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おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

J・エドガー

2022-08-14 07:17:52 | 映画
「J・エドガー」 2011年 アメリカ


監督 クリント・イーストウッド
出演 レオナルド・ディカプリオ
   ナオミ・ワッツ
   アーミー・ハマー
   ジョシュ・ルーカス
   ジュディ・デンチ
   エド・ウェストウィック

ストーリー
FBIのジョン・エドガー・フーバー長官は、人生の終盤に差し掛かり、部下に命じて回顧録を書き取らせる。
記憶はFBI誕生以前へと遡り、彼の表の経歴が語られるとともに、その裏側の野望、企み、葛藤、苦悩が次第に明らかにされていく……。
20世紀のおよそ50年もの間、アメリカで大統領さえも及ばない強大な権力を手にしていた男。
そのたった一人の人間が、アメリカのあらゆる秘密を掌握し、国さえも動かしていたという事実。
50年間に入れ替わった大統領は8人にのぼり、その誰もが彼を恐れた。
それが、ジョン・エドガー・フーバーFBI初代長官である。
20代でFBI前身組織の長となり、以後、文字通り死ぬまで長官であり続けた。
今日では当たり前とされる科学捜査の基礎を確立し、犯罪者の指紋管理システムを作ったのも彼なら、FBIを子どもたちの憧れの的にまで押し上げたのも彼だった。
紛れもない英雄であるにもかかわらず、彼には常に黒い疑惑やスキャンダラスな噂がつきまとった。
やがて、国家を守るという絶対的な信念は、そのためになら法を曲げてかまわないというほど強く狂信的なものとなり、それゆえ彼は正義にもなり、悪にもなった。
国を守るという大義名分のもと、大統領を始めとする要人たちの秘密を調べ上げ、その極秘ファイルをもとに彼が行った“正義”とは一体何だったのか?
映画やコミックを使ってFBIの素晴らしさをけん伝させる裏側で、彼は何を画策していたのか……?
あきなく高みを目指した男の深い心の奥底が描かれる……。


寸評
僕はなぜかレオナルド・ディカプリオという俳優が好きでない。
多分ベビーフェイス気味の顔立ちが性に合わないのだと思う。
実在の人物であるハワード・ヒューズを演じた「アビエイター」の彼も少し嫌悪感を持った。
先入観的に本物はこんなじゃないんだろうと思ってしまうのだ。
今回のフーバー元FBI長官も同じようなイメージが先にあって、どうかと思ったのだが、監督がクリント・イーストウッドとあって見ることにした作品である。
開始早々年老いたフーバーのアップが映し出されるが、このメイクに驚かされた。
年齢とともに変わっていくメイクが一番の印象となった作品だった。
物語は回顧録執筆からはじまり、様々な功績や闇の部分、そして死ぬまでの彼の人物像を描き出す。
法の番人としての彼の正義には疑問符がつくものの、その異常さが私生活におけるマザコンと同性愛者だったことによって強調される。
そしてこれが物語上の設定ではなく事実らしいことに驚かされる。
なによりFBIを作り上げたフーバーと片腕のクライド・トルソン及びヘレン・ギャンディが独身で押し通していることの事実が人間関係の不思議さを物語って興味深い。
フーバーは冒頭でヘレンに求婚しているし、後日には別の女性と結婚を決意するようなこともあるのだが、それでもやはり同性愛者だったのだろうと思わせる。

ルーズベルト大統領夫人のスキャンダルや、ケネディ大統領への盗聴も語られる。
米国人なら知っているのであろう、エドワード・ロング上院議員の追及が尻すぼみになる逸話も描かれていて、上院議員に激怒したフーバーに命じられた側近とFBI捜査官の二人が、ロングのスキャンダルを収録した機密ファイルを本人に見せに行った以後、ロングの追及は尻すぼみになったことをうかがわせて、それは権力の前に屈してしまう一般人の象徴でもあった。
実在の人物を描いているだけあって、登場人物もロバート・ケネディ司法長官やニクソン大統領などが堂々と実名で登場する。
現在テレビ放映されている山崎豊子の「運命の人」が、それとすぐ分かる人物名を用いながら改名しているのと比較すると流石にアメリカ映画は潔い。

イーストウッドならばもう少し盛り上げてくれても良かったと思うのだが、マザコンというよりも過保護な母親の影響を大いに受けたのだと思わせたところは作品を面白くしていた。
フーバーは第30代のクーリッジからフーバー、ルーズベルト、トルーマン、アイゼンハワー、ケネディ、ジョンソン、ニクソンまで8人の大統領のもとでFBI長官を務めたが、この映画を見る限り、彼を長期にわたりとどまらせたのは彼の努力と執念もさることながら、母親の力だったのだと思わせる。
過激な男が晩年に見せた弱さが彼を人間らしくしていたが、それにしても仕事に生きると言ってもヘレンをあそこまで引っ張って行ったものは何んだったのだろうと思ってしまう。
その疑問の不明確さが僕をしてイーストウッド作品として少し不満を残させた原因かもしれない。


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