横浜映画サークル

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映画『凶悪』残虐性は「人間が持つ普遍的な暗部」と描く。だが最新科学は先天的障害であるとする(その3)

2014-03-31 19:28:45 | 映画凶悪・戦争のサイコパス残虐性シリーズ

(その2)の続き。

1.11 サイコパスの統計的特徴

(1)サイコパスの割合

下記表の通りである。この表は日本にも当てはまると考えられる。サイコパスの犯罪調査が進みデータが蓄積されればより正確な数値になるが、今のところの目安である。

 

反社会性人格障害の人口に占める割合*1

サイコパスの人口に占める割合*2

3%

0.6%(0.45~0.75%)

1%

0.2%(0.15~0.25%)

合計

2%

0.4%

*1:アメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ)による(J.ブレアp24)。

*2:J.ブレアp25:米国の刑務所収容者の反社会性人格障害の15~25%がサイコパスの基準を満たす。反社会性人格障害、男3%×0.15~0.25=0.45~0.75平均0.6%、女1%×0.15~0.25=0.15~0.25平均0.2%。日経サイエンス、K.A.キールp13では反社会性人格障害のうち20%がサイコパス。よって男3%×0.2=0.6%、女1%×0.2=0.2%。J.ブレアは大きいほうの値を取り男0.75%としているが、この表ではJ.ブレアとK.A.キールの値が同じになる男平均値0.6%としている。

M.スタウト(Martha Stout)は『良心を持たない人たち』(The Sociopath Next Door)(2006年、草思社)の中で同じ情報源のアメリカ精神医学会の精神障害の診断・統計マニュアル第4版(DSM-Ⅳ)を使い、男女を分けずに人口の約4%が反社会性人格障害としている(M.スタウトp15、p135)。おそらく、男3%と女1%を足して、合計4%と誤った計算をしたのではないかと思われる。合計は平均して2%が正しい。また、反社会性人格障害をそのままサイコパスとしている。これはアメリカ精神医学会のDSM-Ⅳが反社会性人格障害とサイコパスを分けていないため生じた誤りではないかと思われる。そのため4%25人に1人という恐怖」というセンセーショナルな副題の誤りとなっている。上記表から分かるように、反社会性人格障害傾向者は2%、50人に1人。サイコパス傾向者は0.4%、250人に1である。映画『凶悪』にはこのような現実把握の視点は皆無で、逆に主要人物全員がサイコパス特性を持つと描き出している。

(2)日本の『犯罪白書』からの反社会性人格障害者割合の推定:結果は米国と同様

刑法犯(殺人 強盗 放火 強姦)と道路交通法違反を除いた特別法犯(覚せい剤・麻薬、銃刀法、売春など)の合計を人口で割った犯罪率に80%を掛けて算出した。この80%は米国の刑務所収容者の反社会性人格障害割合80%(J.ブレアp25)を流用した。上記表の反社会性人格障害2%に近い値になり、上記表は日本にも当てはめることができると考えられる。

 

刑法犯

特別法犯

人口

犯罪率

反社会性人格障害者

2002年(多い年)

3,693,928人

94,020人

127,486,000人

3.0%

2.4%

2011年(少ない年)

2,139,725人

100,582人

127,799,000人

1.8%

1.4%

日本人は他の国の人より犯罪を行わないと思われがちであるが、自転車の窃盗は世界一で、自転車大国のオランダが2番目である。オランダより約17%程度多い(2011 年度日本犯罪社会学会主催 第 8 回公開シンポジウム 成果報告書p22、1995~99年の5年間で盗まれた経験のある人は日本約27%、オランダ約23%。5年間で4人に1人は自転車を盗まれる。http://hansha.daishodai.ac.jp/meeting/08_symp_seika.pdf(2014.2/28閲覧))。銃器や薬物の入手易さや、経済的環境などの条件の違いのために凶悪犯罪数や犯罪率の違いが生じているので、日本人という人種が特別に犯罪を行わないという特性を持っているわけではない。尚、『犯罪白書』の統計は国民が犯罪に対する対処を考えるための国民へのデータの提供というより、政府の治安政策の正当性をアピール宣伝という面が強いように感じる。

