座敷ネズミの吉祥寺だより

吉祥寺って、ラッキーでハッピーなお寺ってこと?
中瀬の吉祥寺のあれこれをおしゃべり。

「楽しみは」

2013-02-12 | 読みました
去年末、私は 『楽しみは――橘曙覧・独楽吟の世界――』
という本を読みました。

(新井満 自由訳・編・著、講談社、2008年11月27日)

橘曙覧(たちばなの あけみ)(1812~1868)という、
江戸時代末期の歌人が詠んだ、
独楽吟と題された和歌が 52首、収められています。

連作だそうです。


全部の和歌が、「たのしみは」で始まり、「する時」で終ります。

こういうのは、異色中の異色だそうです。






「たのしみは 

 朝おきいでて 

 昨日まで

 無かりし花の

 咲ける見る時」



これは 天皇訪米(平成6年)の際に、
当時の大統領・クリントンが
スピーチで引用した一首ですが、
私も大好きです。

たまに、庭に出て 
「あ! 咲いてる!」と気づくと、
思わずにんまりしてしまうものです。



It is a pleasure
When,rising in the morning
I go outside and
Find that a flower has bloomed
That was no there yesuterdy
(ドナルド・キーン訳、本書p104)



あと ちょっとだけ有名なものに

「たのしみは まれに魚烹て 児等皆が うましうましと いひて食う時」

といのがあり、これも大好きです。






これら52種が
「孤独平安を楽しむ」「家族団欒を楽しむ」「食を楽しむ」
「貧乏生活を楽しむ」「読書を楽しむ」「書画と歌を楽しむ」
「買い物を楽しむ」「友との交流を楽しむ」
「日本国に生れたことを楽しむ「ささやかな変化を楽しむ」
「野山歩きを楽しむ」
の11章にわけてあります。

それらすべてに 
「千の風になって」の新井満氏の ≪自由訳≫が付けられています。

新井満ホームページ「マンダーランド通信」


新井満氏の自由訳は 本書で8冊目だそうです。






新井氏は 『独楽吟』を
前書きの中で “幸福へのガイドブック” と称し、

本書末尾の「『独楽吟』の世界を探検してみよう」の中で

  「生きている。
   ただそれだけで、
   ありがたい。

   幸福の原点は、これなのである。」

と書いています。

『独楽吟』とは、いのちの賛歌だと思う、と言っています。



そして曙覧のまねをして作ったという一首を 紹介しています。

  たのしみは 朝起きいでて 呼吸をして
  まだ生きてゐたのだと 思ひをる時






思わず 私も 一首ひねってみたくなりました(笑)。

でも 私が作ったのは「しあわせは」で始まるものでした。

  しあわせは 味噌汁作りて 味見して
  うましといひて 頷ける時

オソマツ(笑)。





橘曙覧は、貧乏、「それも超一流の貧乏」だったそうです(p2)。

加えて、
幼くして 母と死別したり 母の実家に預けられたり、
15歳の時に 父を亡くしたりしています。

そして 結婚後に生れた3人の女の子達は 
次々と亡くなっています。

そんな曙覧の歌には
『独楽吟』以外にも 秀逸なものがあるようです。

新井氏に紹介された数首だけでも 興味を引かれます。



この本、お貸しできます。




最新の画像もっと見る

コメントを投稿