「眺めのいい部屋」 1986年 イギリス
監督 ジェームズ・アイヴォリー
出演 ヘレナ・ボナム=カーター
デンホルム・エリオット
マギー・スミス
ジュリアン・サンズ
ジュディ・デンチ
ダニエル・デイ=ルイス
ストーリー
1907年。イギリスの良家の令嬢ルーシー・ハニーチャーチ(ヘレナ・ボナム・カーター)は、年上の従姉シャーロット(マギー・スミス)に付き添われ、イタリアのフィレンツェを訪れる。
イギリス人観光客がよく利用するペンション“ベルトリーニ”についた二人は、部屋が美しいアルノ河に面した側でないことにがっかりする。
シャーロットが苦情を言いたてるのを聞いたエマソン(デンホルム・エリオット)は息子のジョージ(ジュリアン・サンズ)と共に泊っていた眺めのいい部屋と交換してもいいと申し出てくれた。
一度はためらったシャーロットであったが、偶然に同宿していたハニーチャーチ家の教区のビーブ牧師(サイモン・カラウ)に説得され、申し出を受ける決心をする。
翌朝一人で町を見物していたルーシーは、サンタ・クローチェ寺院でエマソンとばったり出会い、一緒に礼拝堂の壁画を見て回った。
シニョーリ広場を通りかかったルーシーは喧嘩で胸を刺された男が血だらけになっている場面を目撃しその場で失神してしまうが、そんな彼女を介抱したのは、通り合わせたジョージであった。
二人の心に、この時から特別な感情が芽生えはじめた。
二人の仲に気づいたシャーロットは、急遽、ルーシーをイギリスに連れ帰ってしまう。
数ヵ月後、ルーシーは、高い教養の持ち主であるシシル・ヴァイス(ダニエル・デイ・ルイス)と婚約する。
そんな矢先、偶然に美術館でエマソン父子と会ったシシルは、ルーシーの家に近い貸家の世話をする。
やがてルーシーはジョージと再会し、ルーシー家の人々はジョージとテニスに興じる。
傍でラヴィッシュ女史(ジュディ・デンチ)の書いた小説を読み上げるシシル。
再びジョージから熱いキスを受けたルーシーは、シシルとの婚約解消を決意する。
寸評
オープニング・タイトルと、その時流れるプッチーニのオペラはこの作品の格調を感じさせるものとなっている。
出だしはいいし、衣装、美術、時代を感じさせるフィルムの色調もいいのだが、僕は少し間延び感を感じた。
イギリス良家の令嬢ルーシーが、旅先のフィレンツェで出会った労働者階級のジョージと、イギリスに戻ってから婚約した貴族階級のセシルとの間で揺れ動く心を描いているが、ルーシーの悩む姿が物足りなく感じる。
もっともだえ苦しむと思うんだがなあ・・・。
プッチーニのアリアが流れる麦畑で、激情の運命にそってジョージとルーシーがキスするシーンが良かっただけに、その後の展開を期待しすぎてしまった。
一番気にいった場面はルーシーに振られたセシルが精一杯の見栄をはるまでの一連のシーンだ。
ジョージが自分の思いを吐き出すようにルーシーに迫る。
ジョージに手をつかまれたルーシーは「今すぐ帰って。いやよ!何も聞きたくない!」とその手を離し、ジョージを拒絶する。
ここでは、拒絶する態度の中に自分の思いを封印する女の複雑な心情が見て取れる。
そして思いを隠し切れなくなったルーシーは、教養をひけらかすシシルのようなタイプの男の妻に、自分がふさわしくないことを悟り、婚約解消を申し出る。
シシルは「君は本当に私を愛していないようだ。残念ながらね。その理由が分れば、痛みも和らぐんだが・・・」と冷静を装って問いただす。
そして最後に「君に感謝したいと思ってるんだ。自分が見えてきたよ。君の勇気には感心した」と、男としての精一杯の見栄をはる。
失恋し、恥辱を受けたにも拘わらず冷静に振舞わせたのは、恐らくどのような状況下でも感情を荒げる行為をすまいと言い聞かせて自我を作り上げてきた男のプライドがそうさせたのだろう。
ジョージの持つ八方破れ的な自我の表現が出来ない貴族階級の弱さでもある。
僕は貴族階級でも何でもないが、シシルのとった態度だけは、何となくわかるような気がする。
セシルに感情移入できたから、一連のシーンを気に入ることが出来たのかもしれない。
年配の登場者が多いが、婆さんの一人がルーシーが婚約しているとは思えないと勘を働かせる。
輝きが感じられないからだと言うのだが、ここで年の功を見せるために婆さん姉妹は居たのかもしれない。
そしていい味を見せるのがエマソン・パパだ。
「唯一、不可能なこととは、愛していながら別れることだ」などとキザな言葉でルーシーを説得する。
エマソンの後押しもあって二人は結ばれ、再びフィレンツェを訪れる。
「似た者同士」であるルーシーとジョージが、「眺めのいい部屋」で激しく求め合うラストシーンは、本当の二人の旅の始まりを示していたと思う。
観光映画的なフィレンツェの景色と、のどかなイギリスの田園風景を写し撮るカメラもいい。
アカデミー賞で、衣装賞、美術賞を受賞しているのも納得である。
監督 ジェームズ・アイヴォリー
