレス(比/防衛回数0)
WBC:井上 尚弥(大橋/0)
IBF:マーロン タパレス(比/0)
WBO:井上 尚弥(大橋/0)
OPBF(東洋太平洋):武居 由樹(大橋/1)
WBOアジア太平洋:TJ ドヘニー(豪/0)
日本:下町 俊貴(グリーンツダ/0)

 

OPBF(東洋太平洋)バンタム級戦:
挑戦者フローイラン サルダール(比)TKO初回60秒 王者栗原 慶太(一力)

*勝ち負け問わず、これまで行ってきた25戦の8割をKO/TKOという結果で終わらせてきた栗原。3月に3度目のOPBF王座を獲得し、今度こそは世界王座への挑戦を目指していました。そんな矢先、下の階級から転向してきた、実績のある元世界挑戦者に秒殺されてしまいました。

すべては試合開始早々にサルダールが放ったワン・ツー(左ジャブからの右ストレート)で決着がついたといっていいでしょう。そのパンチでグラついてしまった栗原は、その後の連打からのショートアッパーでダウン。試合再開直後、再び右パンチでキャンバスに送られ万事休す。再び比国人の攻勢に見舞われた栗原は、レフィリーに救い出されるのがやっと。

僅か60秒で勝者と敗者の明暗を分けた一戦。短い試合時間でしたが、見応えのある一戦でした。

地域王座で王者交代劇が行われたバンタム級。下記は2023年10月26日現在の同級のタイトル保持者たちとなります。またこの試合が行われた後に、エマヌエル ロドリゲス(プエルトリコ)がIBF王座を返上すると同時に、現役からの引退を発表しています。

WBA:井上 拓真(大橋/防衛回数0)
WBC:アレクサンドロ サンティアゴ(メキシコ/0)
IBF:空位
WBO:ジェイソン マロニー(豪/0)
OPBF(東洋太平洋):栗原 慶太(一力/0)
WBOアジア太平洋:西田 凌佑(六島/3)
日本:堤 聖也(角海老宝石/3)

 

WBOアジア太平洋スーパーウェルター級戦:
王者井上 岳志(ワールドスポーツ)TKO6回2分2秒 挑戦者サエンガナン シッサイトーン(タイ)

*5月に比国に渡り、3度目の同王座の初防衛戦に臨んだ井上。しかしその時は引き分け防衛という苦い経験をしています。

出直しを図る一戦を迎えた井上は、安定したボクシングを披露し中盤でTKO勝利。次戦には2度目の世界王座挑戦に向け、世界ランカーとの対戦が計画されているようです。

下記は2023年10月26日現在の、スーパーウェルター級の王者たちとなります。

WBA:ジャーメル チャーロ(米/防衛回数2)
WBC:ジャーメル チャーロ(米/3)
WBC(暫定):ブライアン メンドサ(米/0)
IBF:ジャーメル チャーロ(米/2)
WBO:ティム チュー(豪/2)
OPBF(東洋太平洋):井上 岳志(ワールドスポーツ/0)
WBOアジア太平洋:井上 岳志(ワールドスポーツ/2)
日本:出田 祐一(三迫/1)

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閉幕、等など(色々:10‐25‐23)

2023年10月25日 05時26分39秒 | 世界ボクシング

最近(2023年10月25日ごろ)のニュースです。

1)米国大手のShowtime局が、今年いっぱいでボクシング中継から撤退することとなりました。私(Corleone)の中でアメリカのボクシング放送と言えば、同局とHBOが筆頭でESPNがどちらかというとマイナー戦を担当する、という構想が成り立っていました。何はともあれ、40年近くの放送史に幕が下ろされます。

2)米国の注目株バージル オルティス(米)との対戦が何度も決まりながら、結局は対戦することがなかったWBAウェルター級レギュラー王者のエイマンタス スタニオニス(リトアニア)。12月9日に、元WBA/WBCウェルター級王者キース サーマン(米)の挑戦を受けます。

3)同じ興行では、WBAミドル級王者エリスランディ ララ(キューバ)がダニー ガルシア(米)の挑戦を受けます。

4)4月にジャルボンテ デービス(米)に粉砕された元WBCライト級暫定王者ライアン ガルシア(米)。12月2日にオスカー フラド(米)を相手に再起戦を行います。

5)WBAバンタム級王者井上 拓真(大橋)への挑戦権を持つ石田 匠(井岡)が師走の10日、エディオンアリーナ大阪のリングに登場。比国のジェームス パガリングと世界再挑戦への最終調整試合を行います。

6)同じ興行には、WBOフライ級王者ジェシー ロドリゲス(米)への指名挑戦権を持つ加納 陸(大成)も登場。対戦相手は未定ですが、無冠戦8回戦の試合を行います。

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あの試合から30年(IBFウェルター級:1993年10月23日)

2023年10月24日 05時41分39秒 | ボクシングネタ、その他雑談

今から30年前の昨日にあたる1993年10月23日、米国フロリダ州で行われた試合結果です。
IBFウェルター級戦:
王者フェリックス トリニダード(プエルトリコ)KO10回3分9秒 挑戦者アンソニー スティーブンス(米)

