「せんぱーーーい!!」

「雪ちゃん!」

待ち合わせの場所で会った二人は、嬉しそうに互いの名を呼んだ。
雪は淳に駆け寄り、彼の顔を両手で挟む。
「顔、大分マシになりましたね!」
「う‥まだちょっと痛いよ‥イテテ」

きゃらきゃらと笑う雪と、少し痛がる淳。
やがて、二人は並んで歩き始める。
今日は雪の高校時代の友達が集まる同窓会に、淳を連れて行くのだ。
「時間都合つけてくれてありがとうございます。
絶対一緒にって感じじゃないから、大丈夫だったんだよ?」
「何言ってんの。絶対行くよ」「へへ‥ありがと~」

えへへあはは、と笑いながら、二人はほのぼのムードだ。
同窓会を兼ねたデート。二人は笑顔で通りを歩く。

けれど先ほどの記憶が、雪のニヤニヤに待ったを掛けた。
あ

思い出すのは、先程接触した美しき虎‥。
さっき‥

雪は静香に捲られた袖口を見つめながら思った。
さっきの出来事を、先輩に報告するべきだろうか‥?

ほんの数秒悩んだが、やはり言わないことに決めた。
いや、話すまい‥。
先輩にあの人のこと話して気にされるのヤダもん

雪は笑顔で「行きましょ!」と言いながら、彼と腕を組んだ。
二人はニコニコと微笑みながら、久しぶりのデートを楽しむ。


秋の空を背負って、彼の端正な横顔が映える。
雪は淳をこっそりと見上げながら、心がほのかに温まるのを感じた。

この人を、今から彼氏として旧友達に紹介しに行くのだ。
雪は次第にメラメラと、心の中に炎が燃え上がるのを感じ始める。
ふ‥今日こそハッキリさせてやる‥

「車あっちに停めてあるんだ」と淳は言ったが、雪の耳には入っていない。
雪の眼差しがギラギラと妖しく光る。
ニセ彼氏だって?嘘つきだって?

「雪ちゃん?」と淳が呼びかけるも、雪は一人七変化の最中である。
フハハハと不敵の笑いを上げながら、雪は嘘つき呼ばわりをした旧友に向かって、心の中で叫んだ。
せっかく先輩が来てくれたんだから、私も今回ばかりは彼氏自慢しちゃうもんね!
マジで天狗になってふんぞり返っちゃうぞ!今日の私は!

雪の爆走ぶりを見て、「車‥あっちに‥」と淳の声が消え入る。
雪は瞳をキランと輝かせ、大きな心の声でこう言った。
私は変わったんだから!

私は変わった、そんな魔法が、雪を少し強気にさせる‥。
「てかてかてかてかっ!最高!!あの写真の実物を見れるなんて!!」

「マジで超絶イケメンじゃん!」「あ‥はは‥ありがと‥」

真っ赤になって俯く雪の周りで、彼女の旧友達は大騒ぎだった。
「てかむしろ写真よりイイ!」「さっきの挨拶もまたイケてた!」
「マジかっこよかったね~」「ウン、本当に‥」「wwwww」

彼女らにとって青田淳は、100点満点だったらしい。
友人らは興奮しながら、先程現れた星の王子様を大絶賛する。
「あたし達の分を払って、そんで良い頃合いで席を外す!
マナー完ッ璧!マジ羨ましい~~!!」「あ‥はは‥」

「楽しんで下さいね。また後で来ますので」と言い残して、淳は席を立ったという。
雪はこういった立場に立ったことが無いので、しどろもどろで赤面している。
「てかどうしてこんなに大人しいのよこの子は!もっと自慢しなって!」
「う‥うん‥」

どうしていいのか分からず、終始モジモジする雪。
そして萌菜は、雪を嘘つき呼ばわりしたユリという友人に向かってニヤニヤしながらこう言った。
「ちょっと!嘘じゃなかったでしょ?ね?」
「誰が嘘なんて言ったー?ただの冗談だってば」