1.12 ごみのリサイクルの非協力者割合は反社会性人格障害割合に近似する。

私は、ごみのリサイクルプラントを設計する仕事をしたが、住民にリサイクルの分別協力のアンケートを取ると、およそ95(92~96)%程度の人は積極的に協力すると言い。実際に協力してくれる。3%程度はリサイクルの対応が良く分からない人や引っ越してきた人や日本語が読めない外国人などで協力の意思があっても困難な人である。残りの2%程度の人は協力しないと言うか、アンケートにも協力的ではない人である。実際にプラスチック容器包装の回収では、重量比で4%程度のフライパンや包丁などの異物が混入する。この異物混入割合は、どの自治体でもほとんど変わらない。設計は協力が困難な3%や協力を拒否する2%の合計5%の人が混入する異物を考慮したプラントシステムの強靭さが必要になる。プラントの建設・運営費用の少なくても1割程度は選別機器や火災、防爆対策など、この合計5%の人たちの行動の対策費用として余分に掛かる。もし10億円のプラントであれば1億円程度は余分に掛かる。わずか5%の人の非協力により税金が余分に使われる。だがこの対策により、95%の圧倒的多数の人たちの協力が無駄にならず有効に働く。サイコパスを含む反社会性人格障害の対策においても、若干費用や労力が掛かったとしても、しっかりした対策をすることによって、健常者の生活が健全に維持できると考える。すなわちサイコパスを含む反社会性人格障害を的確にコントロールできるような社会構造を作って初めて、健常者がはつらつと生活できる。これはサイコパスを含む社会性人格障害の人も根源的には望んでいることであろう。現状は、政府によるサイコパスや反社会性人格障害の実態把握さえ行われていないが、医療機器などの発達で把握の可能性が開けてきている。

リサイクルに協力を拒否する人2%は、反社会性人格障害の割合2%と同ような数値になるのは、共通点があるように思う。

1.13 サイコパスの高い再犯率と暴力性割合

サイコパスはそうでない犯罪者と比較し強い暴力性高い再犯率を示す。サイコパスは相手が痛いということを共感しないので、相手に対し手加減をしない、底知れない凶暴性を示す。また前項で示したとおり罰から行動を是正することができない脳の障害があるので、再犯率が高くなる。下記表はJ.ブレア『サイコパス』p20、p21の内容を私が表にまとめたものである。目安としてサイコパスとそうでない犯罪者との比較は、再犯率3倍暴力的再犯率4倍が妥当なところであろう。サイコパス再犯のすべてが暴力的であるというわけではなく、その4割程度である。再犯のうち情動障害の面が強い再犯は、そうでないものより約1.5倍の再犯率の上昇を示している。すなわち、「K・B症候群」に見られるような扁桃体機能不全から生じる情動障害は再犯性が高い

データの概要

サイコパスとそうでない犯罪者と比較した再犯率

サイコパスとそうでない犯罪者と比較した再犯内容が暴力的である割合、暴力的再犯率

最も知られる総合分析ヘムフィル(J.M.Hemphill)ら1998年

3

4

暴力的件数は3×4=12倍になる。

国際研究、犯罪者278人調査、2000年

サイコパス傾向強い÷(傾向弱い+そうでない者)=2.1倍

サイコパス:再犯の38%が暴力的 27倍

そうでない者:再犯の2.7%が暴力的

刑務所釈放231人、3年追跡調査、1988年

3.2倍

犯罪者299人、3年追跡調査、1995年

2.6倍

スエーデン、触法患者(法律違反の精神障害者)

3.7倍

ベルギー、2000年

サイコパス傾向強い:4.0倍

サイコパス傾向弱い:1.9倍

1.14 サイコパスは犯罪者更生プログラムの集団療法が逆効果で再犯率は上昇する。

犯罪者を更生するプログラム(教育プログラムや職業訓練プログラム)に参加した場合、サイコパスでない犯罪者は再犯率が低下するのに対し、サイコパスは再犯率が高くなる(Jブレアp21)。これは、更生プログラムに、犯罪者同士などで交流し、共感を醸成しようという集団療法があるが、サイコパスは、共感を醸成することが無く、他者との交流を他者の弱点を見抜く場として利用し、さらに狡猾に犯罪をすると考えられている。サイコパスに対し「他者が自分の心の中を赤裸々に語るのに耳を傾けさせるのは明らかに良い戦略でない(日経サイエンス、K.A.キールp12)。」この事実が分かって以後、米国などではサイコパスに対してはこのような集団療法更生プログラムを適用しないようにしている。1対1の精神治療などで対処している。

