ガヤガヤと騒がしい居酒屋の店内で、その円卓だけ時が止まっていた。
雪と亮は突然の淳の登場で、しばし呆然とする。

先に口を開いたのは雪だった。
冷や汗をタラタラとかきながら、彼に向かって質問をする。
「せ、先輩‥どうしてここに‥」

雪の問いに、淳は冷静に口を開いた。
「雪ちゃんの家の前で待ってたんだけど、なかなか帰ってこないから探しに来たんだ」

彼はメールを送ったのだと言うが、雪は携帯を鞄の中に入れっぱなしにしていたので気が付かなかった。
「でもどうして突然‥何かあったんですか?」

彼と会う約束は明日のはずだ。
雪は淳がいきなり現れた理由が飲み込めず、思わずそう質問した。
「何か?」

しかし逆に彼は聞き返した。真っ直ぐに彼女を見つめて。
「ないよ。何かないと会いに来ちゃいけない?」

ただ早く会いたかったのだと、彼は言った。
目を細めながら彼女の顔を見る。

あまりにもストレートにそんな台詞を言われ、雪は赤面した。
どういうリアクションを取ったら良いのか分からず、ただその場で固まるしかない。

そんな二人の世界を目の当たりにした亮は、青筋を浮かべて立ち上がった。
「んだよ!帰る!コイツと仲良くケツ並べてメシなんか食えるかっつーの!!」

そう言って背を向ける亮を見上げて、淳は声を掛けた。
「そうだな。こんなことしてる暇があったら働きにでも出たらどうだ?」

亮はそんな彼の言葉に顔を顰めるが、淳は悪びれない。
「優雅に遊んでる場合じゃないだろう」

バカにしたようなその言葉に、亮の中の何かが切れた。
感情のままに淳の胸ぐらを掴むと、凄まじい形相で詰め寄る。
「テメェ‥!誰のせいだと思って‥!」

正面から睨んだ淳の瞳の中に、怒りの炎が揺れているのを亮は見た。
激しい亮のそれとは違い、淳の怒りは静かである分恐ろしい。
冷淡な闇の中に仄暗く燃えるそれを見て、亮はそれ以上二の句を継がなかった。

隣で雪が「ケンカしないで」と言って慌てているのもあり、
亮は仕方なく胸ぐらを掴んでいた手を振り払う。
「なんだ止めちゃうんだ。つまらないな」

淳の発言に亮は「オレ様の手が汚れるからだ」と言って彼は憤慨したが、
続けて淳が「一発殴られてやってもよかったのに」と言ったことに対して疑問を持った。
「はぁ?」と目を丸くする亮に、淳は淡々と口を開く。

「慰謝料請求するけどね。なぜそう驚く?いつもお前がやってることだろう?」

淡々と因果応報を説く淳の言葉に、亮は再び憤慨した。
「な、何わけの分かんねぇこと言ってんだテメーは!オレがいつ‥」

みなまで言い終わらない内に、淳が冷然と続ける。
「金持ちやスキのありそうな人間にたかるの得意じゃなかった?
お前もお前の姉さんもそれが目的だっただろう、俺に対して」

その淳の言葉を聞いた亮は、幾分意外そうな顔をした。
そして次のターゲットは雪なのだろうと淳が言うと、亮は咄嗟に否定するもすぐに押し黙った。

当たらずといえども遠からず‥。
露骨に表情に出す亮に向かって、淳は静かに口を開く。
「少なくとも俺の目の届くとこでは止めて欲しいと頼んだのに、まるで聞き入れてくれないからね」

淳の言葉で、亮の脳裏にあの時の彼の台詞が浮かんだ。
これ以上俺の周りの人間に付きまとうなよ

亮は合点がいったという表情をすると、淳に向かって皮肉を込める。
「あ~そうだそうだ、偉大な淳様にお願いされたんだっけ。手を出すなってな」

繰り広げられる皮肉のやりとりに、空気がピリピリと張り詰めていく。
その険悪な雰囲気を、雪は固唾を呑んで見守っていた。
どうなってんの‥この二人‥

すると亮はニッと笑ったかと思うと、緊迫した空気を破るかのように大きな声を上げた。
「お~っと!ケツが勝手に椅子に!疲れたから少しここで休んでいかないとダメそうだな~!」

そう言って居座りを決めた亮を見て、淳が不敵な笑みを浮かべる。
「一杯どうだ」と淳は亮に酒を勧め、彼の挑戦を受けて立った。タイマン勝負である。

その観客である雪に、開始の合図とばかしに亮が酒を注ぐ。
「こんな席シラフでいられねーだろ?!お前も飲め!」

冷戦の始まりに、まず口火を切ったのは亮だった。
「あ、会長さんにプレゼントありがた~く頂きましたって伝えてくれよな?
いや~どんだけ遠慮してもよっぽどオレが可愛いみたいで~全く困った話だよなぁ?」

