おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

シンドラーのリスト

2021-04-09 10:56:24 | 映画
「シンドラーのリスト」 1993年 アメリカ


監督 スティーヴン・スピルバーグ
出演 リーアム・ニーソン
   ベン・キングズレー
   レイフ・ファインズ
   キャロライン・グッドオール
   ジョナサン・サガール
   エンベス・デイヴィッツ

ストーリー
1939年、ポーランド南部の都市クラクフにドイツ軍が侵攻した。
ドイツ人実業家のオスカー・シンドラーは、一旗揚げようとこの街にやって来た。
彼は金にものを言わせて巧みに軍の幹部たちに取り入り、ユダヤ人の所有していた工場を払い下げてもらう。
ユダヤ人会計士のシュテルンをパートナーに選んだシンドラーは、軍用ホーロー容器の事業を始める。
1941年3月、ユダヤ人たちは壁に囲まれたゲットー(居住区)に住むことを義務づけられる。
シュテルンの活躍で、ゲットーのユダヤ人たちが無償の労働力として、シンドラーの工場に続々と集められた。
事業はたちまち軌道に乗り、シンドラーはシュテルンに心から感謝したが、彼の差し出すグラスにシュテルンは決して口をつけようとしなかった。
シンドラーはドイツ人の愛人イングリートをはじめ、女性関係は盛んな男だった。
別居中の妻エミーリェは、そんな奔放な夫の生活を目撃し、彼の元を去った。
1943年2月、ゲットーが解体され、ユダヤ人たちはプワシュフ収容所に送られることになった。
ゲットーが閉鎖されることになった日、イングリートを連れて馬を走らせていたシンドラーは、小高い丘からその様子を目撃した。
親衛隊員たちは住民を家畜のように追い立て、抵抗する者、隠れようとする者、病人など、罪もない人々を次々に虐殺していった。


寸評
娯楽作が多いスピルバーグだが、彼が生み出した唯一と言ってもいい社会派映画の傑作だ。
ホロコーストを描いた内容ながらエンタメ性も感じさせる演出は上手いなあと思わせる。
「プライベート・ライアン」におけるオープニングのノルマンディ上陸作戦の描写に驚かされたが、本作におけるユダヤ人虐殺シーンはそれをしのぐリアリティをもって我々の目に飛び込んでくる。
ナチスドイツの侵攻により、住む場所さえ奪われたユダヤ人たちが一箇所に集められ、強制労働させられる残酷な光景はがニュース映画のように描かれる。
冒頭のカラーからモノクロ画面に変わることでより一層リアリティ感が生み出されている。
財産も何もかも全て没収された挙句の果てにゲットーに押し込められ、気に入らない家族はその場で躊躇なく射殺されるという信じられない光景が続く。
ナチスドイツによる無慈悲で非道な処刑は何度も繰り返し描かれるのだが、無残に転がる死体の多さや街の様子などは手抜きのない物量をつぎ込んでいて臨場感は半端ない。
建設現場では基礎工事のやり直しを訴えた女性が、意見を言っただけで射殺されてしまう。
そのあとでその将校は女性の言った通りの基礎工事を命じているのである。
アーモン・ゲート少尉が上半身裸で2階のベランダから、働きの悪いユダヤ人たちを撃ち殺す様子はあまりにも残酷で、彼はゲームを楽しむよう殺戮を悪びれることもなくやっている。

アーモン・ゲート少尉はオスカー・シンドラーとの対比で描かれている人物だ。
シンドラーもナチス党員であり、ゲート少尉も罪を許すと言って処刑を思いとどまっている。
誰が見ても罪のある者を許すのがパワーだとシンドラーから言われたからなのだが、彼ら二人には似通った血が流れていたことを思わせる。
二人を分けたものは運命だったり、立場だったり、雰囲気だったり、時代の流れだったりする目に見えないものだったのかもしれない。
シンドラーは聖人君子ではなく、戦争を利用して巨利を得ようとしている人物だ。
事業を成功させるためには手段を択ばず、これはと思う人物にワイロを惜しげもなく渡す。
シンドラーは贈賄側で、ゲート少尉は収賄側なのである。
権力者たちと上手くやっていく処世術をシンドラーは持ち合わせているが、ある時からその行動に変化を見せる。
それが赤い服を着た少女を見た時だ。
モノローグとエピローグのカラー映像を除けば、物語の中でカラーが使われるのは少女の姿とローソクが燃えるシーンだけである。
もちろんそれを強調したいがための手法の筈だが、どちらも生命の象徴だったのではないか。
逃げ惑う少女は何とか生き延びようとする幼い命の生命力を著していたと思うのだが、しかしそう思わせておいて我々に悲惨な結末を突きつけてくる。
ロウソクの灯は生きるための希望の光だ。
シンドラーによって救われた人々が最後に登場するのは本来なら違和感を感じるかもしれないが、演じた俳優さんと一緒に登場することで抵抗なく受け入れることができた反面、その前のイスラエル建国を思わせるシーンにはあざとさを感じたのだがスピルバーグがユダヤ人であるだけに仕方のないことか。


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2 コメント

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鈴木忠志によれば (FUMIO SASHIDA)
2021-04-11 07:25:06
演出家の鈴木忠志によれば、1960年代までの日本の演劇は、テーマ主義で、お客さんも、主義主張に感動していた。
それは間違いで、演劇は演技そのものに感動すべきだと言っていた。

これを劇場で見ていると、皆泣いている。
でも、それは映画に感動しているのか、シンドラーのやったことに感動しているのかと思いました。
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日本にも (館長)
2021-04-11 09:42:48
日本にも杉原千畝のような人もおりましたね。
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