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よし坊のあっちこっち

神出鬼没、中年オヤジ、いや、老年オヤジの何でも有りブログだ!

顔と無口で損する日本人ー発信力を高めよ

2013年10月04日 | ビジネス横丁こぼれ話
最近、TVのTALKというトーク番組で興味深いエピソードを観た。映画やテレビと同様に、ある意味で顔が商売のニュースキャスターやアナウンサー達。TALKのメンバー、Julie Chenがニュースメディアの世界でキャリアを続ける為に、悩み悩んで25歳くらいの時に目の整形をしたという。発端は、上司から、「君は中国人だから目が小さい。今後キャリアアップをしたいのなら目を整形して大きくしろ、さもなくば、これ以上のキャリアアップは無理だ」と言われたことによる。上司によると、中国人(=アジア人と考えてよい)は目が小さく、腫れぼったい一重瞼が多い。だから表情が冷淡(disinterested)でウンザリした(bored)様に見える。もっとキビキビして(alert)、表情豊か(expressive)に見えないとだめだ、と言う。要するにテレビ映りが悪いと言うのだ。

この一件は、間違いなく人種差別に属するのは間違いないが、彼女にとっては、そんなことよりも、自分でも気がつかなかったテレビ映りという点が問題だった。早速自分の過去のレポーター画面を検証してみたところ、例えば彼女がインタビューしている相手の顔の動きを見ると、一様に彼女の顔、というより目を一生懸命見ている場面が圧倒的に多かったそうである。その理由にはいろいろあるはずだが、そのひとつは、間違いなく相手が彼女の目と表情から一生懸命何かを読み取ろうとしていたのではないか、ということである。逆に言えば、このレポーター(Julie Chen)は何を考えているかよく分からない表情をしていることになる。対面している相手がそう思うならば、テレビの画面を通じて彼女を見ている不特定多数の観客も同じ思いを抱くに違いない。彼女は目の整形を決断した。

日本の諺にもある。目は口ほどに物を言い。顔の表情は目で出来上がる。顔の表情、即ち目が無言の情報を発信しているのである。とすれば、海外で暮らす一重瞼のアジア人は、その故に表情が単調であり、顔から情報を発信し難いことになる。そう考えると、ハタと思いつくことがある。「日本人は何を考えているかよく分からない」。嘗て、アメリカの現地オフィスなり現地法人で雇用されたアメリカ人の間でよく言われたことである(恐らく今でもそれはあまり変わらないだろうが)。何を考えているか分からないから、気味が悪い、と言うのだ。英語が不得手だからとコミュニケーションを積極的に取らず、顔(=目)の表情からも得たいの知れぬ気味の悪さしか伝わらない日本人。何と損な役回りを演じているのだろうかと、いささか残念である。その点、同じような顔の造作を持った中国人や韓国人は、喋りにおいては日本人を遥かに凌ぐ力を持ち合わせているから、その分得をしているのは間違いない。
国際舞台に立った時、発信力をどう高めるか。日本人の大きな課題だろう。

日系企業 3つの落とし穴

2013年09月02日 | ビジネス横丁こぼれ話
米国進出の日系企業でよく見かける現象がある。落し穴と言い換えてもよい。幾つか有るが、とりわけ3つの現象には要注意だ。残念ながら、日本から派遣される代表者の大多数は日本での経営経験も浅いか、殆ど皆無に等しく、これに異国環境と言う特殊要因が加わるから落し穴に気が付かない。そして、ある日突然不祥事が吹き出て、右往左往する。その結果のワーストケースは、適切な問題処理が出来ず、“無能”のレッテルを貼られ日本召喚となることだろう。こんな目には遭いたくない。では、注意すべき典型的な3つの現象とは何か。

