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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

<雪>その代償(4)

2013-06-13 01:00:00 | 雪2年(球技大会~ホームレス事件前まで)
雪は一人、部屋で携帯電話と睨めっこしていた。

”証拠”について考えながら。



いくつか残っていた横山のメールは、縁起が悪いので全部消してやった。

仮に残っていたとしても、彼氏としか思えないような内容ばかりだったからだ。

本当に証拠という証拠は何一つなかった。


なかったなら、作るしかない。


やはり口が災いの横山、彼の発言を残しておくのが一番手っ取り早いと考え、

雪は録音機を買うお金をケチって、ミュージックプレイヤーの録音機能を使うことにした。



声は小さいけれど、なんとか録音出来ている。

携帯電話の音声メモはまるで役に立たなかったので、これが最後の砦だ。

雪は使い方を真剣におさらいした。



でもこんなことをしている自分が情けなくて、

雪はポツリとつぶやいた。

「‥誰か助けて」



母親は冷やかしてくるだろうし、父親は仕事が多忙でなかなか会えない。

大学の友だちに打ち明けたところでどうせ変な噂が立って自分の首を締めるだけだ。

弟は留学していて自分のことで精一杯だろうし、親友の聡美は旅行に出ている。

高校の時の友達の萌奈に電話してみたが、妹が交通事故に合ったといって

てんやわんやで、相談出来る雰囲気ではなかった。



雪は項垂れた。

世界に一人ぽっちで残されたような気持ちだった。


しかしふと、一人残っていることに気がついた。



福井太一。

太一と横山が前に一悶着あったと聞いたことがあった。

横山のこと嫌ってそうだし、こんなことで連絡して良いのだろうか‥。

雪はしばし悩んだが、無理に話題に出さなくてもいい、誰かに会いたい気分なだけなんだからと、

自らを納得させて通話ボタンを押した。



電話に出た太一はネットゲームをしている所で、特に予定もないようだった。

夜7時に、晩御飯を雪の家の近くで食べることになった。




太一は遠路はるばる雪の家の最寄り駅まで来た。雪はお詫びに、ハンバーガーをおごってあげた。



2時間かけて来てハンバーガーかよと太一は文句を言ったが、

そもそも財布を持ってきていなかったので(!)彼は大人しく奢られた。

太一が、「雪さん疲れでも溜まってるんスか?」と尋ねてきた。



何か悩みでもあるのかと続けて聞いてくる太一に、

雪は横山のことを相談するかどうか悩んだ。



実は太一に相談事というものをしたことがなかったので、

その反応が全く予想出来なかったのだ。



何かを抱えながら、溜息を吐く雪に太一は、いいもの見せてあげましょうかと言った。

「俺が鍛え磨いた一発芸ッス」



「目が回る~ ぐる~ん ぐる~ん。ぐるぐる回る~う」



雪は吹き出した。

両方の黒目を交互に回すその技は、確かにすごいが少し気持ち悪いw

涙を流して笑う雪と、モクモクと食べ続ける太一は、どこか楽しげなカップルのようだった。



外から見ているその男の目にも、そう映ったことだろう。






夜も更けて、雪は太一と交差点まで一緒に歩いた。



向こうのバス停に、家まで一本で行く市外バスがあるらしく、太一はそれで帰るらしい。

太一を見送った後、雪は彼の後ろ姿を見ていた。



口では生意気なことばっかり言っているけど、実は太一は超いい奴だ。

落ち込んでる雪の前で、無理に聞き出さず、わざと笑かそうとまでしてくれた。

でも‥、

だからといって、横山のことを打ち明けることは出来なかった。



言った所で、やはり証拠がないと話にならない。

今いくら雪が騒いだところで

横山はしらを切るに決まってるし、

変人扱いされるのは結局自分自身になるだろう。



いつの間にか目の前に、



見覚えのあるスニーカー。

「よう、今帰り? 家まで送って行ってやるよ」



雪は上着のポケットを探った。

おさらいした通りに、落ち着いて確実に録音ボタンを押す。

横山は雪の肩を掴んだ。

「おい、どこ行くんだよ。福井のとこか?」



その言葉と掴まれた肩に、雪は全身が総毛立つ。

「なんで知って‥。‥あんたつけて来たっての‥?!いつから!?」



横山は福井のどこがいいんだよと、

聡美もお前もなんであいつをチヤホヤしやがんだと口調を荒げた。

あんたにはなんの関係もないでしょうと言う雪に、尚の事横山は怒る。

「俺以外の男とイチャついてるとこ見たのに、腹を立てない方がおかしいだろ!

しかもあいつは俺にバスケットボールを投げつけた奴だぞ!」




横山は苛ついていたが、雪はそんな横山に負けないように同じように言い返した。

「さっきから聞いてると私があたかも自分の女かのように振舞ってるけど、

私はあんたなんかこれっぽっちも興味ないっつーの!

それにここんとこずっと私の周りをつきまとってるみたいだけど、立派なストーカー行為だから!分かってんの?!」




横山はこれを聞いて、青天の霹靂だったのか、盛大に笑い出した。

「あははは!マジかよ!あーウケる。ストーカーだって?

そういうのやめろよな、可愛げないぞ~。お前が俺の事好きだってことは、誰もが知る事実だってのに‥」




続けて言われた横山の言葉に、雪は耳を疑った。

「青田先輩だって知ってるんだぜ?」



「え?」



「俺が自信を持てたのも、青田先輩が後押ししてくれたからなんだぞ~

お前が先輩に打ち明けたんだろ? お前となら幸せになれると思って俺は‥」


雪は、目の前が真っ白になった。

どういうこと、何を言っているのと、三半規管が揺らされたように体のバランスを崩した。



その拍子にポケットに入れたミュージックプレイヤーが、するりと滑り出た。



それを見た横山の顔から、笑いが消えた。

「おい、お前それ‥」



「録音してたのか?」



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<雪>その代償(5)へ続きます。