よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

ハリウッドの光と影

2022年03月04日 | ビジネス横丁こぼれ話
ハリウッドと聞けばカリフォルニアの地名ではあるが、誰もが思い浮かべるのは「映画界」の代名詞としての印象であろう。

世界には屈指の3大映画祭がある。ドイツのベルリン、フランスのカンヌ、イタリアのベネチアの各映画祭で、「国際映画祭」と名前が付いているように、世界中から出品されるコンペティションである。アメリカのアカデミー賞はローカルで、言わばアメリカだけの映画祭なのだが、商業的な影響力は大きく、常に世界の注目の的になっている。ハリウッド映画に出ることは、アメリカの俳優のみならず、世界中の俳優の羨望の的なのだ。アカデミー賞にノミネートされただけで、ギャラは一気に上がり、以後紹介されるときは「アカデミー賞にノミネートされた誰々」と必ずついて回り、最高の宣伝効果にもなる。

ハリウッドはユダヤ人のトップグループがすべてを取り仕切っている、とよく言われるが、そのとおりである。何故ユダヤ人なのか。そこには歴史がある。

Entertainmentの世界。日本流に言えば「芸能の世界」だが、とりわけ映画や芝居の世界は人々に精神的癒しを与える”必需品”の様なものであるにもかかわらず、それを職業として見た途端、下賤な職業として見られる世界であった。日本の伝統芸能のひとつである歌舞伎も、もともと同じ扱いであった。豊臣秀吉の時代に出現した出雲の阿国が始祖とされるが、出雲の阿国は傾(かぶ)いて(傾く=派手な格好をする)踊る”かぶき踊り”を広め、それが長い時間をかけて芸術的とまで言われる伝統芸能の地位を確立したのである。

アメリカの映画界はどうだったのか。トーキー(無声映画)として、静止の写真から動く写真へと画期的な技術変革があったにもかかわらず、産業としての映画は細々とした日々を送らざるを得なかった。最大の理由は、映画を含む芸能産業を一格も二格も下にみていたアングロサクソン系のアメリカ支配層が見向きもしなかったのである。

一方、陰に陽に差別を受けていたユダヤ系アメリカ人は、映画産業のポテンシャルを感じ、ひとつの突破口として打って出たのである。差別するアングロサクソン系にユダヤ系が一矢を報いたのだ。それはなるべくしてなったと言える。え

アウトレット考

2021年01月06日 | ビジネス横丁こぼれ話
よし坊が初めてアウトレットなる言葉に出会ったのは、1980年代の初め、日本からの出張でマサチューセッツ・ローレンスにあるスポーツシューズのニューバランス工場を訪問した時の事。会議を終え、担当者が工場見学の最後に工場の脇にある建物に案内してくれた。標識にOUTLETと書いてあり、尋ねると機能的には問題ないが色等の外観欠点で不合格となった二級品を安く社員や周辺住民に提供してるとのことであった。

次にアウトレットの言葉を目にしたのは、1995年現地法人立ち上げでジョージアに移って来た時である。初めての海外生活で土日はお上りさんの如く買い物ツアー。当時、アメリカではアウトレットモール急速に広がり、NY近郊のアウトレットモールは日本からのNY観光ツアーの人気スポットであった。

当初は有難がって買っていた商品にやがて気づいたことがある。例えば衣料。筆者が好む或る特定ブランド品を注意深く観察したところ正規店と同じデザインは滅多に見かけない。正規店とアウトレット店で色柄デザインや縫製国が明確に分かれていたのだ。そして、何よりも、ニューバランスで聞いた二級品コンセプトからすると、商品の品ぞろえが豊富過ぎるのだ。ブランドの正規店ものでもなく、ニセモノでもなく、正規店向け生産の不合格品でもない、と言うことであろう。

このアウトレット商法、広大なアメリカをカバーする手法としては、実に上手く出来ている。有名ブランドが軒を飾り、しかもアウトレットだから安い、と触れ込めば客が集まる。そこにデザイン、生産拠点、使用材料を変更することで正規店とは一線を画した商品を並べビジネスチャンスを広げる。有名ブランドが都市部ではなく、郊外や過疎地に単体出店するのは現実的ではないが、他店との集合体ならトータルコストはぐんと下がり、宣伝効果も見込める。都市型モール商法の田舎版として、全米に瞬く間に増えていった。

この”ニセモノではない”という曖昧さが消費者の心理をつき、見事に「アウトレット商法」を成立させている。アウトレット専用品と最初から納得して買えばいいわけだが、アウトレット専用商品と正規店向け不合格品が目の前にあったら、あなたはどちらを選ぶ? 

