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おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

十一人の賊軍

2024-11-07 07:12:25 | 映画
「十一人の賊軍」 2024年 日本


監督 白石和彌
出演 山田孝之 仲野太賀 尾上右近 鞘師里保
   佐久本宝 千原せいじ 岡山天音 松浦祐也
   一ノ瀬颯 小柳亮太 本山力 野村周平
   西田尚美 玉木宏 阿部サダヲ

ストーリー
戊辰戦争が勃発し、圧倒的な武力を誇る新政府軍と、それに抵抗する旧幕府軍が各地で激しい戦闘を繰り広げていた。
奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩は、米沢藩の色部長門(松角洋平)や斉藤主計(駿河太郎)らによって出兵を求められていた。
新発田藩のまだ幼き藩主(柴崎楓雅)は、勝ち馬と見た新政府軍に従う腹であるが、奥羽越列藩同盟は城内に兵を入れて旗幟を鮮明にすることを迫った。
その頃、新政府軍の山縣狂介(玉木宏)や岩村精一郎(浅香航大)らは、立地的に北陸の心臓部である新発田藩に進軍しようとしていた。
もし城内で両軍が鉢合わせすれば、戦地となる新発田藩の被害は甚大なので、家老の溝口内匠(阿部サダヲ)は奥羽越列藩同盟への出兵を装い、色部たちが城から出て行くまでの数日間、新政府軍の進軍を足止めすることを画策する。
そこに集められたのが、政(山田孝之)、赤丹(尾上右近)、なつ(鞘師里保)、二枚目(一ノ瀬颯)など本来ならば死罪の10人の罪人たち。
彼らは、作戦が成功すれば無罪放免にしてやるという約束のもと、奥羽越列藩同盟を装って官軍相手に抗戦することになる。
彼らとともに砦で戦う決死隊には剣術道場の道場主、鷲尾兵士郎(仲野太賀)や、決死隊隊長の入江数馬(野村周平)らがいた。
入江は城代家老の腹心で娘・加奈(木竜麻生)の婚約者だった。
城内政治の中でうまく立ち回っている人物といえ、一方鷲尾は、侍として同盟とともに新政府軍と戦うべしという主戦派である。
幕府軍が砦に迫り、長岡藩を装った守備隊と激戦の火ぶたが切って降ろされる。


寸評
奥羽越列藩同盟に加わっていた新発田藩が官軍に寝返ったことは史実であるが、ここで描かれた罪人たちの活躍はフィクションであろう。
10人の面々だが、集団抗争時代劇の「十三人の刺客」に見られるような武士団ではない。
彼らは大義の為ではなく、ただ生きたいために戦っている連中と言うのがユニークだ。
政は妻さだ(長井恵里)を手籠めにした侍を殺害している。
赤丹はイカサマ博徒で、なつは恨みで男の家に放火した女だ。
彼らの犯した罪は簡単に描かれているが、他の連中の罪は描かれておらず、檀家の娘を手籠めにした引導(千原せいじ)、ロシアへ密航を企てたおろしや(岡山天音)、一家心中をするが自分だけ死ねなかった三途(松浦祐也)、侍の女房と恋仲になった色男の二枚目(一ノ瀬颯)、無差別殺人の辻斬(小柳亮太)に、槍の使い手爺っつぁん(本山力)などは語られるだけとなっている。
ノロ(佐久本宝)は政を死んだ兄と思い込んでいるが、花火師で火薬に詳しい。

官軍と賊軍が渓谷にかかるつり橋を挟んで向かい合う。
ここでの戦闘シーンがこの映画の見せ場だ。
銃声や大砲の砲撃音が波動となって胸に共鳴し、乱闘となれば刀と刀がぶつかり合う金属音が響き渡る。
およそ剣術に無縁な者たちが多い中にあって、仲野太賀の鷲尾兵士郎が剣術使いとして素晴らしい殺陣と鬼気迫る表情を見せて画面を圧倒する。
走り回っている山田孝之もいいが、僕は仲野太賀が儲け役だったと思う。
爺っつぁんの本山力も力演だ。
斬り合いの場面では白石監督らしい残酷描写もある。

一方の主人公は阿部サダヲの家老・溝口内匠だ。
彼は新発田藩の存続と住民の安全のために非情とも思える策略を講じる。
官軍をくい止めるのが新発田藩ではあってはならないので、賊軍の長岡藩の旗印を掲げさせる。
ことが終わった時には事実隠ぺいの為に罪人たちを始末する腹である。
その事を娘婿となる入江数馬に伝えていたが、数馬は死に娘の加奈(木竜麻生)は父への抗議もあったのか自害する。
妻(西田尚美)は当然夫を非難する。
家老・溝口は娘の亡骸にすがり、「こうするしかなかったのだ・・・」と嘆くしかない。
そんな溝口も戦争を回避してくれた、長岡のようにならなくて良かったと領民からは感謝されているのだ。
僕はこの家老に一番興味がわいた。
藩と領民を守るために、他藩から何と思われようとも、非情な処置をとろうとも、自身が恨まれようともリーダーとして決断したのだ。
我が国の現総理にその気概はあるのだろうか?
妻は夫の行為を理解することが出来たのか、その後が気になる。
今日に至るまで、長岡藩の地域の人たちと新発田藩の人たちの感情はどのような推移を辿ったのだろうとの思いにふけった。
2時間半を一気に見ることが出来たが、少しばかり物足りなさを感じたのは白石和彌に対する期待が大きすぎたのかもしれない。


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