よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

火事だ! -エピローグ 痩せるにゃ恐怖、そして教訓

2007年02月24日 | いろいろ
韓国料理大好き人間だから、火事のショックもなんのその、実によく食べた。いつもは、帰って計る体重が怖かったのだが、今回は体重計に乗って驚いた。5キロも痩せている。

普通5キロを痩せようと思うと、相当大変だろう。しかも一日で落とすとなると、マラソン距離を走るかしないだろう。今でも2キロ落とすのでさえままならぬ状態だ。一週間の間、目一杯食べての5キロ痩せは、火事のショックしか考えられない。それも一夜にして痩せたわけだ。人間とは不思議な動物だ。恐怖の5キロ痩せだ。

こんなことを経験すると、極限の恐怖を味わった人が一夜にして白髪になるなんていう話も、やはり現実にはあるのだろうと思わずにはいられない。

得た教訓は大きい。まず、変わったことは、出張でホテルに泊まる時は必ず非常出口を確認するようになった。非常口のドアも重要だ。ドアは押して開くドア、引いて開くドアがあるのだ。当たり前のことだが、イザというときにヒトは混乱する。次に、煙というのは上から立ち込める。例の商社マン氏、廊下に飛び出したはいいが、煙りで先が見えず、出口とおぼしきところに突進し、したたか、おでこを打ったそうな。ひっくり返ってみたら、下のほうは見晴らしよく、這うようにして出口にむかったという。

最大の課題は、非常時の平常心。言うは易しで、こりゃ難しい。軍隊、或いはそれに似た訓練や経験のない平和ボケ集団にとっては、殆どお手上げのテーマと言ってもよい。火事の一件から考えたのだが、人生何が一番上等かと言うと、金でもない、小利口な頭でもない。サバイバルするスキルを持つ事だろう。

人生には思わぬことが起きる。以来28年、この時の恐怖を超える体験をせずに今日まで来たことは喜ばしいこと。今年、我が人生の暦が還る年となったが、28年前のあの年、あの時に一度私の人生の暦は還ったのかも知れない。そういう意味では2度目の還暦を迎えるわけだ。(完)

火事だ! -第四章 燻製

2007年02月21日 | いろいろ
イカの燻製、たこの燻製、スモークサーモン。食べる燻製は酒の肴によいが、洋服の燻製は御免だ。えづいてしまう。特にネクタイはひどい。

朝も8時を過ぎて現場検証が終わり、部屋に荷物を取りに行けるようになった。三階四階がすっかり焼けたが、延焼は免れた。階段で8階まで上がり、部屋に入ったが、何処もかしこもススだらけだ。驚きは、洗面道具入れのファスナーを開けたら中の瓶キャップが全部煤けていた。エアコンダクトからの煙はどんなに細かいものでも通過してしまう恐ろしさ。火事で死ぬ大半の原因はコレと納得。

近くのプラザホテルに部屋が取れ、シャワーでさっぱりして、兎に角仕事だ。クローゼットに吊るしておいたスーツ、ネクタイは煙で燻られ燻製状態。しかし、コレしかない。幸い、午前中のアポはお客さんに事情を説明して昼間際に延ばしてもらったので間に合う。

ネクタイが異様に臭い。これが繊維の燻製か。漸く客先に来て、お偉いさんに挨拶。日本式でお辞儀をしたら、胸元のネクタイから嫌なニオイが鼻を直撃、思わずえづいた。兎に角下を向くと、ゲロっとなりそうだ。

ランチ時に客先近くでネクタイを買いに走った。デザイン、好みはクソ喰らえだ。兎に角ネクタイなら何でも良い。

午後のアポは予定通り。何処へ行っても火事の話半分、商売の話半分。韓国ネクタイのお陰で、以後、えづく事も無く、食欲も全く衰えずで、一週間の出張を終え、無事、土曜日に帰国した。(次回完)

火事だ! -第三章 アメリカ人韓国人の凄さ

2007年02月18日 | いろいろ
明け方近くになって、隣にあるニュー国際ホテルのロビーが開放され、やっとのことで暖かい場所に収容された。早速、熱いコーヒーにありついたが、その美味さは言葉では表せない。大袈裟に言えば、生涯最高のコーヒー。

