今日のことあれこれと・・・

記念日や行事・歴史・人物など気の向くままに書いているだけですので、内容についての批難、中傷だけはご容赦ください。

トイレットペーパー騒動が起こった日

2006-11-01 | 歴史
今日(11月1日)は「トイレットペーパー騒動」が起こった日。
1973年10月16日、産油国が原油価格を70%引き上げることを決定したため、当時の通産大臣中曽根康弘が「紙節約の呼びかけ」を10月19日に発表した。 このため10月下旬には「紙がなくなる」という噂が流れはじめ、1973年11月1日午後1時半ごろ、大阪千里ニュータウンの大丸ピーコックストアの宣伝用の特売広告に、(激安の販売によって)「紙がなくなる!」と書いたところ、突然300人近い主婦の列ができ、2時間のうちにトイレットペーパー500個が売り切れた。 その後に来店した客が広告の品物がないことに苦情をつけたため、店では特売品でないトイレットペーパーを並べたところ、それもたちまち売り切れ、噂を聞いた新聞社は「あっと言う間に値段は二倍」・・・と書いたため、さらに騒ぎは大きくなった。このことから、噂が噂を呼ぶ型で、全国的に「トイレットペーパー騒動」が起こったのがこの騒動の始まりと言う。
私は、当時、神戸の中でも一番そのような事に過剰な反応を示した地域のあるスーパーでの状況をよく知っている。同店では、店頭にトイレットペーパーが並ぶや否や客が押し掛け、商品を奪い合い、喧嘩まで始まるし、商品が売り切れ、在庫のない日でも、毎日毎日、開店前からものすごい客が行列を作り、店の者が、入荷はないと説明しても「それは嘘だ!」と言って、信用しない。そして、客同士での行列の順番のことで争いまでがおこり、店の者だけでは終始がつかず、最寄警察からも応援を出してもらって整理に当っていた。そして、店が開店すると、トイレットペーパーだけではなく、あらゆる紙類から、洗剤などの生活必需品の他、しまいには、ろうそく、マッチ、線香といったものなどのあらゆる日用雑貨品のほか、砂糖などの食品までもが、売り切れた。もし、買い求めていたトイレットペーパーや洗剤などが売り場にないと、倉庫に隠しているといって、倉庫の中まで探しに押しかけてくる。店の店長自身、何故、石油不足だからと言って、このようなものが、それ程売れるのか分からないといって、物が売れる喜びよりも、毎日毎日訳の分からないものの商品調達と、売り場や客の整理に追われぐったりしていた。正に正気の沙汰ではなかった。
このトイレットペーパー騒動 は、数日前に書いたブログ、今日(10月30日)は、「ニュースパニックデー」でも、簡単に触れたが、基本的にはアメリカ・CBCラジオでラジオドラマとして放送された『宇宙戦争』が全米で聴衆にパニックを引き起こした事件と、似たような騒動である。
トイレットペーパー騒動が起こった当時は、石油ショックという背景もあり、原油の高騰により紙が本当に無くなるかもしれないという不安心理から、各地で噂が飛び火し、行列が発生したため、マスコミにも大きく取り上げられ、パニックは全国に連鎖的に急速に拡大した。高度経済成長で大量消費に慣れていた人たちが、初めて「物不足の恐怖」に直面したために起こったパニックと言われている。
当時、通産省はメーカーの生産出荷状況を調査したが、紙生産は安定しており、特に問題はなかった。それでは何故このような騒動になったのか?
このような騒動は、マスコミが煽ったのか・・・というと、全体的にはむしろ抑制的でさえあったのである。たとえば、政府が11月2日に発表した「トイレット・ペ-パ-は十分にあります。心配ないので買い急ぎを慎んでください」という通産省事務次官談話をそのまま伝えている。それでも騒ぎが沈静するまでに1ヵ月以上かかっている。ただ、新聞も放送もジレンマに陥りながら事実を伝えることによって、結果的に落し穴に落ちていったといえるようだ。
このように人々がパニックに陥った時、政府が「節約」の呼び掛けをすればするほど、半信半疑の視聴者には逆に「紙がなくなる」と受け止められ、主婦たちをス-パ-に走らせる要因となっていた。人は、いつも便利に使っていて、それを使うのが当たり前だと考えるようになったとき、それが使えなくなると慌てる。以前は無かった物だから無くなっても困らないはずなのに、便利さに油断してしまうから、次のパニックを起こす素地ができあがる。
前に、マスコミで、狂牛病の牛が見つかったとなると今度は安全な牛肉まで食べようとはしない状況が起こった。しかし、それでも、日本には鶏肉や豚肉や魚などがあり、食べ物には困らないことを知っているから、パニックにはなっていない。
今の時代では、テレビというメディアの影響力は非常に大きい、報道としての新聞メディアが失墜し、ラジオも受信率が年々下降している現在、テレビは、多くの視聴者を獲得し、報道と通信の役割を一手に引き受けている感がある。彼らは、広告収入の対象となるスポンサーに気に入ってもらうために、視聴率を上げようと、競争相手となる他局と報道合戦を演じている。
最近は、テレビをつけると凶悪事件等の犯罪が毎日報道されている。おおきな特異な犯罪になるとどこの局もが、特集を組んで、毎日毎日ドラマ仕立て、対談形式といろいろ手法を変えて報道をしている。そんな報道をしている間に、又新しい犯罪が報道されるので、テレビなどを見ている視聴者は、何か、日本中で、犯罪者だらけの感じを受ける。以下参考の「対談 報道が創りだすモラルパニック「治安悪化」という神話」を見ると、日本全体の治安悪化を感じている人が61%いるのに、自分の居住地域の治安悪化を回答した人は11%しかいないというデータ(社会安全研究財団2002年)が紹介されており、人々は自分の身の回りではさほど実感していないにもかかわらず、治安が悪化しているという漠然とした不安を感じているという。