*この年の6月に古豪モーリス ブロッカー(米)に衝撃的な勝利を収め、若干二十歳にして世界の頂点に立ったトリニダード。その試合から僅か1ヶ月半後には、指名挑戦者で3度目の世界挑戦となったルイス ガルシア(ベネズエラ)をも撃退。僅か4ヶ月の間に3度目の世界戦に出場となりました。

この今回のスティーブンス戦では、トリニダードのうなぎ登りだった評価が若干スピードが緩やかになる事になりました。それまでの戦績が19勝(10KO)5敗2引き分けのスティーブンスは、そのレコードに反映されるような平均的な選手。試合前の注目は、トリニダードが何ラウンドで挑戦者を仕留めるかに絞られていました。

(上昇気流に乗りまくっていた当時のトリニダード)/ Photo: YouTube

前半戦、それなりの抵抗を見せたスティーブンス。動きの固いトリニダードに、右の強打を何発かクリーンヒットさせます。3回、見事なワン・ツーでトリニダードの腰を落とさせたスティーブンス。王者は膝と手をキャンバスにつけたため明らかなダウン。しかし驚くことにレフィリーは、それを見逃してしまいました。しかしトリニダードが大きなダメージを被った事に変わりなく、その回の残り時間、足がガクガク状態とピンチにさらされ続けました。

3回は何とか終了のゴングにまで逃げ込んだトリニダードでしたが、続く4回から怒涛の反撃を開始します。シャープで伸びるパンチを放ちながら一気に攻勢を強めていきます。その後も奮戦を続けるスティーブンスでしたが10回終了間際、それまでのダメージと疲労のために根負け。ついにカウントテンを聞くことになっています。

(スティーブンスに攻勢をかけるトリニダード)/ Photo: YouTube

予想外の苦戦を強いられたトリニダード。後のスーパースターはまだまだ二十歳という若者でした。この試合後、少しずつ階段を登っていきました。敗れたとはいえ決して評価を下げなかったスティーブンス。その後二度の世界挑戦や後の世界王者たちと対戦を重ねていく事になりました。

今まで知らなかったのですが、この試合にはある試みがありました。もし最終12回まで終了し、出された判定が引き分けだった場合、第13ラウンドというものが設けられる予定だったようです。そして結果は、その13番目のランドのみの判定結果で下される事になったとか。結局その試みは行われませんでしたが、もしこの試合が12ラウンド終了のゴングを聞いていたらどのような事になっていたのでしょうか。非常に興味深いですね。

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あの試合から30年(WBAバンタム級:1993年10月23日)

2023年10月23日 05時08分06秒 | ボクシングネタ、その他雑談

今から30年前の1993年10月23日、米国ニュージャージー州で行われた試合結果です。
WBAバンタム級戦:
挑戦者ジュニア ジョーンズ(米)判定3対0(117-109、116-111x2)王者ホルヘ エリエセール フリオ(コロンビア)

*当時のボクシング界には、3人のスーパースター候補生がいました。一人は1992年のバルセロナ五輪に出場し、米国唯一の金メダリストとなったオスカー デラホーヤ(米)。もう一人は1991年の豪州で行われた世界選手権で優勝し、その大会の最優秀選手に輝いたコンスタンチン チュー(露/豪)。チューはご存じの通り、現在スーパーウェルター級で活躍しているティムとニキタ チュー(豪)兄弟の実父です。そして3人目が今回の試合に登場するジュニア ジョーンズ(米)となります。

1990年代初頭のバンタム級には、オーランド カニザレス(米)という絶対王者がIBF王座に君臨していました。日本からもカリスマ辰吉 丈一郎(大阪帝拳)がこの年の夏に、暫定ながらもWBC王座に復帰。その後、網膜剝離が発覚しますが、手術に成功し再起に向けての準備段階に入っていました。

カニザレスを含め、王者たち、そしてすべてのバンタム級選手たちの脅威だったのがジョーンズ。30戦全勝(22KO)の戦績ははったりではなく、実力で主要3団体(当時のWBOはまだまだマイナー団体)の1位にランキングされていました。

(当時のバンタム級の最大の脅威とされていたジョーンズ)/ Photo: BoxRec

中量級のようなスケールの大きなボクシングを展開し、軽量級にセンセーショナルな動きを起こしていたジョーンズ。「ポイズン」と呼ばれる毒針が刺すような鋭いジャブで全勝記録をまっしぐらに走っていました。

そのジョーンズを迎え撃ったのが、こちらも26全勝(22KO)のこちらも素晴らしい記録を持つ南米の強豪フリオ。注目の無敗同士の選手同士の対戦だけに、試合前から軽量級ながらも大きな関心が寄せられていました。

