Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

余白に漏れた本音

2014-03-22 01:00:00 | 雪3年3部(亮蓮大学に~淳の父への本音)
空には、丸い月が浮かんでいた。

しかし薄雲がかかったその光はどこか弱々しい。秋の夜だった。






青田淳は部屋で一人、PCと向き合いレポートの作成をしていた。

しんとした広い室内に、カタカタとキーボードを叩く音が響く。



ピロリン、という音と共にメール受信フォルダが光った。

淳は左手をキーボードからマウスに移し、メールボタンをクリックした。

先輩、清水香織です。グループ課題の私のパート整理しました。確認お願いします。



清水香織‥。

淳は脳裏に彼女の顔をぼんやりと思い浮かべた。確か同じグループになった後輩の女の子だった。



添付ファイルを開き、その内容を確認する。

彼女の書いたパートに一通り目を通すと、淳は彼女にメールを返した。

了解。清水のパート確認しました。修正する必要も無しだね。よく出来てるよ。お疲れ様

 

あまり彼女に期待をしていなかった淳だが、そのレポートは意外によく出来ていた。

淳は頷きその添付ファイルを保存すると、再び己のレポートに取り掛かった。





時刻は夜十時。

閑静な住宅街は既にしんと静まり返り、淳の耳には自分が叩くキーボードの音しか入って来なかった。



導入、展開、結論‥。淳は大学四年間で身につけた術で、上質なレポートを素早く書き上げていく。

カタカタカタ カタカタカタカタ





カタカタカタカタ カタカタカタカタカタカタ







静寂な空間に響くその音は、規則的な響きをしていた。

それは不穏な感情を感じる度に淳が出す、心の音に似ているもの。







その空間の中で、淳の心の扉が少し開いた。

脳裏に浮かんでくるのは、幼少時代の記憶だった。





飾らない剥き出しの感情を、否定され押さえ付けられたあの日のこと。

父親を前にする度、いつも感じる強い重圧のこと。







この広い世界の中で、自分はたった一人なのだと悟る孤独。

一番分かって欲しい相手に分かってもらえないと自覚する時の絶望。





淳は心を閉じ込めて生きてきた。

自分は一人なのだと、このまま誰とも共感し合えないまま生きていくのだと諦めながら。







しかし人生には、時に予測出来ないことが起こることを、淳は知ることになる。


その暗い世界に現れた、もう一人の自分。同じ世界の狭間に落っこちた、二つの孤独。


 




そして初めて彼女に心の片鱗を見せたあの夏の日のことを、思い出した。



 


父親との関係に悩む彼女。

友達や他人と比較して落ち込んでしまうと口にする、少し落胆した横顔。











”それでいいんだ”と、淳はその時思った。

隣に座る彼女が、いつも自分が押し込めてきた気持ちを口にする。

そう感じることは間違いじゃない、自分は正しかったんだと、慰められた気分だった。






もっと君に近づけた気がすると、淳はあの時彼女に言った。

話しても、気持ちを口に出しても、実際に問題を解決出来るわけではない。

けれど、互いのことをもっと知ることは出来る、と。


それだけでいいんだ





同族の彼女を前にして、あの時彼はそう言った。

俯瞰して眺めた心の泉には、鏡のように彼女の姿が綺麗に映っていた。



けれど‥。



先輩は、いつもそうです!




ナイフのように突きつけられた彼女の言葉は、淳の心の泉に小さな何かを投げかけた。

そこに映っていた彼女の姿に、幾重にも渡って波紋が広がっていく。






カタカタカタ カタカタカタカタカタカ‥






レポートを書いていた手が止まった。


そして淳は無意識の内に、再びキーボードをタイプした。



なぜ





それは理路整然と書かれたレポートの余白に漏れた、彼の本音だった。



なぜ 理解してくれないの











看破されたのは、同族だからだと彼は思っていた。

彼女も自分と似た淳に引き寄せられ、理解されたいと思ったからだと。


しかし今日彼女は淳を批判した。

その射るような鋭い視線で、真っ直ぐに自分を見つめながら。




鏡に映ったもう一人の自分が、勝手に動き出して淳の心を乱す。

”なぜ理解してくれないの”

子供のような理不尽で感情的な気持ちが、無機質にタイプされ、沈黙している‥。







「‥‥‥‥」



少し開かれていた心の扉は、我に返る内に閉まっていたようだ。

淳はデリートキーを押し、一文字ずつそれを消して行った。


そしてそんな時、電話が鳴った。

父親からの電話だった。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<余白に漏れた本音>でした。


今回はもう‥ほぼ想像で記事を執筆したんですけれども、皆様いかがだったでしょうか?