ボーイング腐敗の構造

2020年09月16日 | ビジネス横丁こぼれ話
優れた会社と言えども、腐敗の芽と無縁ではない。巨大組織の中では、下部の意見は無視され、思わぬ方向に誘導され、その結果、事故が起こることがある。

かつて世界の空はボーイングとダグラスが二分していた。そこに欧州のエアバスが参戦、ダグラスはボーイングに吸収された。ジャンボ機で世界を席巻したボーイングも長い時間と共に腐敗が静かに進行していたようで、記憶に新しい737MAXの2件の墜落事故で明らかになったのは隠蔽腐敗の構造であった。

新しい航空機が空を飛ぶには自動運行を可能にする運航ソフトが運航シミュレーターで確実に機能することの認証を受けるとともに、それを操縦するパイロットはそのシミュレーターで既定の訓練を受けることが義務付けられている。
ところが、新しい運航ソフトの開発とそれに基づくパイロットの訓練は、ボーイングにとって大きなコスト負担となる。このコスト負担を逃れ、新鋭機を一刻も早く世に出そうと、ボーイングはとんでもないシナリオを考え、会社全体を誘導していった。そのシナリオとは、 ① 737MAXは既に世界中で飛んでいる従来の737型機の改良バージョンであり基本は737型従来機のソフトで問題なく運航可能。 ② 従ってシミュレーターによる新たな訓練は不要、とした。新しい機種でありながら、”従来型の延長”としてプレゼン、まんまとFAAを煙に巻き認可を取り付けた。そしてインドネシアとエチオピアで墜落した。

開発途上の現場では同僚間で様々な会話が飛び交っていた。事故調査委員会が入手した内部メールやテキストメッセージから現場の危機感が窺える。
① 「機体デザインはクローンがしたが、それを監督してたのが誰だか知ってるかい?猿だよ」 この会話から新機種にはデザイン上問題があった事が窺える。事実、認可以前に、ある条件下で機首が上に向き、墜落すると指摘されていた。
② 「この飛行機に家族を乗せたいと思うかい?俺は絶対乗せない」
③ 「FAAに対するプレゼン、誰が聞いてもチンプンカンプンだ」

新運航ソフトでシミュレーター訓練した社内のベテランパイロットは”乗りこなすには相当な訓練が必要”と具申したが、その声はかき消された。新運航システムでの訓練の重要性を極度に矮小化して認可を受けやすくし、利益を優先し人の命を二の次としたボーイング。やがてツケは回ってくるだろう。

共産主義国家の脅威

2020年09月01日 | ビジネス横丁こぼれ話
”世界の工場化”した中国に世界中が依存し、日常生活に中国品が溢れているから、我々は中国が「一党独裁の共産主義国家」だということを忘れがちだ。
ついに香港が英中返還協定で保障された地位が事実上反故にされてしまった。これで次の最優先ターゲットは台湾であり、南西諸島を含めた沖縄がその次にくる。沖縄の米軍基地反対運動に中国の影が見え隠れしている。

1980年代筆者が中国商取引で経験したのが張り巡らされた共産党の監視情報網だ。商談先の公司(会社)では相手は必ず複数で、その中に監視者が入る。工場では、工場長は技術屋だが副工場長が党派遣の監視役だ。タクシーの運ちゃんしかり。ホテルでは各フロアーの隅に監視役が常駐していた。それは今でも変わらない。外国企業の常駐者や出張者を監視し弱みを握り、いざという時の脅しのカードに使う。進出企業は常に人質となりうる事を認識しなければならない。

6月、ペンタゴンは中国・人民解放軍のコントロール下にある問題企業として、あのファーウェイを含む20社のリストを公表した。共産党や人民解放軍からプロが送り込まれ、表向きの企業活動を通じて情報入手・世論操作を行う。問題企業は公表20社に留まらないだろう。こうして深く静かに海外の縄張りを広げていく。正業を装ったフロント企業と裏で画策する暴力団の構図だ。