出演 ヘレナ・ボナム=カーター
デンホルム・エリオット
マギー・スミス
ジュリアン・サンズ
ジュディ・デンチ
ダニエル・デイ=ルイス
ストーリー
1907年。イギリスの良家の令嬢ルーシー・ハニーチャーチ(ヘレナ・ボナム・カーター)は、年上の従姉シャーロット(マギー・スミス)に付き添われ、イタリアのフィレンツェを訪れる。
イギリス人観光客がよく利用するペンション“ベルトリーニ”についた二人は、部屋が美しいアルノ河に面した側でないことにがっかりする。
シャーロットが苦情を言いたてるのを聞いたエマソン(デンホルム・エリオット)は息子のジョージ(ジュリアン・サンズ)と共に泊っていた眺めのいい部屋と交換してもいいと申し出てくれた。
一度はためらったシャーロットであったが、偶然に同宿していたハニーチャーチ家の教区のビーブ牧師(サイモン・カラウ)に説得され、申し出を受ける決心をする。
翌朝一人で町を見物していたルーシーは、サンタ・クローチェ寺院でエマソンとばったり出会い、一緒に礼拝堂の壁画を見て回った。
シニョーリ広場を通りかかったルーシーは喧嘩で胸を刺された男が血だらけになっている場面を目撃しその場で失神してしまうが、そんな彼女を介抱したのは、通り合わせたジョージであった。
二人の心に、この時から特別な感情が芽生えはじめた。
二人の仲に気づいたシャーロットは、急遽、ルーシーをイギリスに連れ帰ってしまう。
数ヵ月後、ルーシーは、高い教養の持ち主であるシシル・ヴァイス(ダニエル・デイ・ルイス)と婚約する。
そんな矢先、偶然に美術館でエマソン父子と会ったシシルは、ルーシーの家に近い貸家の世話をする。
やがてルーシーはジョージと再会し、ルーシー家の人々はジョージとテニスに興じる。
傍でラヴィッシュ女史(ジュディ・デンチ)の書いた小説を読み上げるシシル。
再びジョージから熱いキスを受けたルーシーは、シシルとの婚約解消を決意する。
寸評
オープニング・タイトルと、その時流れるプッチーニのオペラはこの作品の格調を感じさせるものとなっている。
出だしはいいし、衣装、美術、時代を感じさせるフィルムの色調もいいのだが、僕は少し間延び感を感じた。
イギリス良家の令嬢ルーシーが、旅先のフィレンツェで出会った労働者階級のジョージと、イギリスに戻ってから婚約した貴族階級のセシルとの間で揺れ動く心を描いているが、ルーシーの悩む姿が物足りなく感じる。
もっともだえ苦しむと思うんだがなあ・・・。
プッチーニのアリアが流れる麦畑で、激情の運命にそってジョージとルーシーがキスするシーンが良かっただけに、その後の展開を期待しすぎてしまった。
一番気にいった場面はルーシーに振られたセシルが精一杯の見栄をはるまでの一連のシーンだ。
ジョージが自分の思いを吐き出すようにルーシーに迫る。
ジョージに手をつかまれたルーシーは「今すぐ帰って。いやよ!何も聞きたくない!」とその手を離し、ジョージを拒絶する。
ここでは、拒絶する態度の中に自分の思いを封印する女の複雑な心情が見て取れる。
そして思いを隠し切れなくなったルーシーは、教養をひけらかすシシルのようなタイプの男の妻に、自分がふさわしくないことを悟り、婚約解消を申し出る。
シシルは「君は本当に私を愛していないようだ。残念ながらね。その理由が分れば、痛みも和らぐんだが・・・」と冷静を装って問いただす。
そして最後に「君に感謝したいと思ってるんだ。自分が見えてきたよ。君の勇気には感心した」と、男としての精一杯の見栄をはる。
失恋し、恥辱を受けたにも拘わらず冷静に振舞わせたのは、恐らくどのような状況下でも感情を荒げる行為をすまいと言い聞かせて自我を作り上げてきた男のプライドがそうさせたのだろう。
ジョージの持つ八方破れ的な自我の表現が出来ない貴族階級の弱さでもある。
僕は貴族階級でも何でもないが、シシルのとった態度だけは、何となくわかるような気がする。
セシルに感情移入できたから、一連のシーンを気に入ることが出来たのかもしれない。
年配の登場者が多いが、婆さんの一人がルーシーが婚約しているとは思えないと勘を働かせる。
輝きが感じられないからだと言うのだが、ここで年の功を見せるために婆さん姉妹は居たのかもしれない。
そしていい味を見せるのがエマソン・パパだ。
「唯一、不可能なこととは、愛していながら別れることだ」などとキザな言葉でルーシーを説得する。
エマソンの後押しもあって二人は結ばれ、再びフィレンツェを訪れる。
「似た者同士」であるルーシーとジョージが、「眺めのいい部屋」で激しく求め合うラストシーンは、本当の二人の旅の始まりを示していたと思う。
観光映画的なフィレンツェの景色と、のどかなイギリスの田園風景を写し撮るカメラもいい。
アカデミー賞で、衣装賞、美術賞を受賞しているのも納得である。
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