余白に漏れ出した淳の本音。まるで子供がダダをこねて言っているような言葉ですよね。

”なんで分かってくれないの?”って‥。

淳はその優秀な頭脳で複雑なことを仕組んだり考えたりすることは得意としますが、

心の方はもう本当‥つるんとしてるんだろうなぁと思いました。

暗い世界で一人きり、誰とも心を通わせることなくここまで来てしまったこの人が、やっぱり私は不憫でなりません。。



次回は<露呈した本音>です。


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8 Comments

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Unknown (りんご)
2014-03-22 02:28:29
なんでわかってくれないの
あのmadの言葉は先輩が無意識に打った心の声だったんですね~。

師匠の想像ってほんとすごいですね…!
この記事と、父の相談の『被害者意識』のところで、青田淳の他人への共感能力の乏しさに今ごろシックリ。

なんでわかってくれないんだ。
っていう気持ちから、自分をわかってもらえないんだから自分も他人をわかる必要がない。わからなくて当然。って方向に考えがいったのかと思ったら納得で。

そして、先輩の雪への気持ちって恋愛とかいうより同族意識の方が強くて、唯一のわかってくれる人を失いたくない気持ちでいっぱいで、それで河村氏を遠くへ追いやろうとしてたんですね。
色んなとこの結びつきがシックリの回でした。

で、madをリピしてきたんですが、もういっこ気になる言葉、河村氏の『お前がやったんだろ?』『俺じゃない。』のところ。
悪いことをしたと思ってるときって、言い訳を考えたりするように悪くないという気持ちも働くそうで。
『俺じゃない。』が『俺ではない』って受け取れて。俺じゃなくなすびだと。それで、先輩がなすびくんを利用したと確信しました。はやとちってますね~。笑


この先輩のお部屋って、ライオンキーホルダーを手に『フゥー』とため息した部屋とは違いますね。スタンドライトが観葉植物でないから…先輩、パソコン2台所持してるのか~とどうでもいい話。
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なすび‥笑 (yukkanen)
2014-03-22 10:34:13
りんごさん

>なんでわかってくれないんだ。
っていう気持ちから、自分をわかってもらえないんだから自分も他人をわかる必要がない。わからなくて当然。って方向に考えがいったのかと思ったら納得で。

おお~!見事な青田淳三段活用(笑)
素晴らしいです!
彼が言った「皆人知れぬ事情がある」というのは悟ってるからじゃなく、「だから分からなくて当然」という自己肯定の結論に行き着いている‥。
そうしなければ誰も彼を肯定してくれないから。自分を奪われていく危機感から、彼は被害意識が過剰になってしまった‥。
と、改めてシックリさせていただきました!
ありがとうございます~(^o^)

そして「俺じゃない」は、直接手を下したのはなすびだから、彼の中では本当に「俺じゃない」んだと思います。
それにしてもナチュラルになすびが出てきたことが面白いです、りんごさん 笑
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よっ! (ちょびこ)
2014-03-22 10:37:48
りんご節。
好きだ。←俺物語ふう

ホントは誰も理解者がいないってワケじゃないですよね、きっと。
ひできヒョンなら、雪ちゃんなら、いや裏目でさえ、もう淳ちゃんもイイ年なんだから、本音できちっと伝えれば、今ならまだ間に合うっちゅーか、理解しようと歩み寄ってくれる人がいるコトに気づけるハズなのに。
その前に閉じこもっちゃって、こんな陰気なコトつぶやいちゃって。てかパソに打ち込んどるっ…(白目)

