Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

横山翔の復讐(4)

2014-04-01 01:00:00 | 雪3年3部(萌菜ズボン~横山の復讐)
前日、横山は自室にてレコーダーがきちんと機能するか試していた。

自身を褒め称える内容を、その小さな機械に向けて呟く。

「俺ってマジで頭の回転はえーよ。俺の携帯から送ったんじゃ来ねーだろうし?青田のバカ」



レコーダーはよく録れていた。

去年赤山雪が録音したというMP3などとは、比べ物にならないだろう。

これを使って明日の三時、青田淳に復讐を仕掛けるのだ。横山の頭の中に、顔面蒼白する淳が浮かんだ。

「う‥嘘だろ‥?」



顔を青くした淳は、横山の想像の中で彼に縋り付いた。

「ごめん翔‥!俺が悪かった‥!どうか雪ちゃんにだけは言わないでくれ‥!」



しかし横山は淳を許さず、翌日レコーダーを持って赤山雪の元へと向かう。

そして公衆の面前でそれを晒すのだ。

「よく聞こえるか?これが本当のレコーダーさ」



騒然とする周囲、隣で言葉を無くす伊吹聡美、そして俯いた赤山雪‥。

横山は勝ち誇ったように彼女見下ろす。



傷ついた表情で俯く彼女を見て、彼は嗤うだろう。

脳裏に浮かぶそんな構図を想像して、横山はその勝利に酔いしれる‥。

 





‥のは、夢物語になってしまった現実が、今目の前に広がっていた。

横山は怒りに震えながら、ギリリと歯を食いしばっていた。



淳はそんな横山に、しっかりしてくれと声を掛けて背を向ける。

「俺は番号も変えてないし、機種変もしてないことくらい皆知ってるだろう。

一人で一体何を言っているんだか」




そう言って教室を出て行こうとする淳に、横山は無意識の内に手を伸ばしていた。

「この野郎‥!」



横山は淳の胸ぐらを掴むと、怒りにまかせて彼に詰め寄った。

「いつまで見せかけのままでいるつもりだ?!赤山に本気なわけでもないくせに!」



淳は突然の横山の行動に目を剥いたが、「何するんだ」と冷静に返した。

しかし横山は止まらない。胸中で煮え滾った憎しみにまかせ、その切り札をチラつかせる。

「俺が貴様の本当の姿を、あいつに全部バラしてやる‥!」



横山の怒りは燃え盛った。

その形相は烈しく凄まじいものだったが、次の瞬間彼は息を呑むことになる。


淳は抑揚のないトーンで、横山に向かって口を開いた。

「なんて言った、今」



目の前の淳が彼に向けた眼差しは、これまでのそれとは比較にならなかった。

無言で屈服を促す力が、光を映さないその瞳には宿っている。

それはあれだけ怒り狂っていた横山を、即効で黙らせる威力を持っていた。




すると教室の外からガヤガヤと声が聞こえ、

横山の計画通りここに集められた同期や先輩達が、室内に入って来た。

「横山~来てんのか?何デカイ声出してんだよ。赤山が何だって?」



柳をはじめとする彼らは、横山から焼肉を奢るというメールでここに集められたらしい。

そのことを口に出しつつ室内に入って来た柳だったが、淳と横山の姿を見た瞬間顔色が変わった。

「な‥何だぁ?!」

 