数年前からオーストラリアでは中国人進出と土地あさりが問題化していたが、豪政府は漸く彼らの活動が国家安全保障に影響すると認定し、中国友好政策を捨て、戦う姿勢を鮮明にした。対中輸出減少覚悟の転換だ。

日本でも既に中国人の北海道の土地あさりは有名だが、それだけではない。何かと問題な朝日新聞は、人民日報との濃厚な協力関係から”人民日報日本支社”と揶揄されており、朝日の反日的とも言える報道をみれば頷ける。更に問題なのは、何と中国国営テレビである中央電視台(中央テレビ)の日本支社がNHKの中にあるではないか。人民日報と並び中央電視台は中国共産党の対外宣伝の重要機関である。公共放送を標榜するNHKが半分乗っ取られているようなもので、これでは中国に都合の悪いニュースなど到底報道出来まい。日本の安全保障に関わる由々しき問題のはずだが、一向に問題化しない日本とは一体どんな国なのだろうか。政治に覚悟が見られずメディアは堕落の一途を辿っている。

「社会的地位」の落とし穴

2019年09月10日 | ビジネス横丁こぼれ話
人は「社会的地位」で人物を計ろうとする。社会的地位が無い人は地位のある人物の知己を得てのし上がる。これを悪用したのがジェフリー・エプスタイン。今年7月二度目の逮捕で過去の罪状暴露が期待されたが突然Jail内で自殺した。有名下着ブランドに入り込み巨万の富を得て社交界に地位を築き、その陰で長年未成年少女を食いものにしてきた男である。

舞台は有名ブランドのビクトリア・シークレット(以下VS)。 金融業界で仕事をしていたエプスタインは1986年にVS会長のレスリー・ウェクスナーに取り入り、経営コンサルタントとして会社の中枢に入り込み、会長の厚い信任のもと、1991年にはほぼ全権を任される。1993年に起きた全米史上最大のTower Financial Corpを舞台とした出資金詐欺事件にも関与を疑われたが何故か司法をすり抜けている。1996年にはVS社内で性的嫌がらせ事件を起こし、VS幹部達は会長にエプスタインへのレッドカードを上申したが、会長は一笑に付した。この隠蔽された事件がその後の一連の性的事件の始まりのようである。

最初の逮捕は2005年。フロリダの社交界で現大統領のトランプ等と派手な交流を続ける一方、VSとの関係を悪用し、”モデルスカウト”の触れ込みで未成年少女達を毒牙にかけ、更にセレブ達に性的斡旋をしていた。2006年、フロリダ司法当局は5つ以上の罪状で起訴したが、不思議なことに2008年の結審時には突然罪状2つで軽い刑となった。時のフロリダ検察官アレックス・アコスタ主導のもと、罪状2つを認めさせ残りはチャラにしてしまった。今年7月二度目の逮捕でトランプ政権の労働長官であったアコスタは、当時の疑わしい処理を掘り起こされ、あえなく辞任に追い込まれている。後にアコスタは当時ワシントン方面から”エプスタインは大事な人物だから上手く扱え”との圧力が有った事を認めている。

2011年、NY司法当局は周囲の反対を押し切ってエプスタインを生涯ついて回るSex Offenderとして登録したところまではいいのだが、Sex Offenderに課せられる様々な制約の違反を野放しにしていた実態が明らかになり、見えざる手の闇の深さを感じる。そして、今年の7月二度目の逮捕で、家宅捜索したところ、新たにオーストリア国籍の偽造パスポートが発見され、1980年代から偽造パスポートを使って出入りしていた事が分った。エプスタインの実像は、巧みな話術で相手を騙す稀代の詐欺師にしてSex Monsterなのである。

VSのウェクスナーが漸くエプスタインと袂を分かったのは2008年、フロリダの判決が出る頃である。1996年最初の事件でウェクスナーが何らかのアクションを取っていればこの様な事件にはならなかったかも知れない。「社会的地位」のなんと危ういことか。

