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Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

予期せぬ出会い

2014-01-22 01:00:00 | 雪3年2部(大家の孫~了)
雪、先輩、聡美、太一の四人、またの名「味趣連金」は、夜の街へと繰り出した。

ビールとチキンで有名な店を聡美が知っていて、そこへ向かっているところだ。



先輩は太一と、雪は聡美と会話しながら彼らは道を歩いた。

聡美と雪は新学期の受講申請のことなどを話したりしていた。もう開講がすぐそこに迫っているのだ。



じきに聡美と太一が腕を振って歩き出した。今度は雪と先輩が会話する。

「まずは皆でご飯食べて、その後弟くんが来たら一緒に徹夜で荷造りすればいい」



ありがとうございます、と雪はお礼を言った後、呆れたような体でグチを言った。

「てか蓮は一体どこをほっつき歩いて‥」



雪がそこまで言った時、「ええ~?!」と聞き覚えのある声がした。

「えええええ~?!」



そしてもう一つ、聞き慣れた声が上がった。

「ええええええ?!」



目の前に居たのはこちらを指さして声を上げている弟と、そしてなんと河村亮であった。

「姉ちゃん!!」 「えっ?!えええ?!」



目を丸くしている雪を見て、亮がニヤニヤと笑って口を開く。

「よぉ!こんなとこで会うとはなぁ~?ダメージヘアー&淳!!」



突然の二人との出会いに雪は事態が飲み込めないが、

聡美が「誰よ誰よ」としきりに聞いてくる。



ケラケラ笑う蓮の前で、雪は二人を聡美と太一に紹介した。先輩の目が気になるところである‥。

「弟と‥。あとこの人は説明しづらいので省略で‥





雪は気を取り直して、弟の方を向いて口を開いた。怒り心頭の雪に対して、蓮はあっけらかんとしている。

「てかあんた!ケータイ通じなかったんだけど!今日荷造りするって言ったよね?!」

「あ〜充電切れてたんだよね。荷造り明日じゃなかったっけ?」



「違うって!今日だよ!」そう雪が言うと、ソーリーと軽い調子で蓮は言った。

続けて雪は、摩訶不思議な今の状況を蓮に尋ねる。なぜ河村氏と一緒にいるのかと。



すると蓮と亮は互いに指を差し合って、同じような顔をして笑った。

「いや~駅の辺りで偶然会ってさ!よく見るとこの間姉ちゃんに頭引っ張られてたお兄さんなわけよ!

それで髪の毛のお詫びも兼ねてお誘いしてさ。なんかもう意気投合!」


「いや~ダメージヘアー、なかなか立派な弟じゃねーか!やっぱ弟ってのは尊敬に値する存在だな!