トラウマって最近よく使う言葉だけど、実際は用法違ってるとか。自覚してないからこそトラウマと呼ぶ、と聞いたコトがあって、まさに淳ちゃんなのなと思ったのな。
返信する
ちょびこ姉様・・・ (どんぐり)
2014-03-22 11:15:49
そうですね・・・
気づけばトラウマから解放される・・・。
それが亮くんなのだと思いました・・・。
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why don't you understand me? (むくげ)
2014-03-22 21:37:27
ってあのMADの最後の台詞はここで!!
こんなレポート書いてる途中なのに無意識に叩いちゃった台詞だったとは。。

ほんと淳は知略謀略には長けてますけど、心の叫びが小さな男の子のままじゃないですか。

両親ほんとは母親が無償の愛情を注いで、ひとまずは一体感を醸成しないといけないと思うんですよ。

原始的な感情は自分と母親を分離できないですけど、段階を踏んで、その一体感を持った相手も別の存在なんだと認めることで、自我が芽生えて、お互いの存在を認め合うという発達心理学的な成長をするといいますよね。(ちょっと端折ってるかな)

淳は多分そこを吹っ飛ばして、一体感やらすべてをひっくるめて認めてくれるという実感を得たことがないから、逆説的に自分のすべてを分かってくれる人がいるんじゃないかという幻想にとらわれてしまってるんじゃないのかな、と。

どんなに言葉を尽くしたって、自分を無償で愛してくれる相手だって全てを理解するって土台出来ないことですよね。
普通はそういうのは徐々に分かって、だから自分を尽くして相手に理解してもらおうとか理解しようという努力をしなくてはいけないって学ぶと思うんですよ。

ところが師匠の言葉を借りると

>この広い世界の中で、自分はたった一人なのだと悟る孤独。
>一番分かって欲しい相手に分かってもらえないと自覚する時の絶望。

しちゃってるから、どこかに何も努力しなくても、自分を理解して受け入れてくれる人がいるんじゃないかって思ってるんじゃないのかな~と。
経験がないから、却ってあるんじゃないかと思ってしまう、すごくパラドクスですよね。

だから雪になんで?なんで?となっちゃう。
鏡じゃないんだから、別の人間なのに無理な望みですよ。

ちょっと文章が分かりにくいですけど・・
まあ、ちょびこ姉様の仰るように。うじうじパソコンに入力してないで、まず歩み寄ろうぜ!って感じですかね。

そして気になる『お前がやったんだろ?』『俺じゃない。』のところ。

多分、どういう流れなのかは後で解明されるとして実際手を下したのはナスビで、裏で画策したのが淳であったとしても本気でオレじゃないって感じですよね。

だから、雪に色々やらかしたのがばれそうになったときの表情は、大分オレが悪いっていうのが出てきているように感じて、
(まだまだですけど)このときに比べたら格段に感情面での成長が出てきてるんじゃ~とどんぐりさんとか師匠のコメを見て思いました。
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うお~ (むくげ)
2014-03-22 21:42:40
で、師匠。ちょっとひとつお願いが・・

>香織ちゃんの分確認しました。修正する必要も無しだね。よく出来てるよ。お疲れ様

淳の口から、香織ちゃんっていうのは違う~~。
和美にだって名前にちゃん付けしてなくて、だから雪に突如「雪ちゃん」呼びしたのが、和美的にいらっとしたんだと思うんで・・

ここは清水さんでお願いしたい。
だめでしょうか・・・・
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おっけーです! (Yukkanen)
2014-03-22 22:03:16
むくげさん
かしこまりました!!清水でいきます!
メールに「ミンス」(下の名前)だけ書いてたので、「香織ちゃん」にしてました‥^^;
「ちゃん」づけは雪の専売特許でいきますね!

そしてすばらしいコメありがとうございます!
チートラ解説本を出していただきたいくらいです。

自分をまるごと分かってくれると妄想してしまう淳の孤独‥。痛々しいですね‥(T T)
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うへへ (むくげ)
2014-03-22 22:12:25
早速、こんな私のこだわりに応えてくださり感謝です。
うんうん、やっぱり香織ちゃんよりシックリくるわ~。
ふふ。

ってどんなこだわりだよって感じですが。
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