ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

シリア 歴史はくりかえす

2018-04-12 12:23:19 | 日記
歴史はくりかえす。シリアで、化学兵器が使われたと疑われる事象が発覚し
た。1年前もそうだった。禁止されている化学兵器の使用を疑われているの
は、今回も1年前と同じく、アサド政権である。

この事態をうけ、トランプ米大統領はシリアへの武力攻撃を辞さない構えで、
9日に「48時間以内に大きな決断を下す」と明言した。決断を下す期限がす
ぎた今も、まだ軍事攻撃は行われていない。1年前と大きな違いがあるとすれ
ば、この点だろうか。トランプ大統領は1年前、アサド政権への懲罰として、
躊躇することなく政府軍の拠点を巡航ミサイルで攻撃した。

1年前の4月9日、私は本ブログでその事態を話題にとりあげ、《シリア攻撃
 正義のゆくえ》と題して、次のように書いた。

アメリカのシリア攻撃に対しては、意見は賛成と反対に別れる。賛成に比べれ
ば、反対の意見のほうが圧倒的に数が多い。(中略)反対の理由は、各紙とも
共通している。朝日と日経の見解が代表的であり、分かりやすい。
「化学兵器をめぐる事実関係ははっきりしていない。国際的な調査を尽くさず、
証拠も示さないまま軍事行動に走るのは危険な独断行為だ。」(朝日《米シリ
ア攻撃 無責任な単独行動だ》4月8日付)
「国連安全保障理事会などに明確な証拠を提示することもなしに武力行使をし
たのは、はやり過ぎである。米国は「大量破壊兵器を保有している」として
2003年にイラクに攻め込んだが、発見できなかった。」(日経《シリア攻撃
が示す米政権の方向転換 》4月8日付)
要するに、「事を起こす前に、事実をきちんと確かめろ」ということである。
それ自体は共感できるスローガンだが、これに対して、トランプ大統領は次の
ように答えるに違いない。
「いや、事実確認はきちんと行なった。化学兵器を使った爆撃機がどこの基地
から飛び立ったのか、我々はきちんと押さえている」。
これに対して、反米朝日の論説委員なら、こう主張するだろう。
「だったら、アメリカはその証拠を国連安保理に示して、承認を得たのだろう
か?そうしなかったではないか」と。
朝日のこの反論に対しては、以下のような産経の見解が強力なアンチテーゼに
なるだろう。
「非人道的な化学兵器の使用は、明確な戦争犯罪であり、許されない。国際社
会から強い批判の声が上がった。だが、国連安全保障理事会はロシアの抵抗で、
非難決議さえ採択できない状況だ。」
ハト派は事があれば、訳知り顔に「国連安保理の承認を!」とお題目をとなえ
るが、では、その国連安保理は「正義の味方」として、どの程度まともに機能
しているのか。(中略)「正義の味方」としてまともに機能せず、足を引っ張
るだけの国連安保理をショートカットしたとしても、そのことが重大な瑕疵
(かし)になるとは、私には思えない。

以上が、1年前に私が書いたブログ記事である。この記事を読みかえすと、私
はつくづく「歴史はくりかえすのだなあ」という思いにとらわれる。「正義の
味方」であるべき国連安保理が(常任理事国の、利害がからんだ拒否権の行使
によって)機能不全に陥っている現状は、1年前とまったく変わらないからで
ある。今回も次のような報道が見られた。

国連安全保障理事会では10日(日本時間11日)、シリアでの化学兵器使用
疑惑の真相解明と責任追及にあたるため、調査チームを設立するとする米国作
成の決議案が採決され、アサド政権の後ろ盾のロシアの拒否権行使で廃案に
なった。
採決では米英仏に9の非常任理事国を加えた計12カ国が賛成。ロシアとボリ
ビアが反対し、中国は棄権した。シリア内戦をめぐる決議案採決でロシアが拒
否権を行使したのは12度目。シリア内戦をめぐっては、米英仏ロ中の5常任
理事国が、反アサド政権の米英仏と親アサド政権のロシアに分断され、安保理
は機能しない状態が続いている。
                  (朝日新聞DIGITAL4月12日配信)

さて、1年前と変わらないこのような現状をふまえ、トランプ米大統領はどう
いう「決断」を下すのか。「決断」を下す期限はもうすぎている。今回、トラ
ンプ大統領は、英仏などと共同でシリアを攻撃する計画を立てているという。
「決断」まで時間がかかるのは、英仏との調整に手間どっているためだろう。
1年前のミサイル攻撃は、北朝鮮への見せしめの意味を持つと言われたが、
今回、米英仏によるシリア攻撃に対して、露朝はどういう反応を示すのだろ
うか。
コメント
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