亮の皮肉に、淳も冷静に応戦する。
「ああ。親父お前のこと心配してるよ。また何かしでかすんじゃないかってね」

「顔見せに行けよ」「そんなんオレの勝手でしょ~?」
「ただでさえ静香の問題で頭抱えてるっていうのに」
「そんなんアイツの勝手でしょ~?」

雪は酒をグビグビと飲んだ。こうでもしないと正気でいられない。
互いに笑顔だが牽制しまくりな二人を前にして、雪は当惑した。
なんなのこの状況は‥!これが浮気がバレた人の心境なのか‥(浮気じゃないけど)
肩身狭すぎるでしょ!

雪は淳の横顔を窺いながら、その表情の真意が分かるような気がした。
あ~‥絶対怒ってる。あれは笑ってるようで笑ってない‥

変な笑顔を浮かべられるくらいなら、いっそブチ切れてほしい‥。
雪は彼の横顔を見ながら、笑顔の種類が把握できてきた自分を知るのだった‥。

空になったグラスを置いて、雪はふとあることが気になった。
この二人‥問題がある度にお姉さんの話が出るみたいだけど、先輩とどんな関係なんだろう?
先輩のお父さんも知ってる間柄で、多分高校も一緒で?

雪の脳裏に、いつか見た亮の姉の姿が浮かぶ。
それから超ド級の美人で‥

彼女の姿を思い浮かべた時、雪の心の中にモヤモヤとしたものが現れた。
その正体を自覚する前に、思わず顔がムッとなる。

三人の胸中は三人三様のまま、夜は更けていく。
囲んだ円卓はピリピリとした空気の中、会話は進んでいく‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<三人で円卓を(1)>でした。
ついに始まりました、第二回三者対面!
三人が同時に会話してるのは貴重ですね~。
本家版のニュアンスと日本語版の訳を混ぜつつ記事を書きますので、会話の内容も楽しんでいただけると嬉しいです。
そしてみなさま、メリクリで~す(^0^)♪
次回は<三人で円卓を(2)>です。
人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ
引き続きキャラ人気投票も行っています~!
雪と亮は突然の淳の登場で、しばし呆然とする。

先に口を開いたのは雪だった。
冷や汗をタラタラとかきながら、彼に向かって質問をする。
「せ、先輩‥どうしてここに‥」

雪の問いに、淳は冷静に口を開いた。
「雪ちゃんの家の前で待ってたんだけど、なかなか帰ってこないから探しに来たんだ」

彼はメールを送ったのだと言うが、雪は携帯を鞄の中に入れっぱなしにしていたので気が付かなかった。
「でもどうして突然‥何かあったんですか?」

彼と会う約束は明日のはずだ。
雪は淳がいきなり現れた理由が飲み込めず、思わずそう質問した。
「何か?」

しかし逆に彼は聞き返した。真っ直ぐに彼女を見つめて。
「ないよ。何かないと会いに来ちゃいけない?」

ただ早く会いたかったのだと、彼は言った。
目を細めながら彼女の顔を見る。

あまりにもストレートにそんな台詞を言われ、雪は赤面した。
どういうリアクションを取ったら良いのか分からず、ただその場で固まるしかない。

そんな二人の世界を目の当たりにした亮は、青筋を浮かべて立ち上がった。
「んだよ!帰る!コイツと仲良くケツ並べてメシなんか食えるかっつーの!!」

そう言って背を向ける亮を見上げて、淳は声を掛けた。
「そうだな。こんなことしてる暇があったら働きにでも出たらどうだ?」

亮はそんな彼の言葉に顔を顰めるが、淳は悪びれない。
「優雅に遊んでる場合じゃないだろう」

バカにしたようなその言葉に、亮の中の何かが切れた。
感情のままに淳の胸ぐらを掴むと、凄まじい形相で詰め寄る。
「テメェ‥!誰のせいだと思って‥!」

正面から睨んだ淳の瞳の中に、怒りの炎が揺れているのを亮は見た。
激しい亮のそれとは違い、淳の怒りは静かである分恐ろしい。
冷淡な闇の中に仄暗く燃えるそれを見て、亮はそれ以上二の句を継がなかった。


