それは奇しくも私の誕生日であった。
2016年4月14日、ちょっと早いがアルコールが入っていたので早めに横になっていた21時26分。
突然異様な警報音と共に携帯の地震速報が流れる。
数秒後にかなりの横揺れが襲ってきた。
私が住んでいる北九州はあまり地震には無縁の所なので嫁さん子供も少し怖がっていた。
テレビはすぐに特番になり熊本益城を震源とした震度7の大型地震であった事を伝えている。
ここからは200㎞以上離れた場所が震源だったにも関わらずかなりの揺れだったので
現地は大変な事になっている事は容易に想像がついた。
益城といえば南阿蘇ツーリングの際にはよく使うルートの一つで
その土地の状況はすぐに浮かぶ事ができる。
阿蘇の外輪山の麓、近くに熊本空港があり、周りは阿蘇の肥沃な土地を利用した野菜造りがメインの広々とした所だ。
空港の横を抜け風車が見える俵山トンネルを抜けると阿蘇カルデラの中に入る。
正直あの場所で地震が起こるなんて考えた事も無かったので、阿蘇のマグマの影響かとはじめは思っていた。
翌日の報道はどこもごった返していたが、阿蘇のとは関係はなく活断層のずれが主な原因らしい。
大型の地震の後はかなりの余震が続くので警戒が必要だが
本当の悲劇はその2日後の深夜に南阿蘇村を中心に起こったのである。
報道ヘリからの映像は今まで何度も走った道や橋が跡形もなかった…。
5月になってからもまだまだ手つかずの問題ばかりをかかえて復興の兆しすら見えてないのが現状か。
そんな中、ふと思い出した事があった。
杖立温泉のこいのぼりの事である。
杖立はここから阿蘇を結ぶメインルート上のR212にあって、もう何度通ったかわからない。
そこには毎年川渡しのこいのぼりが数千匹泳いでいて杖立のシンボルになっている。
このこいのぼりを見てGWが今年も来たのだと実感するのだ。
しかし、今回の地震でそのR212は日田から杖立まではがけ崩れで通行止めになっているらしい。
逆方向の阿蘇・小国方面からは行けるのだが
その阿蘇が至る所で通行止めになっているので事実上陸の孤島になっている。
幸い広域農道からは行く事はできるのだが、そこまでして行く人が多い訳がない。
バイク乗りなら知っている裏道を使って杖立まで来てみたが
見る限り建物には被害は無い様だが、どのホテル・旅館も車が止まっていない。
おそらくGWにも関わらず今回の件でキャンセルされたのであろう。
観光案内所で数人の地元の方が立ち話をしていた。
しかし川面にはいつも見慣れた光景があった。
あのこいのぼり達である。
山間の清々しい風に何もなかった様にゆったり泳いでいる。
あの震災の前から今年も泳いでいたのか、その後に泳ぎ出したのかわからないけれど
やっぱり今年も泳いでいた。
今年はきっとそれどころじゃないだろう。
でも来てくれる人の為に泳がせたのだと思う。
温泉街の小さなガソリンスタンドで給油をしながら話を聞くと
落石事態はあまり大した事はなかったらしいのだが
その上の大きいな石の落石の危険性があるらしい。
なので手が付けられず通行止めの解除はかなり時間がかかるとの事。
「地震が心配な上に通行止めなんでね」スタンドマンは落胆の表情で話してくれた。
そんな中でもあのこいのぼりが期待・希望なのだと
だから今年もこいのぼりは泳いでいるのです。
誰かがきっと見に来てくれるから。
その他、今回の地震で被災された方々にお悔やみ申し上げます。
復興がんばてください。
また阿蘇に走りに行きます。