その1.従業員が思う通りに働かない(又は、そう感じる)。
多くの場合、トップからの明確な目標指針が示されないことから生ずる。日本では行間を読み、一を聞いて十を知る、式のやり方が通るから、手取り足取りで指示をしないと動かない社員は直ぐ“無能”と判断され易い。しかし、米国は逆で、手取り足取りの細かい指示が重要となる。嘗て、2004年のアテネオリンピックで米国バレーボール代表チームを率いた吉田敏明がこんな事を言っている。「米国の選手は、日本では(恥ずかしくて?)聞いて来ないような事も平気で聞いてくる。ここで、そんな事までわからないのか、と見下してはいけない。手とり足取り丁寧に教え、指示することです。納得したら猪突猛進。それからの成長は早い」。示唆に富むエピソードだ。
その2.従業員が勝手なことをしている。
明確なルール設定が無いと必ず起こる。日本で言えば規定類集、こちらのEmployee Handbook(EH)である。日本から派遣された人に共通するのは、EHに対しての注目度が低く、人事案件への関わり方も非常に薄い。HRマネジャーが米人なら殆ど丸投げに近くなり、一旦タガが緩んだらモラルが下がり始める。
その3.従業員の給与が高すぎる。
スタート当初から高いと言うのではない。会社も軌道に乗り、10年位経つと綻びが出てくる。気がついてみると従業員の給与が相場以上に高くなっている。最大の要因は、最低年一回の“適切”なパフォーマンスレビューをしていないことによる。“適切な”レビューとは、数値化出来るレビュー項目を細かく設定し、客観的レビューに努めることである。これを怠ると給与はドンドン上がる。

代表者交代はひとつの節目。新任代表者はこの3つに注目すべし。

採用と経営者のトッププライオリティ

2013年06月02日 | ビジネス横丁こぼれ話
企業経営には、安定的売上(と利益)、コスト意識、人材の三者が不可欠だが、どれが最重要かは難しい議論だ。一般的には、売上が無ければ何も始まらない、として、どうしても販売に経営の力点が置かれがちとなる。不況や販売不振に陥ると、コスト意識はより強力になり、販売同様の力点が置かれ、人材に関しても、解雇やレイオフ等の人減らしに力点が置かれてしまう。景気回復までは採用の動きは鈍化し、いつの間にか重要度が下がる。

この“採用”に関して、人材サイト最大手のCareerBuilderが世界の十大経済大国(米、英、仏、独、日、伊、露、中、印、伯)を対象に“Bad Hire”によるコスト増を調査したのだが、採用の難しさと共に、採用への手抜きは大きなロスをも生む。

1. Bad Hireによる余計なコスト
欧米の約三割の企業が年間一人当り5万ドル以上、インドで37千ドル、中国では、企業の半分が48千ドル以上の余計なコストを強いられている。採用を一人間違えると、新人で二人、中堅で一人余分な採用をしたに等しく、大きな負担だが、売上の数字や製造コストと異なり、毎月目に触れにくいので見逃されてしまう。
2. 国別Bad Hire率(Bad Hireが有ったと報告した企業)
伯、露、印、中の所謂BRIC諸国が80%台で、発展著しい分、採用も荒っぽいと言える。次が60%台の米、英、伊である。品質に拘りのある日独が58-59%と同じような傾向を示している。
3. Bad Hireによる影響
BRIC諸国の40%以上の企業が生産性低下の影響を受けており、特に中国は57%と最も高い。米、伊が30%台で、日本は28%であった。
周囲のモラルの低下では、日、独、米、中が30%台と高いグループを形成。
Bad Hireの影響(穴埋め)で生じた追加採用や臨時トレーニングのコスト増
では、BRIC諸国の30%以上の企業から報告があり、これに米国が加わっている。日本は10カ国中の最下位、11%であった。米国が高いのは、労働市場の雇用流動性が高いからであろうし、日本が低いのは、日本独特の雇用形態(年一回の一括採用を基本とし、終身雇用型を維持)がもたらすマルチタスク人材の育成と機能的配置転換(転勤を含む)がビルトインされている為ではないだろうか。

独特の雇用システムに慣れた日系企業が世界で戦う為には、人材確保の為の“採用”という局面で相当な努力と工夫が必要となるだろう。採用の手抜きはコストに跳ね返る。

解雇規制緩和の動きと日本の経営者

2013年05月01日 | ビジネス横丁こぼれ話
少子化による労働力供給の将来的不安定さを解消する一環として「改正高齢者雇用法」が施行された。その一方で、労働市場に大きな影響を与える問題が争点となりかけたが、諸般の事情、というよりは専ら政治的理由で議論棚上げとなった。「解雇規制の緩和」である。

「解雇規制の緩和」とは、従来の雇用維持型から労働移動型の市場への変革を促す為に会社側の従業員解雇をし易くし、その代わりに解雇従業員には、いくばくかの金銭を支給し雇用関係を終了させるもの。雇用維持型とは、日本企業の典型とされる終身雇用形態であり、労働移動型とは、米国に見られるように、会社側の解雇も比較的簡単に出来、従業員側から見れば、転職が簡単且つ当たり前に出来る、労働流動性の極めて高い形態と言えよう。日本もそれを目指す積もりだろうが、簡単ではない。むしろ、現状ではリスキーだ。

