青田淳はその日、大学の構内に居た。例のごとく、つまらなそうな顔をしながら。

淳の姿を見た同期が、声を掛けて来た。
淳は手に持ったプリントを見せながら、健太先輩を見かけなかったかと彼に聞く。
同期は「またあの人青田に頼み事か」と溜息を吐きながら、B館の方で煙草を吸っていたと淳に教えた。

淳は同期に礼を述べ、一人B館の方へ歩いて行った。
健太からの課題への催促や持っている物への嫉妬には辟易していたが、それでも彼の言うことを聞く方が労力も少ない。
淳が気怠い気持ちでB館の裏を歩いていると、不意に建物の向こう側から話し声が聞こえて来た。

声は健太のものに違いなかった。よく見ると健太の前にもう一人居る。
「話して下さいよ~」 「今度な」

淳は建物の影に佇み、彼等の方を窺った。健太と共にそこに居たのは、三田という先輩だ。
彼等は煙草を吸いながら、とある女性について話をしている。
「クラブじゃちょっと見かけないタイプだな。俺も偶然見つけてね。ちょっと好みかも」
「うちの学科にそんな女居たかなぁ?」 「ま、特別カワイイってわけでもないんだけど」

淳の佇む角度からは、健太の表情は窺えないが三田の顔はハッキリ見えた。
彼はニヤリと笑いながら、美味しそうに煙をくゆらせて健太にこう言う。
「とにかく近いうち、ヤったら教えるさ」

三田はそう言って、吸い終わった煙草を地面に投げ捨て、踏みにじった。言うねぇ、と唸る健太に三田は、
「心配ねーよ。ネタ撒いたら早速食いついて来たから」と自信たっぷりに口にして笑う。

淳の脳裏に、先日三田と話していた赤山雪の姿が思い浮かぶ。
淳の頭の中で全ての点が繋がり、彼は事態を把握した。

三田と健太はまだ会話を続けている。
「見たところ酒にも弱そうだしな」 「悪い男だねぇw」
「したらちょっと付き合えばいいだろ。なぁ健太、イイ感じのクラブどっか知らねぇ?」

三田が、赤山雪を落とそうとその毒牙を彼女に伸ばす。善良そうな顔をして、彼は今彼女に罠を仕掛けている。
しかし淳は、そのままその場を後にした。全ての事情を知ったところで、自分には関係のないことだと。
知るか


そして次の授業の為に教室に向かい、ひと通り授業を受けた淳であったが、彼の気分は優れなかった。
学生が周りに沢山居るにも関わらず、彼は不機嫌そうな表情で前を向く。

その視線の先には、まさに先ほど話題に出た赤山と当事者の三田が居るのだ。
男は本性をその笑顔の裏に隠し、今まさに彼女を落とそうと罠の手綱を手繰り寄せている。

彼等は親しげに会話し、傍目からはカップルに見えなくもない。
淳はそんな二人を見て、一双の◯キブリを想像した。惚気カップル、という意味合いである。

コンペの話を進める雪と三田を、彼等の横に座る聡美と太一もじっと窺っていた。
雪は資料を指差しながら、自分なりにまとめた改善点を口にする。
「良いアイデアですけど、この部分が少し不足してませんか?」

雪の鋭い指摘に、三田は何度も頷いて雪を賞賛した。
「君、やっぱり優秀だね~!ここもよく見つけたよね!」「いえいえ‥」

雪は照れたように両手を振り、謙遜した。そして謙虚にこう口にする。
「私は後から参加したし、アイデアも出してないし‥。
プレゼンだけで参加者メンバーとして名前を載せてもらうのが申し訳なくて‥。だから最大限お手伝いします」

それを聞いた三田は、その謙虚な雪の言葉に更に彼女を賞賛する流れへと会話を運ぶ。
「いやいやそんな風に思う必要無いよ。君は俺がスカウトしたんだからさ。
チームメイトも褒めてたし、満足してたよ。俺はマジで鼻が高いよ。頭も良い、パワポも上手い、協力もする、顔も可愛い‥」

三田は雪の瞳をじっと見つめながら、ひたすらに彼女を褒めちぎった。そういうことに免疫のない雪は、真っ赤になって首を横に振る。
そしてそんな雪の頭を、三田はその大きな手で優しく撫でた。本当のことだよ、と甘い言葉を掛けながら。
「どしたん?」 「いや、なんか気持ち悪‥」

