Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

看過の代償

2016-12-12 01:00:00 | 雪3年4部(鏡〜露呈)


その建物の前に、二人は佇んでいた。

やる気満々の蓮と、連れて来られて乗り気じゃない亮と。



「とにかくガッポリ稼ぐんダーッ!」「ま‥悪かねーけど‥」



「俺らなら出来ーる!」

「まー特に断る理由もねーけどよ。オレ何気にコミュ力高ぇし‥」

「お待ちしておりました」



社内の人間に促され、二人は建物の中へと入って行く。

「ようこそ!」「ハイ!こんにちはーっ」



バタン!



その扉は二人の背後でガチャリと閉められた。

訝しげな視線を送る亮と目を丸くする蓮に、男はニッコリと笑顔を浮かべて相対する。



<実のところ蓮は、この時点で薄々気が付いていたのだが>



急に警戒モードの蓮は、キョロキョロと辺りを見回しながら慎重に足を進めた。

あっちは閉めなかった‥なら問題ないか?

「二階でプレゼンをしますので、よく聞いて面接に臨んで下さいね」「ハイ!」



この扉の向こうには希望と金がたっぷりとあると信じて‥。

金稼ぐぞ!Many Money!



<それを無理やり否定してしまった>







ドドン!



応募者は一つの部屋に集められ、円形に配置されたテーブルに就いて挨拶を交わした。

「こんにちは〜」「はい、こんにちは」「こんにちは〜」



ニコニコと皆に笑顔を振り撒く蓮とは対照的に、亮は無言でただじっと座っている。

じきに担当者らしき中年の男性とガタイの良い男性が二人、室内に入って来た。

「こんにちは〜」「こんにちは」「こんにちは!」



中年男性は柔和な態度で皆に飲み物を聞いて回る。

「何か飲みますか?コーヒー?お茶?」「お茶で!」「オレはいい」



その中年男性の後ろから、ガタイの良い男性が段ボールを持って皆の間を回り始めた。

「鞄をここに。こちらで預からせて頂きます。終わったらお返ししますので」

「あ‥はぁ‥」



箱は蓮と亮の前にも回って来た。しかし亮は首を横に振る。

「カバン持ってねぇ」「あ、それじゃあ携帯電話をお預かりします」

「俺、自分で持ってたいんですけど‥どうして預けなきゃいけないんですか?」



「実はうちのプレゼンが口コミで広まってまして‥

録画してアップする人がいるみたいなんですよ。どうぞご協力お願いします」




男はそう言いながら、箱を二人の前に差し出し続けた。

後ろに立つガタイの良い男の威圧感が物凄い。

「お願いします」



蓮はタジタジしながら「あ‥はい」と言って鞄を手に持った。

しかし亮は‥。



亮は二人を見上げたまま、動こうとしなかった。

そんな亮に笑顔を見せつつ、この二人もまた動こうとしない。



だんだんと亮の目つきが鋭くなって来た。



そしてこの二人の表情も、貼り付けたような笑顔が徐々に引き攣って行く。






そんな二人に、今やあからさまにガンを飛ばす亮。

思わず口元を引き攣らせる中年男と、同じ様にガンを飛ばすガタイの良い男‥。



やがて亮は折れ、携帯をその箱の中に入れた。蓮も鞄を入れる。

「どうぞ‥」「ほれ」「ありがとうございます」






男達は同じ様に箱を持って皆の前を回る。それを見ながら蓮が悔し紛れにこう言った。

「気にしない気にしない!録画なんかしなくてもどーせ流出すんのに!何を大げさな!」



そんな蓮のことを亮はジトッと見ていたが、敢えてその理由については口にしなかった。

「あり?なんでそんな目で見んの?」「別に」







数分後、プレゼンが始まった。

「私どもYM株式会社は、動物と共存可能な「エコ企業」というビジョンを持っており‥

特に弊社が販売致します「香菌剤RBD」は天然成分を配合しておりまして‥」




熱心にノートを取る蓮と、仏頂面で腕を組んだままそれを聞く亮‥。

「書くほどのモンじゃねーだろ」



刻々と時間は過ぎ、いつしか外は夕焼けに染まっていた。

しかし社内に閉じ込められた蓮と亮が、その夕焼けを見ることはない‥。





「あー終わった終わった!」



「思ってたよりプレゼンイケてたじゃん!ほらやっぱりちゃんとした会社だったっしょ?」

「知らねーっつの」「三階の面接会場に移動して下さい」



皆部屋を出て一様に廊下をゾロゾロと歩く。案内するのは先程の中年男だ。

「十分程の休憩時間を挟んで、面接を始めます」「鞄はどこでもらえますか?」

「あ、それは面接が終わってからお返ししますので」



チリ、と嫌な予感がした。

蓮は目を丸くしながらその男の説明を聞く。

「チームごとに部屋を用意しましたので、一旦そこへ移動しましょう」

「はい‥?」「さ、さ、皆さん移動お願いします」







男はそう言ってさっさと歩いて行き、その後ろに居るガタイの良い男がギョロリと蓮のことを睨んだ。

固まる蓮の背中はその大きな手で押され、皆半ば強制的に皆同じ方向へと歩かされている。

「移動お願いします」



「さぁ入って。入って!」



強制的な団体行動、外部との接触不可、そして少人数での部屋移動‥。

模範的な商法の手口である。



蓮が看過していた嫌な予感は、ジワジワと自身の首を締めつつあった。

立ち尽くす蓮に向かって、その胸中の声を代弁するかのように亮が言う。

「ハメられたな」



「これってよぉ、いわいるプライド商‥」



言い間違う亮に向かって、蓮はヤケクソで叫んだ。

「ピラミッド商法!」








突然のその大声に、皆が蓮の方を向く。

「え?」「い、いえ‥」



蓮と中年男は、おかしくもないのに顔を見合わせて笑い合った。

「はは!」「ははは!」「はははは!」



そして蓮はまた目の前の真実に目を背ける。

「いや‥俺がそんなもんに登録するわけねーし‥」



亮は蓮が苦し紛れに紡ぐ言葉に、ただ相槌を打って頷いた。

「そういうのじゃねーって!まだ面接もしてねーし!」

「あぁ、んだな」



亮はわざと歩く速度を緩め、

ゾロゾロと歩く群衆の数メートル後ろに就いた。



フン、と鼻で息を吐く。



亮は頭の中で、先程見た限りで把握出来る人数を反芻していた。

ここには四人‥さっき下には二人‥三階には‥何人だ?



蓮が見ないふりをしているそれからは、危険な匂いがプンプンしていた。

とりあえず今日アイツはヒデー目に合うだろうな



数々の修羅場を潜り抜けてきた亮だからこそ、分かっていた。

これから蓮が、その看過の代償を受けるだろうということも。

つーかダメージ、さっきオレが送ったメール見てねーのか?



携帯が取り上げられるだろうということも、亮は予測していた。

彼がこの建物の中に入る前に掛けた保険は、今雪の携帯の中に潜んでいる‥。



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<看過の代償>でした。

はい、予想通りのマルチ商法でした〜

蓮、読者全員がそうだと思っていたよ‥。亮さんついてきてくれてヨカッタネ‥。

ガン飛ばしまくりの亮さんが良かったですね。ふふふ‥


次回は<爪痕>です。

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