米国労働市場は、ご存知のように、経営が悪化すれば帳尻を合わす為にレイオフや、ポジションを廃止して簡単に解雇する。逆に人材が必要となればその都度募集する。それも結構頻繁にやるから年間を通じて常に採用しているようなものだ。だから従業員も仕事に不都合を感じたらさっさと辞めて他に移る。米国ではこのシステムが円滑に機能している。

日本もこのような労働移動型に移行したいのだろうが、伝統的な終身雇用制度が築いてきた社会・会社システムは、“転職”に対しネガティブなイメージを造成してきた。この独特の土壌が破壊されない限り、労働移動型への移行は困難を極める。その前に会社や経営者が示さなければならない覚悟が二つある。会社が提示すべき証拠と言い換えても良い。

その1。会社は転職組の採用比率を意識的に高め、実績として、それを証明する必要がある。その過程で、産業界全体が「新卒」とか「中途採用」等の言葉使いを廃止し、所謂「中途採用」の募集では、年齢制限表示を差別として法的規制を掛けるべきである。
その2。人事部機能を相当強化しないと労働移動型への移行は難しい。極端な言い方をすれば、今の日本企業の人事部は採用に関しては春の新卒採用がビッグイベントであり、それさえ無難にこなせば良い。所謂「中途採用」は片隅にある。こんな楽なことはない。又、前述したように、中途採用の年齢制限がまかり通る現状では、差別の認識が無い。更に、ハラスメントに対しては、欧米とは比較にならぬ程寛容且つ鈍感である。米国並のHRマネジメントが求められる。

以上に対する覚悟が産業界にあるだろうか。ここから始めなければならない。

携帯機器の普及で仕事の生産性は上がったか

2013年04月07日 | ビジネス横丁こぼれ話
IPhoneに代表される携帯機器のめまぐるしい変化と進化によって、人々はおおいにその利便性を謳歌しているようにも見えるが、一方で、果たしてそうだろうかという疑問も湧く。機器を使いこなし、利用しているようで、実は無理やり使わされているのではないか。
ビジネスシーンでも、Eメールやテキストメッセージ等の情報伝達手段として、その普及は凄まじく、その効用として、あらゆる面での生産効率が飛躍的に向上した、と誰もが信じて疑わない。しかし、最近いくつかの調査結果が公表され、ある専門家は今後の方向性を考える重要な転換期にさしかかっていると警告を発している。

大きく二つの問題が提起されている。まず、職場の生産効率が殆ど上がっていないという事実。更に、今後増えるであろう訴訟に対し、企業のトップが鈍感であるという現状。

第一の問題点。今や仕事でEメールやテキストメッセージは当たり前だが、これが大いに人々の労働生産性を阻害しているらしい。人的資源の効率化に詳しいApex Performance社が実施した300人の調査結果、70%が毎日21件以上のメールを受信、半数以上の人が最低11回メールをチェックし、30%の人は、メール受信の通知の度にメールを開けてチェックするという。これは、20分に一回はメールを開けてチェックしている勘定なると言う。又、マイクロソフト社の社内調査によると、Eメールやテキストメッセージを受信したために、やりかけの仕事を中断し、メールをチェック後に本来の仕事に戻る時間は早くて15分要したとのこと。これらを総合すると、一時間に仕事に集中しているのはたったの15分に過ぎず、ひとつの仕事を集中してやるには、Eメールやテキストメッセージの存在がかえって邪魔をしているという皮肉な結果を指摘している。

第二の問題は、携帯機器で人々は“Always Connected”状態となり、就業時間外でも否応なしに仕事のメッセージが入り、就業時間の境目が破壊されてしまった。その結果、多くの人が、就業時間外でも仕事に“Involve”されている。問題は、FLSA(米国公正労働基準法)で定めた残業手当の支給不払いである。多くの企業が無知か、見て見ない振りを決め込んでいるのが実情で、全米でも携帯機器の使用に関するPolicyを備えているのは5分の1に過ぎないと言う。米国企業がこの実態だから、日系企業を推して知るべしだろう。
最近、デトロイトで携帯機器と残業に関する訴訟があり、当然のことながら訴訟を起こした労働者が勝訴した。

