私のマージャン放浪記(その5)
カモにされていた先輩を、反対にカモにした。
いや、出来る様になった。ツキを生かし、徹底的に相手を打ちのめす。
たった一枚しか残っていない牌を、ワンチャンス一発で引く。
短気な先輩は、私の待ち牌三個を投げつけて怒った「こんなのは麻雀で無い」と。
どうやら、私がインチキをして牌を操作し、積み込んだと考えたようだ。
私は冷静に言う。「だって、四枚しか無い牌の、五枚目をつもったら変だけど、これって四枚目だよ」
これで勝敗は決まった。怒った先輩は徹底的にツキが生かせない。
先輩の姿に、負け続けていた頃の私の姿を見た。負けたって平気にやり過ごす。
ツキの無い時ほど、鼻歌でも歌い、不運の去るのを待つのだ。
生意気にも麻雀に人生を見た気持ちさえした。
しかし、その地で五年目を迎え、事情は変わった。
少し大げさに言えば、酒と博打の無頼な生活の私も、結婚をする事になったのだ。
結婚を控え、張り合いの出た奴は負け知らずになる事は知られている。
相手として避けられるような事さえあった。
結婚してアパートに入り、事情は変わった。
結婚後も同じペースで進めたから、新婚の妻は泣いたようだ。
私達の結婚三ヵ月後に私の母が病に倒れ、アパートの甘い暮らしも終わりを迎える。
休みには帰宅して、看病の父に代わり畑の手伝いをしなくてはいけない。
(続く)