Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

路地裏のスパイ(1)

2015-11-07 01:00:00 | 雪3年4部(鍵の行方~多大なる勘違い)
じぃーーーーーーーーーっ



雪が凝視しているその先には、ターゲット・河村亮の背中があった。

彼は後ろで身を潜める雪には気づかずに、一人目的の場所へと歩いて行く。



少し広い通りに出たので、雪は周りを見回してから行く道を決めた。

横の路地に入ろ



路地裏へと入り、亮と同じ方向を目指す雪。

 

聞こえる足音に耳を澄まし、

キョロキョロと辺りを窺いながらターゲットの後をつけた。



目立たないように、手で顔の側面を覆いながら、

チラチラとその背中を目で追う。



亮は尾行に気づいていない。

少し俯き気味に、ただ歩いて行くだけだ。



「‥‥‥‥」



雪は室外機の影に隠れながら、ふぅと軽く息を吐いた。

変な状況だが、なんだか少し愉快な気がする。

なんか007みたいじゃない?



そう、私は路地裏のスパイ。

一人クスクスと笑いながら、亮の後頭部を見ていた時だった。




バッ!!





「‥‥‥」



恐ろしい形相で、亮が突然振り返った。

咄嗟に雪は室外機の後ろに隠れ、一人息を殺している。

亮はその気配を感じながらも、決定的な証拠は掴めず眉をひそめた。

「‥‥‥‥」



暫く辺りを窺っていたが、

やがて胡散臭そうな表情を浮かべながら、そのままゆっくりと前を向く。



そして亮は再び歩き始めた。

それと同時に雪の頭からキャップが外れ、地面に落ちる。



雪はその場にへたり込みながら、ブルブルと震える手でキャップを掴んだ。

心臓が口から飛び出そうな程にドクンドクンと鳴っている。



ふぅーーーーっ‥



雪はキャップで顔を覆いながら、大きく息を吐いた。

今の自分の状況を省みて一人呟く。

「てか私何やってんだろ‥」



飛び起きて5分で家を出て、スパイごっこして隠れて‥。

現状を憂いていると、聞き覚えのある声が聞こえて来た。







道の先から、見覚えのある長身の女性が歩いて来るのが見える。

‥河村静香である。

「だから~あの時は悪かったってばぁ。知ってんでしょ!あたしの性格~」



静香は風呂へ行く様な格好で、誰かと電話中だ。

「え?お金はもう無いってば~。え~?それどういうことぉ~?」



雪は両手で顔を覆いながら、絶望的な気分で静香の声を聞いていた。

そうですか‥この人も居るんですか‥



ホホホホ、と高らかに笑う静香を睨みながら、雪は予想出来る最悪の結末について思いを巡らせる。

三人がぶつかれば宇宙が爆発‥!  「あら?あいつ切りやがったわね」



雪の脳内で繰り広げられる地球滅亡説。

そんなことなど知る由もない静香は、いつの間にか相手から切られていた電話を睨みながら、

また別の相手へと電話を掛け始めた。

「あ、会長~お元気ですか~?

え?合格するまで電話してくるなって?はーい、それじゃそれまでお元気で‥」




しかしそれも上手くは行かなかったらしい。

静香は通話を終えると、携帯を睨んで舌打ちをする。



ハンティング失敗。静香は面白くなさそうに独りごちる。

「クソ、汚えんだよマジ‥。あの大学生、一度引っかけてみっかぁ」



「あたしのポリシー的に、大学生にはノータッチなんだけど‥。

広隆にしても、もうちょっと金持ちっぽいと思ってたんだけどなー」




聞けば聞くほど、胸がムカムカする内容だ。

静香の声が遠ざかったところで、雪は顔に青筋を立てて呟いた。

「前からあの人‥一体何なのマジで!あまりにも酷いんじゃ‥」



そう言って静香の歩いて行った方向とは反対方向を向いた時だった。

雪は思わず目を見開く。







スタイル抜群の長身の彼が、こちらに向かって歩いて来るところだった。

手に持った携帯に視線を落としながら。



サッ、と雪の顔が青くなった。

「え?」



まるで目の前の光景がスローモーションの様に見える。

彼は握っていた携帯電話を、ゆっくりと耳元に持って行く。



次に起こるであろう展開は‥。

そう思い至る前に、着信音が鳴り始めた。



広い通りに淳、そして路地裏に雪、その先に静香。

その危機的状態で、着信音が鳴り響く。

パン♪パン♪パン♪パン♪パン♪パン♪




バッ!!



雪は咄嗟に通話ボタンを押した。

突然音が止み、静香が「?」を浮かべて振り返る。



青田淳も思わず目を見開いた。

どこかから聞こえていた着信音と、雪が電話に出るのがほぼ同時だったから。



しん‥



辺りは静まり返っていた。

着信音が鳴り響いた携帯を持ってる主の姿は見えない‥。

何?



静香はガムをクチャクチャと噛みながら暫く周りを見回していたが、

ま、いっか



やがてくるりと背を向けて歩き出した。

路地裏のスパイの姿を、誰一人目にすることの無いまま‥。


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<路地裏のスパイ(1)>でした。

河村姉弟の野生の勘(笑)

雪ちゃんはスパイには向いてないでしょうね‥。すぐにバレそうです^^;


次回<路地裏のスパイ(2)>へ続きます。


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