隣で雪が「ケンカしないで」と言って慌てているのもあり、
亮は仕方なく胸ぐらを掴んでいた手を振り払う。
「なんだ止めちゃうんだ。つまらないな」

淳の発言に亮は「オレ様の手が汚れるからだ」と言って彼は憤慨したが、
続けて淳が「一発殴られてやってもよかったのに」と言ったことに対して疑問を持った。
「はぁ?」と目を丸くする亮に、淳は淡々と口を開く。

「慰謝料請求するけどね。なぜそう驚く?いつもお前がやってることだろう?」

淡々と因果応報を説く淳の言葉に、亮は再び憤慨した。
「な、何わけの分かんねぇこと言ってんだテメーは!オレがいつ‥」

みなまで言い終わらない内に、淳が冷然と続ける。
「金持ちやスキのありそうな人間にたかるの得意じゃなかった?
お前もお前の姉さんもそれが目的だっただろう、俺に対して」

その淳の言葉を聞いた亮は、幾分意外そうな顔をした。
そして次のターゲットは雪なのだろうと淳が言うと、亮は咄嗟に否定するもすぐに押し黙った。

当たらずといえども遠からず‥。
露骨に表情に出す亮に向かって、淳は静かに口を開く。
「少なくとも俺の目の届くとこでは止めて欲しいと頼んだのに、まるで聞き入れてくれないからね」

淳の言葉で、亮の脳裏にあの時の彼の台詞が浮かんだ。
これ以上俺の周りの人間に付きまとうなよ

亮は合点がいったという表情をすると、淳に向かって皮肉を込める。
「あ~そうだそうだ、偉大な淳様にお願いされたんだっけ。手を出すなってな」

繰り広げられる皮肉のやりとりに、空気がピリピリと張り詰めていく。
その険悪な雰囲気を、雪は固唾を呑んで見守っていた。
どうなってんの‥この二人‥

すると亮はニッと笑ったかと思うと、緊迫した空気を破るかのように大きな声を上げた。
「お~っと!ケツが勝手に椅子に!疲れたから少しここで休んでいかないとダメそうだな~!」

そう言って居座りを決めた亮を見て、淳が不敵な笑みを浮かべる。
「一杯どうだ」と淳は亮に酒を勧め、彼の挑戦を受けて立った。タイマン勝負である。

その観客である雪に、開始の合図とばかしに亮が酒を注ぐ。
「こんな席シラフでいられねーだろ?!お前も飲め!」

冷戦の始まりに、まず口火を切ったのは亮だった。
「あ、会長さんにプレゼントありがた~く頂きましたって伝えてくれよな?
いや~どんだけ遠慮してもよっぽどオレが可愛いみたいで~全く困った話だよなぁ?」

亮の皮肉に、淳も冷静に応戦する。
「ああ。親父お前のこと心配してるよ。また何かしでかすんじゃないかってね」

「顔見せに行けよ」「そんなんオレの勝手でしょ~?」
「ただでさえ静香の問題で頭抱えてるっていうのに」
「そんなんアイツの勝手でしょ~?」

雪は酒をグビグビと飲んだ。こうでもしないと正気でいられない。
互いに笑顔だが牽制しまくりな二人を前にして、雪は当惑した。
なんなのこの状況は‥!これが浮気がバレた人の心境なのか‥(浮気じゃないけど)
肩身狭すぎるでしょ!

雪は淳の横顔を窺いながら、その表情の真意が分かるような気がした。
あ~‥絶対怒ってる。あれは笑ってるようで笑ってない‥

変な笑顔を浮かべられるくらいなら、いっそブチ切れてほしい‥。
雪は彼の横顔を見ながら、笑顔の種類が把握できてきた自分を知るのだった‥。


空になったグラスを置いて、雪はふとあることが気になった。
この二人‥問題がある度にお姉さんの話が出るみたいだけど、先輩とどんな関係なんだろう?
先輩のお父さんも知ってる間柄で、多分高校も一緒で?

雪の脳裏に、いつか見た亮の姉の姿が浮かぶ。
それから超ド級の美人で‥

彼女の姿を思い浮かべた時、雪の心の中にモヤモヤとしたものが現れた。
その正体を自覚する前に、思わず顔がムッとなる。

三人の胸中は三人三様のまま、夜は更けていく。
囲んだ円卓はピリピリとした空気の中、会話は進んでいく‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<三人で円卓を(1)>でした。
ついに始まりました、第二回三者対面!
三人が同時に会話してるのは貴重ですね~。
本家版のニュアンスと日本語版の訳を混ぜつつ記事を書きますので、会話の内容も楽しんでいただけると嬉しいです。
そしてみなさま、メリクリで~す(^0^)♪
次回は<三人で円卓を(2)>です。
人気ブログランキングに参加しました