小さな会社でも起こる不祥事 アメリカ篇

2019年01月23日 | ビジネス横丁こぼれ話
事務所や会社の代表者になって心掛けなければならない事と言えば、フェアでありクリーンであることだろう。しかし、それを実践して日々真面目にマネジメントに勤しんでいても、ちょっとした脇の甘さで事件や不祥事に巻き込まれることがある。

今から22年ほど前、日本から派遣され小さな現地法人を立ち上げた。日々なれない事の連続で、頼りは現地スタッフ。総務全般を任していた女性は、しっかりもので、大変よく仕事やアドバイスをしてくれたのだが、一年少々でご主人の他州転職の為に辞めることになった。早速後任を採用し仕事の引継ぎをしてもらった。前任者には全幅の信頼を置いていたので、そのままの流れで後任も信頼しきっていた。慣れとは恐ろしいものである。これがいけなかった。

三か月のオリエンテーション期間が終わりに近づき、正式に雇用するか否かをそろそろ決めなければならない、と考えた矢先、彼女が転職を理由に辞めてしまった。それから間もなく、見覚えのない請求書が経理から回ってきた。会社名義のカードで家具屋で約700ドル分の部屋の調度品が購入されていた。会社としては覚えのない購入なので、店に電話をし、購入伝票のサイン欄のコピーをファックスしてもらったところ、辞めた彼女のサインがあった。カードが作られた経緯を聞いて愕然とした。総務管轄で日本人駐在員の個人情報を保管していたのだが、代表者である筆者のソーシャル・セキュリティー番号を含むプロファイルが家具屋のクレジットカード作成に使われたらしい。直ぐ本人にコンタクトを取ろうとしたが、もはや手遅れ。

淡い期待を抱きながら、盗難届を出しにFulton Countyの警察に出向いた。担当官が出てきて、事情聴取となり、所定の形式に聴取内容の文字が埋められていく。書き終わったところで担当官がこう締めくくった。「カードの請求書が届く前に辞めるあたりは手慣れた小悪党の常習犯で、もう、他州に逃げているだろうから、捕まることはあるまい」。

当時は今ほど個人情報の取扱いに厳しくなかったとは言え、組織の長としては全く迂闊であった。「人を見たら〇〇〇-と思え」とまで人を疑いたくはないが、今の世の中、内心はそのぐらいに思っているので丁度良いのかもしれない。 

久しぶりに聞いた「権力は腐敗する」

2019年01月03日 | ビジネス横丁こぼれ話
カルロス・ゴーン逮捕のニュースに接して、久しぶりに聞いた言葉である。19世紀の歴史家にして政治家Lord Astonのあまりにも有名な格言「権力は腐敗する。絶対的権力は絶対に腐敗する」。

会社が危機に瀕した時、立て直し役が危機を乗り切り、更にその後の繁栄にも貢献すれば、やがて、その人物に「中興の祖」と言う称号がいつの間にか付与される。この「中興の祖」というのが、なかなか曲者で、会社を救ったヒーローだから、「ヨイショ」は増え、辛口の意見や文句などは影を潜めていく。こうなると、居心地は益々よく、長期政権化し、自ら作った厳しいルールや規律にもガードが下がっていく。ゴーンが私的休暇の費用を会社負担で賄っていたという報道がそれを物語っている。

かつて筆者が学校を卒業し選んだ会社の社長も中興の祖であった。筆者が入社する遥か以前の経営悪化で会社を立て直し、その後は矢継ぎ早に新規事業を拡大、業界に多くの話題を提供していた名物社長であった。社長在任期間は実に29年に及ぶ。その間、私的不正があったわけではないが、晩年、奥方(これも世間では有名でバラエティー番組にも出るほどの有名人であった)が経営に口を挟み出し、今で言う「不適切」或いは「不透明」な事業が出来てしまった。
会社の正式な事業ではなく、奥方の個人事業なのだが、これに会社の従業員が派遣され、筆者の同期も何人かいた。何しろヨーロッパでの畑違いのレストラン業だから、大変な仕事だったようだ。

このような「不適切、不透明」な局面に接したり、不正の片棒を担がされることになった時、辞めたいと思っても、日本では簡単には辞められない。再就職が難しい日本では自殺行為に他ならない。極限まで「黙って、見て見ぬふりをして」我慢する、というのが本音だろう。だから腐敗が蔓延ることになる。

