「トゥームストーン」 1993年 アメリカ
監督 ジョルジ・パン・コスマトス
出演 カート・ラッセル ヴァル・キルマー サム・エリオット
ビル・パクストン パワーズ・ブース マイケル・ビーン
チャールトン・ヘストン ジェイソン・プリーストリー
スティーヴン・ラング ダナ・デラニー ジョアンナ・パクラ
ストーリー
連邦保安官ワイアット・アープ(カート・ラッセル)は、夫の身を案じるばかりに情緒不安定になってしまった妻マティ(ダナ・ウィーラー=ニコルソン)のために引退を決意、兄ヴァージル(サム・エリオット)や弟モーガン(ビル・パクストン)の家族らと共にゴールドラッシュに沸く町トゥームストーンへ向けて旅立った。
トゥームストーンに着いたワイアットは、今やこの町が凶悪なリーダーのカーリー・ビル(パワーズ・ブース)や兄・アイク(スティーヴン・ラング)と弟・ビリー(トーマス・ヘイデン・チャーチ)のクラントン兄弟、凄腕のガンマンのジョニー・リンゴ(マイケル・ビーン)らからなる無法者集団「カウボーイズ」によって牛耳られており、郡保安官ジョニー・ビーハン(ジョン・テニー)には彼らを抑え込む力がないことも知らされた。
その後、酒場の用心棒となったワイアットは恋人のケイト(ジョアンナ・パクラ)を伴った旧友ドク・ホリデイ(ヴァル・キルマー)と再会を果たしたが、その時既にドクは結核を患っていた。
ワイアットは町を訪れた旅芸人一座の女優ジョセフィーン・マーカス(ダナ・デラニー)と出会い、その美しさに心を惹かれ、翌日、たまたま乗馬中に再会したワイアットとジョセフィーンは意気投合して遠乗りに出かけ、ワイアットはジョセフィーンが聡明な心の持ち主だと知って更に魅了される。
ある日、酒に酔ったカーリーが保安官のホワイト(ハリー・ケリー・ジュニア)を射殺する事件が発生し、ワイアットがカーリーを取り押さえるものの、兄弟たちに他の土地へ移って商売を始めようと提案する。
ところが、正義感に駆られたヴァージルはワイアットの反対を押し切り、モーガンを助手にして保安官を引き受けることにした。
アイクはアープ兄弟に決闘を申し入れ、ヴァージルとモーガンはワイアットやドクの加勢を得て、OK牧場の闘はアープ兄弟やドクの勝利に終わり、アイクは命からがら逃げ出した。
カウボーイズは報復に乗り出し、ヴァージルは闇討ちに遭って重傷を負い、モーガンもまた襲撃されて殺害されてしまう。
寸評
ワイアット・アープは僕たち日本人にとっても最も馴染みのある保安官である。
西部劇の題材として何度も描かれてきたことによるものなのだが、多くの場合クラントン一家とのOK牧場の決闘を最大の見せ場としてそこに至る経緯が描かれてきた。
アープ兄弟が善でクラントン一家が悪という単純図式も西部劇に向いていたのだろう。
この映画で描かれたアープ兄弟に関わる出来事は史実に基づいたものであることが宣伝文句になっている。
多少の脚色があるのだろうが、言われてみれば実際の出来事に近いものなのだろうと感じさせるものはある。
有名なOK牧場の決闘は短時間のうちに終わる。
史実を追えばOK牧場の決闘に向かってストーリーが盛り上がっていくという風にはならないのも理解はできるが、そのかわりに話が散漫になってアクションを重視した娯楽作品としての盛り上がりには欠けるものがある。
最初の西部劇映画作品と言われる「大列車強盗」のフィルムを引用しながら本編に入っていくので、ストーリーはクラントン一家との抗争ではなく、無法集団のカウボーイズとの対決に注がれている。
目立つのはワイアットのカート・ラッセルとドクのヴァル・キルマーで、渋いのにヴァージルのサム・エリオットや、リンゴのマイケル・ビーンなどの影は薄い。
アープの妻であるマティは情緒不安になっていて、どうも夫婦関係は上手くいっているようには見えない。
そんな時に魅力的なジョセフィーンに出会えば心はそちらに向かおうというものだ。
最終的にアープはジョセフィーンと一緒になるのだが、それではマティはどうなったのだと気になる。
マティとの清算を描いていないのでマティのことが気になった。
中途半端なのはアープとマティの関係だけではない。
ドクとケイトの関係も途中で消え去っている。
結核を患ったドクは療養所に入院しているがそこにはケイトの姿は見えず、見舞いに訪れている風でもない。
どうもジョセフィーン以外の女性の影も薄い。
カウボーイズによってヴァージルは腕を撃たれ、モーガンは背中を撃たれて死亡する。
背景には連邦保安官と郡保安官という二つの保安官の権力争いもあるのだが、カウボーイズ側に立っている郡保安官の描き方も弱いので、保安官同士の対立という側面は面白いにもかかわらず描かれているとは言い難い。
カウボーイズのひどい行いに対してシャーマンたちが仲間と決別しワイアットたちに味方するのだが、その経緯も結果だけを描いているので、シャーマンがむごい殺され方をしてワイアットがリンゴに憎しみを抱くシーンが弱くなっている。
面白いのはリンゴが凄腕で、決闘を承知したもののワイアットが自分は負けるであろうと弱気を見せることだ。
この作品ではやはりリンゴとの対決場面が最大の見せ場となっている。
この場面の描き方は意表をついていてよくできている。
そこからのワイアット団の大攻勢は痛快だ。
カウボーイズが壊滅していく様子もよくわかるが、クラントンの結末は事実に基づいているのだろうが、僕の想像外だった。
ラストシーンは映画らしい終わり方で微笑ましい。
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