よし坊のあっちこっち

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きな臭さ漂うトランプとその政権

2017年02月15日 | アメリカ通信
今頃トランプを大統領に押し上げたアメリカの下層ー中間層の連中は”早まった”と思い始めているかもしれない。兎に角威勢のよさで”何かを変えてくれるかもしれない”と期待してしまったのだろうが、おっとどっこい、というところだ。

新政権は威勢の良さとは裏腹に、早々からトラブル続きである。その懸念は就任前から囁かれていたことだが、側近中の側近である国家安全保障補佐官が就任一か月も経たないで辞任に追い込まれたことで一挙に問題が顕在化したと言える。これが”Russian Gate”事件(?)の始まりかも知れない。

大統領選最中に派手にロシアとの協調を訴えていた頃から、トランプには何かがあるな、と噂され、その背景に”ロシア文書”なるものが存在すると言われていた。当初は共和党の面々も無視していたのだが、ここにきて俄かに無視できない存在となってきた。

FBIや他の情報機関が昨年より詳細の分析に入っていると言われているこの文書はロシアで活動していた英国のスパイエージェントがまとめた文書で、その中にトランプに関するレポートが含まれている。ビジネスマンとしてロシア滞在中にロシア当局が押さえている”不名誉で恥ずかしい行為”が記述されているようだ。アメリカの当局はその真偽も含め慎重な調査分析を行っていると言われている。

有力な人物が外国の当局に監視され情報を収集されるのは当たり前のことだが、とりわけ共産圏や元共産圏は注意が必要で、ロシアは中国と並び要注意国のひとつである。民主化されたとはいえ、旧ソ連の流れをくむロシアは今でも米国に対峙する厄介な相手だろう。

トランプが大統領選に出た時点で、彼を当選させるべく、あらゆる角度から目に見えないような支援をしたとしてもおかしくない。それが証拠に最後の土壇場でヒラリーに一撃を与えたサイバー攻撃は今ではアメリカ議会でも認めているところだ。トランプが相手になれば料理は遥かに簡単になる。

トランプは”弱み”を握られてしまったようだ。最近急にロシアに対し強腰発言が出てきたが、ジェスチャーではないだろうか。ロシアが手に入れている美味しいカードをどのように使うか。ひょっとしたらこの一年はこの問題で終わってしまうかもしれない。


移民の国アメリカの現実

2017年02月13日 | アメリカ通信
日本では少子化による人口減少、それによる将来的な労働力不足が叫ばれて久しい。いや、現実には既に労働力不足はあちらこちらで起こっているが、国も企業も有効な手を打てないでいる。人が足りなければ外国から、と言うが、独特の島国文化を育んできた日本は外からくる”よそ者”に対しては寛容ではなく、それ故に外国人にとっても居心地は決してよくない国だから、移民政策が極めて難しい国であろう。

それにひきかえ、移民によって造られたアメリカ。今も一定数の移民が毎年のように押し寄せてくるこの国では、移民政策は常に国家の重要な政策のひとつとなっている。そんなアメリカでも、少子化とまではいかないが、気になる人口の減少が起こっており、日本とは違った意味で、目の離せない問題なのである。

2016年の調査によれば、人口増加率は1929年の株価大暴落に端を発した大恐慌時代の1930年代以来最低を記録し、0.7%増にとどまったとのこと。主因は、ベビーブーマー世代の死亡増と若い世代の出産率減少による。アメリカでも若い世代では昔ほど子供を産まなくなってきているのである。

アメリカは州をまたがった国内移動も多いが、”移民の国”の看板通り、海外からの移住組も多い。全米34州で州外からの国内流入組を海外からの移民組が上回り、メリーランド、マサチューセッツ、ロードアイランドでは、移民が無ければ実質人口減になっていた。アメリカの移民の数は、人口増加の45%を形成していると言うから、移民はこの国では日本では考えられない程重要な位置づけにある。

人口減の激しい州は、成長率マイナス0.54%のウェスト・バージニアを筆頭に、イリノイ、バーモント、コネチカット、ワイオミング、ペンシルベニア、ミシシッピ、ニューヨークと続いている。大都市シカゴを擁するイリノイでは37500人が州外へ出て行った。地図でどこにあるのだろうか、と探してしまう影の薄いウェスト・バージニア。嘗て炭鉱産業を支えていたこの州は、あちらこちらに昔の面影を残しているが、人が流出するのはやむを得ない雰囲気を持っている。もちろん人口増加州もあり、2.03%増のユタを筆頭にネバダ、フロリダ、テキサスなどが並ぶが、全体としては減少の勢いが勝っている。

