礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

優生保護法は、国民優生法を引き継いでいる

2018-02-02 05:16:56 | コラムと名言

◎優生保護法は、国民優生法を引き継いでいる

 昨日は、優生保護法(昭二三、法律第一五六号)の一部を紹介した。
 その第三五条に、「国民優生法(昭和十五年法律第百七号)は、これを廃止する」とあり、第三六条には、「この法律施行前になした違反行為に対する罰則の適用については、前条の法律〔国民優生法〕は、この法律施行後も、なおその効力を有する」とあった。
 この第三六条は、戦後の「優生保護法」が、戦中の「国民優生法」を引き継いだものであることを明らかにしている。ということであれば、国民優生法の条文も確認しておく必要があろう。
 というわけで、本日は、国民優生法の条文を紹介してみたい。出典は、インターネット上にある「中野文庫」である。ただし、原文のままでは、あまりに読みにくいので、カタカナ表記を、ひらがな表記に変え、適宜、読点(テン)と句点(マル)を補った。
 ちなみに、この法律の条文では、句点(マル)は、一度も使われていないが、読点(テン)は、第四条の一部で、何度か使われている。もとから使われていた読点の位置を示すために、第四条のみは、最後に、参考として原文を引用しておいた。

国民優生法(昭和15年法律第107号)
第一条 本法は悪質なる遺伝性疾患の素質を有する者の増加を防遏〈ボウアツ〉すると共に健全なる素質を有する者の増加を図り以て国民素質の向上を期することを目的とす
第二条 本法に於て優生手術と称するは生殖を不能ならしむる手術又は処置にして命令を以て定むるものを謂ふ
第三条 左の各号の一に該当する疾患に罹れる〈カカレル〉者は其の子又は孫、医学的経験上同一の疾患に罹る虞〈オソレ〉特に著しきときは本法に依り優生手術を受くることを得〈ウ〉。但し其の者特に優秀なる素質を併せ有すと認められるときは此の限〈カギリ〉に在らず
 一 遺伝性精神病
 二 遺伝性精神薄弱
 三 強度且悪質なる遺伝性病的性格
 四 強度且悪質なる遺伝性身体疾患
 五 強度なる遺伝性畸形
2 四親等以内の血族中に前項各号の一に該当する疾患に罹れる者を各自有し又は有したる者は、相互に婚姻したる場合(届出を為さざるも事実上婚姻関係と同様の事情に在る場合を含む)に於て将来出生すべき子、医学的経験上同一の疾患に罹る虞、特に著しきとき亦前項に同じ
3 第一項各号の一に該当する疾患に罹れる子を有し又は有したる者は将来出生すべき子、医学的経験上同一の疾患に罹る虞、特に著しきときは亦第一項に同じ
第四条 前条の規定に依り優生手術を受くることを得る者は優生手術の申請を為すことを得。此の場合に於て本人配偶者(届出を為さざるも事実上婚姻関係と同様の事情に在る者を含む。以下之に同じ)を有するときは其の配偶者の同意を、三十歳に達せざるとき又は心神耗弱者〈シンシンコウジャクシャ〉なるときは其の家に在る父母(婚姻に依り其の配偶者の家に入りたる者に在りては其の配偶者の父母とす。以下之に同じ)の同意を得ることを要す
2 前条の規定により優生手術を受くることを得る者、心神喪失者なるときは、優生手術の申請は前項の規定に拘らず其の家に在る父母之を為すことを得。但し本人配偶者を有するときは其の配偶者及其の家に在る父母、之を為すことを得
3 第一項及前項但書の場合に於て其の配偶者知れざるとき又は其の意思を表示すること能はざる〈アタワザル〉ときは、第一項の場合に在りては其の家に在る父母の同意を以て配偶者の同意に代へ、前項但書の場合に在りては其の家に在る父母のみにて申請を為すことを得るものとす
4 前三項の規定に依り其の家に在る父母の同意を要すとせられ又は其の家に在る父母が申請を為す場合に於て、父母の一方が知れざるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき又は其の意思を表示すること能はざるときは他の一方のみの同意又は申請を以て足り父母共に知れざるとき、死亡したるとき、家を去りたるとき又は其の意思を表示すること能はざるときは後見人の、後見人知れざるとき、なきとき又は其の意思を表示すること能はざるときは戸主の、戸主知れざるとき、未成年者なるとき又は其の意思を表示すること能はざるときは親族会の同意又は申請を以て父母の同意又は申請に代ふるものとす。但し後見人及親族会は第二項の規定に依る申請を為すことを得ず
第五条 第三条第一項の規定に依り優生手術を受くることを得る者に対し監護上の処置、保健上の指導又は診療を為したる精神病院法に依る精神病院(同法第七条の規定に依り代用する精神病院を含む)若は〈モシクハ〉保健所の長又は命令を以て定むる医師は本人の同意を得て優生手術の申請を為すことを得。此の場合に於て本人配偶者を有するときは其の配偶者の同意をも、三十歳に達せざるとき又は心神耗弱者なるときは其の家に在る父母の同意をも得ることを要す