姉ちゃんの借りを代わりに返すなんてよぉ!」




うははは、うへへへ、と二人は顔を見合わせてしまりのない顔で笑う。

この二人、なんだか波長が合うようだ。



そして蓮は聡美と太一の方へ向き直ると、親しげな口調で言った。

「姉ちゃんのお友達も一緒に、これから二次会行きません?!これも何かの縁ってことで!」



蓮の提案に、聡美も太一も両手を上げて賛成した。

雪は展開する事態の早さに呆然とする。元々先輩と二人で夕食を取るつもりが、気がつけば思いもよらないメンバーに‥。



淳もまた、亮が合流したことに幾らかの不満を抱いていた。黙り込んだ淳を見て、亮が皮肉を含めた声を掛ける。

「さ、行きましょ?お坊っちゃま」



意地悪く笑う亮と淳の間に、緊迫した空気が流れた。

淳は亮に、厳しい視線を投げる。



そんな二人の間に置かれ、雪は笑うしかなかった。

冷や汗がダラダラと流れる‥。



淳は皆の様子を窺うと、既に聡美と太一、そして蓮は店に向かって和気あいあいと歩き出していた‥。



淳は仕方がないと言わんばかりに一つ溜息を吐くと、

「行こ」と雪に小さく声を掛けた。



なんだかすいません‥と雪は悪くもないのに謝り、その後に続く。

亮は相変わらず子供っぽいことを言って淳をからかうが、淳は「うるさい」と言って取り合わない。



それを見て、雪は幾分ホッとした。

周りに人がいると喧嘩はしないんだな‥。いつバトルが始まるかと思うとドキドキする‥



よかった‥と息を吐いてから、なぜ私はこんなことで気を揉まなければならないのか‥と雪は微妙な気持ちになった。

しかし変な気分である。

しかし昨日河村氏とは長らく会えないと思って別れたけど、なぜ翌日こんなことに‥



雪のジットリとした視線を受けて、亮は耳をかっぽじり淳は彼女に気づいて振り返った。

「雪ちゃんどうしたの?」 「あっ‥別に 「はよ来いノロマ



そして六人は店に向かって歩き出した。

味趣連金+賑やかし二人‥もう名前すら思いつかない。予測もつかないメンバーの飲み会が、これにて幕を開ける‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<予期せぬ出会い>でした。

蓮と亮、二人とも姉を持つ弟という共通点がありますね。

大分姉の性格は違いますが‥



次回は<六人で円卓を(1)>です。

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味趣連金

2014-01-21 01:00:00 | 雪3年2部(大家の孫~了)
雪は家へ帰ってから、せっせと荷造りに励んだ。

本は重ねて縛り、食器などまとめ、衣類を詰めて‥。いくつも段ボールを梱包する。



チラと携帯を窺ってみるが、蓮からの連絡はない。

今日荷物をまとめると話しておいたのに‥と一人愚痴をこぼすしかなかった。

「はぁ‥引っ越しめんどいな‥。卒業まで居ると思ったのに‥」



そう口に出すものの、部屋を引き払うことに納得してもいた。

まぁ‥お金の問題だからしょうがないか‥。あと町内の事件もあるし‥



そして雪は昨日の夜、塾からの帰り道を先輩に送ってもらった時のことを思い出した。

「なんかいつも送ってもらっちゃってすいません。先輩も忙しいのに‥」



恐縮する雪に、先輩は「ううん」と言ってかぶりを振った。

「とにかく危ないから、明日にでも荷造りをして実家に戻った方がいい。

このままじゃ心配でしょうがないよ」




雪も先輩の意見に頷いた。

「はい、そうしようと思ってます。両親も帰って来いと言ってますし‥」



そして二人は家の前まで来ると、別れの言葉を掛け合った。

「それじゃあ明日の夜また来るから。ゆっくりしときなね」

「蓮がいるから大丈夫です。余裕ありますよ」



‥という会話で昨日は終わったのだが、今の現状を思って雪は紐を歯噛みした。

結局一人でチマチマと荷造りしているじゃないか‥。




ふと、雪はがらんとした部屋を見回して、一人心の中で呟いた。

残念だな‥。大変だったけど、一人暮らしは楽しかった‥



半年間だけだったが、この部屋には随分沢山の思い出が詰まっているような気がした。

ここで暮らした記憶の数々が、脳裏に浮かぶ。

 

 

雪はまた心の中に風が吹き込むような、ヒュルリとした寂しさを感じた。

誰かがいなくなるときや、何かを手放す時、雪はいつも心の真ん中に空いた穴を感じる。



しかし感傷に浸ったままではいられない。雪は頭の中でこれからの予定をなぞる。

これから先輩に夕食をご馳走して(引っ越しを手伝ってくれるお礼だ)、そして後で河村氏に引っ越すことを報告して‥。

トントン!



そこまで考えた時、不意に玄関をノックされた。

恐る恐るドアに近づくと、聞き覚えのある声が彼女の名を呼んだ。

「ゆきぃ~!あたしだよー!」「ゆきさーん!」



急いでドアを開けると、そこには聡美と太一が居た。突然の訪問に雪は目を丸くする。

「じゃじゃーん!来ちゃったよーん「来ちゃったヨーン



聡美の仕草や言動に、いちいち太一が真似をする(笑)