淳の胸ぐらを掴んでいる横山に、柳もそして他の学生達も声を上げて近付いた。

「お前ら喧嘩か?!」「おい横山、手ぇ放せ!」



横山は突然のことに狼狽しながら、ただオロオロとその場に立ち尽くした。

柳や他の学生達は、先輩に対して何てことをするんだと横山の無礼を口々に非難する。



柳は淳の方に向き直り、閉口している彼に声を掛けた。

「何があった?さっき赤山がどうしたって?」



柳からの問いに、淳は溜息を吐いて言葉を濁した。

そして憂いを帯びたような表情を浮かべると、言いづらそうに口を開く。

「大したことじゃない‥ただ‥お前も知ってるだろ?翔が以前雪ちゃんを‥」



そこまで聞いた柳は合点がいったという表情をして、そして続けて横山を指差して笑った。

「どわ~!過去にミレン~!ってか?!そゆこと?!」



キャッキャッと騒ぐ柳に横山は否定するが、周りの先輩達は口々に横山を責めた。

直美と付き合っているくせに、という責めから始まり、

去年の球技大会の時、横山が無抵抗の青田淳に突っかかったことにまで遡った。



最初笑っていた柳も途中から立腹を露わにし、先輩に対して無礼な態度を取った横山は、今や四面楚歌になっていた。

大学生にもなって手が出るなんて前代未聞だ、と柳は口にして横山の袖を掴む。

「ほら、淳に謝れよ」



早くしろ、と柳は横山に謝罪を促した。

淳はそれを止めようとするが、周りの雰囲気は横山が謝るまで静まりそうにない。



しかし横山も、素直にハイそうですかと頷くわけにはいかなかった。

横山は柳の手を振り払うと、彼に向かって声を荒げる。

「謝罪なんて出来ませんよ!俺の話も聞いて下さい!」



横山は携帯を取り出すと、青田淳の番号を見せて柳に弁解した。

彼が自分にわざと偽の番号を教えたのだと言って、末尾が微妙に違っている番号を柳に見せる。

「? これただお前が下4ケタ間違えただけじゃね?」



しかし柳は横山の言葉など微塵も信じなかった。

今の状況ではいくら真実を告げたとしても、誰も彼を信じないだろう。

未だ弁明を続ける横山に向かって、柳は呆れたような口調で言った。

「お前ちょっとはマシになったと思ってたけど、なんも変わってねーのな」



この柳の言葉は、夏休みから水面下で進めてきた横山のイメージアップ作戦が、灰燼に帰したことを表していた。

砂の城が風に吹かれて消えていくように、横山が積み上げたものは脆くも崩れ去ったのだ‥。



そして事態は更に最悪の進行を辿った。今の話を、廊下に居た直美が全て聞いてしまったのだ。

直美は一言も発しないまま、青い顔をして横山に背を向けた。

「ち、違うよ直美さん‥!これは誤解で‥!」



横山はその背中に必死に弁解するが、直美は勿論そこに居た全員がそのまま教室を後にした。

大きな声で横山と赤山雪のこと、そして直美のことを口にしてしまったと言って、柳が直美に謝罪する。



首を横に振る直美に、淳も謝った。

そしてその場に居た全員にあまり言いふらさないようにと釘を刺し、皆がそれに了承した。

「直美さん‥!」



横山は必死な様子で直美に声を掛けた。彼女は少し振り返るが、

「あとで話そう」と小さく口にすると、そのまま去って行った。



皆が横山の前から居なくなって行く。彼女である直美でさえ。

横山が去って行く人達の背中に向かって声を荒げると、たった一人振り返った人物が居た。

他でもない、青田淳だった。



何だよ、と横山は警戒しながら彼に声を掛けた。

すると淳は横山のズボンに向かって指を刺しながら、冷静に口を開く。

「ポケットの中のそれ、まだ要るの?」



横山はギクッと身体が硬直した。

ポケットの中に入れていたレコーダーの存在を、事も無げに言い当てられて。

「ことあるごとにそこを気にして‥たかがそんなもの」



無意識に何度もポケットの中に手を入れていた横山。

淳はこの対話が始まって早々に、レコーダーの存在に気づいていたのだ。だからこそ、”知らん振り”を貫いていたのだ‥。



狼狽する横山を前にして、淳は一つ息を吐き口を開いた。

彼に対する、最終通告だった。

「意外に考え無しでお粗末だから、戸惑っちゃうね」



しっかりしてくれよ、と淳は言い残してその場から去って行った。

横山の脳裏に、先ほど自分が彼に掛けた言葉が蘇る。

意外に先輩が考え無しでお粗末なんで、俺若干戸惑ってんすけどw