今後共、携帯機器との付き合いからは逃れられない以上、企業が知恵を絞らねばならない。

アメリカが再び輝く日

2013年03月01日 | ビジネス横丁こぼれ話
戦後の東西冷戦下で、米国は強国ソ連と対峙しながら、世界経済をリードしてきた。当時、我々が”グローバリゼーション“の言葉さえ認識していなかった時代に、米国は既にそのスキームに着手し、軽工業品を皮切りに低賃金国で作らせ購入するオフショア・ビジネスを展開・拡大していった。その結果、まず日本が浮揚し、その後、東南アジア諸国がこれに続く。実は、このオフショア・ビジネスの拡大は、安価品を手に入れる代償に国内産業を空洞化させる”両刃の剣“でもある。この空洞化は、世界経済における米国の相対的国力低下をもたらした。危機感を募らせた米国は、国力低下に歯止めを掛ける為にサービス産業主体の国へ活路を見出し、変貌していかざるを得なかった。国力が低下したとは言え、今でも米国がNo.1であることに変わりはないのだが、それで満足する国ではない。突出して強くなければならないと考えている国である。その米国に再びチャンスが訪れようとしている。

世界経済の拡大、とりわけ中国の膨張と、今後予見されるインドの加速で何が懸念されるか。それは、エネルギー問題である。安定的かつ低コストエネルギーの確保は経済活動に直結し、国力を左右する。今日までの米国の繁栄は正にこの点にある。ロシアが欧州に一定の影響力を行使しているのも石油のお陰だ。日本が真珠湾攻撃で開戦し、遠くインドシナまで南下して行ったのは、石油を絶たれた事による。エネルギーの確保は国の死活問題なのだ。

この10年の石油エネルギーコストの上昇と高値止まりによる更なるオフショア・ビジネスの加速は、米国の危機感を一層募らせた。それが頁岩(シェール)資源開発に注力させ、花開こうとしている。今後数年で米国の石油産油量はロシアを抜き、2025年頃にはアラブを抜いて世界最大になるという。

時あたかも、中国の人件費高騰により、進出産業の米国回帰が始まった。2012年の雇用動向では、石油ガス掘削事業が29%増加したのは頷けるとして、鉄鋼業関連の雇用が18%も増加している。又、シェールオイルの将来性を見込んで、海外から米国への企業進出が活発化し、新たな雇用創造が始まった。

米国は、経済主体のサービス産業を進化させながら、嘗て国家経済を担っていた製造業を中心とした第二次産業に再び陽の目を当てようとしている。

見て見ぬ振りは塀の中 (Don't Turn Your Blind Eye)

2013年02月18日 | ビジネス横丁こぼれ話
厄介なことに巻き込まれたくないから“見て見ぬ振り”をする。よくある事だが、そのツケの大きさを後から知る。それで人生を台無しにするのがアメリカ。甘い日本では考えにくい事だが、文化的社会的な違いがそうしている。端的に言うと、日米間でルールの厳しさに雲泥の差があるということだ。この国では「見て見ぬ振り」は許されない。不正や事件の現場では刑事罰の対象だから、日本人のように能天気に構えているとアッと言う間に転落する。そんな厳しい国に住むアメリカ人でも、いざとなったら見て見ぬ振りをしてしまう。そこが人間の悲しさだ。輝かしい人生の勲章をもぎ取られ、塀の中に消えていく。

そのお手本の様な事件が、一昨年全米のスポーツ界を揺るがした“サンダスキー事件”である。著名なアメフトのコーチ(日本でば監督)を擁していたペン・ステート大学のアメフトチームのアシスタント・コーチが長きに渡って少年達に対し、性的暴行を働いていたことが発覚した事件で、まだ記憶に新しい。事件というのは、発生当初はなかなか全貌が見えないが、その後の裁判の進捗によって事実が明るみに出て、真相に近づいていく。この事件も捜査が進むにつれて、新しい事実が次々と明らかになり、“見て見ぬ振り”をした為に受けた大きなダメージに皆ショックを隠せないでいる。