続々とロビーに集まってくる。圧倒的に韓国人客と日本人客だ。当時の韓国は台湾と並び、男性天国。即ち、韓国人は別として、日本人の殆どの客は同伴状態。よし坊と言えばどういう訳か、”独り”。ここで、よし坊は生まれてこの方、何処へ行っても品行方正で、一点の曇りも無い、と言うつもりは無い。でもこの日は独りであった。

逃げる途中、ステテコやパンツ姿でオロオロする農協風の日本人のおっちゃんが何人も同伴の韓国人女性に手を引かれて、降りて行ったが、彼らもコーヒーで一息ついている。

全体を見渡すと、面白い。ステテコ、パンツ姿は殆ど日本人。それと対照的に、同伴の韓国女性は殆ど全員きちんと服を着ている。韓国人男性もしかり。6~7組の外国人(アメリカ人とヨーロッパ人の夫婦、子供連れもいた)も全員見事に服を着用しているではないか。この非常時に於いて、日本人を除いて、見事と言う外ない。

それに引きかえ、オレたちゃ何だ。そう思うと情けない。日頃の備えが違うから、いざという時真価が問われるちゅうことか。北と対峙し、兵役も有り常に緊張感がある韓国人、人種の坩堝の緊張感と世界一の軍隊をもつアメリカ。そして平和ボケのよし坊たち。日本人の平和ボケはつとに有名だが、よし坊はこの時初めてそう思った。そして、その平和ボケというやっかいな菌は今も増殖中だ。

ひとつだけ付け加えたいエピソードが技術の上司の事。かなり後から降りてきた。身なりはキチンと着ており靴も履いている。前述のアメリカ人達と変わらない。我々を見てほっとしたらしい。上司殿はよし坊とは同じ階に泊まっていた。火事と分かると身支度をし、まずよし坊の部屋を見に来たそうだ。部屋が空っぽなので、うまく逃げたと判断、他の逃げ遅れがいないかその階を全てチェックして、降りてきたそうな。脱帽(この上司の事はあらためて書きたい)。(つづく)

火事だ!-第二章 ほっと安堵の無我夢中

2007年02月15日 | いろいろ
厳寒、2月のソウル。ところはホテル近くの路上。脱出してきた客で埋まっていく。時間は夜中の2時か3時か。氷点下12-3度。
地上に、そう、正に地上に降りた時は未だド緊張の頃。寒さも何も感じない。暫くしたら、さすがに寒くなってきた。なにせ、よし坊のいでたちは半端じゃない。

まず、裸足。下は下着のパンツ(トランクスタイプ)に上は素肌の上にスーツの上着。右手にサムソナイトのでかい旅行カバン。
隣の男性(韓国人だが日本語を話す)が、今何時頃かと訊ねるので左腕の時計を見て驚いた。え、何でオレ時計をしているんだ? 更にその人は、震えるよし坊と旅行カバンを見てこう言った。「あなた、そのカバンに着るものはいっているでしょ」。気が動転しているから、カバンの中身に頭が行かぬ。我頭のコンピューターは完全にダウン状態。言われて我に返り、明けてみたらワイシャツがあるじゃないか、靴下があるじゃないか。隣の女性が裸足なのに気づき、漸く靴下をあげる余裕が出てきた。

それにしても、このいでたちは何か。さっぱり記憶に無い。どうも、ドアを開け、最後に女の人に引っ張られるまでの短い時間に目一杯のいろいろな行動したらしい。
腕時計など外して寝るから、よくつけたものだと感心する。クローゼットの上着を羽織って出てきたことから、恐らく内ポケットにパスポートが入っていたから本能的に、これさえあれば何とかなると思ったのだろう。人間無我夢中の時の行動は「不思議」の文字。

9階に泊まっていた商社マンのY氏が降りてきた。そのいでたちは、パジャマの上に上着を着、手にはネクタイを握り締めていた。何でネクタイか聞いたら、明日会社訪問するのに、ビジネスマンたるもの、ネクタイ無しでは訪問できない、これさえあればと、持って出たらしい。スーツもワイシャツも無ければ無用の長物だが、その精神は見上げたものである。立派なのはちゃんと靴を履いている。さすが世界の商社マン。(つづく)