1.15 サイコパスの年齢や社会的経済的地位などとの関係

サイコパスは反社会性人格障害情動障害の2面を持っている。この2面が異なる特性を持つ。以下諸特性をこの2面から見る。

(1)サイコパスと年齢の関係

反社会性人格障害の面の犯罪率は下記表の通り17歳前後で最大になり、以後年齢と共に減少する。これは、サイコパスでない反社会性人格障害者と同様の傾向である。この犯罪と年齢との関係は日本を含め、西欧諸国全般でほぼ同じ傾向を示す(J.ブレアp29)。

表の出典:J.ブレアp29の表を筆者がコピーしたもの。

情動障害の面は原則的には年齢に関係せず不変(Jブレアp30)。①②を一体的に見れば、中年期になり、反社会性人格障害の面が減衰し、サイコパスとしての犯罪特性が消滅する場合がある。M.ストーンは8歳で犬やネコを絞め殺し、監獄や矯正施設を出たり入ったりし、7人殺せば息子が生き返ると信じて、3人を殺害し逮捕され、監獄でも強暴だった典型的なサイコパスのマカファティ(Archibald McCafferty)が、刑期を終え60歳となった時に面接している。「率直さ誠実さを持ち、自分自身を見つめることができる能力に感銘し」「邪悪さは必ずしも一生のものとは限らないことを、この目で確かめられて本当に良かったと思う(M.ストーンp123)。」と述べている。私はこのマカファティが一時期自ら進んで精神病院へ入っていることに注目したい。自分の精神がおかしいということを、自分で把握できたということである。自分自身を見つめる能力が残っている場合は、中年期には健常者に近づくことができるのではないかと思う。サイコパスの残虐性に目を奪われて、死刑に処するという単純な対応でなく、サイコパスの病気の原因と回復状況を把握する科学的アプローチの確立が必要であることを示す例。これが未確立の現時点では圧倒的多数のサイコパスは中年期に入ったとしても矯正不能と捉えておくべきであろう。7歳や5歳の少年を誘拐し、虐待を繰り返したK.パーネル(Kenneth Parnell)は釈放後、71歳で再び児童への性的虐待で逮捕(M.ストーンp161)され、高齢になってもサイコパス特性は改善していない。

(2)サイコパスと社会的経済的地位の関係

反社会性人格障害の面の犯罪率は、社会的経済的地位が低いと増え、高いと減る傾向。情動障害の面は、失業しているか高度な専門職についているかなどの社会的経済的地位に関係しない(Jブレアp31)。

(3)サイコパスと知能指数(IQ)、教育状況の関係

扁桃体と関連する脳部位が損傷しているが、記憶や論理思考の部位は正常なので、IQや学習能力は健常者と変わらない。「サイコパスは平均以上の知能を有している」という都市伝説の証拠は全くない(Jブレアp31)。

反社会性人格障害の面の犯罪率は、IQや教育状況が悪いと増え、高いと減る傾向。これはサイコパスでない犯罪者と同様。情動障害の面はIQや教育状況に関係しない(Jブレアp32)。

(3)サイコパスと性別の関係

反社会性人格障害の面の犯罪率は、男性が高く、女性は低い。情動障害の面は男女に関係しない。冷淡で情動の欠如を示す情動障害の有病率は男女で差が無いと考えられている(Jブレアp26)。犯罪として表面化するときは反社会的人格障害と一体となっているので、サイコパスの犯罪率としては男性が高くなる。女性のサイコパスのラターシャ.プリアムの犯行は男性と変わらない。6歳女児を、映画が見られるし、お菓子が食べられると誘拐。肛門に小さなボトルを出し入れした。泣き叫ぶ少女を電気コードで締めては緩め、を繰り返した。釘の出た板切れを少女の胸に押し付け、肺にまで達する穴を2箇所開けた。「お願い止めて、あなたが好きなんだから」と懇願すると、コードをきつく締め上げて殺害。その後ハンマーで頭蓋骨を折った。遺体は外のごみ箱へ捨て、上からごみをかぶせた(M.ストーンp156)。

(4)サイコパスと他の精神障害との関係

1)統合失調症:脳の背外側前頭前皮質の障害に関連しているが、サイコパスはこの部分の障害には関係していない。従って、サイコパスと統合失調症は別の障害で、合併症は実証されない。両方同時に持つ場合はある。統合失調症も暴力のリスク要因である(Jブレアp33)。統合失調症では、幻覚や幻聴や妄想がある場合があり、その結果サイコパスに似た犯行に及ぶことがある。『悪魔を殺せ』と言う声が聞こえたとして母親を殺し、両目を抉り出した例。この例では統合失調症治療薬を服用している時には、礼儀正しく母親にも親切であったが、薬を飲むのを止めたときに、病気が再発し犯行に至ってしまった(M.ストーンpp52-54)。この例は、結果として犯行がサイコパスに似ているが、直接の原因は別である。