まず、全米アメフト史上“最高のコーチ”と賞賛されていたジョー・パテルノの輝かしい公式記録は剥奪となった。モレステーションという犯罪行為の報告を受けていながら、何らアクションを取らず“見て見ぬ振り”をした為である。彼は、事件のあと、病気が顕在し、あっという間にこの世を去った。余程ショックが大きかったのだろう。しかし、生きていたらもっと辛い日々が続いたはずだ。もう一人、当初は無傷かと思われた大学の学長。幹部達とのEメール交信で報告を受けていた事が発覚。“見て見ぬ振り”をして起訴された。

全米大学体育協会は、不祥事を起こした大学そのものにも厳しい制裁を下した。まず、罰金6000万ドル。約48億円である。これはペン・ステート大学のアメフトの年間収入に匹敵する。更に4年間の試合禁止。最後に各種スポーツの奨学金カット。当初はアメフトチーム解体も論議されたが、それだけは免れた。しかし、“真綿でじっくり絞める死刑“みたいなものだと評されているように、将来的存続が危ぶまれている。この他にも、性的暴行を受けた被害者からの集団訴訟を控えており、金銭的な問題だけでなく、失墜した大学イメージを回復させるのは至難の業のようである。

Don’t turn your blind eye. いかなる組織の責任者もすべからく肝に命ずべき事の様だ。

会社不祥事と3D

2012年09月03日 | ビジネス横丁こぼれ話
企業や組織の不祥事に必ずつきまとう3Dというのがあるという。Deny(否定) Delay(先送り) Defend(防御)である。

人間、不正やよからぬ事に手を染め、それが発覚した時に、その殆どが3Dから逃れられないらしい。当面の“災難?”から逃れる為に、まず“そのような事実は無い”或いは“私は関係ない”とDenyしてダンマリを決め込み、あわよくば逃げ切ろうとする。この最も典型的な例が、大きな事件に発展した、イジメによる大津市の中学生自殺事件である。学校側や市教育委員会は、「調査したが、その様な事実は無かった」と、まずDenyして見せた。ところが隠蔽が明るみに出ると慌てふためき、教育委員長が襲われる事態にまで発展してしまった。Denyから始まった重いツケである。大津市に限らず、日本の教育委員会を頂点とする学校組織は昔からこの体質が一向に変わらないから、またどこかで起こる。

次にDelayだが、Denyの後に時間稼ぎをする為の証拠隠滅や巧妙な調査妨害を行い、その間に様々な辻褄合わせをやる。これは隠蔽工作であり、Delayは多くの場合、この隠蔽工作に直結している。この典型が、不正経理における資料改ざんであろう。辻褄が合うように数字を操作するわけだが、操作の過程で必ず“架空”が介在してしまう。この“介在”を見つけられたらひとたまりも無い。糸を解す様に一つ一つの取引の貸借を辿って行けば、どこかで必ず不整合に突き当たる。そこで万事休すだ。

最後がDefend、即ち自己防衛である。言葉を変えれば“責任逃れ”“責任転嫁”である。イジメを見たり、認識していながら“私は見ていなかった”“私は知らなかった”と臆面もなく言う先生。企業不祥事の場合に必ず出てくる科白で、“それは部下が勝手にやった事で、私は関知していない”。こうして何とか自分に手が及ばないようDefendしようと躍起になる。しかし、大方の場合は、そんな努力も水の泡で、調査が進み不正や関与が暴かれる。

さて、一般の企業戦士が組織の不祥事に関ったときどうするかは大変悩ましい問題だ。もし、積極的に関与するのであれば、関与する前から“塀の中”を腹括るしかあるまいが、“塀の中”が分かっていて最初から関与するお人好しもおるまい。問題は、気がついたら自分が渦中に居ると分かった時だ。正面から不正の告発をやるか、それともWhistle Browerとして内部告発するか。よく告発してくれたとして感謝される事もあろうが、人間関係がギクシャクして結局会社を去ることになる場合も多いと聞く。最近の大きな事件の例では、某光学メーカーの英国人社長のウッドフォード氏のケースが記憶に新しい。この会社にとっては大恩人であるはずだが、日本人幹部は社長を解任してしまった。“正義の味方”がこんな憂き目に遭うのが企業社会だ。このリスクに個人として耐えていけるか否かである。3Dに真正面から向き合うには相当な勇気と腹括りが要る。

