ささやんの天邪鬼 座右の迷言

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

一大事!

2018-01-08 16:23:03 | 日記
♪♪だけども 問題は 今日の雨 傘がない♪♪
                 (井上陽水「傘がない」)

若者はなぜ社会問題、政治の問題に関心を示さないのかーー。
きょうは年が明けて初めてのリハビリ出勤の日。施設に到着すると、24歳
になるというスタッフの青年O君が、「皆さん、ご報告があります」と言う。
何だろう、新入スタッフの紹介かな?と思ったら、「ボクは先日、入籍しま
した。お相手は、みなさんもご存知のSさんです」とのこと。喜びが湧き出
し、自分の一大事を一刻も早く世のすべての人に知らせたい、とでもいった
面持ちである。

彼が言うお相手の「Sさん」とは、1年ほど前からこの施設で働きはじめた
30歳前後の女性で、PT(理学療法士)の資格を持っている。O君にリカン
ベントのセッティングをしてもらっているとき、「もう新居は決まったの?」
と尋ねたら、**地区の、2LDKの、築*年のアパートで、家賃は**で、
通勤時間は車で**分で、などと、訊きもしない個人情報を滔々と披露しは
じめた。

リカンベントのペダルを漕ぎながら、ふと考えた。たしかに、この若者に
とっては、Sさんと入籍したことが一大事で、槍が降ろうが、北のミサイル
が降ろうが、そんなことはどうでもよいのだろう。そんな時代が自分にもあっ
たはずだ、と思ったが、その感覚がどういうものだったか、悲しいことにもう
思い出せない。自分もそれだけ歳をとったということなのだろう。
音量をミニマムにしぼった施設の大型テレビには、スーツを着て演説する北の
独裁者の姿が映し出されていた。昼前のワイドショーの一駒だったが、O君の
ような若者は、こんな番組などは見ないのだろう。昼間のワイドショーは、
「自分の一大事」を無くした老人たちが暇つぶしに見るものなのだ。

こうして何事もなく、老人の一日が過ぎる。たわい無いこんな一日が積み重
なっただけの1年なんて、なるほど呆気なく過ぎてしまうはずだ。
帰りの送迎車に乗り込んで辺りを見ると、空はどんより曇り、今にも雨が降
り出しそうな気配が漂っている。そういえば、傘がなかったんだ、・・・でも
そんなこと、どうでもいいか、と考えた。

♪♪行かなくちゃ 君に逢いに行かなくちゃ
君の町に行かなくちゃ 雨にぬれ♪♪

なんてことも無いわけだし・・・。
コメント
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