『運び屋』(2018米、監督クリント・イーストウッド、原題:The Mule 直訳:ラバ(荷物運搬用家畜))
イーストウッド、最後の監督、主演作品になるのではないかと噂されている作品を観てきました。
=====あらすじ=====
家庭を顧みず、事業に没頭し、富も名声も手に入れていた主人公アールが、時代の波に飲み込まれ、事業に失敗してしまう。孫の結婚式において、列席者の一人から「モノを運ぶだけで、大金が稼げる」との誘いを受けたアールは、初め拒否していたが、ふとしたきっかけで受けることにした。当初、中身に興味が無かったアールだが、あることで中身(麻薬)を知ってしまう。何度も運び屋を重ねるうちに、アールはその感覚すらも麻痺していく。捜査の手が迫るアールは最後に、贖罪を果たそうとする。
=====感想=====
主人公アールは、もっと戸惑いや葛藤があっても良かったのではないだろうか。日本人からすると、犯罪に加担するという重大なことをサラッと流せる感情はなかなか移入をしにくいと思う。そこはもっと時間を使って良い場所だったと思う。
その他、この稼業をしていく上で、恩恵ともいえる艶っぽいシーンもあるが、主人公の年齢を考えると、少し現実的ではないように感じた。反面、自ら招いたとはいえ、不器用な老人が直面する家族との関係は実にわかりやすく、共感を呼びやすい。運び屋稼業を犠牲にしてまでの彼の行動は、家族を大切にするWASP(白人アングロサクソン・プロテスタント)本来の姿といえる。その一端は黒人一家への台詞にも垣間見られる。その場面は必要だったのか、最後まで気になった。
おそらく高評価を受けるであろうこの作品だが、他のイーストウッド監督作品と比較して、5点満点の2点(0.5点の刻みナシの5段階評価)とした。脇にブラッドリー・クーパーやアンディ・ガルシアなどを配置しているが、少々贅沢か。それよりも、アールの心の中をもう少し丁寧に描いて欲しかった。それも含めて、全体的にストーリをもう少し練ることが出来たのではないかと思い、この採点にした。
(下の画像左は事業に失敗し自宅が差し押さえられた看板(黄色)を見て振り返った主人公アール(C.イーストウッド)。画像中左は運搬の報酬を数えているアール。画像中右は麻薬捜査官の張り込みの場面、向こう側に麻薬捜査官役のブラッドリー・クーパー、手前はマイケル・ペーニャがいる。画像右は麻薬組織ボス役のアンディ・ガルシア)
画像出典左:Real Sound映画部イーストウッドが描く前代未聞の実話! 宇野維正がこの春必見の『運び屋』をレビューhttps://realsound.jp/movie/2019/02/post-319135.html (閲覧2019/3/23) 画像出典中左:cinefil 88歳クリント・イーストウッドが麻薬の運び屋に?!監督そして久々に主演の新作を発表!『The Mule』海外予告が公開!http://cinefil.tokyo/_ct/17211553 (閲覧2019/3/23) 画像出典中右:映画ナタリー ブラッドリー・クーパー演じる捜査官が麻薬組織員にラテ渡す「運び屋」本編映像 https://natalie.mu/eiga/news/324718 (閲覧2019/3/23) 画像出典右:トーキョー女子映画部イイ男Selectionアンディ・ガルシア『運び屋』https://www.tst-movie.jp/selemen/selemen_a_Andy_Garcia.html (閲覧2019/3/23)
以上S.Zでした。