2)注意欠陥多動障害(ADHD):集中できず、じっとしていられない障害。例:授業中に歩き回る児童。多くのADHDは扁桃体の機能不全を伴わず、サイコパス傾向はない。サイコパス傾向の子供の75%以上はADHDの障害を示す(Jブレアp197)。ADHDは脳障害の面が強いとされ、しつけや本人の努力だけで症状に対処するのは困難とされる。脳の下記3箇所が縮小していることが見出されている。(ウイキペディア、注意欠陥・多動性障害(ADHD)、2014.3.5閲覧)

・右前頭前皮質:注意をそらさずに我慢すること、自意識や時間の意識に関連している。

・大脳基底核の尾状核と淡蒼球:反射的な反応を抑える皮質領域への神経入力を調節する。

・小脳虫部:動機付け、やる気に関連する。

サイコパス傾向の子供の75%以上は扁桃体の機能不全と共に上記部分に萎縮があると考えられる。

3)不安障害(過度の不安から生じるパニック障害やPTSDなど)および気分障害(大うつ病など)

全体にサイコパスは不安を感じにくい。サイコパスは①②の2つの集団がある(Jブレアp34、p66)。反社会性人格障害の面が強いグループ:不安が高まると犯罪率増大するグループ。不安と正相関。情動障害の面が強いグループ:不安が高いと行動せず、不安が少ないと犯罪をするグループ。不安と逆相関。サイコパスの傾向強いとうつ病の傾向は少ない。すなわち、サイコパスとうつ病は逆相関関係(Jブレアp34)。

4)サイコパスと自閉症(Psychopath and Autism)(この項は2014/11/18追記)

(A)私の甥の例

私の甥は知的障害を伴う自閉症ですが、その様子が、自閉症の理解に役立つと思うので述べる。甥が小学生の当時、障害であることが分からず普通校に通っていた。小学校4年の時に、3人組の激しいいじめに会っていた。2人が甥を羽交い絞めにし、1人のボスが、甥の足の向う脛(俗に弁慶の泣き所と言われるところ)を棒でたたくなどを行っていた。それを知り父親が、3人組の親に抗議するとともに、3人組を直接、張り倒していた。その後甥がいじめに負けないように空手道場に通わせたが、3年経っても上達せず、最下位の3級のままであった。その理由は闘争心や攻撃性が全くなく、相手を蹴ったり叩いたりできないことである。多くの自閉症児は、反撃することをしないので、いじめの格好の標的になってしまい、激しいいじめに会う。サイコパスは弱いものを見つけ、いじめを陰湿に、手加減をしないで行う側である。自閉症者はいじめをされる側である。サイコパスと自閉症者は真逆の位置になる。サイコパスは大人の病気だけではなく、ほとんどは幼少期から特徴が現れるので自閉症と同様、発達障害の一種と考えられる。

自閉症の人がサイコパスや反社会性人格障害のように暴力的になると心配する人がいるかもしれませんが、その心配は全くありません。もし、暴力的になった場合は自閉症でなく、別の障害の可能性が考えられます。

(B)大脳生理学的特徴と感情の特徴の比較

下記表の通り。自閉症の諸特徴はサイコパスの対極にあると言える。唯一共通しているのはミラーニューロンが、不活発であることである。

 

自閉症(人により程度の差がある)

サイコパス(人により程度の差がある)

大脳生理学的特徴

偏桃体

活発正常肥大傾向*1

不活発機能不全、障害*2

傍辺縁系

正常と思われる。

傍辺縁系組織、顕著に薄い*3

ミラーニューロン*4

不活発機能不全*5

不活発機能不全*6

オキシトシン血中濃度

健常者より濃度が低い*7

不明

感情の

特徴

恐怖、不安

人一倍恐怖や不安を感じる*8

恐怖、不安の感性が衰弱。感じない

攻撃性、暴力性

攻撃性は全くない

多くは陰湿な暴力性がある

一般的に嘘がなく、純心。

平気で嘘をつく。病的な嘘つき

注*1:東京大学医学部附属病院、2010年9月14日PRESS RELEASE 『自閉症の新たな治療につながる成果』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20100914.pdf 及び次の項「(C)自閉症者の偏桃体が肥大傾向であることに対する私の見解」参照。

