◎遠藤達著『元禄事件批判』(1942)について
書棚を整理していたら、遠藤達著『元禄事件批判』(元禄事件批判発行所、一九四二)という本が出てきた。いつ入手したのか、まったく覚えていない。
本文一一三ページで、三七ページ以下は、関係文献から引いた資料が並んでいる。いかにも自費出版という印象の本だが、タイトルからして、赤穂浪士を礼讃する類書とは一線を画している。ザッと見たところ、内容もシッカリしていて、独自の調査結果なども盛られている。
本日は、その「序言」を紹介してみよう。
序 言
数年前同郷友人が元禄事件の当時上杉家を非難せる落首を集録し、我〈ワガ〉有為会爲誌に寄せられたることあり、若し之に相当説明を加ふることなく有為会雑誌に登載するときは元禄事件の真相を究めざる同郷青年が裨史小説の伝ふる所を以て真相と誤信し、本事件と上杉家との関係面に於て当時の無責任なる落首の数々に依り、当時米沢藩士の祖先が武尊公〔上杉謙信〕以来、主従の誇とせる武名を汚かし〈ケガシ〉たるものと信じ、米沢藩武名の自信を傷ふ〈ソコナウ〉虞〈オソレ〉なしとせざるを以て一時其登載を保留することゝせられたり。
余も亦有為会編輯会が危惧を感じたる如く、元禄事件につき無智識の一人なりしを以て、爾来偸閑〈トウカン〉本事件に関する在東京各図書館の記録を渉猟〈ショウリョウ〉し、其の真相を研究すること数年、今其〈ソノ〉得たる所のものを綴り、併せて参考図書名及其の抜萃〈バッスイ〉を添附し大方の叱正を乞はんと欲す。諸士幸に示教を吝む〈オシム〉ことなくんば幸之に過ぐるものあらざるなり。
於 湘 南 清 風 荘
上杉伯爵家政相談人
米沢有為会前総務部長 遠藤 達
前台湾電力株式会社長
本書は、国立国会図書館に架蔵されている。その影印も公開されていて、家庭のパソコンを通して閲覧できる。但し、書誌情報で、著者の生没年を「1847-1892」としているのは、何かの間違いであろう。
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます