一粒の麦 もし 地に落ちて死なずば
唯 一つにてあらん。
もし 死なば 多くの実を結ぶべし。
聖書にある言葉(ヨハネによる福音書 第12章24節)で、
ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の巻頭にある言葉だそうです。
日野原重明医師が 105歳で亡くなりました。
自分に与えられた時間を、精一杯に 生き切った生涯だったと思います。
結核で休学したり
結核の少女を励ましつつ見送ったり
東京大空襲でなすすべもなく何百人ものヤケドの人々を見送ったり。
終戦は、医学生だった20歳の時。
その後も ハイジャックされたよど号に乗り合わせたり。
よど号の機内で、ハイジャック犯に借りて読んだのが、
『カラマーゾフの兄弟』だったそうです。
注目すべきは、その後のご活躍かと思います。
それまでの経験を踏まえて できる事をなさっていらっしゃっいました。
それらのひとつは (不幸にも)サリン事件の時に役に立ちました。
「新老人の会」は 超高齢化を迎えた現代日本にとって
当然必要となる考え方が 軸になっています。
なにより、その存在と 驚異の体力が
高齢の方々の元氣の元になった事でしょう。
はるか後(?)を追う私たちも、階段を駆け上がる姿に、
「しっかりしなきゃ!」「負けらんない!」
という気になったものです。
『生きかた上手』という著書は 100万部のベストセラーだったそうですが、
その中の一冊は、私が買いました(笑)。
私には、日野原医師の著書と
大行満大阿闍梨の酒井雄哉師の言葉との間に
共通点があるように感じられるのです。
体験によって得られる真実、
その真実の言葉が 平易な表現をされる時こそ、
私たちの心深くに 静かに沁みていくのではないでしょうか。
その「真実の言葉」が、おふたりの共通点なのかもしれません。
「生き切る」。
なかなか得られるものではないと思います。
日野原医師には及ばなくとも、
せめて 生き切った実感を 少しでも感じて
この世の生を終える事ができますようにと願います。
合掌。