”職人技の国ニッポン”で良いのか

2012年08月17日 | ビジネス横丁こぼれ話
日本は世界の中で、職人技にこだわる稀な国だ。戦後の粗悪品乱造国の汚名を返上すべく、精度の高い優れ物作りに邁進した結果、世界でも群を抜いた“技術の国”の栄誉を勝ち取った。ここで言う“職人技”とか“技術“とは専らメカニカルな領域を指す。かくて、最高品質の代名詞となった「メイド・イン・ジャパン」を掲げた国産ブランドが世界中を席巻して行く。しかし、この数十年のエレクトロニクスの飛躍的発展は世界に大変革をもたらし、その分野ではサムスンが天下を握った。そして嘗ての危惧、”自動車でのエレクトロニクス領域の増大は日本の品質優位性を脅かす存在になる“が今現実になりつつある。

そうした状況の中でも、“日本の物作りの精神と技量は他の追随をゆるさない。高品質を作れば客は必ずついてくる。”と言う考えは根強いが、果たしてその認識は“今”に適合しているだろうか。疑問符がつく。技術格差は格段に縮まっており、“他の追随をゆるさない”と言い切るにはいささか迫力が欠ける。後段は“高品質を作れば”一部の”客はついてくる“と言い直すべきかもしれない。

高品質を作れば皆ついて来ると考えて良いのは日本国内だけだろう。何しろ日本人は世界でも類を見ないくらい“物にこだわる”国民だから。“物“には工業製品だけでなく食べ物も入る。世界一うるさいグルメ民族でもあるのだ。だから海外から日本市場に押し寄せても、なかなか勝てない。日米貿易戦争真っ只中の折、アメリカはさかんに日本の貿易閉鎖制度を攻撃し、障壁制度の緩和・撤廃に持ち込んだ迄は良かったが、いざ進出してみると一向に売れない事に愕然としたはずだ。日本人のこだわり性向までは理解出来なかった。日本国内限定の戦いなら簡単には負けないが、事は世界市場の話である。世界で戦う時、今の日本は途端に弱くなる。何かが問題であり、そして何かが足りない。

まずは、技術偏重神話からの脱出であろう。車の両輪に例えるならば、もう一方の車にあたる経営マーケティング力があまりにも貧弱で、この強化なくして世界に太刀打ちは出来ない。強化のポイントはふたつ。まず外国語を駆使し、発信力のある人材の確保が急務。もうひとつは、意思決定のスピードだろう。躍進する韓国中国を見れば一目瞭然である。これは日本的経営手法と経営者資質の問題にも大きく関わってくる重要な問題だ。ここを何とかしないと、日本の再生は難しいのではないか。

ルール主義のアメリカ、その極端な一面

2012年07月05日 | ビジネス横丁こぼれ話
今週の月曜日にフロリダで起こった事件が全国の衆目を集めている。

事の起こりは、フロリダのハランデール・ビーチという所で人が溺れかける事件が起こった。その時、ビーチの一角を安全警備で雇われた会社の救助員の一人が持ち場を離れて救助に向かった。幸いにして、溺れかけた人は病院に運ばれ一命を取り止めた。この救助員は事件の後、持ち場を離れたという理由で即日解雇されたのだ。

日本ではなかなか起こりにくい解雇の例であろう。ルール主義アメリカで起こりうる極端な一例かもしれない。我々日本人には理解し難いことだが、当のアメリカ人でも多くの人はやり過ぎと思っている。

解雇理由は契約にある「安全警備範囲を逸脱」したためとある。日本でも、ルールを逸脱した場合、何らかの処分をするとして、人命に関わる緊急事態での行動故、せいぜい「注意」くらいが適当であろう。とても「解雇」までいくような話ではあるまい。しかし、アメリカでは、こう言う事が起りがちである。

この解雇の後、会社の同僚数人が辞表を叩きつけて辞めたという話だ。彼らにとっては、この会社は「良い会社」ではないと、三行半を突きつけた訳である。ニュースが全国区になり、周辺が騒ぎ始めた為、この会社は”えらいこっちゃ”と汚名挽回すべく、よく調査して会社に誤りがあれば即刻正すし、辞めた人達に職場の再オファーをしたいと言い出している。しかし、それではもう遅いのだ。恐らく彼らは戻らない。会社の不誠実さだとか、よからぬ体質が見えたらアメリカ人は寄り付かない。

不祥事があると、確実に人材が流出していくのがアメリカである。だからアメリカのマネジメントは大変である。その点、日本では辞めても直ぐ転職出来る構造ではないから、簡単に人材流出には繋がらない。ここに日本の経営者が”高をくくる”背景がある。