アストン卿の言葉と共に筆者が肝に銘じてきた言葉にホンダの創業者二人、本田宗一郎と藤沢武夫の言葉がある。「社長も部長も課長も盲腸も包丁も、チョウが付くが、皆単なる符丁に過ぎない。偉い偉くないは関係無い」「肩書きは偉さのランキングではない。しかし、これを勘違いする者が出てくる。そういう意味では、社長というのは一番厄介な肩書きだ」。肝に銘ずべき至言である。

日系企業と縁故採用

2018年04月19日 | ビジネス横丁こぼれ話
縁故採用にもいろいろあるが、従業員の身内(親子兄弟姉妹や親戚)の雇用は慎重を要する。相当大きな組織で身内同士が接触しない人事配置が可能であればよいが、職種柄、同じグループに属したり、上司と部下の関係にならざるを得ない中小規模の組織では、”身内びいき”の問題が常について回り、そのために現場での不協和音などが起こり、マネジメントがギクシャクすることになる。

野呂利氏は、会社立ち上げで、まず生産現場のマネジャーを採用した。採用したビルは、軍隊の経験もある為か、指示もテキパキとしており、人柄も良く、仕事も熱心で、まずまずであった。次第に生産量が増え、一年も経たない内に増員する状況となり、現場のスーパーバイザーが必要となった。リクルーターに人材探しを頼んだが、中々適任者が見つからない。その様なタイミングに、ビルが「俺の息子がその仕事をこなせると思うのでどうか」と提案してきた。野呂利氏も、マネジャーの息子なら、問題ないだろう、と軽く考え、採用する事にした。そして、この考えは正しく軽率な考えであった。

ビルを信じて暫く様子を見ていたが、どうも、不肖の息子のようである。集中力に欠け、仕事に穴を開ける事も多く、その都度、親父であるビルがフォローしている有様だった。非情に徹して、解雇したい所だが、マネジャーの息子ともなると、躊躇してしまう。悶々とするうちに、数ヶ月経った頃、出来の悪い息子をめぐって現場の連中がザワつき始めた。野呂利氏も、そろそろ限界かと思っていたら、ビルが息子を辞めさせると言ってきた。部下達がビルから離れ始めた為、自分の地位が危なくなると感じ、手を打ったのである。これで一件落着すれば良かったが、結局ビルは周囲の信頼感を回復することが出来ず、又、それを放置した社長の野呂利氏にも風当たりがきつくなる、と言うダブルパンチになってしまった。その後、ビルは転職していった。会社としても漸く落ち着いた時期で、再びマネジャーとスーパーバイザーの二人を探す羽目になり、時間と余分な経費を使うと言う残念な結果に終わった。

日本人がアメリカで企業マネジメントを行う場合、最初から相当なハンディを負ってスタートすることになるので、縁故採用のようなトラブルの元は出来るだけ遠ざけておくのが望ましく、会社のPolicyとして設定しておけば、いざという時に右往左往しなくて済む。

私のHorrible Boss

2017年08月11日 | ビジネス横丁こぼれ話
どんな組織であれ、Horrible Bossを戴いた組織は悩ましいかぎりである。組織もいろいろあるが、最小単位で言えば二人で構成される組織、即ち夫婦であろうか。夫が日ごろから上から目線の高圧的態度を取れば、妻にとっての夫は正しくHorrible Bossとなり、夫が定年になった頃、突然の三下り半となる。

かなり前の事、あるスーパーで買い物をしていると、駐在員らしき夫婦の会話が聞こえてきた。何やら、妻から聞いていない事があったようで、神経質そうな夫曰く「その話、俺は聞いてないよな、そういうことはきちんと報告してくれないと困るんだよ」。妻はいつものセリフが始まったと言わんばかりの顔で、野菜を選びながら「よく言うわ、自分の事は棚に上げて」とボソッと呟いた。その後この夫婦はどうなっただろうか、と時折思い出す。

長い会社生活では一人や二人、嫌な上司に巡り合う。アメリカでは間違いなく転職の契機となるが、日本ではそう簡単ではなく、辛抱することになる。筆者の会社人生でも一人居た。