2004年の内閣府の調査では、8割強の人が「テレビや新聞でよく取り上げられる」ことで治安への関心をもったとも答えているという。このことは、以下参考の「第80回 トイレットペーパー騒動のころ」を見ても、あのトイレットペーパー騒動の後、東京都が実施した物価調査(1974年1月)でも、「あなたが買いだめした直接のきっかけは何ですか」という問いに対して、マスコミと答えた都民が多いといい、一般大衆が、如何に、マスメディアの情報に影響されているか。又、自分の周りで感じている現実の問題以上に大きな不安感を持って感じているかが伺える。今話題になっている、学校でのいじめの問題もそうではないだろうか?確かに、いじめの問題は多いのであろう。しかし、マスコミで騒いでいるほどに悪質ないじめがそんなに多く発生しているとすれば、とっても子ども達を学校へ通わることなどできないではないか。
先の郵政民営化を問うためとした衆議院選挙では、小泉前首相が、圧倒的な勝利を得たが、マスコミでの報道に影響されずに投票した人がどれだけいただろうか。多くの大事な政治課題を解決をしなければならないはずなのに、たった一つ・郵政民営化の問題の解決を小泉流でやるかやらないかだけをもって、決定すべき事だろうか。もう、完全に小泉純一郎という政治家にマスコミは利用されたと言えるのではないだろうか。いまや、そのような、マスコミの持つ力が、マスコミの力を知っている政治家や企業などによって利用されるような時代になっている。たとえば、最近は、TV番組で、「健康に良い食べ物は・・」といったものの番組なども多く、人気番組などで紹介された食べ物は、その後、あっというまにスーパーの売り場などから消えるといった現象が起こっている。このようなことなども、私の知っている大手の流通業などは、テレビ局などと提携し、何時どこの番組でどのような商品を扱ったものが放映されるかなどを事前に情報を入手した上で、放送される日には、前もって該当の商品を、最も目に付くところへ普段より多くの量を用意して売るようにしている。情報化の時代であり、そのような情報を掴んだところが勝つということになるのだが、結果的に、そのようなことは、事前に情報をキャッチできる力のあるところと情報を入手する力のないところとの差別化を生んでいる。マスコミは、いつも偽善家ぶって、世の中で力のあるものとないものの格差が広がっている事を非難したり憂うようなことを、口先では言っているが、実際には、格差を拡大する事に協力しているとさえ言えるのである。このことは、TVCMの強い影響力をみても分かるだろう。多額な資金を出して公告のできるところと広告をしたくても出来ないところがあるのである。また、消費者金融の問題をとやかく言っているが、消費者を甘い言葉で誘うCMを流しているのはマスコミである。マスコミ自身の思惑がどうであれ、マスコミの報道が、どれだけ、国民の判断に影響を与えているか・・・・。そして、その結果、どのような社会を作り出しているか。そのようなことを考えると、CMの世界だけでなく、いまや、番組そのものまでもが、CMと同様にある種の思惑を持って利用されようとしている事を、報道関係者は、心得ておく必要があるだあろう。
それはそうとして、もし、トイレットペーパーではなく、「スーパーから食べ物が消える日」がきたら、日本は、どのようなパニックに、陥るだろう。今や中国やインドといった、ものすごい人口をかかえる国々が目覚しい経済成長を遂げている。世界では、地球の温暖化より、砂漠化も広がっている。食べ物の殆どを輸入に頼っている日本は、食糧輸出国である米国や中国の輸出が、抑えられるようになるとどうなるだろう??世界の穀物がスーパーからまもなく底をつく「食料パニック」などという恐い本が出ているが、これは、決して、夢の話ではないだろう。第2次世界大戦までは、軍事力を持ったところが世界を制した。今までは、経済力をもった国が世界を制した。次の時代は、食料を制したところが世界を制するとは、前から言われているところであるが・・・。終戦後の日本の食糧難の状況を思い出すとぞっとする。このような、パニック問題は、地震の多い日本で地震予知が出来ても実際に地震速報を流した時に起こるパニックを、想定すると地震速報を流す事ができるか否かの問題にも通じるのである・・。
(画像は、「食糧パニック」浅井 隆+ 戦略経済研究所 著 )
参考:
世界恐慌 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%96%E7%95%8C%E6%81%90%E6%85%8C
第80回 トイレットペーパー騒動のころ
http://www2u.biglobe.ne.jp/~akiyama/no80.htm
噂 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%99%82
パニック-Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF
「対談 報道が創りだすモラルパニック「治安悪化」という神話」
http://www.shinpei.jp/writing/media12.html
直前『地震速報』で『パニック』本当?(東京新聞
http://www.tokyo-np.co.jp/00/kakushin/20060802/mng_____kakushin000.shtml
TTMノンフィクションマガジン
http://www.m-surf.ne.jp/~draraya/nfbn/nfbn009.htm
パニック映画
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%8B%E3%83%83%E3%82%AF%E6%98%A0%E7%94%BB