淳は口元を手で押さえながら、何だかモヤモヤとした気持ちが胸に広がるのを不快に思った。
雪と三田は親しげに、未だ会話を続けている。
「あ、そうだ雪ちゃん。君夜間講義は聞いてる?」

三田からの質問に、雪はかぶりを振った。すると三田はニッコリと微笑み、雪を夕食に誘う。
「コンペの予選を通過して本戦まで行くことを考えれば、長くを共にするチームメンバーだろ?
一緒に飲みに行こうよ」

その三田からの誘いに雪が頷くと、またしても彼は彼女の頭を撫でる。
「次は君だけ特別におごるからさ」

三田は”雪だけ特別”ということを強調した。
女性を褒めて褒めて、特別という点を強く推す。彼が女性を落とす時の、必勝パターンなのかもしれない。
「それじゃメールするね。”火の窯”で会おう!」

三田は、次の授業に行くからと忙しなく教室を後にした。「火の窯」という学生の間で有名な飲み屋の名を口にして。
そして雪の姿が見えなくなるまで、彼は何度も振り返り雪に手を振っていた‥。

笑顔を浮かべながら三田を見送った雪の元に、サッと聡美と太一が寄って来る。
「なになに~?トキメキドキドキ?」 「久々に胸が萌えまスか?」 「うん、コンペにね‥」

からかうようにそう口にする二人に対し、雪は気まずい表情だ。そして聡美は少し心配そうに雪に聞く。
「それでチームはどう?信頼できる先輩なの?」

それに対し、雪は三田について「よく分からない」という評価を口にした。
彼は復学生であまり情報が無いし、それにどんな人でもそれは関係ない、と。
「まぁ‥とにかく良いチャンスだから。ちょっと損してもそれはしょうがないよ。
私も得るものがあるし、ギブアンドテイクって感じで‥」

その雪の発言に、聡美は納得出来たような気がした。結局グルワとかもそんなもんだもんね、と。
そして上方の席では、淳を始めとする四年男子達が今夜どこに飲みに行くかの相談をしている。
「俺も今日”火の窯”行きて~な~。行こっか?」 「俺そこ飽きたー」 「俺も」

柳も三田が行こうとしている、”火の窯”という飲み屋に行きたいらしいが、
同期の彼等は今まで”火の窯”に行き過ぎて、皆そこに飽きていた。その空気を読むように、淳が提案する。
「他の所へ行こう」

淳は三田が”火の窯”へ向かうことを知った上で、皆にこう提案した。彼等も淳の提案に乗る。
ゆで豚を食べに行くかそれとも鍋か‥。彼等は口々に言い合いながら、教室を後にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪と淳>男の本性 でした。
三田‥!女の敵‥!ですね。。
”火の窯”どんなところなんでしょうね。激辛料理が目玉なのかな?^^
最後に皆が口々に提案しているポッサム(茹で豚)

と、プルナ(牛肉と真蛸のすき焼きみたいなもの?)

どちらも美味しそうです。どちらを食べに行くのだろう‥。(蛇足)
次回は<雪と淳>察知 です。
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淳の姿を見た同期が、声を掛けて来た。
淳は手に持ったプリントを見せながら、健太先輩を見かけなかったかと彼に聞く。
同期は「またあの人青田に頼み事か」と溜息を吐きながら、B館の方で煙草を吸っていたと淳に教えた。


淳は同期に礼を述べ、一人B館の方へ歩いて行った。
健太からの課題への催促や持っている物への嫉妬には辟易していたが、それでも彼の言うことを聞く方が労力も少ない。
淳が気怠い気持ちでB館の裏を歩いていると、不意に建物の向こう側から話し声が聞こえて来た。

声は健太のものに違いなかった。よく見ると健太の前にもう一人居る。
「話して下さいよ~」 「今度な」

淳は建物の影に佇み、彼等の方を窺った。健太と共にそこに居たのは、三田という先輩だ。
彼等は煙草を吸いながら、とある女性について話をしている。
「クラブじゃちょっと見かけないタイプだな。俺も偶然見つけてね。ちょっと好みかも」
「うちの学科にそんな女居たかなぁ?」 「ま、特別カワイイってわけでもないんだけど」