筆者の上に他部門から新任課長が来た。国立大卒で頭はいいし、仕事も標準以上と見えた。当然部下として当初は全面的にサポートしたのだが。このご仁、酒癖が悪い。酒乱ほどではないが、アルコールが入ると変な行動が始まる。その1。お得意さんとの酒宴の席で相手の担当者に頭から酒を浴びせてしまう。その2。社内の女性も入った飲み会の席。いつの間にか席に居ないので他のテーブルを見てみると、見知らぬ女性だけのグループの席でやたら盛り上がっている課長の姿に唖然。これが身内の飲み会に限らず、お得意さんの席でもやらかすから始末が悪い。ひどい時には姿を消して帰ってこず、翌朝何事もなかったかのように平然と出勤してくる。

さすがに部下としてのサポートも阿保らしくなって止めたが、案の定、この課長氏は課内で浮きはじめ、他部門からも相手にされなくなった。当分辛抱を決め込んで、その後二年ほど課長とは付かず離れずで仕事をしていたら、こうした愚行奇行はやがて組織の上の方の耳に入り、人事異動で全く関係のない関連会社に転出していった。

今、Horrible Bossの格好の研究材料がアメリカ最大の組織で見る事が出来る。合衆国大統領、ドナルド・トランプである。数々の差別発言や気に食わないスタッフを直ぐ辞めさせるところは、オーナー会社のオーナー感覚から脱却できない、 horrible Bossのひとつの典型を見てるようだ。Horrible Bossには仕えたくないが、Horrible Bossになってもいけない。

Resume(レジュメ)文化の無い日本の盲点

2016年04月01日 | ビジネス横丁こぼれ話

日本の某テレビ局報道番組のレギュラーコメンテーターの学歴詐称が週刊誌にすっぱ抜かれ、降板した。本職は経営コンサルタントで、自身の会社はアメリカで設立され世界7か所でオペレーションを展開しているとホームページには書かれている。その最後の方に学歴が載っており、テンプル大学経営学士、ハーバードMBAと記載されている。

バラエティ番組と違い、ニュースや報道番組は硬派の番組だから、かなりの”知識と教養”がなければ務まらない。学歴は必須ではないだろうが、”素性の分からぬ人物”ではいかにもまずい。素性に嘘があったとなれば問題で、当然非難される。

大恥をかいたのは、こんな人物を起用した某テレビ局だろう。誰かの紹介か、それとも知名度の高い経営コンサルタント(実績があるかどうかは別にして)だからと、起用したのだろうか。身辺調査もせずに、ただホームページの記載を信じて起用したのだとしたら、相当に間の抜けた話だ。一局が起用すれば”安心”と、その後芋ずる式に複数局での起用となり、ブレークしたらしいが、どの局も身辺調査をしなかったのだから、あきれるばかりだ。その点、すっぱ抜いた週刊誌は立派なものだ。恐らく、ニュース報道番組に出るくらいの人物だから素性を把握しておこう、くらいの気持ちで調査に入り学歴詐称が見つかった。それにしても、なんでこんなことが起こるのか、と疑問が湧くが、よくよく考えてみれば、日本では容易に起り得る事だと言えよう。

アメリカでは、この種の事件は起こり難い。その理由はResume社会だからである。アメリカの雇用現場では、まず最初の関門がResumeのチェックで始まる。たとえコネで内定しても、必ずResumeや関連証明書の提出を求められる。Resumeの書き手は、自分を最大限に上手に表現しようと、嘘にはならないギリギリのところまで表現する。一方、採用者側は騙されまいとResumeを徹底的に読み込み、バックグランド・チェック等で嘘の有無を調べるので、嘘を書いても結局バレる。絶えずチェックすることがシステマティック動いているので、どこかで網にかかる。この点日本はResume社会ではないから、簡単にザルから漏れてしまう。

一回ぽっきりのゲスト出演ならいざ知らず、番組のレギュラー・コメンテーターと言うジョブ・ポジションへの採用だから当然人物のチェックがあってしかるべきだが、Resume社会ではないことが日本の盲点になっている。件のコメンテーターの講演会や著書による”著名人”ブランドと、”アメリカの大学卒業、MBA取得”という振れ込みを鵜吞みにした、ブランドに騙されやすい日本の社会が見える。