聡美が携帯を持ち雪からのメールを開いてかざすと、太一もそこに聡美の真似をして指をさす。

「今日部屋引き払うってメールもらったから来ちゃったよ!送別会もなしなんてだめでしょー?!」



雪は思いがけない友人の来訪に、思わず顔が綻んだ。

すると二人の隣から、もう一人ひょっこりと顔を出す。

「俺も来ちゃった」「へっ?!先輩?!」



聡美と太一が先輩の方へ掌を向け、彼を紹介する風なアクションだ。どうやら三人は家の前で偶然顔を合わせたらしい。

遅れてごめん、と言って先輩がニッコリと微笑む。



聡美と太一は、雪と先輩が付き合うようになってから初めてじっくりと二人一緒の姿を見た。

太一は先輩の肩に手を置き、聡美はまとわりつくように彼の周りをウロチョロする。

「味趣連新メンバー‥!」



太一の言葉に、「メンバーじゃないから!」と雪がツッコむが、二人は気にせず尚も彼の周りをわちゃわちゃした。

「雪をよろしくお願いしまぁす「お願いしまぁす

「もう!やめてよ!



味趣連独特の雰囲気にも、先輩はニコニコと笑って応えていた。

一緒に引っ越し手伝うの?とそのまま普通に会話している。



聡美&太一と先輩が一緒に居るのを見るのは初めてに近いが、

案外和やかな雰囲気にあるのを見て雪はホッとした。



やがて彼と目が合って、雪はニへッと笑顔を浮かべる。



そして元々そんなことには気づいてもいない聡美と太一は、先輩を囲んで依然として盛り上がっていた。

「そんじゃビールとチキン食べに行きましょ!略してビーチキ!どうよ?!」

「おお!いいっすねビールとチキン!ビーチキビーチキ!!」



もう一緒に御飯を食べに行く気満々の聡美と太一に、先輩は笑顔でこう言った。

「それじゃあ俺が奢るよ」エー!」



雪は「け‥結局‥」と一人呟く。

結局年長者の先輩がお金を出す流れになってしまった‥。

今日は先輩に夕食をおごるはずだったのに、むしろ彼の負担が大きくなってしまったことに、雪は気まずい思いを抱える。

「レッツゴー!!」



かくして味趣連‥、いや金担当の彼が加わって、味趣連金の4人は街へ繰り出した。

雪は嬉しい気持ちと気まずい気持ちを抱えながら、彼らの後についていった‥。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<味趣連金>でした。

久しぶりの聡美と太一ですね!やっぱりこの三人が揃うと楽しいです(^^)

新たに加わった先輩を「金担当」にしてしまいました‥太一、食べるだろうなぁ‥。

次回は<予期せぬ出会い>です。


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それぞれの夏休み終盤

2014-01-20 01:00:00 | 雪3年2部(大家の孫~了)


空は抜けるような青さだが、頬を掠める風はどこか秋の気配を感じさせるにおいがした。

さて雪を取り巻く人々がどんな夏休みを送り、今終わりを迎えているかを覗いてみようと思う。




柳瀬健太は相変わらずの夏休みを送ったらしい。

今は仲間と夏の終わりを惜しみながら、酒を飲んでいるところだろうか?





小西恵は、夏休みいっぱいヨーロッパで美術館巡りをして過ごした。

オーストリア、フランス、イタリア‥。見るもの全てに刺激があり、おそらく有意義な夏休みになったことと思う。





萌奈は知り合いの仕事を手伝いながら、忙しい夏休みを送った。

アパレル関係の雑用からアシスタントなど、目の回るような二ヶ月間であった。





柳楓はボランティアへ行ったり、他校の彼女と映画館に行ったりと、まったりとマイペースに過ごしたようだ。

いつも変わらないその楽天的なペースで、夏休みを楽しんだことだろう。





平井和美は、今空の上にいた。

向こう一年間は休学し、交換留学生として外国へ行くつもりだ。

胸に残ったわだかまりを奥の方へ沈めて、彼女は新しい扉をノックする。





横山翔は、それなりに忙しい夏休みを過ごした。

夏期講習に通った塾も終盤で、幾分ダレているようだ。



彼はこの秋学期から復学する。水面下でその為の準備に余念が無かった。

来たる新学期に、彼の思惑は見事果たされるのであろうか‥。



そして秋学期波乱を巻き起こす彼女は、洋服を買っていた。



カーキの長シャツ、スキニーパンツ、ナチュラルウエーブの髪の毛‥。どこかで見たようなファッションだ。

彼女が目指す先には一体何があるのか‥?