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5 コメント

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トイレットペーパー (Linda)
2006-11-01 10:00:32
よーさん、お早うさんです。
当時僕がよく往診していたお家の奥さんが「トイレットペーパーを買って置いてあげたから。もっと要るなら沢山買ってあるから言うてください」と僕にくださったことがありました。我が家では母もワインちゃんものんびりしていたものですから「へー、そんなにえらいことやのん?」って感じでした。その方は何処からどうして買いはったのか解りませんが、助かりました。
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オイルショックと物価 (ザ・ランス(石原))
2006-11-01 13:41:09
 よーさん、こんにちわ。
 トイレットペーパー事件の時、私はまだ学生だったので、報道では知ってたけど、実感はなかった。それより、オイルショック後の急激な物価上昇をよく覚えてます。
 その頃私は、わりといいバイトを持っていて、札びら切って(といっても千円札ですが)周囲を羨ましがらせていた。それで、就職なんかする気もなくて、5年生になることを決めた矢先でした。それが5年生になった頃には、物価上昇に収入が追いつかず食うにも困る事態。えらいこっちゃあ、と思った。その後の私の人生を変えた事件でした。

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オイルショック (よーさん)
2006-11-02 07:28:33
Lindaさん、ザ・ランスさん、このトイレットペーパー事件の頃は、私にとっても忘れられない頃でした。
私も当時、いろいろ調べたのですが、このブログにも書いている地域では、あらゆる日常品が売れ手いました。恐らく全国でも異常な地域であったでしょう。
日本では、このような口コミでの伝播が早いですね~。又、ザ・ランスさんが言われているように、騒動後のインフレは凄かったですね~。あの頃、経済成長も著しかった、そのためどこの企業も新規採用を沢山しているが、成長企業では、採用難から、大学卒なら誰でも良いといった採用のしかたをしている企業があり、その後、経済成長が止まってからは、その頃採用した出来の悪い社員の扱いに困っているようですよ。
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この年は・・ (みく)
2006-11-02 13:47:03
よーさん、こんにちは!
何を隠そう、この昭和48年10月10日、結婚した私。
10月の終わり頃から、近所の産婦人科へ勤めはじめたばかり。
仕事が終わるやいなやスーパーへダッシュ!大変でした。
オイルショック、結婚して間もない頃でしたから私もショック。
こんなことに巻き込まれて・・。

お米も騒動ありましたね、国内産が消えて・・(あるのに)カリフォルニア米、タイ米とかそれでも、
スーパーで沢山売ってもらえなくてね。

報道の影響は大きい。 人の心を惑わせ不安がらせ思い込みを助長すると思う。
いじめとかで自殺する若者がいますが、某番組で毎朝とらえていますけれど、
いい反面、自殺者に拍車をかける・変な勇気を持ってしまう・・、そんな不安を感じていた私。 
事件の模倣犯だって・・。
今月もどうかよろしくお願いいたします。
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余りブームを煽らないようにしてほしいですね (よーさん)
2006-11-03 22:03:55
みくさん、書き込み有り難う!
結婚早々トイレットペーパー騒動ですか(^0^)
それは大変でしたね。
マスコミの報道は影響力ありますからね。
余りブームを煽らないようにしてほしいですね。
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