淳の佇む角度からは、健太の表情は窺えないが三田の顔はハッキリ見えた。
彼はニヤリと笑いながら、美味しそうに煙をくゆらせて健太にこう言う。
「とにかく近いうち、ヤったら教えるさ」

三田はそう言って、吸い終わった煙草を地面に投げ捨て、踏みにじった。言うねぇ、と唸る健太に三田は、
「心配ねーよ。ネタ撒いたら早速食いついて来たから」と自信たっぷりに口にして笑う。

淳の脳裏に、先日三田と話していた赤山雪の姿が思い浮かぶ。
淳の頭の中で全ての点が繋がり、彼は事態を把握した。

三田と健太はまだ会話を続けている。
「見たところ酒にも弱そうだしな」 「悪い男だねぇw」
「したらちょっと付き合えばいいだろ。なぁ健太、イイ感じのクラブどっか知らねぇ?」

三田が、赤山雪を落とそうとその毒牙を彼女に伸ばす。善良そうな顔をして、彼は今彼女に罠を仕掛けている。
しかし淳は、そのままその場を後にした。全ての事情を知ったところで、自分には関係のないことだと。
知るか


そして次の授業の為に教室に向かい、ひと通り授業を受けた淳であったが、彼の気分は優れなかった。
学生が周りに沢山居るにも関わらず、彼は不機嫌そうな表情で前を向く。

その視線の先には、まさに先ほど話題に出た赤山と当事者の三田が居るのだ。
男は本性をその笑顔の裏に隠し、今まさに彼女を落とそうと罠の手綱を手繰り寄せている。

彼等は親しげに会話し、傍目からはカップルに見えなくもない。
淳はそんな二人を見て、一双の◯キブリを想像した。惚気カップル、という意味合いである。

コンペの話を進める雪と三田を、彼等の横に座る聡美と太一もじっと窺っていた。
雪は資料を指差しながら、自分なりにまとめた改善点を口にする。
「良いアイデアですけど、この部分が少し不足してませんか?」

雪の鋭い指摘に、三田は何度も頷いて雪を賞賛した。
「君、やっぱり優秀だね~!ここもよく見つけたよね!」「いえいえ‥」

雪は照れたように両手を振り、謙遜した。そして謙虚にこう口にする。
「私は後から参加したし、アイデアも出してないし‥。
プレゼンだけで参加者メンバーとして名前を載せてもらうのが申し訳なくて‥。だから最大限お手伝いします」

それを聞いた三田は、その謙虚な雪の言葉に更に彼女を賞賛する流れへと会話を運ぶ。
「いやいやそんな風に思う必要無いよ。君は俺がスカウトしたんだからさ。
チームメイトも褒めてたし、満足してたよ。俺はマジで鼻が高いよ。頭も良い、パワポも上手い、協力もする、顔も可愛い‥」

三田は雪の瞳をじっと見つめながら、ひたすらに彼女を褒めちぎった。そういうことに免疫のない雪は、真っ赤になって首を横に振る。
そしてそんな雪の頭を、三田はその大きな手で優しく撫でた。本当のことだよ、と甘い言葉を掛けながら。
「どしたん?」 「いや、なんか気持ち悪‥」

淳は口元を手で押さえながら、何だかモヤモヤとした気持ちが胸に広がるのを不快に思った。
雪と三田は親しげに、未だ会話を続けている。
「あ、そうだ雪ちゃん。君夜間講義は聞いてる?」

三田からの質問に、雪はかぶりを振った。すると三田はニッコリと微笑み、雪を夕食に誘う。
「コンペの予選を通過して本戦まで行くことを考えれば、長くを共にするチームメンバーだろ?
一緒に飲みに行こうよ」

その三田からの誘いに雪が頷くと、またしても彼は彼女の頭を撫でる。
「次は君だけ特別におごるからさ」

三田は”雪だけ特別”ということを強調した。
女性を褒めて褒めて、特別という点を強く推す。彼が女性を落とす時の、必勝パターンなのかもしれない。
「それじゃメールするね。”火の窯”で会おう!」

三田は、次の授業に行くからと忙しなく教室を後にした。「火の窯」という学生の間で有名な飲み屋の名を口にして。
そして雪の姿が見えなくなるまで、彼は何度も振り返り雪に手を振っていた‥。