それはこれからのお楽しみだ。




そしてこの夏休みの終わりに誰よりも、衝撃的な出会いを果たした人物がいる。

彼の名は、佐藤広隆。



佐藤は今、コンビニに居た。顔を顰め、苛立ちを抱え、レジの順番を待っているのだ。

なぜこんな表情をしているかというと、前に並んだ女が大騒ぎしているからだった。

「50%!50%オフのセール品でしょこれ?!50%の意味が分かんないの?!半分だよ半分!!」



女は大声で店員にクレームを入れているところだった。

50%オフだと思ってレジに持って行ったアイスクリームが、定価で値段を打たれたらしい。

しかし店員は説明していた。50%オフは左側の棚にあるものであり、右側のものは全て定価なのだと。

女は右側の商品を持っていたのだが、依然として自分のミスは認めなかった。

「それじゃ50円のは50%オフで、90円と150円のアイスは定価ってこと?!それって詐欺と同じじゃない!!」



女の態度に店員は頭を抱えていた。

今やコンビニ中の客が女と店員のやり取りに呆気にとられ、真後ろで見ている佐藤の苛立ちは募る。



なぜこんな少額な買い物で言いがかりをつけているのか、佐藤は信じられない思いで彼女の主張を聞いていた。

女はこんな少額な買い物で揉め事を起こさせるあんたの会社どうなってんの、と責め続けている。



後ろからは顔が見えなかったが、女のスタイルは抜群に良かった。

ミニスカートを履きこなし、手入れされた細く長い足がそこから伸びている。

そんな女の容姿やブランドのバッグを見て、佐藤は自分をメンテする金はあるくせに50円すら惜しむのかと思った。

女はとにかく苛つきながら、値段の表記ミスはあんたのとこのミスなんだから、半額で会計すべきと譲らない。

女の主張は終わりが見えず、永遠に続くのではないかと思えた。コンビニ中の客の溜息が漏れる‥。

「あの、ちょっと!」



そこに遂に、見かねた佐藤が割って入った。

財布を出し、適当に紙幣をレジに置く。

「もうこれで会計済ませて、早く終わらせてくれ!」



佐藤はイライラしながら早口で捲し立てた。

「後に人がつかえてんだ!迷惑だからさっさと‥」



そこまで言ったところで、女が掛けていたサングラスを外した。

長い髪が揺れ、女は頭を振って髪を払う。



彼女は佐藤の方を見て笑顔を浮かべた。そして甘ったるい声で彼に礼を言う。

「あらあら~?ありがとね~」



河村静香の美貌には、誰もが目を奪われる。

それは佐藤も、例外ではなかった。




運命の歯車が回り出す。

予測できない未来を乗せて、次のステージへと皆を運んで行く‥。


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<それぞれの夏休み終盤>でした。

区切りをつけると短めの記事になりました。すみません‥m(_ _)m

皆思い思いの夏休みを過ごしたんですね~。柳先輩の見てるのは3Dの映画ですかね‥(やはり気になる柳ファン)

そして佐藤×静香の出会い!この出会いが幸と出るか不幸と出るか‥まったく予測出来ない組み合わせですね。。


次回は<味趣連金>です。

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母と娘と長男と

2014-01-19 01:00:00 | 雪3年2部(大家の孫~了)
雪と蓮はそのまま実家へと向かった。

店を手伝ってほしいと言われていたのだ。



開店から半月が経っても、店は繁盛していた。週末ともなると客入りも上々だ。

赤いエプロンをして給仕を手伝う雪と蓮だが、家に入る前にこってり絞られた蓮は唇を尖らせていた。



「唇しまえお客さんの前でっ」と注意する雪、父親からゲンコツを食らわされておでこが赤い蓮‥。

そのまま二人はヒソヒソと、母親と父親の姿を窺いながら会話をする。

「しっかし可愛い息子が遠い異国から帰って来たってのに、この冷遇は一体何?!