するとユリの隣に座るショートカットの子が、彼女の方を指さしてこう話し始めた。
「ねぇ、ユリの彼氏もカッコ良いんだよー。あたし見たことあるんだ。
この子送る為に今から来るんだって!」「ん、まーね」

「超お金持ちなんだって」
「たいしたことないんだけどぉ、実家がね、わりと大きな事業してるっていうか」

雪が彼女達の話を聞いていると、不意に携帯電話が震えた。
淳からの電話である。
「あ、先輩」
「雪ちゃん、そろそろ行こう。車出したから」「はい」

そして雪は席を立った。同時に、彼女達も皆帰り支度を始める。
「私ちょっとトイレ行ってくる」「ん。うちらももう出る準備しよ」
「あーこの会週末にすればよかった~」「あたしもダーリン来るって!」

電話を切った雪は、足早にトイレへと向かった。
確か、周りに駐車出来るとこなんて無いはずだよね。
早く済ませて出なくっちゃ

携帯に視線を落としながら歩く雪。
その途中で、一人の男性とすれ違った。

なんとなく引っ掛かるものがあって、雪は足を止め振り返った。
胸の中が微かにざわめく。
「?」

その背中に、僅かに感じる既視感。
どっかで見たような‥?

けれどそれがどこでだったのかは思い出せない。
しかし、雪が再び足を踏み出そうとしたその時、背後から呼び止められた。
「あの!」

そして雪は振り返った。
どこかで会ったであろうその男が、雪の方を凝視しているー‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<同窓会>でした。
彼氏自慢をしようと意気込むも、しどろもどろになってしまう雪ちゃん、可愛いですね^^
そして最後‥また出た、あの男‥!
モブキャラながら、結構な頻度で出てきますね‥。
次回は<再会・西条和夫>です。
人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ
引き続きキャラ人気投票も行っています~!

「雪ちゃん!」

待ち合わせの場所で会った二人は、嬉しそうに互いの名を呼んだ。
雪は淳に駆け寄り、彼の顔を両手で挟む。
「顔、大分マシになりましたね!」
「う‥まだちょっと痛いよ‥イテテ」

きゃらきゃらと笑う雪と、少し痛がる淳。
やがて、二人は並んで歩き始める。
今日は雪の高校時代の友達が集まる同窓会に、淳を連れて行くのだ。
「時間都合つけてくれてありがとうございます。
絶対一緒にって感じじゃないから、大丈夫だったんだよ?」
「何言ってんの。絶対行くよ」「へへ‥ありがと~」

えへへあはは、と笑いながら、二人はほのぼのムードだ。
同窓会を兼ねたデート。二人は笑顔で通りを歩く。

けれど先ほどの記憶が、雪のニヤニヤに待ったを掛けた。
あ

思い出すのは、先程接触した美しき虎‥。
さっき‥

雪は静香に捲られた袖口を見つめながら思った。
さっきの出来事を、先輩に報告するべきだろうか‥?

ほんの数秒悩んだが、やはり言わないことに決めた。
いや、話すまい‥。
先輩にあの人のこと話して気にされるのヤダもん

雪は笑顔で「行きましょ!」と言いながら、彼と腕を組んだ。
二人はニコニコと微笑みながら、久しぶりのデートを楽しむ。


秋の空を背負って、彼の端正な横顔が映える。
雪は淳をこっそりと見上げながら、心がほのかに温まるのを感じた。

この人を、今から彼氏として旧友達に紹介しに行くのだ。
雪は次第にメラメラと、心の中に炎が燃え上がるのを感じ始める。
ふ‥今日こそハッキリさせてやる‥

「車あっちに停めてあるんだ」と淳は言ったが、雪の耳には入っていない。
雪の眼差しがギラギラと妖しく光る。
ニセ彼氏だって?嘘つきだって?

「雪ちゃん?」と淳が呼びかけるも、雪は一人七変化の最中である。
フハハハと不敵の笑いを上げながら、雪は嘘つき呼ばわりをした旧友に向かって、心の中で叫んだ。
せっかく先輩が来てくれたんだから、私も今回ばかりは彼氏自慢しちゃうもんね!
マジで天狗になってふんぞり返っちゃうぞ!今日の私は!

