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白人至上主義への決別 ー1月6日アメリカ議会襲撃がもたらしたもの

2022年12月06日 | アメリカ通信
大統領選敗退を不服として1月6日の議会によるバイデン新大統領正式承認手続きを妨害転覆すべし、と呼びかけたトランプ前大統領に呼応して親トランプ勢が引き起こしたアメリカ議会襲撃は、アメリカ史上前代未聞の”クーデター”である。多数の逮捕者が出る中、その中心的な役割を果たしたのが極右と言われる白人集団で、漸次裁判が進み、判決も出ているが、専門家の間では、今回の事件と裁判は、白人至上主義の決別を意味するのではないかと言われている。

アメリカの歴史の重要な側面のひとつは「人種差別との戦い」であり、それを裏返せば、「白人支配の継続」と言える。アメリカは建国以来、白人支配の特権を少しづつ手放しながらも、いかに「白人支配」を継続するかに腐心してきた。それを支えてきたのが、市民を等しく守るべき立場にある司法システムにあると言われている。アメリカの司法システムには”不文律”が永らく存在してきた。 白人極右集団が組織として明確に関与している犯罪であっても、個人の犯罪として処理し、組織には触らない、という不文律である。

1995年、160人以上の死者と600人以上の負傷者を出したオクラホマ連邦政府ビル爆破事件が起きた。国内テロ事件としては米国史上最大と記録されている(因みに9.11テロは外国人勢力による戦争テロにあたり、国内テロとは一線を画す)。司法当局はティモシー・マクべィとテリー・ニコルスを逮捕・起訴したが、2人の個人的テロとして処理し、「不文律」を踏襲して、その背後にあった”白人至上主義過激集団”への捜査には手を染めなかったのである。過去KKKやAmerican Nazi Party等が関与した事件でも同様である。

「不文律」の背景には政治勢力の影響力も見逃せない。穏健な民主党に比べ共和党は伝統的に白人極右勢力の行動に対し、極めて寛容で、これが「不文律」を支えてきたもうひとつの要因でもある。だが、1月6日のアメリカ議会襲撃事件は、”アメリカ国家そのものへの襲撃”であり、越えてはならぬ一線を越えてしまった。司法当局は初めて極右グループOath Keeperのメンバーに対する裁判で個人ではなく組織関与に言及した。「不文律」が破られるくらいの衝撃的事件だったのである。

白人至上主義への決別が漸く見える形で現れた。長い戦いの幕開けである。


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