家に入るや否や父さんはゲンコツするわ、母さんはずっと俺のこと無視するわ‥」


「そりゃそうよ。あんた何か感じることはないの?」



反省を促す雪の言葉を受けて、蓮は冷静に両親を観察し感想を述べた。

「なんか二人の会話がなくね?」



そこ感じるんかい‥自分の状況を省みるんじゃないんかい‥と言う雪のツッコミは置いといて、

蓮はその敏感さで両親の不和を見抜いた。それについて雪が説明する。

「最近ずっとこうなのよ。お店のことでぎくしゃくしてて‥」



父と母、互いの思いと前を向くベクトルの方向が食い違って、今や両親は会話も無く険悪な雰囲気だった。

大丈夫かな、と心配そうに雪が呟く。



しかし蓮はそんな姉の心配を、取り越し苦労だと言わんばかりに否定した。

それを聞いていた叔父さんも、雪を安心させようと彼女に言葉を掛ける。

「こうやって店も繁盛してんじゃん。そのまま良い方に考えなよ」

「二人とも忙しくていっぱいいっぱいなんだろ。さっき社長がアルバイト雇うかどうか検討してたよ」



だからお前もちょっとは手伝ってやれ、と叔父は蓮に言った後、軽く彼の頭を小突いた。

雪も「そうよ、ニートじゃないんだから」と言って弟に発破をかける。



そんなことをしている内にまた注文がかかり、レジに入り、料理を運び‥。

週末の店は客足が途絶えない。終わらない仕事に、雪はついげんなりしてしまう。



そして先ほど叔父が言った言葉が蘇った。

”アルバイトを雇うことを検討してたよ”