雪の爆走ぶりを見て、「車‥あっちに‥」と淳の声が消え入る。
雪は瞳をキランと輝かせ、大きな心の声でこう言った。
私は変わったんだから!

私は変わった、そんな魔法が、雪を少し強気にさせる‥。
「てかてかてかてかっ!最高!!あの写真の実物を見れるなんて!!」

「マジで超絶イケメンじゃん!」「あ‥はは‥ありがと‥」

真っ赤になって俯く雪の周りで、彼女の旧友達は大騒ぎだった。
「てかむしろ写真よりイイ!」「さっきの挨拶もまたイケてた!」
「マジかっこよかったね~」「ウン、本当に‥」「wwwww」

彼女らにとって青田淳は、100点満点だったらしい。
友人らは興奮しながら、先程現れた星の王子様を大絶賛する。
「あたし達の分を払って、そんで良い頃合いで席を外す!
マナー完ッ璧!マジ羨ましい~~!!」「あ‥はは‥」

「楽しんで下さいね。また後で来ますので」と言い残して、淳は席を立ったという。
雪はこういった立場に立ったことが無いので、しどろもどろで赤面している。
「てかどうしてこんなに大人しいのよこの子は!もっと自慢しなって!」
「う‥うん‥」

どうしていいのか分からず、終始モジモジする雪。
そして萌菜は、雪を嘘つき呼ばわりしたユリという友人に向かってニヤニヤしながらこう言った。
「ちょっと!嘘じゃなかったでしょ?ね?」
「誰が嘘なんて言ったー?ただの冗談だってば」

するとユリの隣に座るショートカットの子が、彼女の方を指さしてこう話し始めた。
「ねぇ、ユリの彼氏もカッコ良いんだよー。あたし見たことあるんだ。
この子送る為に今から来るんだって!」「ん、まーね」

「超お金持ちなんだって」
「たいしたことないんだけどぉ、実家がね、わりと大きな事業してるっていうか」

雪が彼女達の話を聞いていると、不意に携帯電話が震えた。
淳からの電話である。
「あ、先輩」
「雪ちゃん、そろそろ行こう。車出したから」「はい」

そして雪は席を立った。同時に、彼女達も皆帰り支度を始める。
「私ちょっとトイレ行ってくる」「ん。うちらももう出る準備しよ」
「あーこの会週末にすればよかった~」「あたしもダーリン来るって!」

電話を切った雪は、足早にトイレへと向かった。
確か、周りに駐車出来るとこなんて無いはずだよね。
早く済ませて出なくっちゃ

携帯に視線を落としながら歩く雪。
その途中で、一人の男性とすれ違った。

なんとなく引っ掛かるものがあって、雪は足を止め振り返った。
胸の中が微かにざわめく。
「?」

その背中に、僅かに感じる既視感。
どっかで見たような‥?

けれどそれがどこでだったのかは思い出せない。
しかし、雪が再び足を踏み出そうとしたその時、背後から呼び止められた。
「あの!」

そして雪は振り返った。
どこかで会ったであろうその男が、雪の方を凝視しているー‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<同窓会>でした。
彼氏自慢をしようと意気込むも、しどろもどろになってしまう雪ちゃん、可愛いですね^^
そして最後‥また出た、あの男‥!
モブキャラながら、結構な頻度で出てきますね‥。
次回は<再会・西条和夫>です。
人気ブログランキングに参加しました



物事はシンプルな方がうまくいくかと
お互いいろんなゴタゴタしがらみありますが気持ちは、シンプルでそれが良いですね
にしても案外しぶとくモブたち登場し続けるのがこの漫画かと
むくげさん!!
物事はシンプルな方がうまくいく‥。
格言ですね。雪ちゃんの部屋に掛け軸として飾ってあげたいです。
では少しそんな風に台詞を書き換えます!
ニュアンスありがとうございます!