注*2:後の項目、本シリーズ(その4)「1.17 扁桃体の位置と具体的機能とサイコパス」ほか参照。

注*3:『日経サイエンス別冊心の迷宮、脳の神秘を探る』K.A.キールp11。

注*4:ミラーニューロンは他者が悲しんでいるのを見て、悲しくなったり、楽しそうにしているのを見て、自分もうれしく感じたりする、鏡(ミラー)のように、他者の感情を自分に写し取る機能の脳のネットワークのこと。

注*5:『東京大学医学部附属病院、2010年9月14日PRESS RELEASE 自閉症の新たな治療につながる成果』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20100914.pdf 自閉症者はミラーニューロンを構成する下前頭回の三角部と弁蓋部の体積が健常者と比較して萎縮していること、特にミラーニューロンシステムの中心部位と見られている右半球の弁蓋部の萎縮に注目している。

注*6:米国の著名な犯罪者精神鑑定医のM.ストーン(Michael H. Stone)はカリフォルニア刑務所の凶悪殺人犯300人の脳をfMRIで調べ、感情を豊かにする扁桃体が一般の人と異なる反応すると共に、ミラーニューロンが反応せず、あたかも存在しないかのようであることを確認している(「殺人犯の心理学」スカパー,ディスカバリーチャンネル)。

注*7:自閉症児はオキシトシンの血中濃度が低い『自閉症と言う謎に迫る。研究最前線報告』(金沢大学子供のこころの発達研究センター監修2013年12月、小学館、p73)。オキシトシンホルモンを点鼻薬で補充することでミラーニューロンの構成部位である腹側内側前頭前野(他者の感情を理解する)と背側内側前頭前野(他者の考えを推論する)が活性化し、機能の回復が見られる『東京大学医学部附属病院、2013年12月19日PRESS RELEASE 自閉症の新たな治療につながる可能性』http://www.jst.go.jp/pr/announce/20131219。オキシトシンホルモンの点鼻薬の効果は2014年11月から120名について検証し、2015年度中に成果をまとめ、その後正式な治療薬へ向けて作業を進めることを考えているとのこと。『自閉スペクトラム症へのオキシトシン経鼻スプレーの治療効果を検証する臨床試験をスタートします』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20141030.pdf

オキシトシン点鼻薬が自閉症治療薬として有効性が検証された場合、これまで有効な治療薬が無かったので、自閉症患者にとっては朗報になる。また、反社会性人格障害者やサイコパスの治療薬としての可能性も開くことになるのではないかと思う。

*8:私の甥は30歳になるが恐怖心が人一倍強い。たとえば、一人でレストランや大型スーパーの不特定多数がいる場所へ入れない。ゲームセンターの騒音がある所、デズニ―ランドのアトラクションの入り口の暗い所では怖がってすぐに出てしまう。カッターナイフや果物ナイフのような片刃の刃物は怖くて持てない。恐怖心が敏感でとても強いことが分かる。恐怖心とは別だが私の甥は来年や昨年などの日付を言い、曜日をきくと、たとえば来年の8月5日は何曜日と聞くとすぐ水曜日と答えが出る。どうしてわかるか聞くと「カレンダーが浮かぶ」とのことである。歴史的な事件もたとえば1912年に何があったと聞くと明治天皇崩御とすぐ答えが来る。私の甥は自閉症の中でも知的障害のあるサヴァン症候群の特徴を持っている。

映画『レインマン』でダスティン・ホフマンがサヴァン症候群患者を演じているが、自閉症患者の持つ人一倍強い恐怖の感性は描かれていない。

(C)自閉症者の偏桃体が肥大傾向であることに対する私の見解

私は自閉症者の偏桃体が肥大傾向である理由をこう考える。自閉症者は、他者の感情を読み取れず、他者が怒っているのか、喜んでいるかが掴めず、今にも襲ってくるかもしれないという状態に常にある。すなわち、対人関係では常に激しい不安に陥っている状態と考えられる。そのため、不安を脳で処理する重要部位である偏桃体が活発に、日常的に刺激を受けて、肥大傾向になっているのではないかと思う。また、自閉症者は血中オキシトシン濃度が低いということから考えれば、オキシトシンの脳内の最大受容体である偏桃体が、少ないオキシトシンの変化に対し敏感に反応しようとして肥大化が進むとも考えることができる。いずれにしても、対人関係をつかさどる脳の部分に初めに障害があり、そのために偏桃体の肥大化が誘引されたと考える。すなわち、偏桃体そのものは敏感に働いており障害が無い