アルバイト‥。

雪の脳裏に、最近失業した彼の姿が思い浮かんだ。



まだ漠然としているが、”彼”と”店でのアルバイト”が、なんとなく頭の中で重なり合う‥。







とっぷりと日も暮れ、店は閉店後の後片付けに追われていた。

そんな中蓮は一人調子の良い態度で、父親に向かって話しかけている。

「父さーん、家の前の花輪見た?!あれ姉ちゃんの彼氏かららしいぜ~!マジ凄くね?!」



このまま大学卒業前に嫁入りするんじゃねーの、と言ってケラケラ笑う蓮に、

父親は「調子の良いことばっか言うな」と窘め、雪はジットリと睨みを利かす。



そんな折、雪の前を布巾を持った母が通りかかった。慌てて雪は声を掛ける。

「あ、お母さんそれ私やるよ」



母親は「そう」と一言言うと、雪に布巾を渡して彼女に背を向けた。

少しうつむき加減に、溜息を吐いて。



やはりどこかおかしい‥。雪はそんな母親の姿を見ながら、恐る恐る口に出してみた。

「ねぇお母さん‥何か怒ってる?」



雪の質問に、母親はかぶりを振った。

雪は母の後を追いながら質問を続けた。「蓮のこと?じゃなきゃ仕事が大変だから?」



大変だったら休んでいて、という雪の労いにも母親はかぶりを振り、やがてポツリと最近あまり眠れないのだと言った。

「閉経後は皆そうなるのよ。あんたもこの歳になれば分かるわ」



母は力無くそう言った後、

また溜息を吐きながら片付けを続けた。



雪はそんな母の小さな後ろ姿を見ながら、心の中に重い鉛を飲み込んだような気持ちがする。

実家戻ったら、気にかけてあげなきゃかな‥



立ち尽くす雪の隣で、蓮が窓を全開にした。

「いや~風が清々しいね~!」



重苦しい気持ちとは裏腹に、夜の空気は幾分秋の気配がして涼しさを感じた。

夏休みもあと僅か、開講までもう幾日も無かった。






夏休み中通った事務所の仕事も、もう残り僅かとなっていた。

翌日の就業時間中に、品川さんが雪を気遣って言ってくれた。

「雪ちゃん、荷物まとめなきゃでしょ?今日は早く上がっていいわよ」



今日引っ越しの荷物をまとめるのだと、雪は品川さんにそう話していたのだった。

ありがとうございますとお礼を言うと、品川さんはニッコリと笑った。

「もう開講だもんね、今にまた皆と顔を合わせることになるわね」



嬉しいでしょう?と問う彼女に、雪は「はぁ‥」と答えつつ内心微妙だった。

開講したら会いたい人も勿論いるが、会いたくない人もいる‥。








皆思い思いの休みを過ごしただろうか、と雪はぼんやり考える。

しかしやっぱりそんなのどうでもいいか、と考えなおす。



ただ二学期も、平凡に静かに過ぎ去って行ったらいい‥

そんな淡い期待と切実な願いを、抜けるような空に祈っていた。





・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<母と娘と長男と>でした。

この漫画の韓国の読者層は小学生や中学生だというのに、「閉経期」の話が出てくるとか、リアルすぎてビックリです (゜0゜)

読みこめば読みこむほど大人向けの漫画だな~と思うんですけどね‥。日本でも小学生向け雑誌に載ってたら人気が出たりするのかな??


さて‥とうとう今回から当ブログの記事が日本語版のアップに追いついてしまいました‥。

自分なりに翻訳を頑張るつもりですが、どうしても誤訳するとこも出てくると思います。

もしそんな文章にお気づきでしたら、コメ欄にて教えてもらえると嬉しいです。

そして日本語版がアップされた後で、セリフ等修正しますのでその点ご理解頂けると幸いです。

日本語版しか読んでなくてネタバレNG、という方がいらっしゃいましたら、また日本語版がアップされてから

遊びに来て頂けると嬉しいです^^

手探りで進んでいく当ブログですが、これからもどうぞよろしくお願い致します!!


次回は<それぞれの夏休み終盤>です。

少しダイジェスト風になります。

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男の不審点

2014-01-18 01:00:00 | 雪3年2部(大家の孫~了)
「あれ?」



と赤山蓮が声を出した。ここは雪の家の前である。

「こんちは」



友達と二人で歩いていた蓮は、偶然会った男に挨拶した。

「‥ああ」



帽子を目深に被っていた男は、そのツバを少し上げて蓮に会釈した。

その糸のように細い目で、蓮のパーツを観察する。



片耳にはまったピアス、七分丈のパンツに白のエナメル靴‥。

男は以前このアパートに住んでいた秀紀と同じ種類の人間だと、蓮のことを認識する。

こんにちは、と男が遅れて蓮に返事をすると、その後二人は同時に口を開いた。

最近この近所でよくお会いしますね?