新大統領のトランプは声高に移民抑制を叫んでいるが、この現実がある限り、そう簡単にはいくまい。アメリカの移民政策は国の根幹に関わる問題と言っても過言ではない。

トランプのアメリカは何処へ行く

2017年02月03日 | アメリカ通信
トランプ政権が始動し、暴れまくっている。今までにないスタイルでの船出に、ある者は喝采し、ある者は眉をひそめている。それにしても就任早々から全米各地で反対デモが多発しているが、このような形は恐らく稀であろう。そういう意味でアメリカ国民は特異な大統領を選んだとも言える。

矢継ぎ早に連発される”Executive Order”は、まるでオバマ前政権の諸策をことごとく反故にせんばかりの勢いが感じらるのだが、この先何処へ行くのかはまだ分からない。一つだけ言えそうなのは、トランプと彼を担いだ”グループ”が「強いアメリカ」を取り戻すべくアメリカのリセットを目論んでいるらしいのだ。これはトランプという表看板を掲げ共和党が仕掛けた”戦争”なのではないだろうか。

”戦争”に関していえば共和党は常に「強いアメリカ」を模索するHardlinerであり、民主党はどちらかと言えば穏健派となる。近年の歴代大統領とその政権をみると、その傾向がよく見える。

ニクソンのウォーターゲート事件でスキャンダルに塗れた共和党は失墜し、人道主義を前面に出したクリーンなイメージの民主党ジミー・カーターが選ばれた。田中角栄が失墜したあと選ばれたクリーンなイメージの三木武夫に似ている。残念ながらカーターの人道主義はアメリカ市民が求める「強いアメリカ」を創造する力にはなりえず、一期四年で共和党のレーガンに明け渡すのである。

当時、”ジャパン・アズ・ナンバーワン”に見られる如くアメリカ経済は疲弊していた。自信喪失状態であった。レーガンと共和党が仕掛けたのは、知的財産保護によるアメリカ経済の復活であり、それは見事に実を結んだのである。普通の戦争とは違うが、経済の場で「強いアメリカ」を取り戻した。

レーガンの実績を追い風にブッシュが選出され、引き続き共和党政権となった。ブッシュも「強いアメリカ」の体現に邁進した。第一次イラク戦争である。アメリカ人が溜飲を下げたのは言うまでもない。しかし、その反動でマイルドな民主党政権となる。

クリントン政権もボスニアやコソボへの戦争介入をしているが、共和党に比べ、やはりマイルドな体質にはかわりなく、民主党の伝統と言うべきであろう。二期八年の民主党政権に飽きたアメリカは再び共和党のブッシュ・ジュニアに国を託すことになり、就任早々、運命の9・11となった。

9・11はブッシュ・ジュニアが「強いアメリカ」を示す絶好の機会となった。世界の”悪の枢軸”を世に問い、第二次イラク戦争へ突入した。ブッシュ・ジュニアを固める連中は副大統領のチェニー、国防長官のラムズフェルドなど、「強いアメリカ」も求める猛者ばかりだから、最初からやる気満々な政権だったとも言える。全米の熱気は凄まじく、どこへ行ってもUnited, We Standが溢れていた。アメリカ市民でもない我々でさえ、胸にバッジをつけなければいけないような雰囲気であった。

しかし、戦争の爪痕は大きく、アメリカは再び民主党のオバマを選ぶ。強硬から穏健へと流れは変わった。この民主党政権下で顕著に変わったことは何か。ずばり、中国の傍若無人な覇権拡大を許してしまった事だろう。初期のオバマ政権での対中国政策が根本的に誤ってしまったのだ。オバマ政権の8年間、共和党の中では中国に対する強烈なマグマが溜まりに溜まっていたに違いない。

トランプ政権はトランプの看板を借りて政治経済の分野でハードライナー達が今までの状況をリセットして再び「強いアメリカ」を取り戻そうとしているののは間違いなさそうである。中枢幹部の人選がそれを物語っている。