ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

いくら長くても

2016-09-30 08:52:33 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「それが指導力不足」9月20日
 川柳欄に、下関市のN氏の『丁寧というがクドクド喋るだけ』という句が掲載されました。思わず苦笑してしまいました。以前もこのブログで再三触れてきたことですが、私は教委勤務時代、「指導力不足教員」の研修を担当してきました。そこで接した「指導力不足教員」たちの特徴こそN氏の句とぴったり重なっていたのです。
 彼らは研修当初、自分の話の内容や意図が子供立ちにきちんと伝わっていないと言うことに気がついていません。数回の授業を重ね、その授業記録を作成させる中で、授業下手の原因が、自分の話が伝わらないまま授業を進めようとしていることに気付いていきます。
 そこで彼らは、丁寧に話す、話し後理解できているか確認する、という課題をもつようになります。しかし、課題克服に成功する者は極めて希なのです。それはN氏の句のように、クドクド長く話すだけだからなのです。「分かりましたか?もう一度言いますよ。良く聞いていてください~」というような感じなのです。
 何年生の子供には、一つの話を何秒くらいに終わらせなければならないか、という配慮が足りません。分かりにくい話はそのまま何回繰り返しても分かりにくい、という当たり前のことが理解できていません。訳の分からない話を聞かされたとき、分からなかったからもう一度しっかり聞こうと考える子供は少なく、訳の分からない話なんか聞きたくないと拒絶する子供の方が多いという教員の常識を持っていません。
 その結果、こんなに丁寧に何回も説明しているのに分からないなんて、「この子供たちはやる気がない」「元々バカなんだ」と子供を責めるようになっていくのです。そして、「ちゃんと聞いてましたか」と目がつり上がり、「やる気あんのか!」と怒鳴り出すのです。ここまでくれば、授業はめちゃくちゃです。
 N氏の句がどのような場面を詠んだものなのかは分かりませんが、大人対大人のケースだと思われます。大人でさえ、クドクド長く話すだけと受け取るような話し下手が多いのですから、知識や語彙が乏しい子供に、子供が知りたいと思っているケースではなく教員が知らせたいと思っている場合が多い授業の場では、よほど準備しておかなければ、分かりやすい話はできないのです。
 私は、授業の前には、発問・指示計画を作成させましたが、彼らの多くは、十分な時間を与え、落ち着いて考えさせても、分かりやすい話の音声原稿を書けない者が少なくありませんでした。
 私はそんな彼らを見て、話すこと、意思伝達の基本ができていないのだと思いました。野球選手は単純ななキャッチボールのときに、相手の胸にきちんと届くように1球1球投げる習慣をつけると言います。教員の「話す」も同じです。日常生活の中で、誰に対してもきちんと伝わることを意識して話すという習慣を身につけることが大切です。

 

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