因果応報、悪因悪果。

またしても同じ台詞でしてやられた横山は、悔しさと憤りが溢れて爆発した。

「うわぁあああああ!」



レコーダーを取り出して地面に叩きつけると、壊れるまでそれを踏みつけた。

そのまま教室内で暴れまくる横山を置いて、一同は去って行く。



感情のままに叫び続けるその声を聞いて柳はドン引きした後、淳を気にかけた。

「淳、大丈夫か?」



柳の心配に、淳は「大丈夫」と答え笑顔を浮かべる。

そして皆の方に向き直り、彼は全員に向かって声を掛けた。

「連講(連続講義)だったから、皆腹が減っただろう?焼肉を食べに行くと言っていたよな。

今日は俺がおごるよ」




マジで?と柳が聞き返すと、淳は微笑んで頷いた。

もう大学に通常通り通うのも最後だし、と淳は口にして、皆が淳の提案に湧いた。



そして淳は一人呟いた。誰にも聞こえない声で。

「本当に全くの予想通りなんてな‥」



淳の瞳には気怠いものが宿っていた。

疲弊や退屈、彼の人生に蔓延しているつまらないものが。





そして一人取り残された横山翔は、燃え盛る悔しさで頭がおかしくなりそうだった。

こめかみを両手で押さえ、身体を震わせて憤る。



そしてふと、教室内が静まり返っているのに気がついた。

つい昨日まで、彼の周りは騒がしかったというのに‥。




横山翔は再び一人になった。

彼が金と噂で勝ち得たもの全て、所詮は砂上の楼閣だった‥。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<横山の復讐(4)>でした。

最後の横山が教室で一人佇むカット、見覚えありますね~?



そうです、<取り残された彼>での最後のカット、淳が佇むカットと同じ構図ですね。


同じ台詞でやり返し、横山と同じ方法で彼が金と噂で勝ち得たものを奪い去る‥。

淳の手口の隙の無さに鳥肌ですね‥。とことん敵に回したくないと思いました^^;



そして柳ファンとしては、激おこ柳が見れてごちそうさまです!





次回は<河村姉弟の会話>です。



人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!

最新の画像もっと見る

15 Comments

コメント日が  古い順  |   新しい順
(涙目) (CitT)
2014-04-01 04:25:15
「ことあるごとにそこを構って‥」
これ、私の日本語力では意味が分かりません・・・
一応、原文は「何かと思ったら高がそれかよ‥」ですが、
「ことあるごとにそこを構って‥」もそんな意味でしょうか。

そしてこの回の黒田淳。三白眼を超えて四白眼。こわっ
返信する
また書き忘れ (CitT)
2014-04-01 04:28:47
皆ほぼ同時に集まったのは前に授業があったからですね。
返信する
Unknown (りんご)
2014-04-01 08:49:59
師匠より先に失礼。
CitTさん、私は師匠の訳とCitTさんが載せてくれた原訳で、よりここのニュアンスが伝わった気がしてます。
違う二つの文ですが、なんか同じようなこと言っているようにとれます。うまく言えないのですが…。
ことあるごとにポケットの中を気にしているようだけど、何を気にしてるのかと思えば、たかがそんなものか
ってことかなと。

先輩はシロかったり黒かったりで読者を翻弄させるから、青田なのかしら。
返信する
コマウォヨ! (Yukkanen)
2014-04-01 08:59:29
CitTさん、りんごさん、ご指摘ありがとう!
確かにここは言葉不足でしたね‥お二人の訳を参考に少し付け加えさせていただきます!

今日から3日家を離れるのであまりコメ出来ないかもしれませんが(そうでなくても最近バタバタでコメできてない~~ごめんなさい!)
皆さん盛り上がって下さいね~ん^^
返信する
シロとクロとのあいだには~ ()
2014-04-01 21:37:49
こんばんは!
直訳だけではなく、雰囲気を読んで構成してくださって感謝です。

CitTさん、みんなが同時に来た理由を教えてくださりありがとうございます。
なるほどー。
五分前行動とか馬鹿なこと言ってすみません(笑)
横山の計算もなかなか…

でも青田さんにはかなわないですねー
師匠さまの言ってた、しらを切り通した理由はこれですね!
四白眼になっている自覚はあるのかしら…
ほんとに隙がなさすぎる!