そう互いに言った後、蓮は男から”家に長居されると困る”という旨の注意を受けていたことを思い出して弁明した。

「あ~、俺忘れ物してちょこ~っとここに寄っただけなんで。もう出て行きますから」



そうですか、と言って男は蓮に背を向けた。

そのそっけない背中に、続けて蓮は声を掛ける。

「あの、大家さんの‥お孫さん?ってことは、この建物に住んでるんすか?」



蓮の質問に、男は少し言葉を濁した。そこは祖母が住んでいるだけだと。

「それじゃあこの近所に住んでるんすか?すげーしょっちゅう会うから‥」



男を凝視する蓮の瞳は、鷹の目を彷彿とさせる。赤山家特有の、切れ長で鋭い瞳。

男がその問いに頷くと、尚も蓮は追及した。

「近所のどこら辺すか?」



その問いに対して、男は切り返した。「なぜそんなことを聞くんです?」

蓮は男の真正面から身体をずらし、姉の住んでいるアパートの向かいの建物を指さして口を開いた。



最近この近所がとても物騒なこと、このアパートに住む女性の部屋にも泥棒が入り、その女性が昨日引っ越したこと‥。

男は凡庸な態度で蓮の話に頷いていた。更に蓮の話は続く。



「うちの姉貴も近々部屋引き払うんで、最後にご挨拶でもと思ってたんすよ。

聞いたら窓も直してもらったとか‥。にしても怖いっすよね、引っ越してった人鉢合わせしたらしいすよ、犯人と!」


蓮の話に、男はその気持ちだけで十分ですと言って笑顔を浮かべた。

「それでは‥。向かいの部屋のことで色々所用がありますので、もう失礼します」



男はそう言って蓮に背を向け、

その後姿に向かって、「さようなら~」と軽い調子で蓮が手を振る。



今の会話を聞いていた友人が、お姉さん家の大家さんなのか、と蓮に尋ねる。

そんなようなもんだ、と蓮は浮かない顔をして答えた。

友人は蓮に向かって、柄にもなく刺々しい態度じゃないかと指摘した。蓮がその言葉に顔をしかめる。

「だってあまりにも人相があやしーんだもん」



蓮は男に対して、どこか不気味な印象を常に感じていた。

ニヤニヤといつも嗤っているような表情も、糸のように細い目も、どこか不審な点を彼に抱かせる。

しかし友人はそんな蓮の話を取り合わなかった。そんな自分勝手な印象で人を決め付けんのか、と言って笑う。

「お前、昨日ゲイと間違われてキレてたような人間のくせにww」



男の言葉に蓮はガン切れだ。片方ピアスしてれば皆ゲイなのかよと言って声を荒げる。

そして蓮の怒りは更にヒートアップする。この21世紀にまだどれだけオールドファッションな考えがはびこっているのかと。

「そういう偏見が人間関係において隔絶を生み、誤解を招き、

俺みたいな純粋にオシャレを愛する人間の生き方を阻害するんじゃねーのかよ?!」




メラメラと苛立ちの炎を燃やす蓮は、この国に根付いた窮屈さを嘆いた。

そしてその怒りの矛先を友人にも向けると、彼の耳を引っ張ってそのピアスを示す。

「てかお前がそのピアスつけてるからだし!真似すんなコラァ!

しかも俺だけそういう風に見られんのが超ムカつく!」




蓮はそう言って友人を羽交い締めにした。

二人はその後、互いに文句を言いながら道を歩いて行ったが、その喧嘩はどこか楽しげだった。



二人とは反対方向を行く男の耳にも、その笑い声が聞こえてきた。

男は足を止め振り向く。



親しげに肩を組む、お揃いのピアスをつけた男性二人‥。



それを見た男は、二人の間を完全に誤解した。彼らは友情以上の仲であると。

男は溜息を吐き、忌々しいものを見たかように小さく吐き捨てた。

「はぁ‥。またおぞましい奴らが‥」



男はその糸のような目で、彼らの行く先をこっそりと窺った。

するとアパートに住む女子大生が家から出てきて、弟に何やら大目玉を食らわせている。

 

そして男は、向かいのアパートの窓を見上げて独りごちた。

ここは失敗したし‥と。



そしてもう一度、後方で騒ぐ彼らの方へ視線を飛ばした。

そして一人、ニヤリと口角を歪めて笑う。

 

男は一人覚悟を決めると、その場で小さく呟いた。

「最後にもう一度だけ、髪を染めなきゃなんないかな‥」



不穏な歯車が、カタカタと音を立ててその回転を加速する。

この夏最後の大事件が、もうそこまでと迫っていた。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<男の不審点>でした。

なんか今回もう決定したような感じですね、自称”大家の孫”の正体が‥。

犯行の度に髪を染めていたということなんでしょうね、最後のセリフは。あー怖‥。

しかし蓮くんオシャレですね。靴下はかずに靴履いてるのはジュンイチ石田か!と突っ込みたくなりますが‥。


そして大家の孫と蓮のセリフが被った時、蓮が「チチポン」と言うのですが、

これは二人が同じセリフを同時に言った時に言う言葉なのだそうです。



日本でも同じ言葉を言った後、「ハッピーアイスクリーム」や「ハッピーお返しなし」と言って

肩を叩き合うゲームがあるらしいですね。私は全く知らなかったのですが‥。

そういう遊びやったことあるよーって方、また教えて下さいね~^^


次回は<母と娘と長男と>です。



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