よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

ビル・オライリーよ、おまえもか! 報道記者の落とし穴

2015年02月22日 | アメリカ通信
NBCのブライアン・ウィリアムスの粉飾報道が落着したと思ったら、またまた大物の粉飾報道疑惑が明るみに出た。今や4大ニュースネットワークの一つと言ってもいいFOXニュースの看板コメンテーター、ビル・オライリーである。ビル・オライリーと言えば、辛口ハードライナーのコメンテーターとして人気をがっちり掴んでいるのだが、粉飾報道疑惑は今から約30年前に起こった、ニューファウンドランド紛争に遡る。

1982年、ニューファウンドランド島をめぐって起こったアルゼンチンと英国の戦争に、当時CBSの記者であった若いオライリーは他のクルーとともにアルゼンチンに派遣され、現地からの報道を担当していた。オライリーは以後、当時を振り返ったインタビューや自著本の中で、「目の前で何人も死んでいった」とか「同僚カメラマンが側で撃たれたので、最優先で彼を安全な場所に移したのは当然で、報道は二の次であった」とコメントを残していくことになる。

オライリーが小物で終わっていたなら、こんなことにはならなかったであろうが、不運にもブライアン・ウィリアムスの騒動が起きてしまった。CNNが大物コメンテーター達の過去の報道をレビューの中で、当時オライリーと現場にいた何人かのクルーやスタッフは一様に「オライリーがコメントしているような状況は当時無かった」と証言、一気に疑惑としてニュースを駆け巡った。また、当時の現地のニュース報道を調べても、オライリーがコメントした内容とは大きく異なっていることが判明した。

人間は自分を良く見せたいという根本的な欲望がある。まして、報道に携わっていて歴史的な大事件に出逢うのはめったに無いに違いない。そんな時、平静さを保ち、淡々と事実のみを伝えることが出来れば、「一流」の称号が与えられ、そうでなければ二流以下とならざるを得ない。事実に加え、起こってもおかしくない作り話を散りばめ、自分を際立たせる。これはやはり、悪魔の囁きのようなものだ。

大物小物に関係なく、職業の種類に関係なく、”粉飾のない人生を送る”。これが最高の生き方なのかもしれない。あらためて肝に銘ず。



目標がさっぱり見えない日本のサッカー

2015年02月17日 | サッカー
男子日本代表がAFCで予想外の敗退を喫し、時同じくしてスペインでの八百長疑惑進展に伴いアギーレが辞任した。先のワールドカップ以後、アギーレを擁してロシア大会に向かったはずの日本は、思わぬ暗礁に乗り上げつつある。

AFC敗退後、本田が極めて重要な言葉を吐いた。曰く、「もっと格上の相手と試合をしたい」。彼は「武者修行」しないと日本は強くならない、と言っているのだ。武士(サムライ)の時代、全国の強き相手に挑み、腕と技を鍛え、一歩一歩高みの階段を上っていった武士の精神を日本人が受け継いでいるとしたら、武者修行の必要性はよく分かるはずだが、どうも現実はそうではないらしい。

以前のブログにも書いたのだが、過去の日本の国際マッチの対戦相手は、圧倒的に格下が多い。お隣の韓国でさえ、同等か格上の対戦が日本より多いのだ。今回のAFCカップの結果、韓国のFIFAランキングが日本より上になったが、この数年韓国は日本の後塵を拝していた。これをもって大方の人は、日本の実力は韓国より上と思っているだろうが、果たしてそうだろうか。よし坊にはそうは見えない。実力は韓国の方が上と見ている。特に勝負強さという点では文句なく韓国に軍配が上がる。格下のチームに勝つ度に新聞紙面には「日本は強い」というヨイショ記事が載り、負ければ「惜敗」などと、いかにも不運で負けたかのような記事となる。こんなぬるま湯の中でサポーターやファン達は”日本は強い”と言う幻想を抱き続ける。

アギーレの監督就任は、二つの点で大いに期待出来た。ひとつはワールドカップで固定された常連選手に拘らず、フレッシュな選抜を心掛けてロシアを目指すというロードマップ。もう一つは格上の対戦相手を増やすという点。当初の動き出しは良かったのだが、AFCカップでは”昔の名前で出ています”の歌の文句ではないが、殆どワールドカップ常連選手で固めた布陣で、お粗末な敗退となった。考えられるのは、スペインの八百長疑惑の一件で、アギーレの発言権が大幅に低下して協会の圧力が増した結果、アギーレが無難な布陣での保身に走ったのではないだろうか。

AFCカップ後に本田が吐いた「格上と試合を」の一言は、アギーレが辞めることを予想して、協会に送ったメッセージなのかも知れない。そうだとしたら、協会の幹部は真摯にその声を吸い上げるべきではないか。それが出来なければ再生は難しいだろう。いっその事、ロシアへの出場権をかけた予選ラウンドで敗退し、切符を棒に振った方が良いかもしれない。