(南米の実力者フリオ)/ Photo: BoxRec

試合はジョーンズが力強い左ジャブで先制していきます。しかしそこはフリオ。それまでジョーンズが対戦してきた相手とは違い、米国人に飲み込まれ続けることはありません。徐々にジョーンズのプレッシャーに慣れてきたフリオは5回、シャープな左フックで先制のダウンを奪います。将来のスーパースター候補に挙げられていたジョーンズは、その回後半には反撃に転じるという世界初挑戦の選手とは思えない力強さを見せつけます。

中盤戦はフリオがその柔軟なボクシングでリードしていきます。しかしそこからスター候補生が本領を発揮。パワーと的確性を備えたパンチで、ライバルを追いつめていきます。終盤10回、その回の早々にワン・ツー(左ジャブと右ストレート)からの連打でお返しのダウンを奪ったジョーンズ。フリオはダメージと疲れから前に出るのが精一杯となってしまいました。そして試合終了が間近に迫った最終12回、ジョーンズは右ショート、右アッパーのコンビネーションでダウンを追加し試合を決定づけました。

(フルラウンドに渡り激闘を繰り広げたフリオ(左)とジョーンズ)/ Photo: Youtube

挑戦者ながらも貫禄がある試合運びで激戦を制したジョーンズ。まだまだ注目度が低かった米国にスターが誕生しました。敗れたとはいえ、評価を落とさなかったフリオ。世界王座への早期返り咲きも期待されていました。しかし大激闘を演じた両者がこの試合の直後に、揃って大スランプに陥るとは。当時、誰も予想していなかったでしょう。

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あの試合から30年(WBAジュニアフライ級:1993年10月21日)

2023年10月22日 05時35分19秒 | ボクシングネタ、その他雑談

今から30年前の昨日にあたる1993年10月21日、後楽園ホールで行われた試合結果です。
WBAジュニアフライ級戦(現ライトフライ級/王座決定戦):
レオ ガメス(ベネズエラ)TKO9回2分20秒 八尋 史朗(帝拳)

*今でこそ、多くの日本人選手の高い壁となった実力者として盤石の評価を得ているガメス。しかし当時のガメスは、もう終わった過去の選手と見られていました。

(試合前は、過去の選手と思われていたゴメスですが...)/ Photo: BoxRec

ライトフライ級でも短身のガメス(153センチ)ですが、胸筋がたくましく発達しており、いかにもKOパンチャーといった外見の持ち主。対する八尋はライトフライ級や一階級上のフライ級でも長身の部類に入る170センチの選手。細い外見とは裏腹に、精神面がタフ(気が強い)で、時には打ち合いも辞さないボクシングをする選手です。

(世界王座奪取を期待されていた八尋)/ Photo: BoxRec

韓国、そしてアジアが誇った柳 明佑(韓国)の引退により空位となっていたWBAジュニアフライ級(現ライトフライ級)タイトル。試合前は、名門帝拳ジムから久々の世界王者誕生なるかに注目が集まっていました。しかし実際の試合は、そんな期待を覆す内容と結果になってしまいました。

ガメス、八尋ともに好調をうかがわせる滑り出しとなった初回。八尋は丁寧にパンチを放ちながらペースを掴もうと試みます。対するガメスもキビキビとしたボクシングで対抗していきます。ジャンプをするように放つパンチには、日本人選手には無いパンチの伸びが見て取れます。

初回中盤、早くもこの試合を決定づける場面が訪れます。ガメスが伸びるようなワン・ツー(左ジャブからの右ストレート)をもろに食らってしまった八尋は大きく腰を落としてしまいます。ダウンこそ免れましたが、その一発(二発)で、この試合のすべてが決まってしまいました。

肉体的に大きなダメージを受け、精神面では浮足立ってしまった八尋。歴戦の雄ガメスが、そのチャンスを逃すわけがありません。2回以降もガメスが対格差のハンディを物ともせず八尋に襲い掛かります。八尋も懸命に反撃を試みるのですが、回を重ねるごとに苦境に追い込まれていきました。

7回、そして9回にダウンを喫した八尋。最後は八尋陣営のタオル投入により試合はストップされました。圧倒的な強さを見せつけ2階級制覇を達成したガメス。その後も長い間、軽量級戦線で暴れまくることになります。

(まさかこれほどのワンサイドマッチになるとは...)/ Photo: 「世界の強豪ボクサー」ボクシング・ブログ

予想外の完敗を喫してしまった八尋。数年後に世界再挑戦の機会を得ましたが、その時も世界のベルトに手が届かず。「期待の星」はあくまで期待のみで終わってしまいました。そういえばこの時期、日本のリングには、ガメスをはじめ、ダニエル サラゴサ(メキシコ)やウィルフレド バスケス(プエルトリコ)など、「もう終わったと」思われていた選手たちが日本の世界候補生たちをあざ笑うかのように痛めつけていました。

この試合には、網膜剝離の手術を無事に終えた辰吉 丈一郎(大阪帝拳)がゲストとして登場。再起に向け元気な姿を見せていました。そういえば2001年3月に、ガメスが2階級上のスーパーフライ級王者としてセレス 小林(国際)の挑戦を受けた試合でも、辰吉がゲストに招かれていましたね。

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