『バイス』(2018米製作 日本公開2019 監督アダム・マッケイ 原題:Vice直訳:「副」又は「悪」)
その人となりが、一般にはあまり知られていない、元アメリカ合衆国副大統領ディック・チェイニーの伝記作品(まだ存命中ですが)。取り扱う題材もさることながら、彼を演じたクリスチャン・ベールの役作りが気になって、平成最後の観賞作品として、この作品を選びました。
=====以下、あらすじ=====
1963年、イェール大学を中退したディック・チェイニーは、後の妻となるガールフレンドのリンに促され、政界へと足を進める。政界では、剛腕ラムズフェルドの元で、政治を学んでいく。
そして、彼は大統領首席補佐官、国防長官を経て、ついに副大統領の座に就く。米国史上、最も権力を握った副大統領といわれる彼は、米国を9・11後のイラク戦争へと導いていく。
=====以下、感想=====
物語は伝記作品らしく、事実を淡々と描いている(多少の脚色はあるにせよ)。
その中で、はっきりわかったのはチェイニーが冷血である点だ。元々、口数が少なく、演説も下手な彼は、ボソボソと話し、とても政治家に向いているとは思えないが、テロの加害対象者を躊躇うことなく、拉致を指示するシーンには薄ら寒さを感じる。しかも、そういった行動の一つひとつには必ず法的な裏付けを怠らない。要するに、対象の本体を攻めながら、外堀も埋めている。その風貌からは想像できない、実に狡猾で繊細な動きだ。
しかし、民主党政権の誕生に伴い、彼は下野することになる。その中でも、彼は民間企業のCEOに就任するなど、転んでもただでは起きない。それも、彼とは対照的な妻リンの功績が大きい。しかし、リンの内助の功は、そこまで大きく描かれない。もっと、大きな役割を果たしているはずなのだが。末娘の問題が政治生命の命取りになりそうな時も先回りをして、危機を回避する辺りは流石の一言。
若かりし頃は単なる酒好きの男が、権謀術数を駆使する様は「人間はここまで変わるものか」と、逆にすがすがしささえ感じる。
その静かなる権力欲に裏打ちされた上昇志向のチェイニーを、体格まで変えたクリスチャン・ベールが熱演。その外見からか、時に滑稽ですらある姿は見事。
前述したように、しっかりものの妻リンをエイミー・アダムスが演じているのだが、この作品のキープレイヤーであるのだから、もう少し存在感を出しても良かったのではないだろうか。
スティーブ・カレル、サム・ロックウェルなどが脇を固めて、安定感を醸し出しているので、なおさら惜しい。
なかなか良い役者を揃えているのだが、作品全体としては、高度な政治的駆け引きによる心理描写などは特に描かれていないため、この作品は2点(0.5点の刻みナシの5段階評価)とした。
(下の画像左の左は実物のチェイニー、右は役作りのために体重を40ポンド(約18㎏)増量、眉毛などを脱色したベール【情報元ウィキペディア他】。画像右はバットマンを演じていた時のベール)
画像出典左:「バイス」で20キロ増量のクリスチャン・ベール、ゲイリー・オールドマンに役作り相談していた!元画像(C)2018 ANNAPURNA PICTURES, LLC.All rights reserved. https://eiga.com/news/20190130/13/ (閲覧2019/5/5) 画像出典右:テーマ:映画鑑賞、バイスのクリスチャン・ベールhttps://ameblo.jp/getogeto/entry-12443891062.html (閲覧2019/5/5)
(下の画像左の左にチェイニー役のベール、右に大統領J.W.ブッシュ役のサム・ロックウェルの相談場面。画像右の左はチェイニーを支える実物の妻リン、右はそのリン役エイミー・アダムス、そっくりですね。内容は「全部ホント」と公式サイト)
画像出典左:映画の時間、バイス 作品情報“影の大統領”と言われたチェイニーの素顔https://movie.jorudan.co.jp/cinema/36949/ (閲覧2019/5/5) 画像出典右:エイミー・アダムスも激似!? 夫を副大統領に押し上げた妻を熱演!『バイス』https://www.cinemacafe.net/article/2019/02/11/60203.html (閲覧2019/5/5)
以上S.Zでした。