笑顔を浮かべながら三田を見送った雪の元に、サッと聡美と太一が寄って来る。
「なになに~?トキメキドキドキ?」 「久々に胸が萌えまスか?」 「うん、コンペにね‥」

からかうようにそう口にする二人に対し、雪は気まずい表情だ。そして聡美は少し心配そうに雪に聞く。
「それでチームはどう?信頼できる先輩なの?」

それに対し、雪は三田について「よく分からない」という評価を口にした。
彼は復学生であまり情報が無いし、それにどんな人でもそれは関係ない、と。
「まぁ‥とにかく良いチャンスだから。ちょっと損してもそれはしょうがないよ。
私も得るものがあるし、ギブアンドテイクって感じで‥」

その雪の発言に、聡美は納得出来たような気がした。結局グルワとかもそんなもんだもんね、と。
そして上方の席では、淳を始めとする四年男子達が今夜どこに飲みに行くかの相談をしている。
「俺も今日”火の窯”行きて~な~。行こっか?」 「俺そこ飽きたー」 「俺も」

柳も三田が行こうとしている、”火の窯”という飲み屋に行きたいらしいが、
同期の彼等は今まで”火の窯”に行き過ぎて、皆そこに飽きていた。その空気を読むように、淳が提案する。
「他の所へ行こう」

淳は三田が”火の窯”へ向かうことを知った上で、皆にこう提案した。彼等も淳の提案に乗る。
ゆで豚を食べに行くかそれとも鍋か‥。彼等は口々に言い合いながら、教室を後にした。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<雪と淳>男の本性 でした。
三田‥!女の敵‥!ですね。。
”火の窯”どんなところなんでしょうね。激辛料理が目玉なのかな?^^
最後に皆が口々に提案しているポッサム(茹で豚)

と、プルナ(牛肉と真蛸のすき焼きみたいなもの?)

どちらも美味しそうです。どちらを食べに行くのだろう‥。(蛇足)
次回は<雪と淳>察知 です。
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辛いものばかりですから。
家族皆がanti-spiceな舌ですので、
外食する度胃が苦労します。
しかも外食の辛さは、なんというか・・・
どんどん上がってる気がしますよ。
全国民が辛味になれてもっと強い刺激を求めるって感じ?
こんな私も美味しく食べられるラミョン(Korean ramen?)を
「唇が膨らんだ」という日本人の書き込みを読みました。
ゆで豚はとにかく、干潟タコの鍋は
ここの皆さんにはかなりの怪食じゃないでしょうか。
・・・それにしても青田先輩って本当に他人に興味ないんですね。
ほら、frame持ち出そうとした小学のクラスメートが
「Rose姉さんの写真」とか言い出しましたね。
実は韓国人もそれですぐTitanicを思い出せません。
当時流行りだったとはいえ、ローズってありふれたなまえですし。
淳父はちゃんと「ローズって?」と問い返したのに、
幼い淳は何も聞きませんでした。
私はそれが彼の他人への(感情的)態度を見せるシーンだと勝手に思います。
南、横山とはまた違ったウザさですがこーゆー人って実際ゴロゴロいると思われます。キモチワルッ
そして韓国料理…ポッサムは食べれそうですが、蛸の奴は多分口が腫れますな。
この場面のユジョンは、ホンソルにまださほどの興味を抱いていない段階でしょうから、どちらかと言えば「先輩の下衆っぷりへの嫌悪」の方が勝ってそうです。ここは、吐き気も含めてユジョンに全面同意です。
皆様の熱いコメント、日々拝見しておりましたが、
何だか私生活がバタバタして全然コメを書けず‥。
管理人不在の状況でも皆さんが盛り上げて下さって、本当に感謝しております。
ありがとうございますーー!
記事のドロドロ展開に合わせ、皆様のご意見様々だと思います。
管理人としては、読んだ方が不快に思うようなコメ以外は何でもOKだと思っていますので、そのあたりのご配慮さえして頂ければ、好きなことを書き込みして頂いて大丈夫ですので。
皆様、いつもありがとうございます。
ブログの方、本家最新の話にだんだんと近付いて参りますが、これからもよろしくお願いいたします!