火事だ!-第一章 逃げろ

2007年02月13日 | いろいろ
しかし、この激しいドア叩きと怒号は何だ、しつこい。何かオカシイ。韓国語は挨拶程度の片言しか出来ないから、何を言っているのかさっぱり分からん。が、様子が変だ。起き上がった瞬間、うっすらと煙い匂がしたような気がしたが、それでも未だ何が起こっているのかわからない。恐る恐るドアを開けた。濃い煙の匂いが一挙に来た。廊下は既に腰から上は煙で見えない状態だ。火事だ!

そして女の人がわめいている(早く出ろと言っているらしい)。逃げなきゃ。その後は何をどうしたのかさっぱり記憶に無い。気がついてみたら、その女の人がよし坊の手を引っ張って、こっちだと言わんばかりに誘導してくれた。なんのことはない。部屋のまん前が非常階段だ。しかし、日頃非常階段などチェックもしないから、このざまだ。兎に角、外に出られた。ここは8階だ。このホテル、後で聞いたが、当時のソウルで、外に非常階段がある二つのホテルのその一つ。

上から次々と人が非常階段を降りてくる。押されながら下を見ると、三階四階あたりから、火が横に猛烈な勢いで吹き出している。降りながら、頭をよぎるのは、妻ともうすぐ一歳になる娘の顔ばかり。ほかの事は何も浮かばずだ。しかも走馬灯のように繰り返しやってくる。途中で逃げ道が途絶えたらどうする?そりゃ、ここから飛び降りるしかないわな。全く恐怖心も湧かず、いつその瞬間がきてもいい心境。不思議なものだ。きっと、人間、死を決意した時はこんなもんかと思う。そんなことを考えていたら、いつの間にか四階三階にたどり着き、そこは既に逃げ道確保され、無事通過。やっと一階の出口に来た。よし、助かった。だが、待てよ。最後の最後で上からの落下物に当って死ぬこともある。ここは最後の用心だ。おもむろに上を見上げると、何も落ちて来そうも無い。漸く外への第一歩を踏み出した。(つづく)

火事だ!- プロローグ・予感

2007年02月09日 | いろいろ
今から28年前、よし坊は、「享年31歳。戒名、釈xx」となっていたかもしれない(家が浄土真宗なので釈が付きます)。

小学生の頃、距離にして3軒か4軒裏の家が火事になり、燃え上がる火の怖かったこと。しかし、まさかホテルで火事に会うとは。世に生まれて、ん十年になろうとしてるが、後にも先にも死ぬかと思ったのはこの一回だけ。

人間、予感とか、後で気がつくと変なことを口にしていることがある。1979年2月某日、韓国ソウルへの出張。いつも日曜日に出て、土曜日帰りの一週間出張だ。今回は、毎回宿泊している定宿のコリアーナ・ホテルが珍しく一杯で、通りをはさんだ向かい側、市庁裏のニューソウル・ホテルに初めて泊まることに(写真は現在のホテル。当然だが昔より綺麗だ。米系ベストウエスタン系列になってるのが目新しい)。技術の上司と担当商社マン氏、そしてよし坊の3人はチェックインして、しばしエレベータを待つ。横の各階案内を見て、「アレ、三階四階はオンドル・フロアですね。さすが韓国、でも火が出るとしたらここから出ますね」と思わず口に出た。皆んな、「そうだね」。
晩飯を外で食べ、夜中近くにホテルに戻り、上司殿の部屋で持ち込んだ極上コニャック(クールボアジエだったと思う)を寝付け薬に飲んで散会。
まさか、先程の言葉が現実になるなんてつゆ知らず、夜中の1時前にベットにもぐり込んだ。何せソウルの冬は寒い。マイナス12~3度ぐらいだ。だが、ホテルで寝る時はどこもエアコンが効いているので大体パンツに上半身裸でブランケットに包まって寝るのが常だったから、この日も同じ。