そしてりんごさんのコメントの、シロとクロの間だから青田、に笑ってしまいましたw

柳先輩たちの「大学生にもなって手をあげるなんて…」が後のストーリーにつながるんですかねー

関係ないですが、ちょびこさん、使用禁止の顔文字を教えてくださり、ありがとうございます!言われないと気づかなかったかも…
返信する
何度もすみません ()
2014-04-01 21:40:29
りんごさんのコメントのシロとクロについて、別の読み方してましたーーっm(_ _)m
読者を翻弄させるから、ですね…
どうかお許しを…
返信する
♪シロクロつけないアオタジュン (りんご)
2014-04-01 23:25:29
いえいえ。
河村氏の指事件、先輩グレー説派(またの名を現状まんま説)の私は、シロとクロの間の、灰田淳…妙に納得しちゃいます。
先輩の名前には、白と黒はNGですね。読者の見方が偏っちゃいそうです。笑
田村もいけません。先輩が雪宅に来たら違う意味でハラハラ(通じますか。笑)
やっぱし青田淳でよかったですね~。
返信する
先輩の四白眼・・・ 横山は点目・・・ザマミロ―! (どんぐり)
2014-04-01 23:26:41
こと横山との関係において、先輩って気の毒な人だな、と思います。 (←反論覚悟っ!?)
もともと横山とは、横山の癇癪と自意識過剰のとばっちりから始まったようなものですし、受け取り手のことを考えないしつこい横山からのメールにウンザリして携帯を捨てただけなのに。
横山だけでなく健太先輩や西条や・・・。嫉妬と悪意丸出しの人が、自らの優越感のために貶めようと付きまとうターゲットに、先輩がなっているという・・・(-“-) (←注:亮くんとの関係はこれとは違います) 
そのうえ他人(横山)からこんなにも罵倒されたら・・・、もうそれだけで人生嫌になってしまいます。きっと。
暗い部屋に一人籠って、周囲の喧騒から逃れたくなる気持ちが分かります・・・。
優しい彼女とたった二人で過ごしたくなる気持ちにもなるでしょう・・・。
「淳、お前大丈夫?」、と気遣ってくれる柳先輩の優しさが沁みました。

横山も健太先輩もやられた分(というかホントは相手にされていないですけれど)はやり返さないと気が済まない。それも皆の前で晒し者にして痛めつけて屈服させたいと。
こんな奴等の相手をしなくてはならないなんて、ホントに気の毒です。ウンザリでしょうね。

それにしても、横山が周到に準備した(つもりの)ピースを使って、予想して組み立てて同じ言葉でやり返すことのできる先輩は、頭が切れてスゴイなと思います。(怖さ6、羨ましさ4・・・。行き当たりばったりみたいな気もしますが。)
>「大したことじゃない‥ただ‥お前も知ってるだろ?翔が以前雪ちゃんを‥」というセリフも上手いな―と。

横山の携帯に入っている、末尾の違う先輩の番号は、柳先輩が言うように「横山が間違えた」のではなくて先輩が入力したのですよね?それを横山は分かっているから、まだまだ懲りずに先輩への報復(?)を続けるのでしょうか。

それと、2日前の記事のコメントに書いた3つのメールについては「告白」→「プレゼント」→「×同じ塾 → 一緒に勉強」とすべきでした。訂正させてください。(最近訂正ばかり・・・。スミマセン)
そしてこれらのメールは、同じ日に続けて書かれたものなのですね。なんだか私、別日に書かれたものと勘違いしていたようです・・・。
散らかったコメですみませんです・・・。
返信する
対比 (むくげ)
2014-04-02 06:09:38
スンキ嬢は色々と対比させるのが上手いですよね。

最後師匠が提示してくれた教室に立ち尽くし淳と横山のカットもそうですが、
そもそもこのレコーダー持参の場面も、雪が横山に問い詰めた場面を彷彿とさせます。

雪は録音うまくいってないですが、横山をきちんと慌てさせて引かせてますけど、横山は返り討ちにあっているというところでも対比ですよね。

横山の妄想では淳が顔面蒼白になって縋り付いてますが。。それって雪にすがりついた横山そのものだし・・

どんぐりさん
私も淳お気の毒と思いますし、これは横山が一線を越えての反撃ですからね。
どっかに私コメントしましたが、淳の適当アドバイス(静香だけど)って案外言っちゃってるレベルじゃないですか?
今までさんざ利用してきて、突如手のひら返しのように攻撃されたら、反撃しますよ。

にしても柳安定のチートラにおけるまともさ・・
なんだかんだモテルだろうな~

しかし直美いたんかい!
それでも丸め込まれて別れてないんかい、と女としてはそれがまた哀れを催します。
返信する
二次元だから許せる黒田淳、現実なら全力で逃げる (CitT)
2014-04-02 09:19:58
つまり、今の「ことあるごとに」はeverything(X) always(O)ですね!
返信する

post a comment