
淳は駆けた。

路地の狭間を滑るように。

ここは入り組んでいて道が分かりにくい。
曲がっても進んでもまるで同じ道を繰り返しているようだった。

淳は彼女の名を呼んだ。
「雪ちゃん!」

何度も、何度も。
「雪!」

まるで姿は見えない。
淳は見覚えのある通りを見つけては歩を進め続けた。

走っても走っても、見つけられない。
暗く狭い路地の隙間を、ただ闇雲に進み続けるだけ。

「雪ちゃん!」

彼女の名が響いて消える。
淳の心の中で育つ不安の蔦が、以前は見えていたはずの道標を覆ってしまった。

ふと視線を流した時だった。
彼女の後ろ姿が見える。

「!」

しかし淳が目を凝らすと、それはすぐに消えて行った。

「‥‥‥‥」

ほんの数ヶ月前のことが蘇る。
同じ様にこの路地の狭間で、彼女を捕まえた時のことを。
すぐに見つけられたのに。何をするか全て分かっていたのに‥

まるで不思議な国のアリスに出てくる白い兎を追っているかのように、
いつしか淳は迷い込んでしまっていた。
その場に佇む淳の元に、一件のメールが届く。

今日は先に寝ますね。また連絡します


時の狭間で、いつしか兎は消えた。
その幻影を追いながら淳は、その暗闇の中で一人立ち尽くしていた‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<消えた兎>でした。
結局会えなかったんですね〜。うーん切ない。。
手を握ることで繋ぎ止めていた雪が、離れて行ってしまう‥。うーん切ない!!
そして雪ちゃん足早いな‥!
次回は<冬休みの始まり>です。
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