そして、ウトウトっと寝かけたところで(多分30分くらい)、外(=廊下)が騒がしくなり、ざわついているのが遠くに聞こえた。と思ったら、突然ドアを激しく叩く音。ギョッ!! ベットの中で「ありゃ何だ。喧嘩か?きっとイザコザに違いない。海外でそんなのに巻き込まれたら大変だ。じっとおとなしくしているのに限る!」(つづく)

社長業

2007年02月06日 | いろいろ
日本のナショナルフラッグが赤字に喘ぎ、経営建て直し、リストラ断行に伴い、その社長は、自らも大幅減俸と電車通勤を宣言。これがホントなら誠に結構。背水の陣を見える形で宣言したところは「買い」だ。願わくば、業績が回復しても、減俸は元に戻すとして、電車通勤は継続して欲しいもの。こういう時は、かならず「ありゃパフォーマンスだ」と言う奴が出てくるが、よしんば、「パフォーマンス」としても、こういうパフォーマンスなら大歓迎。何故なら、殆どの「お方」がそのパフォーマンスさえも出来ない。

数年前に、某有名商社の3ランクくらい下の役員が先輩を飛び越して社長に抜擢。その人、今まで電車通勤していたのだが、「明日から社長、ハイお車付き」はないだろう、と淡々とそれまでの電車通勤。もちろん、そんなタイプの社長は所謂大企業に於いてあまり見かけないから、マスコミも挙って囃し立て、当の社長は迷惑だったに違いない。

「課長、部長、社長も包丁、盲腸、脱腸も同じ。要するに皆符丁」。これは本田宗一郎の言葉。もう一つ。「社長は職名であって人間の価値ではない。しかし、社長になると威張る人が出てくる。社長とは世の中で最も危険な商売だ」。同じホンダの副社長だった藤沢武夫の言。いずれも明快にして鋭く、心地よい。

よし坊的社長の定義。「雑用兼平社員兼課長兼部長兼平取締役兼社長」。組織が大きくなると一人全役は出来ぬから、夫々の担当を置いて自分の役割を分担してやってもらっていると考えなくてはいけない。だから、不祥事が何処で起ころうと、それは社長の責任ちゅうもん。うっかりすると、塀の中にも行きかねないから、社長業はツライ商売だ。

口は禍の門

2007年02月01日 | いろいろ
柳沢某という御大臣が、女性蔑視発言をして、世間というか、永田町を騒がせている。ま、昔から政治の世界では首相級から下っ端のセンセイまで、うっかり口を滑らせ、その中にはやめさせられた者もいる。

政治家は喋るのが商売みたいなものだから、注意しないといけないのだが、そもそも、うっかり口を滑らした言葉というものは、それ自体、その人物が日頃からそう思って居るか、生まれてこのかた、自分の主義としてそう信じている内容であって、急にとってつけたものとは違う。それこそ、その御仁のホンネだ。

ここは、女性議員の出番だ。怒り心頭で、ガンガン攻めまくり、世論の大合唱まで持っていくと、面白いのだが。センセイの一番怖いものは、何たって選挙だから、その辺を揺さぶるのがよい。そして、次の選挙でこういう不逞の輩を落とせば溜飲が下がるというものだ。

政治の世界に止まらず、舌禍事件は枚挙にいとまがない。日本は元来男尊女卑で来たから、女性の地位が格段に向上した今では、女性蔑視発言には直ぐ反応するようになったが、これが人種の坩堝、アメリカとなると、それ以外に、人種やらゲイの問題で舌禍事件が起きる。

昨年、テレビのコメディによく出ているコメディアンが、初めて独り舞台のトークショウに出て、何を興奮したのか、黒人を差別する”N”ワードを使ってしまい、今でもゴメンナサイ行脚が続いているとか。今年に入ったら、今度は黒人の結構有名な俳優(イザイア・ワシントン)がテレビの人気番組で共演している白人俳優のゲイを暴露してしまった。かわいそうなこの白人俳優、しなくても良い”告白”を世間にせざるを得なくなったのである。口を滑らした黒人俳優は、自分のダメージコントロールであっちこっち走り回っている。どういう結末になるか、興味深々。

中国の故事に「口は禍の門」というのがありますが、思わぬところでホンネが飛び出すものです。マスクが必要なのは風邪の時だけではなさそうだ。