ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

希少例

2017-01-25 08:18:26 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「希少例」1月18日
 『学校教育法違反容疑44歳母親を書類送検』という見出しの記事が掲載されました。記事によると、『送検容疑は、2015年9月~16年2月に大阪市狭山市教委から娘を中学校に就学させるよう6回督促を受けたにもかかわらず、16年2月上旬~7月中旬、投稿させなかった』ということだそうです。親は『娘がアイドル活動をしたいと言ったので尊重した』と主張しているそうです。
 考えさせられる事件です。まず、教委が警察に訴えたという点です。学校教育法には、就学させる義務についての定めがありますが、これに違反したということで親権者が責任を問われたという事例は極めて少ないのです。以前、不登校児の保護者を某教委が同法違反で訴えたとき、学校に問題があるから登校できずにいるのに、改善努力を怠ったまま、被害者である保護者を訴えるとは何事か、と猛烈なバッシングを受けて撤回したことがあります。そうしたこともあり、教委が訴えることはほとんどなかったのです。
 今回のように、アイドル活動が真の理由だとしても、保護者や生徒から、担任や級友の言動を不登校の理由としてあげられてしまえば、前例と同様、教委が悪者になってしまう危険性は無視できません。今回、教委が毅然とした態度を示したのは、大変良かったと思います。
 次に注目すべきは、今回、保護者がいけしゃあしゃあと、アイドル活動を登校させない理由に挙げていることです。前述したとおり、学校側に責任をなすりつけるために、もっともらしいいじめや人間関係のトラブル、学習の遅れなどの理由を掲げることも出来たはずなのに、そうしなかったのは、この母親や生徒の中では、学校、それも義務教育学校に通うということの重みが全く感じられていなかったということです。
 時代が違うといってしまえばそれまでですが、私が子供の頃は、病気以外の理由で学校を休むなどとんでもないことでしたし、私が教員になった頃でさえ、病気以外の理由で学校を休む際には、保護者はその説明に汗だくになったものでした。
 私の教え子の中には、当時高視聴率を上げていた「1年○組新八先生」に出演している女児がいましたが、本の数回撮影のため欠席するときには、いかに我が子が打ち込んでいるか、今回は主役級なのでまたとないチャンスであること、その分の勉強は親が責任をもってやらせること、などくどいくらいに説明していったものでした。昨今の学校軽視の風潮、勉強は塾でとか、行きたくなければ行かなくてもよい、学校以外にも学びの場はあるなどが、学校<アイドル活動となるまで深刻化してしまったということです。学校関係者はこのことを重く受け止めるべきです。
 最後に、親子関係についてです。44歳という年齢から考えて、強弱はともかく、この母親には、義務教育なんだから学校には行った方がよいという意識はあったはずです。しかし、まだ中学生に過ぎない娘の「アイドル活動がしたい」という願いをあっさり受け入れてしまっているのです。学校にも通いながら出来る範囲で、卒業したら思いっきりやっていいから今は我慢して、というような説得を十分に行うことはせずに、娘の言い分を尊重したと言っているのですから、人生経験の豊富な大人らしく、ときとして子供の壁となって立ちふさがるのも親の役目というような意識は全く感じられません。
 一見すると、子供を信じ、その主体性を尊重する進んだ親のように見えますが、私の経験では、こうした態度をとる保護者の多くは、子供と対立する不快さに耐えられず、今この一瞬を楽にやり過ごすことを最優先する逃避型であることが大半です。子供が好きだと言っているからといって、朝食にスナック菓子やアイスクリームを食べさせて平気でいる保護者と同種のタイプなのです。
 短い記事でしたので、私が考えたのとは異なる事情や状況があるのかもしれません。是非、詳しい続報を知りたいものです。

 

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