クロンカイトの教え -揺れるNBC ニュースアンカーのスキャンダル

2015年02月12日 | アメリカ通信
この10日間は三大ネットワークの一つNBCにとっては激動の10日間であったに違いない。NBCの顔ともいうべき、ゴールデンタイムのニュースアンカー、ブライアン・ウィリアムスの当座の処分が”無給6ヶ月間降板”と決まった。伝統あるアンカーマンの末席を文字通り”汚して”しまった。

事の起こりは、2003年のイラク戦争の現地取材に遡る。被弾して帰還した攻撃ヘリを前にして、あたかも自分が搭乗し、危うく危険な目にあったかのような報道をしたのだ。その後、トークショーを含め、機会ある毎に、同じような内容の話を続けてきた。”危険な状況でも報道に立ち向かうニュースマン”を見せ続けた。あまりなテキトーさを感じたのか、当時のパイロットはフェイスブックでつぶやいたからたまらない。”全米No.1アンカーの嘘”が知れるところとなった。

アメリカの良心、と言われたCBSニュースのアンカー、ウォルター・クロンカイトの第二次世界大戦時の逸話がある。彼には戦時報道における行動規範を設けていた。「Never self-aggrandise」。自分の行動を自慢げに話したり目立とうとする言動をしない事。ニュースマンの仕事は事実を正確に伝えることだと説き、Self-Deprecation(自分を目立たせない)を信条としていく。

逸話その1。欧州戦線を決定付けたノルマンディ上陸作戦。有名なオマハビーチの戦い。そのビーチを最初に飛んだのがクロンカイトだったのだが、後年、あなたがオマハビーチを飛んだ最初の記者なのでは、とのインタビューに対し控えめな答えをしている。「恐らくオマハビーチだったのだろうが、当時はビーチの名前など知らされていなかったから、私が飛んだのは”ビーチ”に過ぎないのだよ」。

逸話その2。オランダ上空でドイツ軍の攻撃に遭い、ジャガイモ畑に不時着したのだが、そこは連合軍に開放された地域であった。彼の仕事は、ドイツ軍攻撃で不時着したことを報じることでなく、開放された町が祝う状況を伝えることであった。

人間は自分をよく見せ、自慢したい気持ちがどこかにある。しかし、ニュースマンはニュースマンであって、ショーマン(Showman)ではない。ブライアン・ウィリアムスは事実をでっち上げたショーマンを演じてしまった。6ヶ月の降板後どうなるかが取り沙汰されており、その一つが復帰であるが、どう考えてもそれはあるまい。視聴者が彼のニュースを”眉につば”をつけて聞くようになれば、視聴率は壊滅的打撃を受けること必死である。

皮肉な社会、銃のアメリカ

2015年02月05日 | アメリカ通信
今公開中のアメリカ映画”アメリカン・スナイパー”が当たりに当たっている。クリント・イーストウッド監督の評判のこの映画は、ゴールデン・グローブやその他の映画賞にはノミネートされなかったが、最後の本命のアカデミーでノミネートされた。題材や映画のカテゴリーからみて、いかにもハリウッドらしいノミネートの仕方に思える。

悲劇のヒーローとも言われた,実在のNavy Seal屈指のスナイパー、クリス・カイルの自叙伝を題材にしている。テキサス出身のクリスはイラク戦争を中心に数々の武勲を立て、アメリカ軍創設以来の最強のスナイパーとまで言われるようになった。2009年退役後数年経った2013年、自叙伝「アメリカン・スナイパー」を出したが、翌年、PTSD障害を持つ元海兵隊のエディー・ロウスに銃で殺害され、悲劇的な死を遂げる。

銃社会のアメリカは銃規制されるどころか、この数年ますます規制が緩くなっている。先日も、たった二歳か三歳の子供が母親のバッグに入っていた銃を取り出し、銃が暴発し母親を撃ってしまった。同じような事件が頻発し始めているのが昨今のアメリカである。日本と違い、自分のみは自分で守る精神が徹底しているアメリカでは、銃の規制は恐ろしく困難なのである。

映画「アメリカン・スナイパー」がBoxOfficeを続ける中、著名なUCLAの法学教授のアダム・ウィンカーがこんな言葉を言っている。

”銃社会を擁護する人達は、銃があるから安全だ、と言う。それならば、アメリカで最も銃の扱いに慣れ、屈指の銃の使い手であるクリス・カイルが何故銃で簡単に撃ち殺されなければならないんだ。” 銃擁護派は教授の質問にどう答えるつもりなのだろうか。