2 前項の規定に依り優生手術の申請を為す場合に於て、本人心神喪失者ナルトキハ、其の家に在る父母の同意を以て本人の同意に代ふるものとす
3 前条第三項及第四項の規定は前二項の場合に之を準用す
第六条 前条の規定に依り優生手術の申請を為すことを得る者本人の疾患著しく悪質なるとき又は其の配偶者、本人と同一の疾患に罹れるものなるとき等、其の疾患の遺伝を防遏することを公益上特に必要ありと認むるときは、同条の規定に依る必要なる同意を得ること能はざる場合と雖も〈イエドモ〉其の理由を附して優生手術の申請を為すことを得
第七条 優生手術の申請は命令の定むる所に依り地方長官に之を為すべし
2 前項の申請は本人の健康診断書及遺伝に関する調査書並に本人(本人心神喪失者なるときは其の家に在る父母とす。但し本人配偶者を有するときは其の配偶者及其の家に在る父母とす)が優生手術が生殖を不能ならしむるものなることを了知したる旨の医師の証明書を添附すべし
3 第四条第三項及第四項の規定は前項の場合に之を準用す
第八条 地方長官は優生手術の申請を受理したるときは優生手術を行ふべきものと認むるや否を決定す
2 地方長官の決定を為さんとするときは予め〈アラカジメ〉地方優生審査会の意見を徴すべし
3 地方長官第一項の決定を為したるときは、第四条又は第五条の規定に依り優生手術の申請を為すことを得る者、及優生手術の申請に付〈ツキ〉同意を得ることを要すとせられたる者に之を通知すべし
第九条 前条第三項の規定に依り通知を受くべき者は、同条の決定に不服あるときは厚生大臣に之を申立つることを得
2 前項の申立は決定の通知を受けたる後(通知を受けざる者に付ては決定ありたる後)三十日を経過したるときは之を為すことを得ず
3 厚生大臣宥恕〈ユウジョ〉すべき事由ありと認むるときは前項の期限経過後に於ても仍〈ナオ〉之を受理することを得
第十条 厚生大臣は前条の申立を受理したる場合に於て申立を理由なしと認むるときは之を却下し、申立を理由ありと認むるときは地方長官の決定を取消し且優生手術を行ふべきものと認むるや否を決定す
2 厚生大臣前項の却下又は取消及決定を為さんとするときは予め中央優生審査会の意見を徴すべし
3 第八条第三項の規定は第一項の却下並に取消及決定に之を準用す
第十一条 第四条又は第五条の規定に依り優生手術の申請を為すことを得る者及優生手術の申請に付同意を得ることを要すとせられたる者は、書面又は口頭を以て中央優生審査会又は地方優生審査会に対し事実又は意見を申述〈シンジュツ〉することを得
2 厚生大臣又は地方長官は中央優生審査会又は地方優生審査会の審査の為必要ありと認むるときは、命令の定むる所に依り第三条の規定に依り優生手術を受くることを得る者をして審査会に出頭の上事実を申述せしめ、又は医師の健康診断を受けしむることを得
第十二条 中央優生審査会及地方優生審査会に関する規定は勅令を以て之を定む
第十三条 優生手術を行ふべきものと認むる決定確定したるときは、第三条の規定に依り優生手術を受くることを得る者は命令の定むる所に依り優生手術を受くべし
2 優生手術は厚生大臣又は地方長官の命に依り命令を以て定むる医師、命令を以て定むる場所に於て之を行ふ
3 前項の規定に依り優生手術を行ひたる医師は命令の定むる所に依り其の経過を地方長官に報告すべし
第十四条 優生手術に関する費用に付ては勅令の定むる所に依る
第十五条 故なく生殖を不能ならしむる手術又は放射線照射は之を行ふことを得ず
第十六条 第十三条の規定に依る場合を除くの外、医師生殖を不能ならしむる手術若は放射線照射又は妊娠中絶を行はんとするときは予め其の要否に関する他の医師の意見を聴取し且命令の定むる所に依り予め行政官庁に届出づべし。但し特に急施を要する場合は此の限に在らず
2 前項の届出ありたる場合に於て行政官庁必要ありと認むるときは、其の指定したる医師の意見を更に聴取せしむることを得
3、 第一項但書の場合に於て届出を為さずして生殖を不能ならしむる手術若は放射線照射又は妊娠中絶を行ひたるときは、命令の定むる所に依り行政官庁に届出づべし
第十七条 優生手術を受けたる者、婚姻せんとするときは相手方の要求に依り優生手術を受けたる旨を通知すべし
第十八条 第十五条の規定に違反し生殖を不能ならしむる手術又は放射線照射を行ひたる者は一年以下の懲役又は千円以下の罰金に処す。因て〈ヨッテ〉人を死に致したるときは三年以下の懲役に処す
第十九条 中央優生審査会及地方優生審査会の委員若は委員たりし者、又は優生手術に関する審査若は施行の事務に従事し若は従事したる公務員若は公務員たりし者、故なく其の職務上取扱ひたることに付、知得〈チトク〉したる人の秘密を漏泄〈ロウセツ〉したるときは六月以下の懲役又は千円以下の罰金に処す
2 前項の罪は告訴を待て〈マチテ〉之を論ず
第二十条 第十六条第一項又は第三項の規定に違反し届出を為さず、又は虚偽の届出を為したる者は百円以下の罰金に処す
  附 則
本法施行の期日は各規定に付勅令を以て之を定む

