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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

運命の轍

2017-02-08 01:00:00 | 雪3年4部(本意と不本意〜因果)


その頃淳は、父親から呼び出され実家に顔を出していた。

父の書斎にて、親子は言葉を交わす。

「最近は会社にも慣れて来たようだな。仕事も上手くやってるようで安心したよ」



「彼女とも順調か?」 「お陰様で」



父と息子は共に笑顔で相対し、まるで定型文のような挨拶を交わし合った。

コーヒーカップを手に持ちながら、父は上がった口角を徐々に下げて行く。



カチャンという音と共に、父はカップをソーサーに置いた。

「亮が家に来たよ」







父は、黙って続きを待つ淳の前でポケットから名刺を取り出し、机の上に置く。

「お前が言っていた通り、ヤミ金業者にゆすられてたようだな。教えてくれて感謝するよ」



名刺にはその会社と社長・吉川の氏名、そして携帯番号が書かれていた。

あの日、淳が手に入れたそれだ。



「亮が父さんに直接その話を?」「ああ」「アイツがよく話しましたね」



淳は柔和な笑顔を浮かべそう言ったが、父はどこか淋しげに言葉を続ける。

「亮はもう完全にここを去る覚悟らしいな」



「くれぐれも静香のことを頼むと‥念を押されたよ」






淳はウンザリした表情を浮かべ、深く溜息を吐いた。

これでは七年前と何も変わらない。

「そうですか。それで、どうするおつもりですか?」

「まぁ最後の頼みだと言うし‥今回ばかりは聞いてやろうと思うよ」



「哀れな子だからな」



そう言ってカップに口を付ける父は、淳の目を見ていなかったので気が付かなかった。

その瞳の中に、苛立ちがゆらりと揺らめくのを。

一度だってそんなこと思ったことないくせに。そのくらい俺だってよく分かってる



どうして今日呼び出したのかも分かっているさ。黙ってただ従えということだろ‥



あの日小さな自分の肩に置かれた手は、常に抗うことを先回りして牽制する。

寛容を強要された窮屈な日常は、あの頃も今も変わらず続いている。

淳は瞳の中に揺れた苛立ちを笑顔で隠した。

「父さんの思うようにして下さい。

父さんが亮達を手助けすることに、俺が強く反対したことなんて無いじゃないですか」








父は向けられた息子の笑顔の中に、偽りを探して黙り込んだ。

先日亮から投げ掛けられた言葉が蘇る。

「自分の息子を変える為に他人の子を連れて来て利用したんですから、このくらいのことはしてもらわないと。

アンタがオレらを連れて来たことの意図を、自分の息子を変人扱いしてたことを、誰よりも先に気付いていたのは淳だ」




「ああ。確かにそうだな」



父は弱い牽制球を投げたが、淳はそれをするりとかわした。冷静に自身の思う所を口にする。

「正直俺は、今回のヤミ金の件については突っぱねれば良いと思っていたんです。

いくら給料が未払いだったからといって、他人の金を返さず逃げたのはアイツの非でしょう」




「けれどああいう業種と関わってしまったとなれば、自力で抜け出すのは難しいでしょうし、

本人が本気で自分の生きる道を探したいと言うのなら、

今回だけ手を差し伸べるのは悪い選択では無いと俺は思います」




その答えに、父はホッとした表情を見せた。

「そうだな。分かってくれてありがたいよ」

「ええ」



淳は笑顔を浮かべたまま席を立つ。

「それじゃ俺は用事がありますので、これで失礼します」

「ああ。それじゃあな」「はい」







淳は足を止め、振り返って口を開いた。

「父さん」



「年末の挨拶がてら、母さんにも連絡してみてはどうですか。

母さんもそろそろ家に帰りたい頃じゃないでしょうか」




父の目が、諦めを帯びた色に沈む。

「‥どうかな。母さんはうちのような裕福な家が嫌いなようだから。

お前も知っての通り、父さんと母さんはいつも言い争ってばかりで‥」


「世の中が思い通りにならないとしても、」



俯く父に向かって、息子は半身を残してこう言った。

「試してみれば良いじゃないですか」





「もう受け入れなければいけない。大人なのだから。

世の中全てが、お前の意のままになる訳ではないということを」




いつか息子に贈った言葉が、形を変えて再び戻って来た。

まだ世の中の不条理を受け入れることを諦め切れない若さが、そこに抗う青さが、その言葉には宿っている。







部屋を出て行こうとする息子の背中を、父は咄嗟に呼び止めた。

「淳」



「私の息子はお前だ」



淳は眉を崩して笑う。自分によく似たその眉を。

「何当たり前のこと言ってるんですか」



「重々承知してますよ」



それに伴う責任も、立場も権威も役割も、全てを受け入れて淳は去って行った。

この特異な環境に生きる父と息子にしか回せない、運命の轍がある‥。



淳が去った後、残されたのは冷めたコーヒーと、がらんと広く静かな空間だった。




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<運命の轍>でした。

今回淳と父の繋がりを象徴する題名として「運命の轍」という言葉を選んだんですが、

調べてみたら「運命の轍」という曲をなんとチートラドラマで先輩役をやったパクヘジンさんが歌っていた‥。

パク・ヘジンSpecial Event --運命- 2011東京ライブDVD


歌手活動もしてたのか‥知らなかった‥。

なんだか運命感じます(笑)

次回は<招集>です。

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