また、自閉症が閉じこもりになりやすいのは、表情から他者の心が読めないために他者が怖いのである。他者が怖いので自分の心に閉じこもらざるを得ない、とても辛い状況と考える。自閉症の理解はその対極であるサイコパスの理解にもつながると思う。

(D)サイコパス、反社会性人格障害、自閉症の大脳生理学的違いのまとめ

下記表のとおりである。この表は私が作成したもので、学術文献にこのように3障害の全体を捉えたものはまだないと思われる。:正常 ×:障害(不活発、機能不全) 

 

サイコパス

反社会性人格障害

自閉症

ミラーニューロン

×

×

×

傍辺縁系

×

×

偏桃体

×

統計的割合

1人/250人程度*1

1人/50人程度*1

1人/100人程度*2

注*1:前の項の「1.11 サイコパスの統計的特徴」参照

注*2:東京大学医学部附属病院、2010年9月14日PRESS RELEASE 『自閉症の新たな治療につながる成果』http://www.h.u-tokyo.ac.jp/vcms_lf/release_20100914.pdf 参照

これらの研究は、fMRIなどの脳の観察ができるような技術の発展により21世紀に入り、飛躍的に進んできている。これらの障害の厳密な原因解明と治療法が確立するにはまだまだ時間がかかる。現場では確立するまで待てないので、わかる範囲で、どうしたらいいかを考えなければならない難しさがある。 

(5)サイコパスと薬物の関係

覚せい剤や麻薬などの薬物依存やアルコール依存はサイコパスの反社会性人格障害の面を重篤にする情動障害の面は薬物依存やアルコール依存は関係しない(Jブレアp34)。薬物依存でサイコパスでないものがサイコパスになることはない。サイコパスが薬物依存になれば、より邪悪になると共に、統合失調症を併発することがある。子供の頃から犬やネコを虐待していたサイコパスの特徴を持つK氏は、マリファナを多量に使用して自分は『神』だという妄想を持つような統合失調症を併発し、女性を殺害。頭部は鍋で煮、肉片は料理し、余った肉片はバケツに入れ一時貯蔵した。調理したものは次々とホームレスに振舞って、証拠隠滅を謀った(M.ストーンpp55-56)。薬物でサイコパスの残虐性がエスカレートした例である。

(6)サイコパスの遺伝要素と環境要素(例:幼児・少年期の虐待の影響)

反社会性人格障害の面の犯罪率は環境要素(虐待など)の影響を強く受ける。情動障害の面は遺伝要素が強い。虐待(環境要素)を受け続けた子供は、わずかな脅威ですぐ暴力的な攻撃にでるように変化する。多くの動物は脅威が遠くであれば近づかず、近くであれば逃げる。もっと近くで逃げられない状態では、攻撃に出る。虐待が続くと、この3番目の逃げられない状態が繰り返され、脳内は攻撃性が高まった状態を維持するように変化する、とJ.ブレアは考えている(J.ブレアpp141-147)。すなわち虐待などの環境要素は①反社会性人格障害を悪化させる。攻撃性が高まった子供は「自分にとって良くない社会的刺激に対してだけ選択的に注意を向け、他の方向に注意をそらすことがなかなかできない」(J.ブレアp143)。これはストーカーの特徴や些細なことをいつまでも根にもち復讐をするサイコパスの執念深さと関連する。虐待を受け続けた子供でも、扁桃体と係わりがあるMAOA遺伝子活性が高い子供は、虐待に耐え、健常者として成長することができるというカスピらの調査結果がある(J.ブレアp147)。MAOA遺伝子活性が低い子供は、虐待の環境下では、反社会的人格障害者へとなるリスクが高い。M.ストーンは同じカスピの調査結果に基づき『願わくは、より多くの子供にカスピ(Caspi)らの検査を行ってほしい。「ハイリスク」の子供たちを早期に発見し、暴力衝動との折り合いがつけられるような余地が残されているうちに、彼らを救ってほしい。p278』と述べている。

サイコパスは①②が一体となっているので、①反社会性人格障害の面を、環境を適切に改善して、サイコパスとしての発症を治療することができるかもしれないと私は思う。一方、直接②情動障害を治療することは、扁桃体の機能を活性化する薬学などの進歩に期待したい。MAOA遺伝子活性や扁桃体の機能活性に係わる薬剤が発見されつつあり将来に希望が持てる。

以下(その4)へ続く。尚、2014/11/18に「4)サイコパスと自閉症」を追記し、文字数が制限を超えたので項目1.16と1.17は次の(その4)へ移しました。テッシーでした。

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