【参考】第四条 前条ノ規定ニ依リ優生手術ヲ受クルコトヲ得ル者ハ優生手術ノ申請ヲ為スコトヲ得此ノ場合ニ於テ本人配偶者(届出ヲ為サザルモ事実上婚姻関係ト同様ノ事情ニ在ル者ヲ含ム以下之ニ同ジ)ヲ有スルトキハ其ノ配偶者ノ同意ヲ、三十歳ニ達セザルトキ又ハ心神耗弱者ナルトキハ其ノ家ニ在ル父母(婚姻ニ依リ其ノ配偶者ノ家ニ入リタル者ニ在リテハ其ノ配偶者ノ父母トス以下之ニ同ジ)ノ同意ヲ得ルコトヲ要ス
2 前条ノ規定ニヨリ優生手術ヲ受クルコトヲ得ル者心神喪失者ナルトキハ優生手術ノ申請ハ前項ノ規定ニ拘ラズ其ノ家ニ在ル父母之ヲ為スコトヲ得但シ本人配偶者ヲ有スルトキハ其ノ配偶者及其ノ家ニ在ル父母之ヲ為スコトヲ得
3 第一項及前項但書ノ場合ニ於テ其ノ配偶者知レザルトキ又ハ其ノ意思ヲ表示スルコト能ハザルトキハ第一項ノ場合ニ在リテハ其ノ家ニ在ル父母ノ同意ヲ以テ配偶者ノ同意ニ代ヘ前項但書ノ場合ニ在リテハ其ノ家ニ在ル父母ノミニテ申請ヲ為スコトヲ得ルモノトス
4 前三項ノ規定ニ依リ其ノ家ニ在ル父母ノ同意ヲ要ストセラレ又ハ其ノ家ニ在ル父母ガ申請ヲ為ス場合ニ於テ父母ノ一方ガ知レザルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ又ハ其ノ意思ヲ表示スルコト能ハザルトキハ他ノ一方ノミノ同意又ハ申請ヲ以テ足リ父母共ニ知レザルトキ、死亡シタルトキ、家ヲ去リタルトキ又ハ其ノ意思ヲ表示スルコト能ハザルトキハ後見人ノ、後見人知レザルトキ、ナキトキ又ハ其ノ意思ヲ表示スルコト能ハザルトキハ戸主ノ、戸主知レザルトキ、未成年者ナルトキ又ハ其ノ意思ヲ表示スルコト能ハザルトキハ親族会ノ同意又ハ申請ヲ以テ父母ノ同意又ハ申請ニ代フルモノトス但シ後見人及親族会ハ第二項ノ規定ニ依ル申請ヲ為スコトヲ得ズ

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