よし坊のあっちこっち

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救急医療と象牙の塔

2008年03月02日 | アメリカ通信
京都大学のチームが、ノーベル賞確実を言われる万能細胞を普通の皮膚から作り出したニュースが駆け巡り、珍しい事だが、いつもは何事もトロイ我が政府も助成金拠出でセンター構想を早々と打ち上げた。しかし、恐らくこの快挙を実務的にモノにするのは欧米陣だろうことは明白だと思う。何せ、金の掛け方と組織の早さが違う。

あの小説「白い巨塔」に見る象牙の塔の闇が何処まで明るくなったのかは知らぬが、ある機会に、象牙の塔の中にいる医師の話を聞いて、それ程変わっていないのかなと感じた。

ジョージアのアトランタに全米でも指折りの大学と医学部がある。エモリー大学といって、日本の大学からの研修者も定期的に留学してくる。そこに慶応大学病院からの留学生がいた。慶応では未だ助手レベルといったところである。彼はこちらの救急医療のチームで研修を積んだのだが、アメリカの救急医療の技術的レベルの高さと、医療における地位の高さに愕然とし、今まで日本でやってきた事はなんだったんだろうと、悶々としたそうである。何よりもオープンな事を羨ましがり、それが全体のレベルを押し上げていると確信していた。日本は少数の優れた世界的な医者はいるかも知れぬが、底辺が限りなく低いと実感したそうだ。

彼は、ホントは帰りたくなかった。こんな凄い現場で腕を磨けば、技術の向上は日本の比ではなく、悩みに悩んだ末、結局象牙の塔の誘惑には勝てないと、結論を出した。

彼曰く、小説「白い巨塔」そのものだと言うのだ。教授を頂点に助教授(最近は准教授と言うらしいが)講師、助手と連なり、それぞれの椅子を目指す。講師レースが近づいてきて、このチャンスに参加しないと、その次は無いそうである。世間的にえらい肩書きを持ったセンセイは、こうして現場からドンドン離れていくのが実態らしい。

手術をした事が無い外科医がゴマンといると聞くとゾッとするが、あながち、嘘ではあるまい。医者にかかるは地獄も覚悟。


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