末つ森でひとやすみ

映画や音楽、読書メモを中心とした備忘録です。のんびり、マイペースに書いていこうと思います。

ホビット -竜に奪われた王国-

2014-03-15 21:55:00 | PJ版:ホビットの冒険
映画「ホビット」シリーズ第二弾、
「ホビット -竜に奪われた王国-」を見てきました。
鑑賞回数は2回。いずれもHFR3D字幕版です。
(一度は2D字幕版にしたかったのですが、時間が合わず断念しました)

以下、ネタバレ要素(本編および第三部、原作関連)を含みます。
また、後半は、かなり辛口のレビューとなっています。
ご注意ください。

*~*~*~*~*~*~*~*~*

今回も、一番の見どころは、主人公ビルボ♪
時にシリアスに。時にコミカルに。自然に、細やかに演じきる、
マーティン・フリーマンという役者の力量。
ビルボの登場シーンを、いつまでも見ていたい! と思いました。

それにしても、ビルボの旦那様は、本当に働き者ですね。
途中、ピピンみたいな事もやらかしていましたが、
(その状況で、蜘蛛の巣を二度も弾きますか・笑)
自身の知恵と勇気とで、最後まで諦めず、そして、トゥックの血筋で大胆に、
見事、旅の成否を握るキーパーソンへと変貌を遂げています。

三部作のラストとなる次作での、ビルボの活躍と、
彼が経験するドラマにも、大いに期待したいです。

  *~*~*~*

さて ―― 。
主人公については、概ね満足した今作ですが、
作品全体としては、それ程でもないのが正直なところ。
サー・PJ監督による、中つ国を映画化したこれまでの5本の中で、
もっとも散漫な印象の出来でした。

前三部作のLotRシリーズからしばしば見られる、
 (1) 物語の本筋が霞む、バランスの悪い編集。
 (2) サイドストーリーの、取捨選択の不味さ。
 (3) 好みの演出を優先し、キャラがブレてしまう主要人物。
という、いずれも、PJ監督の悪癖が原因ですね。

読んで味わう原作と、見て楽しむ映画とでは、
面白く感じる要素も変わってくる為、
作品の映像化に改変は付き物だと思いますが、
残念ながら、今回は、納得しかねる内容の方が多かったです。

改変箇所で素直に楽しめたのは、"樽に乗って激流下り" のシーンかな。
脱出する旅の一行と、それを追う闇の森のエルフ兵に、
襲撃をかけるオークたちという構図も良かったですし、
前作であまり目立たなかったボンブールに、スポットが当たったりもして、
見ていて、すごく面白かったです。

ビヨルン屋敷でのエピソードが、ごっそりと削られたのは、
原作と映画との、作風の違いで頷けるものの、
もう少し、ビヨルンさんと、旅の一行とを、絡ませるべきでした。
あれでは、次作で描かれるはずの "五軍の合戦" での件りが、
ご都合主義に見えてしまいそう。

旅の一行との絡みで言えば、バルドの描き方も、やや不足。
バルドの凄さが前面に出てくるのは、勿論、第三部なのだけど、
ビルボや、残留組のドワーフたちと、もっとやり取りする場面がないと、
せっかく、映画オリジナル用に肉付けされた設定も、活かし切れない気がします。

今作は、三部作中の第二部。
新たな人物が登場し、転換点を迎えた物語は大きなうねりとなって、
最終章へと向かい、一気に流れて行くようにすべきなのに、
上手く機能しているとは思えませんでした。

一方で、余計な事には、無駄に時間をかけていますね。

とにもかくにも、戦闘場面が多すぎです。
前作で、アゾグが生きている設定なのは、トーリンの過去を
じっくり描く為なのかと思ったけれど、結局は、違ったみたい。

闇の森関連でも、下手な恋愛要素を捩じ込む暇があったら、
スランドゥイル王をもっと掘り下げて描く方が、よっぽど良いですよ。

レゴラスは、原作には書かれていないものの、
あの時代に、闇の森にいても不思議はないので、
登場すること自体に問題は無いけれど、
舞台が湖の町に移って以降も、彼をメインとした戦闘シーンが続くことに、
"ホビット" という物語における、必然性が感じられません。
第二部でのレゴラス出演は、グローインとの場面と、闇の森周辺での戦いとに、
止めておくべきだったと思います。

タウリエルも、王家の血筋ではない、一介の、若い世代の戦士が、
外界や、他種族に関心を抱いている程度の描写で十分。
彼女単体では悪くはないですが、盛り込むエピソードの端々に、
"LotR三部作で出来なかった、あれやこれやを今こそ!" という
PJ側の思惑が透けて見え、却って、こちら側のテンションが下がります。
大体、原作 『指輪物語』 で語られた、レゴラスとギムリの絆の稀有さに対し、
矛盾をきたしていませんか? 今作の設定。

矛盾と言えば、隠し扉の探索に失敗したと思われた途端、
トーリンが鍵を捨て、さっさと道を引き返した場面にはア然としました。
続く再登場シーンの、PJが好きそうなベタな演出を見るにつけ、
この為に、こんなキャラ矛盾の演技をさせられたならば、役者が気の毒です。
トーリンは、第一部で描かれたキャラからも、ブレが感じられました。
エレボールに近づき、アーケン石への執着が、彼の心を歪つに支配しつつある
・・ と、そうした事を表現したかったのでしょうか。
もし、そうであれば、バーリンの台詞だけで済ませるような事はせずに、
変化へと至る様を、もっと丁寧に描写して欲しかったです。

この旅は、トーリンの運命を決する、彼の "最後の旅" なのだから。

  *~*~*~*

批判ばかりを書きましたが、作品運びのテンポ感はなかなかでした。
最初は、この状態で161分の長尺は厳しいと感じましたが、
映画自体はサクサク進んだので、終わってみれば、
時間の長さはそれほど気にならず、このあたりは流石だと思います。

今回、第二部で描かれたのは、
原作 『ホビットの冒険』 で言うと、全19章中の第12章まで。

第三部では、五軍の合戦以外にも、スマウグの最期、
『指輪物語:追補編』 や 『UT』 からアレンジした、
ドル・グルドゥアの顛末など、語らねばならない出来事が沢山あります。

それらが、ちゃんと、
ホビットのビルボと、トーリン・オーケンシールド率いる
13人のドワーフの物語として、描かれますように。
中つ国での重い使命を負った、ガンダルフの存在を感じられますように。

次回作は、映画「ホビット」の完結編であると同時に、
PJ版 "中つ国" シリーズの最終作品でもあります。
最後を飾るにふさわしい第三部の公開を、静かに待ちたいと思います。


*~*~*~*~*~*~*~*~*

   映画 『ホビット -竜に奪われた王国-』

  ◇原題:The Hobbit ~ The Desolation of Smaug
  ◇関連サイト:公式サイト ( 日本版 )、IMDb ( 関連ページ )、transcript ( 関連ページ
  ◇レビュー:第一部 『 ホビット -思いがけない冒険-
  ◇鑑賞日:2014.3.1. 他 映画館にて


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